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第一章 ヒロイン編

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コツコツコツ………

ヤバイですわ。足音が近づいてきます。
私の方が先に来ておりましたが、エスト・グレニチェにとってはただの覗き見していたヤバイ人ですよね。

バンッ

目の前にエスト・グレニチェが現れたと思ったら逃げないように両手で本棚ドンならぬ壁ドンされております。

「ごっごめんなさい。見るつもりなかったのですがこの部屋から出れなくて………。」

疑われる前に本当のことを言って許してもらおう。

「虐められてるの?」

「……………わかりませんが、私の油断から招いたことです。」

「ふーん……大変だね、皇太子の婚約者なんて。」

「私の事知ってるのですか?」

「知らない人はいないんじゃないかな。あのカルティド殿下が溺愛していると噂される令嬢は良くも悪くも目立つよ。」

かなり近いから前髪の間なら見える瞳はとても綺麗な印象を受けた。
思わず手で前髪を触って瞳が現れました。

「ブルーの瞳がとっても綺麗ですわ。」

やっぱり綺麗な瞳をしてる人でした。
前髪に隠れてるなんてもったいないですわ。
固まり目を見開いて私を見るエスト・グレニチェに気付いてハッとした。

「ごめんなさい。瞳が綺麗だったから思わず手が出てしまいましたわ。」

「……………………………………。」

何も言わなくなってしまったわ。
私が許可もなく前髪を触ってしまったからですよね。

「突然すみませんでした。そろそろ………………離れてください。」

先程から壁ドンされていてあまりにも近いのです。
突然首の方に手を伸ばされ、ネックレスを触られた。

「これか。どおりで気配を感じなかったわけだ。カルティド殿下に溺愛されているというのは本当らしいな。」

エスト・グレニチェは何を納得してるのでしょうか?

「知らないのか?不思議そうな顔をしてるな。………今まで不思議なことはなかったか?」

「不思議なことですか?う~ん……………そういえば私に触れようとしたイグルスが触れられずに少しの衝撃と共に弾かれたようなことがありましたわ。でも、エスト・グレニチェ様は弾かれることなく私のネックレスまで触れてますからきっと気のせいだったのかもしれませんね。」

「いや俺は魔力が強いから起きないだけで、俺以外だと皆弾かれるだろうな。これはカルティド殿下に貰ったものだろ?」

「そうですわ。」

「このネックレスにはリティアナ嬢を守るために加護の魔法が備え付けられてる。下心ある男はリティアナ嬢に近づけないだろうな。」

何て事でしょう。
今までカルが身に付けていてと言っていた意味がようやくわかりましたわ。
離れていても守ってくれてたのですね。

「あからさまだな。そんな嬉しそうにデレた顔するなよ。さてと、カルティド殿下を呼んでみようか。」

どうやってカルを呼ぶのでしょうか?
ここは人気のない資料室な上に今カルは授業中だと思いますが……。
にやっと笑いながらエスト・グレニチェが持っているネックレスが優しい光を放ちだした。
なにこれ………魔法ですか?
カルには劣るだろうけど、エスト・グレニチェは魔導師の息子で相当の魔力があったはず。



「リティ!!!」



えっ?
部屋に突然響いた声に驚いて声のする方を向くと、今までに見たことのないくらい血相を変えたカルが立っていた。
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