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40 ノマーリンの人気
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バザジール公爵が思い出したと、パチンと一つ手を叩く。
「ノマーリンから、レンエール殿下が望めば学園を卒業してもしばらくは勉強の時間にあててほしいと言われておりますが、いかがいたしますか?」
「よいだろう。時期はノマーリンに任せよう」
「かしこまりました。では、引き続き国政をお願いいたしますよ。両陛下」
「わかったわ」
「仕方がないのぉ」
王妃陛下が快く頷き、国王陛下がおどけ顔をした。
ネイベット侯爵は困ったような戸惑うような顔でバザジール公爵を見た。
「我々―王宮総務局―は一応婚約解消を否定しておりましたが、噂だけでもバザジール公爵家に釣書を送る者はいたのではないですか?」
ネイベット侯爵はレンエールとサビマナの噂が広まり始めたこの一年、ずっとバザジール公爵に聞きたかったことを口にした。ノマーリンの優秀さを考えれば放っておかれるとは思えなかった。
バザジール公爵はニヤリと笑う。
「ええ、いくつかはありました。もし、サビマナが優秀で王子妃を託してもよい者であったとしても、娘が行き遅れになることはなかったことは親としてホッとしましたよ」
「ちなみに、大物はありましたか?」
「そうですな。他国からもいくつかいただいております。そちらは殿下とサビマナの噂を聞きつけてのようです」
学園での様子は隠しようもないので、『婚約解消』の噂はなくともそうなったときには候補にしてほしいと願う釣書が届いていた。
バザジール公爵はさらに片方の口角を上げ、鼻を少しだけ上げる。
「一応、娘が本当に望むなら、サビマナの教育状況に関わらず、婚約解消してもいいと伝えてあったのですが、ねぇ」
「おいおいっ!」
国王陛下が狼狽える。国王陛下はこんな顔のバザジール公爵は、半分は本気だということをよく知っているのだ。
「娘が卒業式までは待つと言っておりましたので、釣書は保留にしておりますよ」
「恐ろしいことを言ってくれるなぁ。ノマーリンが頷かなくてよかったよ」
「ノマーリンには感謝しかないわね。義娘になってくれることが楽しみだわ」
「それらの釣書には早々に断りの返事をするように! これは国王命令だ」
国王陛下の冗談に声を立てて笑いが溢れた。
「ニールデン。今回のことはノマーリンが一番傷ついたであろう。すまなかったな」
「いえ、娘には最初から話をしてあります。理解した上で受け止めておりますので、問題ありません。今日はそのことで殿下と会っているはずです」
「先程私と入れ違いで殿下の執務室のお部屋にお入りになりました。それにしてもさすがにノマーリン嬢ですね。本当に優秀な方だ」
バロームは手放しでノマーリンを褒め称えた。ノマーリンの王妃教育を担当しているのもバロームの部下だ。
「辺境伯殿にもよい人材―ゾフキロ―を紹介できてよかったですよ。殿下には随分前に少し話をしただけだったのですが、ゾフキロが捕まってすぐに殿下からその職がまだ決まっていないかと問い合わせがありました。
殿下は適材適所も考えられるようになってきているようです」
バザジール公爵は嬉しそうに笑った。
「元は騎士団員から選ぶ予定であったか?」
「はい。今は前辺境伯殿の片腕と呼ばれた騎士がおりますので、彼の後継として鍛えていただけることになっております」
「ムアコル侯爵の三男坊―ゾフキロ―はそこまで優秀か?」
「ええ。殿下とサビマナの現状を分析し、離宮へ続く街に辿り着いておりますからな」
「なるほどな」
みな納得と首肯した。
「ノマーリンから、レンエール殿下が望めば学園を卒業してもしばらくは勉強の時間にあててほしいと言われておりますが、いかがいたしますか?」
「よいだろう。時期はノマーリンに任せよう」
「かしこまりました。では、引き続き国政をお願いいたしますよ。両陛下」
「わかったわ」
「仕方がないのぉ」
王妃陛下が快く頷き、国王陛下がおどけ顔をした。
ネイベット侯爵は困ったような戸惑うような顔でバザジール公爵を見た。
「我々―王宮総務局―は一応婚約解消を否定しておりましたが、噂だけでもバザジール公爵家に釣書を送る者はいたのではないですか?」
ネイベット侯爵はレンエールとサビマナの噂が広まり始めたこの一年、ずっとバザジール公爵に聞きたかったことを口にした。ノマーリンの優秀さを考えれば放っておかれるとは思えなかった。
バザジール公爵はニヤリと笑う。
「ええ、いくつかはありました。もし、サビマナが優秀で王子妃を託してもよい者であったとしても、娘が行き遅れになることはなかったことは親としてホッとしましたよ」
「ちなみに、大物はありましたか?」
「そうですな。他国からもいくつかいただいております。そちらは殿下とサビマナの噂を聞きつけてのようです」
学園での様子は隠しようもないので、『婚約解消』の噂はなくともそうなったときには候補にしてほしいと願う釣書が届いていた。
バザジール公爵はさらに片方の口角を上げ、鼻を少しだけ上げる。
「一応、娘が本当に望むなら、サビマナの教育状況に関わらず、婚約解消してもいいと伝えてあったのですが、ねぇ」
「おいおいっ!」
国王陛下が狼狽える。国王陛下はこんな顔のバザジール公爵は、半分は本気だということをよく知っているのだ。
「娘が卒業式までは待つと言っておりましたので、釣書は保留にしておりますよ」
「恐ろしいことを言ってくれるなぁ。ノマーリンが頷かなくてよかったよ」
「ノマーリンには感謝しかないわね。義娘になってくれることが楽しみだわ」
「それらの釣書には早々に断りの返事をするように! これは国王命令だ」
国王陛下の冗談に声を立てて笑いが溢れた。
「ニールデン。今回のことはノマーリンが一番傷ついたであろう。すまなかったな」
「いえ、娘には最初から話をしてあります。理解した上で受け止めておりますので、問題ありません。今日はそのことで殿下と会っているはずです」
「先程私と入れ違いで殿下の執務室のお部屋にお入りになりました。それにしてもさすがにノマーリン嬢ですね。本当に優秀な方だ」
バロームは手放しでノマーリンを褒め称えた。ノマーリンの王妃教育を担当しているのもバロームの部下だ。
「辺境伯殿にもよい人材―ゾフキロ―を紹介できてよかったですよ。殿下には随分前に少し話をしただけだったのですが、ゾフキロが捕まってすぐに殿下からその職がまだ決まっていないかと問い合わせがありました。
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バザジール公爵は嬉しそうに笑った。
「元は騎士団員から選ぶ予定であったか?」
「はい。今は前辺境伯殿の片腕と呼ばれた騎士がおりますので、彼の後継として鍛えていただけることになっております」
「ムアコル侯爵の三男坊―ゾフキロ―はそこまで優秀か?」
「ええ。殿下とサビマナの現状を分析し、離宮へ続く街に辿り着いておりますからな」
「なるほどな」
みな納得と首肯した。
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