9 / 49
第一章 本編
9 求人の内容は……
しおりを挟む
【王太子妃候補者募集!】
~貴女が未来の国母かもしれないっ!~
~さあ! チャンスを掴みにいこう!~
~麗しき王太子を射止めるのは貴女だっ!~
〈募集要項〉
○爵位不問!
○性格不問!
○十六歳から二十五歳までの貴族籍に属する健康な女性であること
○ゼルアナート貴族学園を卒業しているまたは卒業見込みであること(なんらかの理由で卒業が取り消された、または、退学した時点で候補から落選する)
○メーデル王太子殿下の不貞を心広く許せること
○メーデル王太子殿下の個人資産はないため、贅沢はできないことを理解すること
○月に一度のテストに一年間合格すること(不合格の時点で候補から落選する)
〈本採用について〉
●一年後、候補に残った者の中からメーデル王太子殿下がお一人を選ばれる
●王太子妃に選ばれた場合、翌日から本格的な王太子妃教育を開始する
●メーデル王太子殿下に選ばれなかった者には、王妃陛下より『選ばれし淑女の称号』が与えられ、また、婚約婚姻も王家が後押しする
〈注意事項〉
※一ヶ月後、応募の受け付けを開始し受付の期間は二日間とする。
※テストの内容については、後日、学園の大講義室にて説明会を行う。
その際、爵位を問わず質問を受け付ける。
※尚、この求人広告は、国王陛下並びに王妃陛下の命にて発行されている。
〰️ 〰️ 〰️
メーデルは怒りで顔を紫にしていた。
「なんだっ! この内容はっ!」
「内容については後程。
朝の求人広告にもこれが記載されていたのですが、ご覧になりましたか?」
高官が掌で示した一番下ところに視線を合わせる。
※尚、この求人広告は、国王陛下並びに王妃陛下の命にて発行されている。
メーデルは近衛兵から『陛下の掲示物』とは聞いていたが、実際に記載されている物を見て顔をひくつかせた。
「もちろん、朝の物にも記載されておりました」
高官が意地悪そうに笑う。
「こんな大事なことはもっとわかりやすく書けっ!」
最後まで読みさえすればかなりわかりやすく書いてあるのでただの八つ当たりにしか聞こえない。
高官はメーデルの言い分を無視した。
「それで? 内容に問題がありましたか?」
高官のすっとぼけた言い方に、メーデルは頬をビクビクビクと引き攣らせた。
「この『性格不問』とは、どういうことだっ! 国母になろうとする者が捻くれ者であっていいわけがないっ!」
「それは、王太子妃教育でいかようにもなります」
高官は抑揚もなく答えた。『当然だ』との言い方を聞いた女子生徒たちがブルッと震えた。
ラビオナは『そこまで露骨に言わずとも』と思った。だが、『本音は隠し常に笑顔を』と教え込まれてきたことを思い出した。
『性格を隠すことは確かに可能ね』
ラビオナは思い直し、扇の奥の口元を思わず緩めた。
「バカを言うなっ! 性格が早々変えられるわけがないっ!」
ポーカーフェイスを全くできていないメーデルが唾を飛ばして怒鳴る。
『本当に王族教育を受けているのか?』と特に高位貴族子女たちは心の中で驚いていた。
「はい。そうですね。
しかしながら、対外的なお性格を作ることは可能です。
笑顔で対応する。
お言葉を選ぶ。
仕草を上品にする。
それだけで対外的な印象はよくなり、『清楚で性格の良い方だ』と判断されます」
理屈は納得できるが、それをさも当然だと思うのは別の話だ。いくら紳士教育淑女教育を受けていてもまだ成人前の少年少女たちだ。大人の裏を聞いてしまったような気持ちになった。
ラビオナだけは『やはりそうよね』と心から納得し、紅茶に手を伸ばしてホッと息をついた。
高官は嘲るような微笑で呆けているメーデルを見た。
「ですから、対内的なお性格の良さをお求めになるのは、メーデル王太子殿下だけですよ」
高官はニヤリと笑った。おそらくわざとであるが、単純なメーデルは怒りを増幅させた。
『なんのためにメーデル王太子殿下を煽っていらっしゃるのかしら?』
ラビオナは美丈夫の高官をさりげなくだが注意深く観察した。
「なら、尚更だっ! この項目は消せっ!」
メーデルは怒りで『陛下』の存在を飛ばしている。
「いえいえ、だからこそ最後に残った淑女たちからメーデル王太子殿下がお決めになるようになっております」
高官は恭しく頭を下げながら手は掲示物に向いており、『本採用について』の項目をトントンとノックして示した。求人広告の一部を掌で指し示されている。
●一年後、候補に残った者の中からメーデル王太子殿下がお一人を選ばれる
しっかりと記載されていた。
「その方のご気性がいかがなものか、殿下との相性はどうかなど、我々にはわかりようはございませんから。
特にメーデル王太子殿下のご趣味は全くもって理解できかねますし……」
高官のシエラへ向けられた視線は侮辱に満ちている。メーデルが睨みつけるも視線の意味を変えることはなかった。
「ですから、候補者となる女性たちとメーデル王太子殿下とで交流をしていただく他ありません。その辺りはメーデル王太子殿下ご自身に頑張っていただくしかありませんね」
高官は笑いを深めにっこりとした。確かに、メーデルと合うかどうかはメーデルにしかわからない。シエラと同じようなご令嬢など二人といないと思われるので尚更だ。
~貴女が未来の国母かもしれないっ!~
~さあ! チャンスを掴みにいこう!~
~麗しき王太子を射止めるのは貴女だっ!~
〈募集要項〉
○爵位不問!
○性格不問!
○十六歳から二十五歳までの貴族籍に属する健康な女性であること
○ゼルアナート貴族学園を卒業しているまたは卒業見込みであること(なんらかの理由で卒業が取り消された、または、退学した時点で候補から落選する)
○メーデル王太子殿下の不貞を心広く許せること
○メーデル王太子殿下の個人資産はないため、贅沢はできないことを理解すること
○月に一度のテストに一年間合格すること(不合格の時点で候補から落選する)
〈本採用について〉
●一年後、候補に残った者の中からメーデル王太子殿下がお一人を選ばれる
●王太子妃に選ばれた場合、翌日から本格的な王太子妃教育を開始する
●メーデル王太子殿下に選ばれなかった者には、王妃陛下より『選ばれし淑女の称号』が与えられ、また、婚約婚姻も王家が後押しする
〈注意事項〉
※一ヶ月後、応募の受け付けを開始し受付の期間は二日間とする。
※テストの内容については、後日、学園の大講義室にて説明会を行う。
その際、爵位を問わず質問を受け付ける。
※尚、この求人広告は、国王陛下並びに王妃陛下の命にて発行されている。
〰️ 〰️ 〰️
メーデルは怒りで顔を紫にしていた。
「なんだっ! この内容はっ!」
「内容については後程。
朝の求人広告にもこれが記載されていたのですが、ご覧になりましたか?」
高官が掌で示した一番下ところに視線を合わせる。
※尚、この求人広告は、国王陛下並びに王妃陛下の命にて発行されている。
メーデルは近衛兵から『陛下の掲示物』とは聞いていたが、実際に記載されている物を見て顔をひくつかせた。
「もちろん、朝の物にも記載されておりました」
高官が意地悪そうに笑う。
「こんな大事なことはもっとわかりやすく書けっ!」
最後まで読みさえすればかなりわかりやすく書いてあるのでただの八つ当たりにしか聞こえない。
高官はメーデルの言い分を無視した。
「それで? 内容に問題がありましたか?」
高官のすっとぼけた言い方に、メーデルは頬をビクビクビクと引き攣らせた。
「この『性格不問』とは、どういうことだっ! 国母になろうとする者が捻くれ者であっていいわけがないっ!」
「それは、王太子妃教育でいかようにもなります」
高官は抑揚もなく答えた。『当然だ』との言い方を聞いた女子生徒たちがブルッと震えた。
ラビオナは『そこまで露骨に言わずとも』と思った。だが、『本音は隠し常に笑顔を』と教え込まれてきたことを思い出した。
『性格を隠すことは確かに可能ね』
ラビオナは思い直し、扇の奥の口元を思わず緩めた。
「バカを言うなっ! 性格が早々変えられるわけがないっ!」
ポーカーフェイスを全くできていないメーデルが唾を飛ばして怒鳴る。
『本当に王族教育を受けているのか?』と特に高位貴族子女たちは心の中で驚いていた。
「はい。そうですね。
しかしながら、対外的なお性格を作ることは可能です。
笑顔で対応する。
お言葉を選ぶ。
仕草を上品にする。
それだけで対外的な印象はよくなり、『清楚で性格の良い方だ』と判断されます」
理屈は納得できるが、それをさも当然だと思うのは別の話だ。いくら紳士教育淑女教育を受けていてもまだ成人前の少年少女たちだ。大人の裏を聞いてしまったような気持ちになった。
ラビオナだけは『やはりそうよね』と心から納得し、紅茶に手を伸ばしてホッと息をついた。
高官は嘲るような微笑で呆けているメーデルを見た。
「ですから、対内的なお性格の良さをお求めになるのは、メーデル王太子殿下だけですよ」
高官はニヤリと笑った。おそらくわざとであるが、単純なメーデルは怒りを増幅させた。
『なんのためにメーデル王太子殿下を煽っていらっしゃるのかしら?』
ラビオナは美丈夫の高官をさりげなくだが注意深く観察した。
「なら、尚更だっ! この項目は消せっ!」
メーデルは怒りで『陛下』の存在を飛ばしている。
「いえいえ、だからこそ最後に残った淑女たちからメーデル王太子殿下がお決めになるようになっております」
高官は恭しく頭を下げながら手は掲示物に向いており、『本採用について』の項目をトントンとノックして示した。求人広告の一部を掌で指し示されている。
●一年後、候補に残った者の中からメーデル王太子殿下がお一人を選ばれる
しっかりと記載されていた。
「その方のご気性がいかがなものか、殿下との相性はどうかなど、我々にはわかりようはございませんから。
特にメーデル王太子殿下のご趣味は全くもって理解できかねますし……」
高官のシエラへ向けられた視線は侮辱に満ちている。メーデルが睨みつけるも視線の意味を変えることはなかった。
「ですから、候補者となる女性たちとメーデル王太子殿下とで交流をしていただく他ありません。その辺りはメーデル王太子殿下ご自身に頑張っていただくしかありませんね」
高官は笑いを深めにっこりとした。確かに、メーデルと合うかどうかはメーデルにしかわからない。シエラと同じようなご令嬢など二人といないと思われるので尚更だ。
2
お気に入りに追加
1,459
あなたにおすすめの小説
もう、終わった話ですし
志位斗 茂家波
ファンタジー
一国が滅びた。
その知らせを聞いても、私には関係の無い事。
だってね、もう分っていたことなのよね‥‥‥
‥‥‥たまにやりたくなる、ありきたりな婚約破棄ざまぁ(?)もの
少々物足りないような気がするので、気が向いたらオマケ書こうかな?
追放された聖女の悠々自適な側室ライフ
白雪の雫
ファンタジー
「聖女ともあろう者が、嫉妬に狂って我が愛しのジュリエッタを虐めるとは!貴様の所業は畜生以外の何者でもない!お前との婚約を破棄した上で国外追放とする!!」
平民でありながらゴーストやレイスだけではなくリッチを一瞬で倒したり、どんな重傷も完治してしまうマルガレーテは、幼い頃に両親と引き離され聖女として教会に引き取られていた。
そんな彼女の魔力に目を付けた女教皇と国王夫妻はマルガレーテを国に縛り付ける為、王太子であるレオナルドの婚約者に据えて、「お妃教育をこなせ」「愚民どもより我等の病を治療しろ」「瘴気を祓え」「不死王を倒せ」という風にマルガレーテをこき使っていた。
そんなある日、レオナルドは居並ぶ貴族達の前で公爵令嬢のジュリエッタ(バスト100cm以上の爆乳・KかLカップ)を妃に迎え、マルガレーテに国外追放という死刑に等しい宣言をしてしまう。
「王太子殿下の仰せに従います」
(やっと・・・アホ共から解放される。私がやっていた事が若作りのヒステリー婆・・・ではなく女教皇と何の力もない修道女共に出来る訳ないのにね~。まぁ、この国がどうなってしまっても私には関係ないからどうでもいいや)
表面は淑女の仮面を被ってレオナルドの宣言を受け入れたマルガレーテは、さっさと国を出て行く。
今までの鬱憤を晴らすかのように、着の身着のままの旅をしているマルガレーテは、故郷である幻惑の樹海へと戻っている途中で【宮女狩り】というものに遭遇してしまい、大国の後宮へと入れられてしまった。
マルガレーテが悠々自適な側室ライフを楽しんでいる頃
聖女がいなくなった王国と教会は滅亡への道を辿っていた。
いっとう愚かで、惨めで、哀れな末路を辿るはずだった令嬢の矜持
空月
ファンタジー
古くからの名家、貴き血を継ぐローゼンベルグ家――その末子、一人娘として生まれたカトレア・ローゼンベルグは、幼い頃からの婚約者に婚約破棄され、遠方の別荘へと療養の名目で送られた。
その道中に惨めに死ぬはずだった未来を、突然現れた『バグ』によって回避して、ただの『カトレア』として生きていく話。
※悪役令嬢で婚約破棄物ですが、ざまぁもスッキリもありません。
※以前投稿していた「いっとう愚かで惨めで哀れだった令嬢の果て」改稿版です。文章量が1.5倍くらいに増えています。
わがまま姉のせいで8歳で大聖女になってしまいました
ぺきぺき
ファンタジー
ルロワ公爵家の三女として生まれたクリスローズは聖女の素質を持ち、6歳で教会で聖女の修行を始めた。幼いながらも修行に励み、周りに応援されながら頑張っていたある日突然、大聖女をしていた10歳上の姉が『妊娠したから大聖女をやめて結婚するわ』と宣言した。
大聖女資格があったのは、その時まだ8歳だったクリスローズだけで…。
ー---
全5章、最終話まで執筆済み。
第1章 6歳の聖女
第2章 8歳の大聖女
第3章 12歳の公爵令嬢
第4章 15歳の辺境聖女
第5章 17歳の愛し子
権力のあるわがまま女に振り回されながらも健気にがんばる女の子の話を書いた…はず。
おまけの後日談投稿します(6/26)。
番外編投稿します(12/30-1/1)。
作者の別作品『人たらしヒロインは無自覚で魔法学園を改革しています』の隣の国の昔のお話です。
主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します
白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。
あなたは【真実の愛】を信じますか?
そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。
だって・・・そうでしょ?
ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!?
それだけではない。
何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!!
私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。
それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。
しかも!
ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!!
マジかーーーっ!!!
前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!!
思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。
世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。
辺境伯令嬢は婚約破棄されたようです
くまのこ
ファンタジー
身に覚えのない罪を着せられ、王子から婚約破棄された辺境伯令嬢は……
※息抜きに書いてみたものです※
※この作品は「ノベルアッププラス」様、「カクヨム」様、「小説家になろう」様にも掲載しています※
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる