上 下
43 / 98
第一章 ヒロイン編

43.

しおりを挟む
ブレーリ兄の方は痛い目を見せないとな。リティに手を出そうとした時点でアウトだ。」

「カルティド穏便にな。」

「穏便?そうだね……そうしてあげたいけど押さえられるかな。俺の前にリティに手を出そうとしたことは許せない。」

「バカ兄のことは気にせずやっちゃってください。」

「ほら、ブレーリ令息からも言われたし、良くないことを企んでそうだから……いいね。」

笑顔で話してるんだろうなぁと見なくてもわかるくらい声が生き生きとして弾んでますわ。
きっと、カルの無言の圧でクラリスお兄様もイグルスも何も言えなくなったんでしょう。

チュッ。チュッ。

おでこに髪にあらゆるところに柔らかいものが触れておりますわ。
まさかクラリスお兄様とイグルスの前で私にキスしてますの?
カル恥ずかしいからやめてください。

「はぁ。リティを早くにしないと安心できないな。」

なっなっなっ何を言い出しますの!?

「ということは、リティアナはまだ完全にカルティド殿下のものではないんですね。」

「そうだね。婚約者であってまだ結婚はしてないから全てではないな。リティ自身はもうすでに「きゃぁぁぁぁぁぁ。」

叫びながらカルの口をふさいでしまいましたわ。
カルは何を言い出すのでしょうか!!
クラリスお兄様もイグルスも聞いているというのに!!
まさかお風呂のことを言うつもりだったのかしら……それは恥ずかしすぎるからやめてください。

「言うわけないだろ。リティのこと想像もされたくないからな。……リティ好きだよ。」

耳元で小声で言われてビクリと身体が動く。
今言わなくてもよくないですか?
二人の前で何てことを言うのですか。
顔が熱を帯びていくのがわかりますわ。
………私もカルのことが好きなので嬉しいですがではないでしょう!?
えっ!?その顔は私にも言えというのでしょうか?
何も言わない私を見て、カルは悲しそうな瞳で私を見ている。
お兄様もイグルスもいるのにとても恥ずかしいです。

「…………………………。」

カルを見て言おうとしましたが口をパクパクしただけで恥ずかしくてどうしても言えない。
クラリスお兄様とイグルスの視線をひしひしと感じますわ。
………こんな静まり返っているところでなんてとても言えませんわ。
カルは相変わらず悲しそうな瞳で見てくるから何か不安なのでしょうか。
誤解とはいえ他の男性イグルスに破廉恥なことを言ってしまった…………から??

ギュッ

カルを不安にさせてることだけで頭の中がいっぱいになってなりふり構わずカルの首に腕を回して抱きついた。

「私に触れていいのはクラリスお兄様や家族以外ではカルだけですわ。」

「ハハッ。リティの中のクラリスは揺るがないな~。でもそんな言葉をくれるなんて嬉しいな~少しは進歩したってことか。まだまだあれお風呂だけじゃ足りないみたいだ。」

私の言葉が嬉しかったのか、カルが嬉しそうに話してるのは良かったですが最後の方はよくわからないことを言っていた。
カルは容姿端麗で微笑んだだけでも破壊力が凄いですが、悪巧みを含んだ微笑みを浮かべていたカルを素直にかっこいいと思ってしまった私は重症ですね。

「俺の大切な妹がカルに絆されていっているな……。」

私を見ながらぼそりとクラリスお兄様が呟いたことを知らない私は目の前の嬉しそうなカルだけを見ていて、大胆なことを言ってしまったことに気付いていなかった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

男性アレルギー令嬢とオネエ皇太子の偽装結婚 ~なぜか溺愛されています~

富士とまと
恋愛
リリーは極度の男性アレルギー持ちだった。修道院に行きたいと言ったものの公爵令嬢と言う立場ゆえに父親に反対され、誰でもいいから結婚しろと迫られる。そんな中、婚約者探しに出かけた舞踏会で、アレルギーの出ない男性と出会った。いや、姿だけは男性だけれど、心は女性であるエミリオだ。 二人は友達になり、お互いの秘密を共有し、親を納得させるための偽装結婚をすることに。でも、実はエミリオには打ち明けてない秘密が一つあった。

強い祝福が原因だった

恋愛
大魔法使いと呼ばれる父と前公爵夫人である母の不貞により生まれた令嬢エイレーネー。 父を憎む義父や義父に同調する使用人達から冷遇されながらも、エイレーネーにしか姿が見えないうさぎのイヴのお陰で孤独にはならずに済んでいた。 大魔法使いを王国に留めておきたい王家の思惑により、王弟を父に持つソレイユ公爵家の公子ラウルと婚約関係にある。しかし、彼が愛情に満ち、優しく笑い合うのは義父の娘ガブリエルで。 愛される未来がないのなら、全てを捨てて実父の許へ行くと決意した。 ※「殿下が好きなのは私だった」と同じ世界観となりますが此方の話を読まなくても大丈夫です。 ※なろうさんにも公開しています。

我慢してきた令嬢は、はっちゃける事にしたようです。

和威
恋愛
侯爵令嬢ミリア(15)はギルベルト伯爵(24)と結婚しました。ただ、この伯爵……別館に愛人囲ってて私に構ってる暇は無いそうです。本館で好きに過ごして良いらしいので、はっちゃけようかな?って感じの話です。1話1500~2000字程です。お気に入り登録5000人突破です!有り難うございまーす!2度見しました(笑)

変態王子&モブ令嬢 番外編

咲桜りおな
恋愛
「完璧(変態)王子は悪役(天然)令嬢を今日も愛でたい」と 「モブ令嬢はシスコン騎士様にロックオンされたようです~妹が悪役令嬢なんて困ります~」の 番外編集です。  本編で描ききれなかったお話を不定期に更新しています。 「小説家になろう」でも公開しています。

幼女公爵令嬢、魔王城に連行される

けろ
恋愛
とある王国の公爵家の長女メルヴィナ・フォン=リルシュタインとして生まれた私。 「アルテミシア」という魔力異常状態で産まれてきた私は、何とか一命を取り留める。 しかし、その影響で成長が止まってしまい「幼女」の姿で一生を過ごすことに。 これは、そんな小さな私が「魔王の花嫁」として魔王城で暮らす物語である。

【二部開始】所詮脇役の悪役令嬢は華麗に舞台から去るとしましょう

蓮実 アラタ
恋愛
アルメニア国王子の婚約者だった私は学園の創立記念パーティで突然王子から婚約破棄を告げられる。 王子の隣には銀髪の綺麗な女の子、周りには取り巻き。かのイベント、断罪シーン。 味方はおらず圧倒的不利、絶体絶命。 しかしそんな場面でも私は余裕の笑みで返す。 「承知しました殿下。その話、謹んでお受け致しますわ!」 あくまで笑みを崩さずにそのまま華麗に断罪の舞台から去る私に、唖然とする王子たち。 ここは前世で私がハマっていた乙女ゲームの世界。その中で私は悪役令嬢。 だからなんだ!?婚約破棄?追放?喜んでお受け致しますとも!! 私は王妃なんていう狭苦しいだけの脇役、真っ平御免です! さっさとこんなやられ役の舞台退場して自分だけの快適な生活を送るんだ! って張り切って追放されたのに何故か前世の私の推しキャラがお供に着いてきて……!? ※本作は小説家になろうにも掲載しています 二部更新開始しました。不定期更新です

二度捨てられた白魔女王女は、もうのんびりワンコと暮らすことにしました ~え? ワンコが王子とか聞いてません~

吉高 花
恋愛
魔力があった、ただそれだけの理由で王女なのに捨て子として育ったマルガレーテは、隣国との政略結婚のためだけにある日突然王女として引っぱりだされ、そして追放同然に邪悪な国と恐れられるルトリアへと送られた。  そしてルトリアでの魔力判定により、初めて自分が白の魔力を持つ者と知る。しかし白の魔力を持つ者は、ルトリアではもれなく短命となる運命だった。  これでは妃なんぞには出来ぬとまたもや辺鄙な離宮に追放されてしまったマルガレーテ。  しかし彼女はその地で偶然に病床の王妃を救い、そして流れ着いたワンコにも慕われて、生まれて初めて自分が幸せでいられる居場所を得る。  もうこのまま幸せにここでのんびり余生を送りたい。そう思っていたマルガレーテは、しかし愛するワンコが実は自分の婚約者である王子だったと知ったとき、彼を救うために、命を賭けて自分の「レイテの魔女」としての希有な能力を使うことを決めたのだった。  不幸な生い立ちと境遇だった王女が追放先でひたすら周りに愛され、可愛がられ、大切な人たちを救ったり救われたりしながら幸せになるお話。  このお話は「独身主義の魔女ですが、ワンコな公爵様がなぜか離してくれません」のスピンオフとなりますが、この話だけでも読めるようになっています。

異世界細腕奮闘記〜貧乏伯爵家を立て直してみせます!〜

くろねこ
恋愛
気付いたら赤ん坊だった。 いや、ちょっと待て。ここはどこ? 私の顔をニコニコと覗き込んでいるのは、薄い翠の瞳に美しい金髪のご婦人。 マジか、、、てかついに異世界デビューきた!とワクワクしていたのもつかの間。 私の生まれた伯爵家は超貧乏とか、、、こうなったら前世の無駄知識をフル活用して、我が家を成り上げてみせますわ! だって、このままじゃロクなところに嫁にいけないじゃないの! 前世で独身アラフォーだったミコトが、なんとか頑張って幸せを掴む、、、まで。

処理中です...