42 / 47
42 ノマーリンの望み
しおりを挟む
「我が家は『王妃の座』に拘りは無い。ノマーリンが殿下との婚姻を望まぬのなら、私のこの首をかけてももぎ取ってこよう!」
拳を握りしめたニールデンは力強く頷いた。
そんなニールデンの様子にも理解できないという顔をするノマーリンの横にパメラは移動してノマーリンの手を握った。
「旦那様の仰ることは無視していいわ。
ノマーリン。貴女がどうしたいのか。それが一番重要なことだわ」
パメラの『ノマーリンを心配している』という様子にノマーリンはクスリと笑った。
「お母様。わたくしは大丈夫ですわ。元より、殿下の婚約者となった時から覚悟はできておりますもの」
ノマーリンはパメラを安心させるように微笑んだ。
「無理はしないで。大丈夫ではないから、ノマーリンの方から『大丈夫』という言葉が出たのではないの?」
「違いますわ。学園では多くの方がわたくしにお声をかけてくださいますの。そして最も多いお言葉が『大丈夫ですか?』なのですわ。
最近では『何がですか?』とも聞きませんの」
『うふふ』とノマーリンは本当に可笑しそうに笑った。
「『ご心配にはおよびませんよ』と答えますとみなさま、胸を撫で下ろします。
ですから、お母様がお聞きになりたいこともそうでないかと思っただけですわ」
気丈に振る舞っているような様子もないノマーリンにパメラは困り笑顔になる。
「では、何を望むのだ」
ニールデンは握っていた拳を解き、前かがみになってノマーリンへ顔を近づけ、できるだけ優しく聞こえるように声を出した。
ノマーリンが考える仕草をしたので、ニールデンもパメラもジッとノマーリンを見つめて待った。
「わたくしは……」
俯いて考えていたノマーリンが顔を上げてニールデンと目を合わせた。
「わたくしは、わたくしのお役目を懸命にさせていただくことを望んでおりますわ」
「「役目?」」
「はい。今は殿下の婚約者というお役目をいただいております。わたくしはそれに対し懸命にやってまいりました。そして、その先にある王妃というお役目を見据え、努力してきたのです」
パメラがぽろりと涙を流した。
「そうね。本当に貴女は頑張っていたわ」
「お母様。お泣きにならないで。わたくしはお役目がいただけただけて嬉しいと思っているの。
だからこそ、そのお役目をいただいた時に覚悟を決めましたのよ。
何があってもお役目を首と言われるまでは全てを受け入れる覚悟はできております」
「なぜそこまで……。
そこまでしてレンエール殿下を愛しておるのか?」
ノマーリンは困った顔を隠しもしなかった。
「わたくしが愛しているのは国民であり領民ですわ。
王子妃候補として国民を愛し、公爵令嬢として領民を愛しております。
殿下のことは……。盟友という意味では愛しておりますわね」
不思議そうな顔をするニールデンにノマーリンは笑顔を向けた。
「お父様も国民を愛していらっしゃるから頑張れるのではなくて?」
「まあ……。そうではないとは言わないが……」
「お兄様も公爵家の後継者として領民を愛していらっしゃると思いますのよ」
ノマーリンが当然とばかりに言い切った。
「ノマーリン。どうしてそこまで責任感が強いの?」
「お母様。責任感からではありませんのよ。わたくしの喜びのためですの」
ニールデンとパメラは尚更わからないという顔をした。
「わたくしは幼き頃、自分の存在意義に疑問を持っていた時期がございますの」
これにはニールデンとパメラだけでなく今まで同席していたが顔色一つ変えてこなかった老執事も目を見開いた。
ノマーリンは幼き頃の話を始めた。
拳を握りしめたニールデンは力強く頷いた。
そんなニールデンの様子にも理解できないという顔をするノマーリンの横にパメラは移動してノマーリンの手を握った。
「旦那様の仰ることは無視していいわ。
ノマーリン。貴女がどうしたいのか。それが一番重要なことだわ」
パメラの『ノマーリンを心配している』という様子にノマーリンはクスリと笑った。
「お母様。わたくしは大丈夫ですわ。元より、殿下の婚約者となった時から覚悟はできておりますもの」
ノマーリンはパメラを安心させるように微笑んだ。
「無理はしないで。大丈夫ではないから、ノマーリンの方から『大丈夫』という言葉が出たのではないの?」
「違いますわ。学園では多くの方がわたくしにお声をかけてくださいますの。そして最も多いお言葉が『大丈夫ですか?』なのですわ。
最近では『何がですか?』とも聞きませんの」
『うふふ』とノマーリンは本当に可笑しそうに笑った。
「『ご心配にはおよびませんよ』と答えますとみなさま、胸を撫で下ろします。
ですから、お母様がお聞きになりたいこともそうでないかと思っただけですわ」
気丈に振る舞っているような様子もないノマーリンにパメラは困り笑顔になる。
「では、何を望むのだ」
ニールデンは握っていた拳を解き、前かがみになってノマーリンへ顔を近づけ、できるだけ優しく聞こえるように声を出した。
ノマーリンが考える仕草をしたので、ニールデンもパメラもジッとノマーリンを見つめて待った。
「わたくしは……」
俯いて考えていたノマーリンが顔を上げてニールデンと目を合わせた。
「わたくしは、わたくしのお役目を懸命にさせていただくことを望んでおりますわ」
「「役目?」」
「はい。今は殿下の婚約者というお役目をいただいております。わたくしはそれに対し懸命にやってまいりました。そして、その先にある王妃というお役目を見据え、努力してきたのです」
パメラがぽろりと涙を流した。
「そうね。本当に貴女は頑張っていたわ」
「お母様。お泣きにならないで。わたくしはお役目がいただけただけて嬉しいと思っているの。
だからこそ、そのお役目をいただいた時に覚悟を決めましたのよ。
何があってもお役目を首と言われるまでは全てを受け入れる覚悟はできております」
「なぜそこまで……。
そこまでしてレンエール殿下を愛しておるのか?」
ノマーリンは困った顔を隠しもしなかった。
「わたくしが愛しているのは国民であり領民ですわ。
王子妃候補として国民を愛し、公爵令嬢として領民を愛しております。
殿下のことは……。盟友という意味では愛しておりますわね」
不思議そうな顔をするニールデンにノマーリンは笑顔を向けた。
「お父様も国民を愛していらっしゃるから頑張れるのではなくて?」
「まあ……。そうではないとは言わないが……」
「お兄様も公爵家の後継者として領民を愛していらっしゃると思いますのよ」
ノマーリンが当然とばかりに言い切った。
「ノマーリン。どうしてそこまで責任感が強いの?」
「お母様。責任感からではありませんのよ。わたくしの喜びのためですの」
ニールデンとパメラは尚更わからないという顔をした。
「わたくしは幼き頃、自分の存在意義に疑問を持っていた時期がございますの」
これにはニールデンとパメラだけでなく今まで同席していたが顔色一つ変えてこなかった老執事も目を見開いた。
ノマーリンは幼き頃の話を始めた。
応援ありがとうございます!
1
お気に入りに追加
411
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる