上 下
10 / 10

10.

しおりを挟む
後日談で教えてもらった話だが、もともとフレリー様は私のことを好きで、婚約者にしたいと親に願い出てくれてたらしい。
私も候補者の一人……いや既に公爵夫妻とフレリーのなかでは決定事項で話を進めようとした矢先に私があんな醜態をさらしていかにフレリー様を愛してるのかを語ったから………今の状況になったみたい。

知ってしまった私は、羞恥に悶絶して眠れるはずもなく夜な夜な転げ回っていた。

「あああああぁぁぁ、私蛙のようになってたよね?フレリー様のこと好きだと語ってたよね?ぎゃぁぁ。」

そう、今さら恥ずかしがっても後の祭りだ。
あんな姿みてても私を婚約者にしてくれたフレリー様は優しすぎる。

思い出しては悶絶して………の繰り返しで朝を迎えてしまった。



「リンネ眠れなかった?」

目を擦りながら生欠伸をしていた私を心配そうに覗き込んできた隣に座ってるフレリー様。

「いっいえ、フレリー様の婚約者になれたことが夢見たいでずっと噛み締めてて寝れなかったんです。」

「可愛いなぁ~リンネは。これからは堂々と言えるから俺も嬉しいよ。」

なんですかなんですかその笑顔は。
朝からとろけるような笑顔でそんな言葉を言って私を殺す気?!
心臓の音がフレリー様に聞こえるくらいの大爆音でなってるよ。

「もう俺の前では取り繕わなくていいよ。素のままのリンネを見せて。」

「えっ………気づいてたんですか……私フレリー様に嫌われたくない。」

素を見せると引かれそう。
だって私の頭の中でフレリー様をどんな風に考えてたかわかってしまうと変態に思われてしまう。

「小さい頃からずっとリンネを見てきたのに俺が素を知らないとでも?オーレンと三人でお茶会した時も俺の使用したスプーンをそっと自分の懐に入れてたね。走り回って汗かいた時もハンカチで拭ってそれを後で嗅いでたろ。他にもいろいろあるけど、リンネが俺をどれだけ好きなのか知ってるから安心して。」

絶句である。
まさかまさかフレリー様にバレてたなんて………。

「そんなことまで……フレリー妹がすまん。………変態じゃないか。よくそれでフレリーも引かなかったな。」

ジトーと妹を見る目じゃない目でオーレンお兄様に見られる。
やり過ぎてた?

「へっ変態かもしれないけど、誰にもしないしフレリー様にだけだから……それにそれだけ好きなんです。近づくと長年嗅いでたフレリー様の匂いをお腹いっぱいになるまで吸い込み、寝る前には抱き締められた時の胸筋を合わせて思い出し眠りにつく。朝にはフレリー様の使ったハンカチを袋から出し朝の深呼吸と共に嗅ぐ習慣は目を覚ます日課です。フレリー様のことを考えるだけで転げ回ってるのに、目の前にいる時に抱きつきたい衝動を押さえるのに必死でした。……まだまだ私のフレリー様への愛を語るのは足りないですが、こんな私でもいいんですか?」


「「…………….。」」


へっ返事がない。
ヤバイ、引かれたかな?
涙目になりながら目の前に座ってるオーレンお兄様と隣のフレリー様を見てると、

「リン………何てことしてるんだ。」

「ふははははっ。リンネの愛を感じれていいな。」

声に出して笑ってるフレリー様を久し振りにみた。
ここまで笑うのはオーレンお兄様と私の前だけ……特別に思ってくれてると昔からそれが嬉しかった。

「ひっ引かないでくださいね。」

「リン、ほどほどにな。」

「これからは今までよりも側にいるからいつでもどうぞ。」

ネクタイを緩めてチラッと素肌を見せてくるフレリー様。
なっなっなっなにをいつでもいいの??
見ること?嗅ぐこと?触ること?

「全部いいよ。」

「きゃぁぁ。ここここ声にででしたか?」

「リンネは顔に出ててわかりやすいな。」

朝からその色っぽい熱を帯びた瞳は反則だよ。


「俺がいるのわかってて朝から甘すぎだろ。早くついてくれ。。」



クラスに初めてそのままの姿で登場したら、クラスメイトにまた驚かれた。
いや、パーティで正体言ったじゃん。

令嬢達はポッと頬を赤くしてることから私を送ってくれたオーレンお兄様とフレリー様に見とれてるんだろう。
令息達は頬を赤く染めてる人はまだしもにやにやと全身を見てくる方もいて不愉快だ。

「また、迎えに来るな。」

教室だというのに、みんなの前だというのに、私の頬にチュッとフレリー様の唇が触れ、キャーと黄色い声援が一気に解き放たれる。


「フレリー、そんなタイプだったんだな。令息達、お前の牽制で顔が真っ青だ。」

オーレンお兄様がクスクス笑いながら呟いていた声を私は聞こえてなかった。
なぜなら、私の顔は真っ赤になりフレリー様の唇の柔らかさで頭がいっぱいだった。




「ええっ?留学されたんですか?」

「そうなんです。急に隣国への留学が決まってその次の日には移動されたらしいですわ。急ですわね~。」

メイが嬉しそうに話してくる。
よっぽどウザかったんだろうな。

「なんでも、隣国の第三王女との婚約も含めて向こうでの文化を学ぶという名目らしいですわ。ですからもしかすると二度と戻ってこないでしょうね。」

ファイの侯爵家は情報通だから、二度と帰ってこないと言うってことはなにかわけがあるんだろうな。

「ふふ。不思議そうな顔をしてますわね。そうですわね~これはここだけの一人言ですが、隣国の第三王女と言えば男漁りが大好きで自分の好みの男性を近衛騎士に抜擢して侍らせておりますの。その中の人とも関係があるとかないとか………ようは第二王子と似ておりお似合いですわ。ただ、第三王女は少々とは聞いておりますが。」

なるほど。
赤髪野郎も少しは大人しくなるのかな。
もう忘れよう。
好きな人の婚約者になったんだから、楽しまなくちゃ。

「そ・れ・よ・り・も、リンネットの恋話を聞きたいですわ。」

ニヤニヤしながらメイが突っ込んでくる。
それに私が鼻の下を伸ばしながら話し出す。







「フレリーは怖いな。リンのことで、第二王子を国外追放にもっていっただろ。」

「ん?なんのことかな?」

「とぼけるなよ、リンに二度と近づけないように隣国の第三王女とくっつけただろ……どんなコネを使ったのか知らないが恐ろしいよ。」

「ふっ。まだ諦めてなかったみたいでリンネを奪い取る計画をたてていたから行動したまでだ。邪魔なものは視界に入れたくないからな。」

「俺としても不安要素がなくなるのは嬉しいが……第三王女の噂はあまりよろしくないから過酷な運命になるのがわかっていて少し可哀想になったよ。それに、あのサンサ男爵令嬢も第二王子と関わったばかりにもう社交界には復帰できないな。」

「ああ、あれか。リンネが逆恨みされると困るから辺境のおじい様変態親父の後妻にと提案したんだ。」

……ねぇ。」

「どうせ、あんな醜体を晒したんだ。誰も立候補しないだろ。嫁ぎ先を提案したんだ、優しいだろ?」

「本当、お前を敵に回したくないよ。」
しおりを挟む

この作品は感想を受け付けておりません。

あなたにおすすめの小説

【完結】婚約者が好きなのです

maruko
恋愛
リリーベルの婚約者は誰にでも優しいオーラン・ドートル侯爵令息様。 でもそんな優しい婚約者がたった一人に対してだけ何故か冷たい。 冷たくされてるのはアリー・メーキリー侯爵令嬢。 彼の幼馴染だ。 そんなある日。偶然アリー様がこらえきれない涙を流すのを見てしまった。見つめる先には婚約者の姿。 私はどうすればいいのだろうか。 全34話(番外編含む) ※他サイトにも投稿しております ※1話〜4話までは文字数多めです 注)感想欄は全話読んでから閲覧ください(汗)

断る――――前にもそう言ったはずだ

鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」  結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。  周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。  けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。  他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。 (わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)  そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。  ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。  そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?

愛なんてどこにもないと知っている

紫楼
恋愛
 私は親の選んだ相手と政略結婚をさせられた。  相手には長年の恋人がいて婚約時から全てを諦め、貴族の娘として割り切った。  白い結婚でも社交界でどんなに噂されてもどうでも良い。  結局は追い出されて、家に帰された。  両親には叱られ、兄にはため息を吐かれる。  一年もしないうちに再婚を命じられた。  彼は兄の親友で、兄が私の初恋だと勘違いした人。  私は何も期待できないことを知っている。  彼は私を愛さない。 主人公以外が愛や恋に迷走して暴走しているので、主人公は最後の方しか、トキメキがないです。  作者の脳内の世界観なので現実世界の法律や常識とは重ねないでお読むください。  誤字脱字は多いと思われますので、先にごめんなさい。 他サイトにも載せています。

行き場を失った恋の終わらせ方

当麻月菜
恋愛
「君との婚約を白紙に戻してほしい」  自分の全てだったアイザックから別れを切り出されたエステルは、どうしてもこの恋を終わらすことができなかった。  避け続ける彼を求めて、復縁を願って、あの日聞けなかった答えを得るために、エステルは王城の夜会に出席する。    しかしやっと再会できた、そこには見たくない現実が待っていて……  恋の終わりを見届ける貴族青年と、行き場を失った恋の中をさ迷う令嬢の終わりと始まりの物語。 ※他のサイトにも重複投稿しています。

この度、皆さんの予想通り婚約者候補から外れることになりました。ですが、すぐに結婚することになりました。

鶯埜 餡
恋愛
 ある事件のせいでいろいろ言われながらも国王夫妻の働きかけで王太子の婚約者候補となったシャルロッテ。  しかし当の王太子ルドウィックはアリアナという男爵令嬢にべったり。噂好きな貴族たちはシャルロッテに婚約者候補から外れるのではないかと言っていたが

愛のない貴方からの婚約破棄は受け入れますが、その不貞の代償は大きいですよ?

日々埋没。
恋愛
 公爵令嬢アズールサは隣国の男爵令嬢による嘘のイジメ被害告発のせいで、婚約者の王太子から婚約破棄を告げられる。 「どうぞご自由に。私なら傲慢な殿下にも王太子妃の地位にも未練はございませんので」  しかし愛のない政略結婚でこれまで冷遇されてきたアズールサは二つ返事で了承し、晴れて邪魔な婚約者を男爵令嬢に押し付けることに成功する。 「――ああそうそう、殿下が入れ込んでいるそちらの彼女って実は〇〇ですよ? まあ独り言ですが」  嘘つき男爵令嬢に騙された王太子は取り返しのつかない最期を迎えることになり……。    ※この作品は過去に公開したことのある作品に修正を加えたものです。  またこの作品とは別に、他サイトでも本作を元にしたリメイク作を別のペンネー厶で公開していますがそのことをあらかじめご了承ください。

王太子殿下から婚約破棄されたのは冷たい私のせいですか?

ねーさん
恋愛
 公爵令嬢であるアリシアは王太子殿下と婚約してから十年、王太子妃教育に勤しんで来た。  なのに王太子殿下は男爵令嬢とイチャイチャ…諫めるアリシアを悪者扱い。「アリシア様は殿下に冷たい」なんて男爵令嬢に言われ、結果、婚約は破棄。    王太子妃になるため自由な時間もなく頑張って来たのに、私は駒じゃありません!

二度目の婚約者には、もう何も期待しません!……そう思っていたのに、待っていたのは年下領主からの溺愛でした。

当麻月菜
恋愛
フェルベラ・ウィステリアは12歳の時に親が決めた婚約者ロジャードに相応しい女性になるため、これまで必死に努力を重ねてきた。 しかし婚約者であるロジャードはあっさり妹に心変わりした。 最後に人間性を疑うような捨て台詞を吐かれたフェルベラは、プツンと何かが切れてロジャードを回し蹴りしをかまして、6年という長い婚約期間に終止符を打った。 それから三ヶ月後。島流し扱いでフェルベラは岩山ばかりの僻地ルグ領の領主の元に嫁ぐ。愛人として。 婚約者に心変わりをされ、若い身空で愛人になるなんて不幸だと泣き崩れるかと思いきや、フェルベラの心は穏やかだった。 だって二度目の婚約者には、もう何も期待していないから。全然平気。 これからの人生は好きにさせてもらおう。そう決めてルグ領の領主に出会った瞬間、期待は良い意味で裏切られた。

処理中です...