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第一章 ヒロイン編

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「イークス令嬢はカルにずっと付きまとっていたからいつかこういう事態になると思っていたよ。」

クラリスお兄様が言うくらいだ。常に何かしらあったんだろう。

「イークス令嬢には困ったものだ。毎回拒絶しているのに全く通じていなかった。今日は公衆の面前だったから控えめに言ったが……通じているのかわからないな。」

えっ!?
カルは普段から拒絶してるってことですか?
そう考えると全く堪えていませんわね。通りすがりの言葉もまだこの先がありそうで恐ろしいと思いましたし………。
そんな想い人の婚約者になった私は明日からの学園生活は大丈夫なのでしょうか?
不安しかありませんわ。

「あの感じからして通じてはいないだろう。リティが標的になる可能性が高いから気を付けろよ。今までは傍観していたがリティに手を出すようだったら容赦しない。」

「クラリスお兄様~私の事を守ってくださるのね。嬉しい大好きです。」

鋭い眼差しで私に守ってくれると言ったお兄様がかっこよくて大好きが爆発し抱き付こうと身体が動いたところ………カルから肩を抱き寄せされてることを忘れてましたわ。

「リティは俺という婚約者がいるのに婚約発表のパーティーの場公衆の面前で俺をまた振り払いクラリスに抱きつこうとはいけない子だね。」

「あっ………うう………ごめんなさい。」

正論を言われ言葉が出てこず謝るしかありませんわ。

「悪いと思ってるなら今この場で俺を抱きしめ誉めてくれたらなかったことにしてあ・げ・る。」

少し怒ったような低い声だけれど最後の方は甘い声で耳元で囁かれ顔が真っ赤になるのがわかりますわ。
人前でしかも王宮でのパーティーでカルに抱きつくなんて……しかも誉め言葉まで要求されましたわ。
先程私がクラリスお兄様に大好きと言ったことを根に持たれてるのでしょうか。

「……クラリスお兄様に言ったのにそれも駄目ですか?」

「そうだね。俺はリティのことに関しては欲張りなんだ。」

笑顔の即答で駄目だと言われましたわ。
どれだけ私のことを………嬉しいような怖いような……激しいですわ。
ほら、クラリスお兄様とロレインも呆れた顔で見ております。
後ろのレイロ様とセルガロ様は何も見てないと言わんばかりに無表情を貫いておりますわ。
そうでしょうね………カルの言葉は近くにいたクラリスお兄様とロレイン、レイロ様とセルガロ様以外には届いていないでしょう。
はぁ………カルの笑顔には弱いですわ。
結局私はカルを邪険に出来ず惹かれているのでしょうね。
カルの顔を見上げながら素直な気持ちを伝えて抱きつきましょう。

「私はクラリスお兄様が大好きですわ。でもカルが他のご令嬢と仲良くなってると思うと嫌だと思う自分もいますわ………………………………………。」

恥ずかしくて言葉が詰まって俯いてしまったが、カルの瞳を見つめなおしてしっかりと伝えた。



「カルは私の素敵な王子様ですわ。私を守って離さないで下さいね。」



ギュッーーーーとカルに抱きつきましたが、自分の声が思ったよりも響いていることに気づきましたが遅かったようです。
騒がしかった周りがシーーーンとして私に皆さんの視線が突き刺さってきますわ。

えっ!?
なんで騒がしかった会場が静かになってますの!?
も…………もしかしてカル何かしましたか!?
恐る恐るカルの顔を見上げると満面の笑みで私を見下ろしていた。
あっ……確信犯だ!!
カルやりましたわね。
学園の時と同じような魔法を使って声を拡張しましたね?

「リティに想われて幸せだな。離さないでなんて可愛らしいこと言われたらたまらないな。」

ギューーーーと抱きしめられ私達は会場のど真ん中でお互いに惚気抱きしめあう甘い甘いところを皆さんに見られるという、自分の中で前代未聞の羞恥体験をいたしましたわ。


このことはその日のうちに婚約発表と一緒に私とカルは誰にも邪魔できない程ラブラブだと広まり、どんどんと深みにはまっていっているようだと頭を抱えることになりましたわ。
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