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第一章 ヒロイン編

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「リティ、無事でよかったわ。」
「リティ、心配したぞ。」
「リティ、会いたかった。」

私が部屋にはいるなり駆け寄ってきてお母様とお父様それにクラリスお兄様から抱き締められた。

「心配掛けちゃってごめんなさい。私も油断してしまって………。」

心配掛けてしまっていたことはわかっていたが改めて私の不甲斐なさで申し訳なかったなと痛感しました。

「よく顔を見せて。何処か怪我してるって聞いたけど大丈夫なの?」

私の頬を両手で包んで心配そうな顔で覗き込まれた。

「最初は痛みましたが今はほとんどアザも消えて痛みもほぼありませんわ。心配掛けて本当にごめんなさい。」

「ファシリック公爵夫妻、リティのことは問題ない。アザも薄れてきて残らないだろう。が。」

カルの言葉に皆が固まってしまったわ。
何てことを言うんですか!
その言い方だと私の身体をいつも見ていると言ってるようなものです。
さすがに両親やクラリスお兄様にこんなにはっきりと言われて自分の顔が熱を持っていくのがわかる。

「とりあえず座ろうか。」

なんともいえない雰囲気をクラリスお兄様が助けてくれた。
もう、家族の前だからこそ羞恥心が半端ないですわ。でも………

「ふふふ。カルティド殿下にとても可愛がられていて幸せね。」

そうですよね。
お母様はそういうと思ってましたわ。
お父様は隣で気むずかしい顔をしてます。
そうでしょうね、普通娘のそんな話を聞きたくはないでしょう。
でも、カル皇太子だから言えないんだろうけれど。
クラリスお兄様はたぶんわかってたでしょう……私の両親の前でも平然と言うカルだからクラリスお兄様には遠慮なしに伝えてるだろう。
言わないで!!とは言えないけれどクラリスお兄様にそういうことを知られるのは複雑ですわ。

「元気そうでよかったよ。カルティドから話は聞いていたんだが会うと安心するな。リティに何かあるとカルティドが荒れるからあまり無理はしないようにな。」

遠い目をしたクラリスお兄様を見てるとわかってしまいます。
そうですか。やはりカルは私がいなくなってめちゃくちゃ荒れたのですね。クラリスお兄様の言葉から助け出されてから私の傷やアザがよくなるまで私には見せないカルのイラつきがあったのですね。
周りの皆様にまで影響を与えてしまってすみません。
カルのためにもしっかり自分の身を守らねばなりませんわ。

「それで、いつ帰ってくるんだ??」

「えっーーーーと……………。」

それは私も考えなかったわけではありませんが、なんとなくカルを見ていると今言うべきではないと思っておりました。
それに私もカルと離れたくなかったと言うのも本音です。

「まだリティは。と言うのもがまた来てるだろう?」

「……………マシューリ・ダルニア殿下ですか。なるほど、そういうことでしたか。ではご存知ですか?」

「もちろん。公爵がしてくれているから俺からは何もしてないが、仮にも隣国の皇太子だからな。手に終えなくなった時は言ってくれ俺が動く。」

「わかりました。もう少し様子を見ます。」

真剣に話をしているカルとお父様。
マシュ……いえマシューリ殿下と何かあるのですかね??

「なんでもないよ。リティは元気になることだけ考えような。それまでは俺の側にいること。」

私が不思議そうにしていたんだろう。カルが私を引き寄せてギュッと抱き締めながら言われた。
ズルいですわ。

「はい。」

それしか言えなくなります。


「ごほん。リティもう少しカルティド殿下の側を離れないように。カルティド殿下よろしくお願い致します。また、例の件についてはファシリック公爵家でておりますので詳しくはまた後程。」
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