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第一章 本編
19 淑女たちの未来は……
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残念そうにする淑女たちの様子に王妃陛下は満足そうに頷いた。ここで納得しているようでは、王妃陛下のお眼鏡に叶わない。
「ここまで残ったみなさんは、大変優秀な淑女であると思うの。王子妃候補からは落選になることは変わらないわ。ですが、みなさんが希望なされば、明日からの総合学中級への授業の参加を認めましょう」
「「「わぁ!!」」」
不合格者たちは満面の笑顔でとても喜んだ。みんなこの十ヶ月で、自分の成長や見聞の広がりやスキルアップをとても感じていたのだ。
「それから、メイド長からお話があるそうなの」
王妃陛下が促すと、お仕着せを着た女性が立ち上がった。
「わたくしは王宮のメイド長をしておりますバティアナ・ハンスです」
ハンス家といえば侯爵家だ。王宮のメイドは侯爵家か伯爵家の女性が多い。子爵家の者もいるが、侯爵家伯爵家と親類関係である。
「みなさんの優秀さを王妃陛下からお聞きしております。そこで、爵位に関係なく、メイド見習いの採用試験を行うことにいたしました。
メイド見習いは一年間。一年後、メイドとして採用され担当部署が決まります」
語学不合格者三十人のうち十五人は子爵家男爵家だ。特に子爵家男爵家のご令嬢たちは目を輝かせた。
「採用試験の一次試験は、王太子妃候補試験と同じ日同じテストを行います。合格点は80点。一次試験合格者は後日二次試験として面接を行います。親御様とよくお話し合いをなさってお決めになってください。
試験希望受付は三週間後にいたします」
「私からもあります」
高官が手を挙げた。王妃陛下が頷き発言が許された。メイド長が座り高官が立ち上がる。
「私もみなさんの優秀さを理解している一人です。そこで、王城文官の女性第一号に抜擢したいと考えております」
水を打ったように静まり返った。
「まずは総務部と王妃陛下付で、二名から四名の採用を考えております。
これからの時代、女性の活躍は必須だと王妃陛下がお考えです。私もその後押しをしたいと思っております。
女性第一号ということで、風当たりも強くなるやもしれません。好奇の目もあるでしょう。婚期にも影響してしまうかもしれない。
それでもやってみたいというお心づもりの方に是非お願いしたいっ!」
高官は数名からの力強い視線を受け止め、笑顔になった。
「メイド長と同じになりますが、採用試験の一次試験は、王太子妃候補試験と同じ日同じテストを行います。合格点は80点。一次試験合格者は後日二次試験として面接を行います。
親御様とよくお話し合いをなさってお決めになってください。
試験希望受付は三週間後にいたします」
高官は頭を下げて座った。座ると同時に手が挙がった。
「ラビオナ。どうぞ。挨拶はいらないし、座ったままで大丈夫よ」
文官が仕切るより早く、王妃陛下が笑顔でラビオナを促した。
「はい。陛下。
わたくしは今回、王太子妃候補としてテストを受けているわけではございませんが、王城文官採用試験を受ける権利はございますか?」
これには王妃陛下も高官も満面の笑みを浮かべた。
「もち……「もちろんよっ! ラビオナっ!」
高官が答えようとしていたところに、王妃陛下が興奮気味に被せた。
「嬉しいわっ! 貴女にはわたくしのサポートをお願いしたいと思っていたの。
貴女は総務でなく、わたくし付きで採用よっ!」
みんなも、ラビオナも、誰もが目を丸くした。一人だけ目を細めていた。目を細めた者が脇から口出しをする。
「王妃陛下。ラビオナ嬢はまだ採用試験を受けておりません。それに、ご父君であられるテレエル公爵閣下も、ラビオナ嬢が採用試験をお受けになるとお決めになったのなら総務にと、ご希望されております」
高官は王妃陛下にだけ聞こえるように、口元を手で隠しながら言った。王妃陛下も扇を広げる。
「わかっていますよ。だからここで宣言したの。早い者勝ちよね。うふふ」
高官は顔を歪ませるのを我慢して、笑顔で前を向いた。
「テレエル嬢。王妃陛下のお言葉は気になさらなくて結構です。テレエル公爵閣下ともお話し合いをなさってください」
「わ、わかりましたわ……」
ラビオナは、王妃陛下の目前で、『王妃陛下を気にしなくていい』と言い切れる高官のことを目をしばたかせながら見て、珍しくしどろもどろに了承した。
「他にご質問はございますか? メイド長への質問でも構いませんよ」
手が挙がった。
「では、そちらの方、どうぞ」
「はい。アリーナ・サバライトです。父は侯爵を賜っております。サバライト家の三女です。わたくし、二十三になりますの」
アリーナは見た目もしっかりとした印象のお姉様である。
「ここまで残ったみなさんは、大変優秀な淑女であると思うの。王子妃候補からは落選になることは変わらないわ。ですが、みなさんが希望なされば、明日からの総合学中級への授業の参加を認めましょう」
「「「わぁ!!」」」
不合格者たちは満面の笑顔でとても喜んだ。みんなこの十ヶ月で、自分の成長や見聞の広がりやスキルアップをとても感じていたのだ。
「それから、メイド長からお話があるそうなの」
王妃陛下が促すと、お仕着せを着た女性が立ち上がった。
「わたくしは王宮のメイド長をしておりますバティアナ・ハンスです」
ハンス家といえば侯爵家だ。王宮のメイドは侯爵家か伯爵家の女性が多い。子爵家の者もいるが、侯爵家伯爵家と親類関係である。
「みなさんの優秀さを王妃陛下からお聞きしております。そこで、爵位に関係なく、メイド見習いの採用試験を行うことにいたしました。
メイド見習いは一年間。一年後、メイドとして採用され担当部署が決まります」
語学不合格者三十人のうち十五人は子爵家男爵家だ。特に子爵家男爵家のご令嬢たちは目を輝かせた。
「採用試験の一次試験は、王太子妃候補試験と同じ日同じテストを行います。合格点は80点。一次試験合格者は後日二次試験として面接を行います。親御様とよくお話し合いをなさってお決めになってください。
試験希望受付は三週間後にいたします」
「私からもあります」
高官が手を挙げた。王妃陛下が頷き発言が許された。メイド長が座り高官が立ち上がる。
「私もみなさんの優秀さを理解している一人です。そこで、王城文官の女性第一号に抜擢したいと考えております」
水を打ったように静まり返った。
「まずは総務部と王妃陛下付で、二名から四名の採用を考えております。
これからの時代、女性の活躍は必須だと王妃陛下がお考えです。私もその後押しをしたいと思っております。
女性第一号ということで、風当たりも強くなるやもしれません。好奇の目もあるでしょう。婚期にも影響してしまうかもしれない。
それでもやってみたいというお心づもりの方に是非お願いしたいっ!」
高官は数名からの力強い視線を受け止め、笑顔になった。
「メイド長と同じになりますが、採用試験の一次試験は、王太子妃候補試験と同じ日同じテストを行います。合格点は80点。一次試験合格者は後日二次試験として面接を行います。
親御様とよくお話し合いをなさってお決めになってください。
試験希望受付は三週間後にいたします」
高官は頭を下げて座った。座ると同時に手が挙がった。
「ラビオナ。どうぞ。挨拶はいらないし、座ったままで大丈夫よ」
文官が仕切るより早く、王妃陛下が笑顔でラビオナを促した。
「はい。陛下。
わたくしは今回、王太子妃候補としてテストを受けているわけではございませんが、王城文官採用試験を受ける権利はございますか?」
これには王妃陛下も高官も満面の笑みを浮かべた。
「もち……「もちろんよっ! ラビオナっ!」
高官が答えようとしていたところに、王妃陛下が興奮気味に被せた。
「嬉しいわっ! 貴女にはわたくしのサポートをお願いしたいと思っていたの。
貴女は総務でなく、わたくし付きで採用よっ!」
みんなも、ラビオナも、誰もが目を丸くした。一人だけ目を細めていた。目を細めた者が脇から口出しをする。
「王妃陛下。ラビオナ嬢はまだ採用試験を受けておりません。それに、ご父君であられるテレエル公爵閣下も、ラビオナ嬢が採用試験をお受けになるとお決めになったのなら総務にと、ご希望されております」
高官は王妃陛下にだけ聞こえるように、口元を手で隠しながら言った。王妃陛下も扇を広げる。
「わかっていますよ。だからここで宣言したの。早い者勝ちよね。うふふ」
高官は顔を歪ませるのを我慢して、笑顔で前を向いた。
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ラビオナは、王妃陛下の目前で、『王妃陛下を気にしなくていい』と言い切れる高官のことを目をしばたかせながら見て、珍しくしどろもどろに了承した。
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「では、そちらの方、どうぞ」
「はい。アリーナ・サバライトです。父は侯爵を賜っております。サバライト家の三女です。わたくし、二十三になりますの」
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