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第一章 ヒロイン編
44.
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はぁ………クラスの令嬢だからと油断しましたわ。
「ファシリック令嬢。先程先生から頼まれたのですが荷物が多いからお手伝いしてもらってもいいですか?」
そう言われて一緒に行ったところ、急に押されビックリしてる間にドアが閉められ鍵をかけられましたわ。
誰かの差し金かただの虐めかはわかりませんが、お陰様で数分前から閉じ込められております。
「はぁ………誰か来ないかしら?」
ここは図書館のように本棚が並べられておりますが先生達の使用する資料室ですわ。
あまり生徒は来ないし、今の時間はどの先生方も講義をされているでしょう。
そっとカルから貰って肌身離さず付けているネックレスをさする。
このネックレスを触るといつも心が落ち着くのです。
無意識に触っていて自分でも少し焦っていたことに気づきましたわ。
ふぅ………帰りまで私が現れないとクラリスお兄様やカルが気づいてくれるでしょう。
…………お腹が空きましたわ。
どうせ閉じ込めるなら食べ物を食べてからにしてほしいです。
ガチャッ
ドアの開く音が聞こえ本棚の隙間から覗くとモーリス男爵令嬢それに…………誰ですの?
灰色の髪に見たことない人ですわ。
「ふふふ、ここなら誰もいないわ。」
「……………で、話って何?」
ぶっきらぼうに返事を返す灰色の髪の男性。
さらさらした前髪が長く瞳は見えないが見える部分の鼻筋は高く端麗な顔をしているからきっと綺麗な人なんだろう。
「わかってるくせにぃ………私はサラリー・モーリスと言います。以後お見知りおきをエストさまぁ。」
聞いたこともない甘い声で男性に呼び掛ける。
エスト?………エスト……………エスト・グレニチェのこと!?
「君とは初対面のはずだが?誰が名前で呼んでいいと言った?不愉快だ。」
明らかにモーリス男爵令嬢は気があるのがわかるのに、迷惑そうに不機嫌な声で答えるエスト・グレニチェはモーリス男爵令嬢に毛ほども興味がないのでしょう。
「えぇーー。そんな冷たいこと言わないでください。私あなたのことや魔法のことをもっと知りたいの。」
思い出しました!!
ヒロインが攻略対象である魔導師の息子エスト・グレニチェと親しくするときに使うテンプレートの言葉。
でも、知っているエスト・グレニチェと違っていてわかりませんでしたわ。
攻略対象がわかるってヒロインは凄い目の持ち主なんですね。
「………………とにかく名前では呼ぶな。」
あら?そのあとの言葉は『物好きなやつだな。魔法のことはいつでも聞きにこい。名前呼びも許可してやる。』だったはずなのに、許可をしないし素っ気なく凄く迷惑そうだ。
ヒロインも少し戸惑った表情してますわ。
そうでしょうね、あなたのことが知りたい!!と言って拒否されてるんですから………。
「わかりましたわ。グレニチェ様。今日のところは引き下がります。またお話ししましょうね。」
エスト・グレニチェの手を取って上目遣いで見つめながら微笑み印象をつけて出ていった。
さすがですわ。モーリス男爵令嬢はヒロインだけあって可愛いですものね。自分自身のことはとてもよくわかっているのでしょう。
そもそもここでイベントでしたか?
こんな何もないところというか人気のないところ…………だからですか。
恋愛に持っていきたいなら人気がないところが雰囲気出ますものね。
「なんなんだ!あの女………人の手を勝手に握りやがって女じゃなかったら突き飛ばしたのに気持ち悪いな。」
不機嫌に握られた手を払いながら呟いております。
モーリス男爵令嬢…………全く武器が役立ってませんわ。
逆に印象悪くなっておりますよ。
ヒロインと言ってもあまり好まれないのでしょうか?
ゲームのときは好まれる前提が当たり前と思ってましたが……現実では違うのでしょうか?
視線を感じた方を見るとエスト・グレニチェが長い前髪の下の瞳でこちらを見ているようで焦って後ろを向いた。
「ファシリック令嬢。先程先生から頼まれたのですが荷物が多いからお手伝いしてもらってもいいですか?」
そう言われて一緒に行ったところ、急に押されビックリしてる間にドアが閉められ鍵をかけられましたわ。
誰かの差し金かただの虐めかはわかりませんが、お陰様で数分前から閉じ込められております。
「はぁ………誰か来ないかしら?」
ここは図書館のように本棚が並べられておりますが先生達の使用する資料室ですわ。
あまり生徒は来ないし、今の時間はどの先生方も講義をされているでしょう。
そっとカルから貰って肌身離さず付けているネックレスをさする。
このネックレスを触るといつも心が落ち着くのです。
無意識に触っていて自分でも少し焦っていたことに気づきましたわ。
ふぅ………帰りまで私が現れないとクラリスお兄様やカルが気づいてくれるでしょう。
…………お腹が空きましたわ。
どうせ閉じ込めるなら食べ物を食べてからにしてほしいです。
ガチャッ
ドアの開く音が聞こえ本棚の隙間から覗くとモーリス男爵令嬢それに…………誰ですの?
灰色の髪に見たことない人ですわ。
「ふふふ、ここなら誰もいないわ。」
「……………で、話って何?」
ぶっきらぼうに返事を返す灰色の髪の男性。
さらさらした前髪が長く瞳は見えないが見える部分の鼻筋は高く端麗な顔をしているからきっと綺麗な人なんだろう。
「わかってるくせにぃ………私はサラリー・モーリスと言います。以後お見知りおきをエストさまぁ。」
聞いたこともない甘い声で男性に呼び掛ける。
エスト?………エスト……………エスト・グレニチェのこと!?
「君とは初対面のはずだが?誰が名前で呼んでいいと言った?不愉快だ。」
明らかにモーリス男爵令嬢は気があるのがわかるのに、迷惑そうに不機嫌な声で答えるエスト・グレニチェはモーリス男爵令嬢に毛ほども興味がないのでしょう。
「えぇーー。そんな冷たいこと言わないでください。私あなたのことや魔法のことをもっと知りたいの。」
思い出しました!!
ヒロインが攻略対象である魔導師の息子エスト・グレニチェと親しくするときに使うテンプレートの言葉。
でも、知っているエスト・グレニチェと違っていてわかりませんでしたわ。
攻略対象がわかるってヒロインは凄い目の持ち主なんですね。
「………………とにかく名前では呼ぶな。」
あら?そのあとの言葉は『物好きなやつだな。魔法のことはいつでも聞きにこい。名前呼びも許可してやる。』だったはずなのに、許可をしないし素っ気なく凄く迷惑そうだ。
ヒロインも少し戸惑った表情してますわ。
そうでしょうね、あなたのことが知りたい!!と言って拒否されてるんですから………。
「わかりましたわ。グレニチェ様。今日のところは引き下がります。またお話ししましょうね。」
エスト・グレニチェの手を取って上目遣いで見つめながら微笑み印象をつけて出ていった。
さすがですわ。モーリス男爵令嬢はヒロインだけあって可愛いですものね。自分自身のことはとてもよくわかっているのでしょう。
そもそもここでイベントでしたか?
こんな何もないところというか人気のないところ…………だからですか。
恋愛に持っていきたいなら人気がないところが雰囲気出ますものね。
「なんなんだ!あの女………人の手を勝手に握りやがって女じゃなかったら突き飛ばしたのに気持ち悪いな。」
不機嫌に握られた手を払いながら呟いております。
モーリス男爵令嬢…………全く武器が役立ってませんわ。
逆に印象悪くなっておりますよ。
ヒロインと言ってもあまり好まれないのでしょうか?
ゲームのときは好まれる前提が当たり前と思ってましたが……現実では違うのでしょうか?
視線を感じた方を見るとエスト・グレニチェが長い前髪の下の瞳でこちらを見ているようで焦って後ろを向いた。
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