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17 クラスの分け方
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レンエールが癇癪を起こすサビマナを諭そうとする。レンエールは最近になり勉強に口を出すようになった。教師陣もそれをすることを暗黙の了解としている。
「サビィ。学園のテストよりは簡単だろう?」
サビマナの勉強は、確かにレンエールのクラスでの勉強より格段に簡単だった。サビマナが現在学習しているのは、高位貴族が十歳くらいまでに学ぶ内容だった。
これまでサビマナのプライドを傷つけたくないと『簡単』という言葉は使わずにいたレンエールであったが、もう一ヶ月も経つのでそろそろレンエールにも我慢の限界がきていた。
『簡単』と言われてサビマナは『はあ??』と不信感を顕にする。
「学園のテストなら白紙じゃなければいいって言われているじゃないっ! ここのテストは完璧じゃなきゃダメって言われているでしょっ!」
「は……くし??」
レンエールは目をしばたかせる。
「もう! 休憩よっ! お花摘みに行くっ!」
サビマナは勢いよく立ち上がりその勢いのまま扉を出ていった。このパターンは三時間は帰ってこないだろう。トイレに一時間も籠もり、『だから疲れた』と言って部屋に二時間も籠もる。
せっかくたくさん勉強できる週末であるのに、いつもこのように潰れてしまう。
レンエールはテストについての初耳な話に驚愕して口をパカンと開けて部屋から出ていくサビマナを見送ってしまった。
そして、顔をゆっくりと後ろに向けて家庭教師役のバロームの顔を見た。バロームはレンエールの反対側の先程までサビマナが座っていた席に笑顔で座る。
「殿下はAクラスなのでご存知ないのですね。Eクラスでは白紙でなければよいと説明されておりますよ。名前が正確に書けていればよいのです」
サビマナはEクラスだ。
「は? では何のために学園にいる? 何を学園で学ぶのだ?」
「勉学の代わりに、男性なら武術や馬術など、女性なら刺繍や裁縫など。とにかく生活に直結するものが優先されます。それらの授業数が多くなっています。Aクラスにはない授業もございますよ」
「授業が違うのか?」
「はい。
殿下は、学園は成績順と思われておいででしたか?」
「そ、そうだ。とにかくAクラスでも上位であるように努力してきたし、な」
「成績順であるのはAクラスからCクラスまでです。
DクラスとEクラスは主に下位貴族の後継でなく更に王城の文官を目指さないご子息様やご令嬢様方が在席しております。
男性ですと弓術や防衛術や馭者術、女性ですと家事の授業がございます。
家を出ても生活ができるように、または家にいても何かしらの手伝いができるようにと、それらのことを学ぶのです。男性ですと騎士団や辺境軍団などへの仕事に就くことも可能です。女性ですとメイドの仕事に就くこともできます」
レンエールはバロームの話の内容には頭では納得したが、釈然とはしなかった。釈然としない理由はあきらかにサビマナだ。
「では、サビマナは学園では王子妃として……高位貴族として必要なことは学んでいないのだ……な……」
「左様でございますね。ですから、ボーラン嬢には早々に学園をお休みされ、こちらで初歩からの勉強をなさるように助言いたしました」
「え?! サビマナに説明したのか?」
「はい。しかしながら、『それでは全く自由がなくなるから嫌だ』とおっしゃり、現状となっております」
レンエールはしばらくの間テーブルの中央をジッと見て瞬きもせずに固まっていた。バロームは口角を上げ静かに待っている。
「なぁ、バローム……」
レンエールは視線を動かさずに小さな声で話始めた。
「はい。殿下」
「あと一年だ……。婚姻まであと一年……。それまでにサビィは王子妃教育が履修できると思うか?」
バロームは答えなかった。痺れを切らしたレンエールが上目遣いでバロームを見た。
バロームは笑顔のまま首を左右に振った。
予想できたバロームの反応であったが、レンエールはやはりショックを受けていた。頭をテーブルにつけて項垂れた。
「サビィ。学園のテストよりは簡単だろう?」
サビマナの勉強は、確かにレンエールのクラスでの勉強より格段に簡単だった。サビマナが現在学習しているのは、高位貴族が十歳くらいまでに学ぶ内容だった。
これまでサビマナのプライドを傷つけたくないと『簡単』という言葉は使わずにいたレンエールであったが、もう一ヶ月も経つのでそろそろレンエールにも我慢の限界がきていた。
『簡単』と言われてサビマナは『はあ??』と不信感を顕にする。
「学園のテストなら白紙じゃなければいいって言われているじゃないっ! ここのテストは完璧じゃなきゃダメって言われているでしょっ!」
「は……くし??」
レンエールは目をしばたかせる。
「もう! 休憩よっ! お花摘みに行くっ!」
サビマナは勢いよく立ち上がりその勢いのまま扉を出ていった。このパターンは三時間は帰ってこないだろう。トイレに一時間も籠もり、『だから疲れた』と言って部屋に二時間も籠もる。
せっかくたくさん勉強できる週末であるのに、いつもこのように潰れてしまう。
レンエールはテストについての初耳な話に驚愕して口をパカンと開けて部屋から出ていくサビマナを見送ってしまった。
そして、顔をゆっくりと後ろに向けて家庭教師役のバロームの顔を見た。バロームはレンエールの反対側の先程までサビマナが座っていた席に笑顔で座る。
「殿下はAクラスなのでご存知ないのですね。Eクラスでは白紙でなければよいと説明されておりますよ。名前が正確に書けていればよいのです」
サビマナはEクラスだ。
「は? では何のために学園にいる? 何を学園で学ぶのだ?」
「勉学の代わりに、男性なら武術や馬術など、女性なら刺繍や裁縫など。とにかく生活に直結するものが優先されます。それらの授業数が多くなっています。Aクラスにはない授業もございますよ」
「授業が違うのか?」
「はい。
殿下は、学園は成績順と思われておいででしたか?」
「そ、そうだ。とにかくAクラスでも上位であるように努力してきたし、な」
「成績順であるのはAクラスからCクラスまでです。
DクラスとEクラスは主に下位貴族の後継でなく更に王城の文官を目指さないご子息様やご令嬢様方が在席しております。
男性ですと弓術や防衛術や馭者術、女性ですと家事の授業がございます。
家を出ても生活ができるように、または家にいても何かしらの手伝いができるようにと、それらのことを学ぶのです。男性ですと騎士団や辺境軍団などへの仕事に就くことも可能です。女性ですとメイドの仕事に就くこともできます」
レンエールはバロームの話の内容には頭では納得したが、釈然とはしなかった。釈然としない理由はあきらかにサビマナだ。
「では、サビマナは学園では王子妃として……高位貴族として必要なことは学んでいないのだ……な……」
「左様でございますね。ですから、ボーラン嬢には早々に学園をお休みされ、こちらで初歩からの勉強をなさるように助言いたしました」
「え?! サビマナに説明したのか?」
「はい。しかしながら、『それでは全く自由がなくなるから嫌だ』とおっしゃり、現状となっております」
レンエールはしばらくの間テーブルの中央をジッと見て瞬きもせずに固まっていた。バロームは口角を上げ静かに待っている。
「なぁ、バローム……」
レンエールは視線を動かさずに小さな声で話始めた。
「はい。殿下」
「あと一年だ……。婚姻まであと一年……。それまでにサビィは王子妃教育が履修できると思うか?」
バロームは答えなかった。痺れを切らしたレンエールが上目遣いでバロームを見た。
バロームは笑顔のまま首を左右に振った。
予想できたバロームの反応であったが、レンエールはやはりショックを受けていた。頭をテーブルにつけて項垂れた。
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