上 下
24 / 57

24 アリサの反省

しおりを挟む
 テッドがパレシャにブランケットを巻いた令嬢に質問する。
 
「それよりユノラド男爵令嬢が君の顔を見て驚いていたが顔見知り以上の関係なのか?」
 
「アリサ様とご一緒の時以外に接点はございませんわ」

 不思議そうな顔で首を振るご令嬢の様子にテッドは腕組みをして顎に手を当て思案していた。

「そうか……。だがあの態度は……」

「アリサ嬢。生徒会室へ行く途中でしょう。僕もご一緒させてください」

 ケネシスがアリサに笑顔を向けた。三年Aクラスの生徒会役員はアリサとケネシスでアリサは生徒会長でBクラスに副会長がいる。ケネシスが生徒会室へ付き添うことは自然な流れである。 

「お荷物を持っていただいたままでしたわ。ごめんなさい」

 アリサが手を出すがケネシスはゆっくりと左右に首を振った。

「いえ。最初から僕も同行すべきでした。あのような危険を予測しなかった自分が情けないです。第一級危険分子が排除されたとはいえ何があるかはわかりません。第二級危険分子が追いかけてくるかもしれませんからご同行いたします」

「っ!!」
「「え?」」

 女性たちが詰まる。

「「「「「「ぶはっ!!」」」」」」
「「「「「ぷふふふ」」」」」

 テッドの友人たちも含めた男性たちは笑い出した。

「わっはっはっ!! 確かにズバニールさんが今の件を聞いて苦情を言いにくるかもしれないな。ケネシスは冗談も言えるのだな。新しい発見だ」

「テッド? 冗談ではありませんが?」

 真面目な顔のケネシスに笑っていた男性たちが顔を引きつらせた。

「ふふふ。本当にあれは危険分子ですわね。ではご一緒していただけますか?」

 兄であり公爵子息である男を「あれ」扱いしたアリサが楽しそうに笑うので皆はもう一度笑うことができた。

「もちろん喜んで。では参りましょう。
みなさん。ここまでありがとうございました」

「よし。我々は戻ろう」

 二手に別れ歩き出す。

「ケネシス様。かえってお手数をおかけして申し訳ありませんわ」

「本当にそうお考えですか?」

 ケネシスはからかうように笑顔で質問した。

「え?」

 意図がわからないアリサは首を傾げる。

「ふふふ。そのようなお姿は珍しいですね。アリサ嬢は大抵のことは理解してしまわれるから」

 アリサは頬を少し染めて俯き気味で歩いている。

「そんなことはございませんけど。確かに今ケネシス様が求めている答えがわかりませんわ」

 ケネシスは優しげに微笑む。

「からかったわけではないのですがアリサ嬢には少々反省していただきたいとは思っております」

「ええ。わかっております。あのような結果を招く対応をしたことは反省しておりますわ」

「ほら、そこが違うのですよ」

 悲しげに俯いていたアリサは頭を上げて首を傾げる。

「危険分子への対応を反省するのではなくお一人で行動され危険分子を引き寄せたことを反省していただきたいのです」

「はあ?」

 アリサは不思議なものを見るように目を瞬かせた。

「つまり……その……ぼ……僕をもっと頼ってほしいのです」

 ケネシスは頬を染め、アリサは『理解した』と顔を明るくした。

「そうですわね。ケネシス様も生徒会のメンバーなのですから頼るべきでしたわ。
次からは先にお声掛けいたしますわね」

 ………………アリサは全く理解していなかった。

「え? あぁ。まぁ……。今はそれでいいですけど」

 一歩止まってからアリサの背中を見て肩をガックリとさせ歩きだすケネシスの声はなぞが解けたつもりでスッキリした気分になっているアリサには届かなかった。

〰️ 〰️ 〰️

「アリサが水たまりに突き飛ばすほどのことをするとは思えませんが?」

 誕生パーティーの席でメイロッテはズバニールの言い分に首を傾げた。

「すべてにおいて証人は腐る程いるっ! 言い逃れするなっ!
とにかくっ! そのようなことを命じるメイロッテとの婚姻などありえない。この場で婚約は破棄だっ!」

「ズバニールさまぁ!! かっこいい!」

 ビシッとメイロッテを指差すズバニールに尚しなだれるパレシャが黄色い声を出しズバニールは鼻の下を伸ばした。

 メイロッテは閉じ扇を顎にチョンと当てて首を傾げる。

「それは不可能かと思いますが」

 二人の世界に浸るズバニールとパレシャはメイロッテの言葉を聞いていなかった。

 そこにヒーローガールが登場し皆の注目を一身に集め皆に安堵を与えた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

悪役令嬢のいない乙女ゲームに転生しました

かぜかおる
ファンタジー
悪役令嬢のいない乙女ゲームに転生しました!しかもサポートキャラ!! 特等席で恋愛模様を眺められると喜んだものの・・・ なろうでも公開中

普段は地味子。でも本当は凄腕の聖女さん〜地味だから、という理由で聖女ギルドを追い出されてしまいました。私がいなくても大丈夫でしょうか?〜

神伊 咲児
ファンタジー
主人公、イルエマ・ジミィーナは16歳。 聖女ギルド【女神の光輝】に属している聖女だった。 イルエマは眼鏡をかけており、黒髪の冴えない見た目。 いわゆる地味子だ。 彼女の能力も地味だった。 使える魔法といえば、聖女なら誰でも使えるものばかり。回復と素材進化と解呪魔法の3つだけ。 唯一のユニークスキルは、ペンが無くても文字を書ける光魔字。 そんな能力も地味な彼女は、ギルド内では裏方作業の雑務をしていた。 ある日、ギルドマスターのキアーラより、地味だからという理由で解雇される。 しかし、彼女は目立たない実力者だった。 素材進化の魔法は独自で改良してパワーアップしており、通常の3倍の威力。 司祭でも見落とすような小さな呪いも見つけてしまう鋭い感覚。 難しい相談でも難なくこなす知識と教養。 全てにおいてハイクオリティ。最強の聖女だったのだ。 彼女は新しいギルドに参加して順風満帆。 彼女をクビにした聖女ギルドは落ちぶれていく。 地味な聖女が大活躍! 痛快ファンタジーストーリー。 全部で5万字。 カクヨムにも投稿しておりますが、アルファポリス用にタイトルも含めて改稿いたしました。 HOTランキング女性向け1位。 日間ファンタジーランキング1位。 日間完結ランキング1位。 応援してくれた、みなさんのおかげです。 ありがとうございます。とても嬉しいです!

お姉さまから婚約者を奪って、幸せにしてみせますわ!

歩芽川ゆい
ファンタジー
「ごめんね、お姉さま、婚約者を奪っちゃって♪」 ラクリマンドは姉であるカンティレーナに満面の笑顔で言った。  姉はこの国の皇太子と婚約をしていた。しかし王妃教育を受けてからの姉は、優秀だったはずなのにその教育についていけていないようだ。また皇太子も姉のことを好きなのかどうかわからない。  自慢の姉が不幸になっていくのを見ていられない!  妹である自分が婚約者になれば、きっと全員幸せになるに違いない。  そのためなら悪役にだってなってみせる!  妹の奮闘記です。

いっとう愚かで、惨めで、哀れな末路を辿るはずだった令嬢の矜持

空月
ファンタジー
古くからの名家、貴き血を継ぐローゼンベルグ家――その末子、一人娘として生まれたカトレア・ローゼンベルグは、幼い頃からの婚約者に婚約破棄され、遠方の別荘へと療養の名目で送られた。 その道中に惨めに死ぬはずだった未来を、突然現れた『バグ』によって回避して、ただの『カトレア』として生きていく話。 ※悪役令嬢で婚約破棄物ですが、ざまぁもスッキリもありません。 ※以前投稿していた「いっとう愚かで惨めで哀れだった令嬢の果て」改稿版です。文章量が1.5倍くらいに増えています。

はじまりは初恋の終わりから~

秋吉美寿
ファンタジー
主人公イリューリアは、十二歳の誕生日に大好きだった初恋の人に「わたしに近づくな!おまえなんか、大嫌いだ!」と心無い事を言われ、すっかり自分に自信を無くしてしまう。 心に深い傷を負ったイリューリアはそれ以来、王子の顔もまともに見れなくなってしまった。 生まれながらに王家と公爵家のあいだ、内々に交わされていた婚約もその後のイリューリアの王子に怯える様子に心を痛めた王や公爵は、正式な婚約発表がなされる前に婚約をなかった事とした。 三年後、イリューリアは、見違えるほどに美しく成長し、本人の目立ちたくないという意思とは裏腹に、たちまち社交界の花として名を馳せてしまう。 そして、自分を振ったはずの王子や王弟の将軍がイリューリアを取りあい、イリューリアは戸惑いを隠せない。 「王子殿下は私の事が嫌いな筈なのに…」 「王弟殿下も、私のような冴えない娘にどうして?」 三年もの間、あらゆる努力で自分を磨いてきたにも関わらず自信を持てないイリューリアは自分の想いにすら自信をもてなくて…。

ぽっちゃり令嬢の異世界カフェ巡り~太っているからと婚約破棄されましたが番のモフモフ獣人がいるので貴方のことはどうでもいいです~

碓氷唯
ファンタジー
幼い頃から王太子殿下の婚約者であることが決められ、厳しい教育を施されていたアイリス。王太子のアルヴィーンに初めて会ったとき、この世界が自分の読んでいた恋愛小説の中で、自分は主人公をいじめる悪役令嬢だということに気づく。自分が追放されないようにアルヴィーンと愛を育もうとするが、殿下のことを好きになれず、さらに自宅の料理長が作る料理が大量で、残さず食べろと両親に言われているうちにぶくぶくと太ってしまう。その上、両親はアルヴィーン以外の情報をアイリスに入れてほしくないがために、アイリスが学園以外の外を歩くことを禁止していた。そして十八歳の冬、小説と同じ時期に婚約破棄される。婚約破棄の理由は、アルヴィーンの『運命の番』である兎獣人、ミリアと出会ったから、そして……豚のように太っているから。「豚のような女と婚約するつもりはない」そう言われ学園を追い出され家も追い出されたが、アイリスは内心大喜びだった。これで……一人で外に出ることができて、異世界のカフェを巡ることができる!?しかも、泣きながらやっていた王太子妃教育もない!?カフェ巡りを繰り返しているうちに、『運命の番』である狼獣人の騎士団副団長に出会って……

辺境伯令嬢は婚約破棄されたようです

くまのこ
ファンタジー
身に覚えのない罪を着せられ、王子から婚約破棄された辺境伯令嬢は…… ※息抜きに書いてみたものです※ ※この作品は「ノベルアッププラス」様、「カクヨム」様、「小説家になろう」様にも掲載しています※

『絶対に許さないわ』 嵌められた公爵令嬢は自らの力を使って陰湿に復讐を遂げる

黒木  鳴
ファンタジー
タイトルそのまんまです。殿下の婚約者だった公爵令嬢がありがち展開で冤罪での断罪を受けたところからお話しスタート。将来王族の一員となる者として清く正しく生きてきたのに悪役令嬢呼ばわりされ、復讐を決意して行動した結果悲劇の令嬢扱いされるお話し。

処理中です...