41 / 49
第三章 子爵令嬢の大いなる挑戦
3 学園での勉強に挑戦する
しおりを挟む
学園のクラスは成績順で分けられている。Aクラスは九割が高位貴族子女で、あとは子爵家男爵家の長男である。
また、Bクラスは三十人中女性は十人で、サラビエネ以外は高位貴族令嬢だ。高位貴族と下位貴族とでは、根本的に教育方針も教育費も教育時間も違うのだから、当然の結果である。
男性も高位貴族の次男三男が多く、後は下位貴族の後継者となる令息だ。
その中で上位であるサラビエネは確かに異質といえた。
初めは心無い批判を受けることもあった。だが、両親の愛を信じているサラビエネは全く動揺することなく勉学に励んだ。
友達の存在も大きい。親友のノエリエラ・パーミル子爵令嬢はサラビエネと同様に才女であり、一つ年上の二年生でBクラス内の上位であった。二人の悩みはそっくり同じであったので大変気が合う。
サラビエネの優秀さにやっかむ声が減った頃、美しいサラビエネは何人もの男の子たちに誘いを受けた。だが、誰と話をしてもサラビエネは楽しいと思えなかった。なぜなら、サラビエネに声をかけてくるのは、子爵家男爵家の次男や三男で、男であることに胡座をかき努力を怠り、それなのにムワタンテ子爵家の後継を狙う者が多かったからだ。
同じクラスの高位貴族の次男三男たちはプライドが大変高く、自分より成績のよいサラビエネを良くは思っていない。
〰️ 〰️ 〰️
サラビエネが二年生になって間もなく、ムワタンテ子爵家に男の子が生まれた。
ムワタンテ子爵家に生まれた男の子はアーディルと名付けられた。アーディルはオデリーヌと同じネイビーの髪とムワタンテ子爵のブラウンの瞳の可愛らしい子だ。
学園の長期休みでやっとアーディルに会えたサラビエネは、可愛らしい弟にとても感動した。
さらには、九歳になったライラリンネの勉強を見て、自分より優秀だと確信する。
そして、三人の家族会議が開かれた。
「お父様。ムワタンテ子爵家はアディに継がせてください」
「何を言うんだっ! サーラが優秀なのはわかっている。
アディは男の子だ。勉強が優秀なら王城の文官にもなれるし、武術が優秀なら騎士団へ入ってもいい。
だが、残念なことに、女性であり、子爵家の娘であるサーラの才能を活かせる仕事はなかなかない。
この領地でその才能を活かしなさい」
「それでしたら、ライリーにムワタンテ子爵家を継がせてください。ライリーはわたくしよりずっと優秀です」
「サーラ。ライリーは貴女に憧れて勉強しているのよ。わたくしもライリーも貴女がムワタンテ子爵家を継ぐべきだと思っているわ」
「お義母様……。わかりました。でも、後継者をお決めになることは保留にしてください。アディが成人してからでも間に合います」
「そこまで待つかどうかはわからないが、少なくともサーラの婚姻が決まるまでは待つことにしよう」
サラビエネは両親を説得することは今は諦めた。そして、休み中はライラリンネとたくさん遊びたくさん勉強した。暇を見つけてはアーディルの面倒もみた。
サラビエネは両親には内緒だが、ムワタンテ子爵領をアーディルが継ぐにしてもライラリンネが継ぐにしてもサポート役になろうと決心して学園へ戻った。支えることを目標にしたサラビエネは益々勉強に力を入れることになる。
ムワタンテ子爵家に男の子が生まれたことが広まるとサラビエネに声をかける男の子たちは露骨に減った。後継者にならないのなら、自分より優秀な女性との婚姻は願い下げとの考えがプライドの高い男たちの中では当然である。
それでも声をかけてくるのは、美しいサラビエネとの一時の恋を楽しみたい下心丸出しの者ばかりだった。
アーディルかライラリンネを支えると決心したサラビエネは、身を翻した男子生徒も下心丸出しの男子生徒も嫌いになり、尚更勉強に傾いた。
〰️ 〰️ 〰️
サラビエネは卒業までBクラスのトップだった。
サラビエネは卒業するとすぐにムワタンテ子爵のサポート役になった。ムワタンテ子爵はサラビエネを後継者として領地経営について教えていく。サラビエネがアーディルとライラリンネのために頑張っているとは全く気がついていなかった。
〰️
そして、運命の手紙がムワタンテ子爵家に届いた。貴族全家に送られた手紙である。
【王太子妃候補者募集!】
ムワタンテ子爵は王城の勤務をしていないので、学園にそのような求人広告が出されたことなど知らず、手紙の内容に驚きを隠せなかった。
だが、ムワタンテ子爵はある項目に注目していた。
○月に一度のテストに一年間合格すること(不合格の時点で候補から落選する)
『これは女性が学ぶ機会を与えられるということではないのか?』
さらにもう一枚の手紙には内容が記されている。
【カリキュラム】
○月曜から金曜の夕方三時より七時まで
○王城の特別室にて勉強会をする
○下記の内容を一ヶ月毎にテストする
○テスト合格者は80点以上の者とする
1・マナー、ダンス、護身術体術初級
2・語学大陸共通語初級
3・歴史学、淑女学初級
4・地理学、天候学初級
5・語学他国語初級
6・総合学初級
この後は、同内容の中級となる
ムワタンテ子爵は自分の予想に確信は持てないものの、オデリーヌとサラビエネに相談することにした。
また、Bクラスは三十人中女性は十人で、サラビエネ以外は高位貴族令嬢だ。高位貴族と下位貴族とでは、根本的に教育方針も教育費も教育時間も違うのだから、当然の結果である。
男性も高位貴族の次男三男が多く、後は下位貴族の後継者となる令息だ。
その中で上位であるサラビエネは確かに異質といえた。
初めは心無い批判を受けることもあった。だが、両親の愛を信じているサラビエネは全く動揺することなく勉学に励んだ。
友達の存在も大きい。親友のノエリエラ・パーミル子爵令嬢はサラビエネと同様に才女であり、一つ年上の二年生でBクラス内の上位であった。二人の悩みはそっくり同じであったので大変気が合う。
サラビエネの優秀さにやっかむ声が減った頃、美しいサラビエネは何人もの男の子たちに誘いを受けた。だが、誰と話をしてもサラビエネは楽しいと思えなかった。なぜなら、サラビエネに声をかけてくるのは、子爵家男爵家の次男や三男で、男であることに胡座をかき努力を怠り、それなのにムワタンテ子爵家の後継を狙う者が多かったからだ。
同じクラスの高位貴族の次男三男たちはプライドが大変高く、自分より成績のよいサラビエネを良くは思っていない。
〰️ 〰️ 〰️
サラビエネが二年生になって間もなく、ムワタンテ子爵家に男の子が生まれた。
ムワタンテ子爵家に生まれた男の子はアーディルと名付けられた。アーディルはオデリーヌと同じネイビーの髪とムワタンテ子爵のブラウンの瞳の可愛らしい子だ。
学園の長期休みでやっとアーディルに会えたサラビエネは、可愛らしい弟にとても感動した。
さらには、九歳になったライラリンネの勉強を見て、自分より優秀だと確信する。
そして、三人の家族会議が開かれた。
「お父様。ムワタンテ子爵家はアディに継がせてください」
「何を言うんだっ! サーラが優秀なのはわかっている。
アディは男の子だ。勉強が優秀なら王城の文官にもなれるし、武術が優秀なら騎士団へ入ってもいい。
だが、残念なことに、女性であり、子爵家の娘であるサーラの才能を活かせる仕事はなかなかない。
この領地でその才能を活かしなさい」
「それでしたら、ライリーにムワタンテ子爵家を継がせてください。ライリーはわたくしよりずっと優秀です」
「サーラ。ライリーは貴女に憧れて勉強しているのよ。わたくしもライリーも貴女がムワタンテ子爵家を継ぐべきだと思っているわ」
「お義母様……。わかりました。でも、後継者をお決めになることは保留にしてください。アディが成人してからでも間に合います」
「そこまで待つかどうかはわからないが、少なくともサーラの婚姻が決まるまでは待つことにしよう」
サラビエネは両親を説得することは今は諦めた。そして、休み中はライラリンネとたくさん遊びたくさん勉強した。暇を見つけてはアーディルの面倒もみた。
サラビエネは両親には内緒だが、ムワタンテ子爵領をアーディルが継ぐにしてもライラリンネが継ぐにしてもサポート役になろうと決心して学園へ戻った。支えることを目標にしたサラビエネは益々勉強に力を入れることになる。
ムワタンテ子爵家に男の子が生まれたことが広まるとサラビエネに声をかける男の子たちは露骨に減った。後継者にならないのなら、自分より優秀な女性との婚姻は願い下げとの考えがプライドの高い男たちの中では当然である。
それでも声をかけてくるのは、美しいサラビエネとの一時の恋を楽しみたい下心丸出しの者ばかりだった。
アーディルかライラリンネを支えると決心したサラビエネは、身を翻した男子生徒も下心丸出しの男子生徒も嫌いになり、尚更勉強に傾いた。
〰️ 〰️ 〰️
サラビエネは卒業までBクラスのトップだった。
サラビエネは卒業するとすぐにムワタンテ子爵のサポート役になった。ムワタンテ子爵はサラビエネを後継者として領地経営について教えていく。サラビエネがアーディルとライラリンネのために頑張っているとは全く気がついていなかった。
〰️
そして、運命の手紙がムワタンテ子爵家に届いた。貴族全家に送られた手紙である。
【王太子妃候補者募集!】
ムワタンテ子爵は王城の勤務をしていないので、学園にそのような求人広告が出されたことなど知らず、手紙の内容に驚きを隠せなかった。
だが、ムワタンテ子爵はある項目に注目していた。
○月に一度のテストに一年間合格すること(不合格の時点で候補から落選する)
『これは女性が学ぶ機会を与えられるということではないのか?』
さらにもう一枚の手紙には内容が記されている。
【カリキュラム】
○月曜から金曜の夕方三時より七時まで
○王城の特別室にて勉強会をする
○下記の内容を一ヶ月毎にテストする
○テスト合格者は80点以上の者とする
1・マナー、ダンス、護身術体術初級
2・語学大陸共通語初級
3・歴史学、淑女学初級
4・地理学、天候学初級
5・語学他国語初級
6・総合学初級
この後は、同内容の中級となる
ムワタンテ子爵は自分の予想に確信は持てないものの、オデリーヌとサラビエネに相談することにした。
1
お気に入りに追加
1,460
あなたにおすすめの小説
追放された聖女の悠々自適な側室ライフ
白雪の雫
ファンタジー
「聖女ともあろう者が、嫉妬に狂って我が愛しのジュリエッタを虐めるとは!貴様の所業は畜生以外の何者でもない!お前との婚約を破棄した上で国外追放とする!!」
平民でありながらゴーストやレイスだけではなくリッチを一瞬で倒したり、どんな重傷も完治してしまうマルガレーテは、幼い頃に両親と引き離され聖女として教会に引き取られていた。
そんな彼女の魔力に目を付けた女教皇と国王夫妻はマルガレーテを国に縛り付ける為、王太子であるレオナルドの婚約者に据えて、「お妃教育をこなせ」「愚民どもより我等の病を治療しろ」「瘴気を祓え」「不死王を倒せ」という風にマルガレーテをこき使っていた。
そんなある日、レオナルドは居並ぶ貴族達の前で公爵令嬢のジュリエッタ(バスト100cm以上の爆乳・KかLカップ)を妃に迎え、マルガレーテに国外追放という死刑に等しい宣言をしてしまう。
「王太子殿下の仰せに従います」
(やっと・・・アホ共から解放される。私がやっていた事が若作りのヒステリー婆・・・ではなく女教皇と何の力もない修道女共に出来る訳ないのにね~。まぁ、この国がどうなってしまっても私には関係ないからどうでもいいや)
表面は淑女の仮面を被ってレオナルドの宣言を受け入れたマルガレーテは、さっさと国を出て行く。
今までの鬱憤を晴らすかのように、着の身着のままの旅をしているマルガレーテは、故郷である幻惑の樹海へと戻っている途中で【宮女狩り】というものに遭遇してしまい、大国の後宮へと入れられてしまった。
マルガレーテが悠々自適な側室ライフを楽しんでいる頃
聖女がいなくなった王国と教会は滅亡への道を辿っていた。
いっとう愚かで、惨めで、哀れな末路を辿るはずだった令嬢の矜持
空月
ファンタジー
古くからの名家、貴き血を継ぐローゼンベルグ家――その末子、一人娘として生まれたカトレア・ローゼンベルグは、幼い頃からの婚約者に婚約破棄され、遠方の別荘へと療養の名目で送られた。
その道中に惨めに死ぬはずだった未来を、突然現れた『バグ』によって回避して、ただの『カトレア』として生きていく話。
※悪役令嬢で婚約破棄物ですが、ざまぁもスッキリもありません。
※以前投稿していた「いっとう愚かで惨めで哀れだった令嬢の果て」改稿版です。文章量が1.5倍くらいに増えています。
公爵令嬢アナスタシアの華麗なる鉄槌
招杜羅147
ファンタジー
「婚約は破棄だ!」
毒殺容疑の冤罪で、婚約者の手によって投獄された公爵令嬢・アナスタシア。
彼女は獄中死し、それによって3年前に巻き戻る。
そして…。
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
【完結】義妹とやらが現れましたが認めません。〜断罪劇の次世代たち〜
福田 杜季
ファンタジー
侯爵令嬢のセシリアのもとに、ある日突然、義妹だという少女が現れた。
彼女はメリル。父親の友人であった彼女の父が不幸に見舞われ、親族に虐げられていたところを父が引き取ったらしい。
だがこの女、セシリアの父に欲しいものを買わせまくったり、人の婚約者に媚を打ったり、夜会で非常識な言動をくり返して顰蹙を買ったりと、どうしようもない。
「お義姉さま!」 . .
「姉などと呼ばないでください、メリルさん」
しかし、今はまだ辛抱のとき。
セシリアは来たるべき時へ向け、画策する。
──これは、20年前の断罪劇の続き。
喜劇がくり返されたとき、いま一度鉄槌は振り下ろされるのだ。
※ご指摘を受けて題名を変更しました。作者の見通しが甘くてご迷惑をおかけいたします。
旧題『義妹ができましたが大嫌いです。〜断罪劇の次世代たち〜』
※初投稿です。話に粗やご都合主義的な部分があるかもしれません。生あたたかい目で見守ってください。
※本編完結済みで、毎日1話ずつ投稿していきます。
妹を盲信溺愛する婚約者には愛想が尽きた
章槻雅希
恋愛
今日も今日とてリンセは婚約者にデートをすっぽかされた。別に珍しいことではない。彼は妹を溺愛して、何事にも病弱で可憐な妹を最優先にするのだ。
格上の侯爵家との婚約をこちらから破棄するのは難しい。だが、このまま婚約を続けるのも将来結婚するのも無理だ。婚約者にとってだけは『病弱で可憐な、天使のような妹』と暮らすのは絶対に無理だ。
だから、リンセは最終兵器侯爵家長女に助けを求めたのだった。
流行りっぽい悲劇のヒロインぶりたい妹とそれを溺愛する兄婚約者ネタを書いてみました。そしたら、そこに最強の姉降臨。
『アルファポリス』『小説家になろう』『Pixiv』に重複投稿。
婚約破棄直前に倒れた悪役令嬢は、愛を抱いたまま退場したい
矢口愛留
恋愛
【全11話】
学園の卒業パーティーで、公爵令嬢クロエは、第一王子スティーブに婚約破棄をされそうになっていた。
しかし、婚約破棄を宣言される前に、クロエは倒れてしまう。
クロエの余命があと一年ということがわかり、スティーブは、自身の感じていた違和感の元を探り始める。
スティーブは真実にたどり着き、クロエに一つの約束を残して、ある選択をするのだった。
※一話あたり短めです。
※ベリーズカフェにも投稿しております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる