10 / 57
10 よるコン
しおりを挟む
『夜空の星たちのコンチェルト』、通称『よるコン』。日本という世界で人気をはくした恋愛シュミレーションゲームである。
ヒロインの男爵令嬢が家の成り上がりを経て有名貴族学園へ転校することになりその学園で恋をしていくゲームだ。ヒロインパレシャの艶めく藍色の髪を夜空、その恋愛対象を星として比喩しているだけあり映像が美しく大変に人気を博した。
「これってま、さ、にっ! 男爵家成り上がり前ってことよね! なら早く鉄鋼石鉱山探さなくちゃ! そうすれば早く王都学園に行けるじゃん。
えー、でもお父さんになんて言って探してもらえばいいのかなぁ??
前世を思い出したら領地に鉱山があるってことも思い出した? そんなこと言えないよぉ」
成り上がるべくパレシャが必死に頭を回転させたが慣れないことしたため五分で眠ってしまっていた。
朝になると宿の中がとても騒がしくなっていて目を覚ます。
「もうなんなのよぉ。ゆっくり寝させてよぉ」
目を擦りながら廊下に出るとメイドが慌てて駆けつけた。
「パレシャお嬢様。ここはお屋敷ではございません。そのようなお姿で出てはいけませんわ」
パレシャが自分の姿を確認すると寝間着であった。
「あ、うん、そうだね。着替えてくる」
お姫様のように育てられたと言っても本当に高位貴族家のお姫様なわけではない。家の使用人は執事が一人とメイドが二人に調理人が一人。普段から自分のことは自分でやっている。
手際よくワンピースに着替えて藍色の髪をツインテールに結び編み上げブーツを履いて部屋の外へ出た。
宿の食堂へ向かうも慌ただしさを感じた。
料理を運んできた宿の女将に聞く。
「ねえ。何があったの? お父さんたちはどこ?」
「よくわかりませんが別のお部屋を応接室代わりに使うとかでテーブルをいくつか運びましたよ。何でも宝物が見つかったとか」
女将は忙しいようで早口で知っていることをしゃべるとすぐに厨房へ消えた。
「宝物ってなんだろう? 早く食べなくちゃ!」
パレシャは貴族令嬢らしからぬ勢いで朝食を平らげると騒がしさの中心と思われる部屋に乗り込んだ。
バンっ!! っと大きな音を立ててドアを開けると、部屋にいる者たちの視線が一斉にパレシャに向けられた。
「おお! パレシャ。目を覚ましたのかい?」
父親男爵が嬉しそうに笑って気遣い、母親男爵夫人はすぐさま駆けつけてきた。
「パレシャ。昨日ぶつけてしまったところは大丈夫なの? どれ? 見せてごらん。
ああ、まだコブになっているわね。でも傷にはなっていないようだわ。本当によかった」
「パレシャ。父さんたちは少々難しい話をしているのだ。メイドを付かせるからお庭で遊んでいてくれるかい?」
「パレシャもお話を一緒に聞きたいです。宝物のお話なんでしょう?」
パレシャは仲間外れにされそうになったことに不満を持ち頬を膨らませた。
「パレシャがつまらなくないのなら構わないよ」
兄小男爵がパレシャを手招きしたのでパレシャは走ってそこへいき飛び跳ねるように隣に座った。
兄小男爵はコブになっていないところを見定めて頭を撫でながらパレシャを気遣う言葉をかけた。
「お兄ちゃん、もう大丈夫よ。それより宝物を見せて」
前のめりに聞くと兄小男爵は苦笑いして前を指さした。
「きっとこれのことだろうけどまだ宝物かどうかはわからないのだよ」
父親男爵が説明したのがソファーテーブルに乗るこぶし大の茶色い石ことだったからパレシャは気が抜けてソファーに背を寄りかからせた。
「なあんだ。宝石か何かかと思っちゃった」
「あはは。だからお庭で遊んでおいでと言っただろう」
「でもこれのどこか宝物かもしれないの?」
「この石は貴女を護衛していた者が貴女が倒れていたところにあったというの。その護衛は民間の職業護衛でいろいろな街を転々としているのですって。それで他の領地でこれと似たような物を見たことがあるそうなのよ」
「似たようなものって?」
「その者が言うには鉄鉱石じゃないかというのだ」
「えーーー!!!!」
パレシャが勢いよく立ち上がる。
「それなら絶対に鉄鉱石だよ! その人は今どこにいるの?」
水色の瞳がキラキラと輝いていた。
ヒロインの男爵令嬢が家の成り上がりを経て有名貴族学園へ転校することになりその学園で恋をしていくゲームだ。ヒロインパレシャの艶めく藍色の髪を夜空、その恋愛対象を星として比喩しているだけあり映像が美しく大変に人気を博した。
「これってま、さ、にっ! 男爵家成り上がり前ってことよね! なら早く鉄鋼石鉱山探さなくちゃ! そうすれば早く王都学園に行けるじゃん。
えー、でもお父さんになんて言って探してもらえばいいのかなぁ??
前世を思い出したら領地に鉱山があるってことも思い出した? そんなこと言えないよぉ」
成り上がるべくパレシャが必死に頭を回転させたが慣れないことしたため五分で眠ってしまっていた。
朝になると宿の中がとても騒がしくなっていて目を覚ます。
「もうなんなのよぉ。ゆっくり寝させてよぉ」
目を擦りながら廊下に出るとメイドが慌てて駆けつけた。
「パレシャお嬢様。ここはお屋敷ではございません。そのようなお姿で出てはいけませんわ」
パレシャが自分の姿を確認すると寝間着であった。
「あ、うん、そうだね。着替えてくる」
お姫様のように育てられたと言っても本当に高位貴族家のお姫様なわけではない。家の使用人は執事が一人とメイドが二人に調理人が一人。普段から自分のことは自分でやっている。
手際よくワンピースに着替えて藍色の髪をツインテールに結び編み上げブーツを履いて部屋の外へ出た。
宿の食堂へ向かうも慌ただしさを感じた。
料理を運んできた宿の女将に聞く。
「ねえ。何があったの? お父さんたちはどこ?」
「よくわかりませんが別のお部屋を応接室代わりに使うとかでテーブルをいくつか運びましたよ。何でも宝物が見つかったとか」
女将は忙しいようで早口で知っていることをしゃべるとすぐに厨房へ消えた。
「宝物ってなんだろう? 早く食べなくちゃ!」
パレシャは貴族令嬢らしからぬ勢いで朝食を平らげると騒がしさの中心と思われる部屋に乗り込んだ。
バンっ!! っと大きな音を立ててドアを開けると、部屋にいる者たちの視線が一斉にパレシャに向けられた。
「おお! パレシャ。目を覚ましたのかい?」
父親男爵が嬉しそうに笑って気遣い、母親男爵夫人はすぐさま駆けつけてきた。
「パレシャ。昨日ぶつけてしまったところは大丈夫なの? どれ? 見せてごらん。
ああ、まだコブになっているわね。でも傷にはなっていないようだわ。本当によかった」
「パレシャ。父さんたちは少々難しい話をしているのだ。メイドを付かせるからお庭で遊んでいてくれるかい?」
「パレシャもお話を一緒に聞きたいです。宝物のお話なんでしょう?」
パレシャは仲間外れにされそうになったことに不満を持ち頬を膨らませた。
「パレシャがつまらなくないのなら構わないよ」
兄小男爵がパレシャを手招きしたのでパレシャは走ってそこへいき飛び跳ねるように隣に座った。
兄小男爵はコブになっていないところを見定めて頭を撫でながらパレシャを気遣う言葉をかけた。
「お兄ちゃん、もう大丈夫よ。それより宝物を見せて」
前のめりに聞くと兄小男爵は苦笑いして前を指さした。
「きっとこれのことだろうけどまだ宝物かどうかはわからないのだよ」
父親男爵が説明したのがソファーテーブルに乗るこぶし大の茶色い石ことだったからパレシャは気が抜けてソファーに背を寄りかからせた。
「なあんだ。宝石か何かかと思っちゃった」
「あはは。だからお庭で遊んでおいでと言っただろう」
「でもこれのどこか宝物かもしれないの?」
「この石は貴女を護衛していた者が貴女が倒れていたところにあったというの。その護衛は民間の職業護衛でいろいろな街を転々としているのですって。それで他の領地でこれと似たような物を見たことがあるそうなのよ」
「似たようなものって?」
「その者が言うには鉄鉱石じゃないかというのだ」
「えーーー!!!!」
パレシャが勢いよく立ち上がる。
「それなら絶対に鉄鉱石だよ! その人は今どこにいるの?」
水色の瞳がキラキラと輝いていた。
24
お気に入りに追加
233
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
【 完 結 】スキル無しで婚約破棄されたけれど、実は特殊スキル持ちですから!
しずもり
ファンタジー
この国オーガスタの国民は6歳になると女神様からスキルを授かる。
けれど、第一王子レオンハルト殿下の婚約者であるマリエッタ・ルーデンブルグ公爵令嬢は『スキル無し』判定を受けたと言われ、第一王子の婚約者という妬みや僻みもあり嘲笑されている。
そしてある理由で第一王子から蔑ろにされている事も令嬢たちから見下される原因にもなっていた。
そして王家主催の夜会で事は起こった。
第一王子が『スキル無し』を理由に婚約破棄を婚約者に言い渡したのだ。
そして彼は8歳の頃に出会い、学園で再会したという初恋の人ルナティアと婚約するのだと宣言した。
しかし『スキル無し』の筈のマリエッタは本当はスキル持ちであり、実は彼女のスキルは、、、、。
全12話
ご都合主義のゆるゆる設定です。
言葉遣いや言葉は現代風の部分もあります。
登場人物へのざまぁはほぼ無いです。
魔法、スキルの内容については独自設定になっています。
誤字脱字、言葉間違いなどあると思います。見つかり次第、修正していますがご容赦下さいませ。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
モブで可哀相? いえ、幸せです!
みけの
ファンタジー
私のお姉さんは“恋愛ゲームのヒロイン”で、私はゲームの中で“モブ”だそうだ。
“あんたはモブで可哀相”。
お姉さんはそう、思ってくれているけど……私、可哀相なの?
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
魔法の数はステータス!? 転移した先は女性ばかりが魔法を使う世界!
三原みぱぱ
ファンタジー
ある日、剣と魔法のファンタジー世界に放り込まれた竜ヶ峰清人(リュウガミネ キヨト)。
美少女レイティアが嫁として現れる。
しかし、そんな甘い事ばかりではない。
強力な魔法が使えるのは女性のみ!
使える魔法の数がステータス(社会的地位)となる女性が強い世界。
男は守られるべき存在のこの世界で、魔法も剣も使えない主人公。
モンスターと戦えば足手まといと怒られ、街中で暴漢を止めようとするとぼこぼこにされる。
そんな俺Yoeee主人公は、金髪美少女のレイティアに恋人として認められるのか?
師匠である剣豪ムサシマル助けられながら、恋のライバル、アレックスやソフィアを交えて進む、ラブコメファンタジー!
感想、心よりお待ちしております。
完結しました!
ノベルアッププラスで「ゼロの転移者」としてリニューアル連載していますよ。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
今度生まれ変わることがあれば・・・全て忘れて幸せになりたい。・・・なんて思うか!!
れもんぴーる
ファンタジー
冤罪をかけられ、家族にも婚約者にも裏切られたリュカ。
父に送り込まれた刺客に殺されてしまうが、なんと自分を陥れた兄と裏切った婚約者の一人息子として生まれ変わってしまう。5歳になり、前世の記憶を取り戻し自暴自棄になるノエルだったが、一人一人に復讐していくことを決めた。
メイドしてはまだまだなメイドちゃんがそんな悲しみを背負ったノエルの心を支えてくれます。
復讐物を書きたかったのですが、生ぬるかったかもしれません。色々突っ込みどころはありますが、おおらかな気持ちで読んでくださると嬉しいです(*´▽`*)
*なろうにも投稿しています
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
【本編完結】ただの平凡令嬢なので、姉に婚約者を取られました。
138ネコ@書籍化&コミカライズしました
ファンタジー
「誰にも出来ないような事は求めないから、せめて人並みになってくれ」
お父様にそう言われ、平凡になるためにたゆまぬ努力をしたつもりです。
賢者様が使ったとされる神級魔法を会得し、復活した魔王をかつての勇者様のように倒し、領民に慕われた名領主のように領地を治めました。
誰にも出来ないような事は、私には出来ません。私に出来るのは、誰かがやれる事を平凡に努めてきただけ。
そんな平凡な私だから、非凡な姉に婚約者を奪われてしまうのは、仕方がない事なのです。
諦めきれない私は、せめて平凡なりに仕返しをしてみようと思います。
白い結婚を言い渡されたお飾り妻ですが、ダンジョン攻略に励んでいます
時岡継美
ファンタジー
初夜に旦那様から「白い結婚」を言い渡され、お飾り妻としての生活が始まったヴィクトリアのライフワークはなんとダンジョンの攻略だった。
侯爵夫人として最低限の仕事をする傍ら、旦那様にも使用人たちにも内緒でダンジョンのラスボス戦に向けて準備を進めている。
しかし実は旦那様にも何やら秘密があるようで……?
他サイトでは「お飾り妻の趣味はダンジョン攻略です」のタイトルで公開している作品を加筆修正しております。
誤字脱字報告ありがとうございます!
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
異世界転移聖女の侍女にされ殺された公爵令嬢ですが、時を逆行したのでお告げと称して聖女の功績を先取り実行してみた結果
富士とまと
恋愛
公爵令嬢が、異世界から召喚された聖女に婚約者である皇太子を横取りし婚約破棄される。
そのうえ、聖女の世話役として、侍女のように働かされることになる。理不尽な要求にも色々耐えていたのに、ある日「もう飽きたつまんない」と聖女が言いだし、冤罪をかけられ牢屋に入れられ毒殺される。
死んだと思ったら、時をさかのぼっていた。皇太子との関係を改めてやり直す中、聖女と過ごした日々に見聞きした知識を生かすことができることに気が付き……。殿下の呪いを解いたり、水害を防いだりとしながら過ごすあいだに、運命の時を迎え……え?ええ?
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
ドアマット扱いを黙って受け入れろ?絶対嫌ですけど。
よもぎ
ファンタジー
モニカは思い出した。わたし、ネットで読んだドアマットヒロインが登場する作品のヒロインになってる。このままいくと壮絶な経験することになる…?絶対嫌だ。というわけで、回避するためにも行動することにしたのである。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる