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図案を見て動かないテレストをジッと待つ。
「フユルーシ様」
ニーデズが袖を引いてきた。テレストに背を向けて二人で話す。
「クリケットボールでは重すぎると思うのです。フユルーシ様はクルミ遊びでスイングを思い出されたのですよね?」
「うん」
「飛ばすだけでしたら、クルミ遊びから始めてもいいかもしれません」
「でも、クルミは軽すぎて飛ばないぞ」
これは物理学上の話。
「まずはあまり飛ばない方がいいですよ。それにテレストさんに伝えたいイメージの話です」
頷いて振り返る。テレストは顎に手を置いて思案顔だ。
「テレスト。訂正するよ。こんな重いボールじゃなくていいんだ。例えばクルミとか、小さいものを飛ばして遊ぶんだよ」
「? そうなのですか? それなら柄の強度はさほどいらないかもしれませんね」
また思案を始めるテレスト。たが、嫌がっている感じはしない。それよりもどうやって作るのかを真剣に悩んでくれている感じだ。
「ねぇ、テレスト。やってみないとわからないと思うんだよね。いろいろな素材で同じ形のものを五本ほど作ってほしい」
「! いいんですか?!」
テレストの目が輝いて見えるのは気のせいだろうか?
「ああ、いいよ。俺もいろいろと試して遊べるのは嬉しいし」
「かしこまりました! では、二週間ほどお時間をいただきます」
「うん。頼んだよ。タウンハウスに連絡をくれ」
それから俺たちは、ドライバーの使い方や目的などをテレストに質問されるままに答えた後、木工工房を後にした。
ニーデズと馬車に乗り込む。
「ボールはクリケットボールで試し打ちと思っていましたが、そうもいかないようですね」
「そうだね。まあ、また工房で聞いてみよう」
俺たちが向かっているのは革製品の工房だ。クリケットボールも作られている。クリケットボールをいくつか買うつもりでいたが、テレストとの話でボールは新たに作った方がいいのではないかと思い始めていた。
父上に紹介された革製品工房はベルトや工具入れ道具入れなど、オシャレを目指す物ではない物を取り扱っている所だった。
父上からの紹介状を見せるとすぐに責任者がやってきた。テレストよりは柔和な雰囲気の男だ。
「サマラと申します」
責任者サマラと名のり合う。テレストより幾分か若そうだ。
「早速だけど、クリケットボールはどのように作られているんだい?」
「粉砕したコルクを木型に詰め接着剤で固め芯となるコルクボールを作ります。それに糸を巻きその上を革でカバーしております」
「それをすべてここでやっているの?」
「いえ、コルクボールは別の職人に頼んでいます。密度や重さに大きなバラつきがあるのは困るので」
「なるほど。では、同じ工程で五センチほどのボールを作りたい」
「はあ? いくつほどでしょうか」
「ニーデズ。とりあえず千もあれば足りるよね?」
隣りにいるニーデズに確認するとブンブンと頭を横に振った。
「まずは十個ほど試作品を作ってもらいましょう」
「なるほど! では、それで頼む」
「か、か、か、かしこまりました。あの、不躾でございますが、もし気に入っていただければ千個のご契約をいただけるということでしょうか?」
「うん、そうだよ。それでは足りなくなるかもしれない」
クリケットバットだって上手くなりたければ素振りは百回くらいする。きっと俺が前世でゴルフをやっていたときは、百球や二百球は打っていたと思うのだ。覚えてないけど。
「足りない……」
サマラは小さく呟いた。頭でそろばんを弾いているだろう。
あ! そろばんって前世用語だ。この世界にないもの。
「フユルーシ様」
ニーデズが袖を引いてきた。テレストに背を向けて二人で話す。
「クリケットボールでは重すぎると思うのです。フユルーシ様はクルミ遊びでスイングを思い出されたのですよね?」
「うん」
「飛ばすだけでしたら、クルミ遊びから始めてもいいかもしれません」
「でも、クルミは軽すぎて飛ばないぞ」
これは物理学上の話。
「まずはあまり飛ばない方がいいですよ。それにテレストさんに伝えたいイメージの話です」
頷いて振り返る。テレストは顎に手を置いて思案顔だ。
「テレスト。訂正するよ。こんな重いボールじゃなくていいんだ。例えばクルミとか、小さいものを飛ばして遊ぶんだよ」
「? そうなのですか? それなら柄の強度はさほどいらないかもしれませんね」
また思案を始めるテレスト。たが、嫌がっている感じはしない。それよりもどうやって作るのかを真剣に悩んでくれている感じだ。
「ねぇ、テレスト。やってみないとわからないと思うんだよね。いろいろな素材で同じ形のものを五本ほど作ってほしい」
「! いいんですか?!」
テレストの目が輝いて見えるのは気のせいだろうか?
「ああ、いいよ。俺もいろいろと試して遊べるのは嬉しいし」
「かしこまりました! では、二週間ほどお時間をいただきます」
「うん。頼んだよ。タウンハウスに連絡をくれ」
それから俺たちは、ドライバーの使い方や目的などをテレストに質問されるままに答えた後、木工工房を後にした。
ニーデズと馬車に乗り込む。
「ボールはクリケットボールで試し打ちと思っていましたが、そうもいかないようですね」
「そうだね。まあ、また工房で聞いてみよう」
俺たちが向かっているのは革製品の工房だ。クリケットボールも作られている。クリケットボールをいくつか買うつもりでいたが、テレストとの話でボールは新たに作った方がいいのではないかと思い始めていた。
父上に紹介された革製品工房はベルトや工具入れ道具入れなど、オシャレを目指す物ではない物を取り扱っている所だった。
父上からの紹介状を見せるとすぐに責任者がやってきた。テレストよりは柔和な雰囲気の男だ。
「サマラと申します」
責任者サマラと名のり合う。テレストより幾分か若そうだ。
「早速だけど、クリケットボールはどのように作られているんだい?」
「粉砕したコルクを木型に詰め接着剤で固め芯となるコルクボールを作ります。それに糸を巻きその上を革でカバーしております」
「それをすべてここでやっているの?」
「いえ、コルクボールは別の職人に頼んでいます。密度や重さに大きなバラつきがあるのは困るので」
「なるほど。では、同じ工程で五センチほどのボールを作りたい」
「はあ? いくつほどでしょうか」
「ニーデズ。とりあえず千もあれば足りるよね?」
隣りにいるニーデズに確認するとブンブンと頭を横に振った。
「まずは十個ほど試作品を作ってもらいましょう」
「なるほど! では、それで頼む」
「か、か、か、かしこまりました。あの、不躾でございますが、もし気に入っていただければ千個のご契約をいただけるということでしょうか?」
「うん、そうだよ。それでは足りなくなるかもしれない」
クリケットバットだって上手くなりたければ素振りは百回くらいする。きっと俺が前世でゴルフをやっていたときは、百球や二百球は打っていたと思うのだ。覚えてないけど。
「足りない……」
サマラは小さく呟いた。頭でそろばんを弾いているだろう。
あ! そろばんって前世用語だ。この世界にないもの。
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