20 / 20
第20話
しおりを挟む
魔王軍側近のナビスは魔導騎士団の本拠地で一暴れした後、魔術研究所へと早足で移動していた。
先程出くわした、ラングーンの住人の一人を殺しその住人の姿に化けているので追っ手が来たとしてもすぐには見つからないだろう。
魔導騎士団に潜入していたナビスの目的は、この聖都ラングーンにある魔術研究所から、とある魔術書を盗み出すことにあった。
タタタタタタタ。
深夜の住宅街にナビスの足音だけが響く。
必ず魔王様から言い渡された任務を全うしなければ。
ナビスはラーヌの街を通り抜けていく。
やがてナビスの正面に魔術研究所の黒い石造りの建物が見えてきた。
門の前で2人鎧を着込んだ見張りの者が立っている。
ナビスは脇の道に入ると再びクォーク・エル・グリドラの姿に変身した。
そして脇の道から出て2人の見張りの前まで近づいていく。
2人いる衛士の内の一人がナビスの姿に気づいて話しかけた。
「これはこれは。魔導騎士団のクォーク様ではないですか。こんな夜更けに一体何のご用でしょうか?」
涼しい顔でクォークに化けたナビスが答える。
「……何、研究所所長殿に至急確認したいことがあるのだ。取り次ぎ願おうか。」
「そうでしたか。……まあ参謀殿ならうちの所長とも親しくされていることですから。どうぞお通りください。」
そう言って2人の衛士達は鉄柵状の門を開きナビスを中に通した。
フフン。魔導騎士団参謀のクォークと魔術研究所所長との関係については既に調査済みよ。
そう胸中で一人ごちるナビスの顔に、知らず知らずのうちにうっすらと酷薄な笑みが浮かぶ。
衛士のうちの片方がそんなナビスの様子を見て首をかしげた。
首尾良く魔術研究所内に侵入したナビスは通路奥にある所長室の前に立ちその扉を静かにノックした。
コンコン。コンコン。
……………………………………………………。
ナビスは扉に耳を当て室内に耳を澄ます。
全く物音はしない。魔力も中からは感じ取れない。
どうやら所長は地下の秘密の実験場の方にいるようだ。
安心したナビスは大きく扉を開いて所長室の中へと入る。
やはり。
所長室右手の本棚がズラしてあり、地下へと下る隠し階段が覗いている。
なるべく足音を立てないようにしてナビスは地下へと続く階段を降りていった。
地下には迷路のような通路が広がっている。
しかし、ナビスには強い魔力を帯びた例の魔術書の位置はここからでも手に取るように分かった。
迷わず通路を右に曲がりしばらく歩くと例の魔術書のある部屋が見えてきた。
ナビスは周囲を一度伺い、部屋の中に誰もいないことを確認すると薄く扉を開いて室内に滑り込む。
暗い室内でも夜目のきくナビスにはハッキリと部屋の様子が見てとれた。
部屋の奥まで進み、床に置かれた鍵の掛けられた鋼鉄の箱の中に例の魔術書があるのを確認するとナビスは邪魔な錠前ごとその蓋をこじ開けた。
はたして、バキバキバキッ!と音を立てて開いた鋼鉄の箱の中には、禍々しい黒い光を放つ皮の表紙のついた古い魔術書が入っていた。
ナビスは魔術書を拾い上げその懐にしまうと、静かに来た道を引き返していった。
先程出くわした、ラングーンの住人の一人を殺しその住人の姿に化けているので追っ手が来たとしてもすぐには見つからないだろう。
魔導騎士団に潜入していたナビスの目的は、この聖都ラングーンにある魔術研究所から、とある魔術書を盗み出すことにあった。
タタタタタタタ。
深夜の住宅街にナビスの足音だけが響く。
必ず魔王様から言い渡された任務を全うしなければ。
ナビスはラーヌの街を通り抜けていく。
やがてナビスの正面に魔術研究所の黒い石造りの建物が見えてきた。
門の前で2人鎧を着込んだ見張りの者が立っている。
ナビスは脇の道に入ると再びクォーク・エル・グリドラの姿に変身した。
そして脇の道から出て2人の見張りの前まで近づいていく。
2人いる衛士の内の一人がナビスの姿に気づいて話しかけた。
「これはこれは。魔導騎士団のクォーク様ではないですか。こんな夜更けに一体何のご用でしょうか?」
涼しい顔でクォークに化けたナビスが答える。
「……何、研究所所長殿に至急確認したいことがあるのだ。取り次ぎ願おうか。」
「そうでしたか。……まあ参謀殿ならうちの所長とも親しくされていることですから。どうぞお通りください。」
そう言って2人の衛士達は鉄柵状の門を開きナビスを中に通した。
フフン。魔導騎士団参謀のクォークと魔術研究所所長との関係については既に調査済みよ。
そう胸中で一人ごちるナビスの顔に、知らず知らずのうちにうっすらと酷薄な笑みが浮かぶ。
衛士のうちの片方がそんなナビスの様子を見て首をかしげた。
首尾良く魔術研究所内に侵入したナビスは通路奥にある所長室の前に立ちその扉を静かにノックした。
コンコン。コンコン。
……………………………………………………。
ナビスは扉に耳を当て室内に耳を澄ます。
全く物音はしない。魔力も中からは感じ取れない。
どうやら所長は地下の秘密の実験場の方にいるようだ。
安心したナビスは大きく扉を開いて所長室の中へと入る。
やはり。
所長室右手の本棚がズラしてあり、地下へと下る隠し階段が覗いている。
なるべく足音を立てないようにしてナビスは地下へと続く階段を降りていった。
地下には迷路のような通路が広がっている。
しかし、ナビスには強い魔力を帯びた例の魔術書の位置はここからでも手に取るように分かった。
迷わず通路を右に曲がりしばらく歩くと例の魔術書のある部屋が見えてきた。
ナビスは周囲を一度伺い、部屋の中に誰もいないことを確認すると薄く扉を開いて室内に滑り込む。
暗い室内でも夜目のきくナビスにはハッキリと部屋の様子が見てとれた。
部屋の奥まで進み、床に置かれた鍵の掛けられた鋼鉄の箱の中に例の魔術書があるのを確認するとナビスは邪魔な錠前ごとその蓋をこじ開けた。
はたして、バキバキバキッ!と音を立てて開いた鋼鉄の箱の中には、禍々しい黒い光を放つ皮の表紙のついた古い魔術書が入っていた。
ナビスは魔術書を拾い上げその懐にしまうと、静かに来た道を引き返していった。
0
お気に入りに追加
1
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる
フルーツパフェ
大衆娯楽
転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。
一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。
そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!
寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。
――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです
そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。
大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。
相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。
チートがちと強すぎるが、異世界を満喫できればそれでいい
616號
ファンタジー
不慮の事故に遭い異世界に転移した主人公アキトは、強さや魔法を思い通り設定できるチートを手に入れた。ダンジョンや迷宮などが数多く存在し、それに加えて異世界からの侵略も日常的にある世界でチートすぎる魔法を次々と編み出して、自由にそして気ままに生きていく冒険物語。
神様との賭けに勝ったので、スキルを沢山貰えた件。
猫丸
ファンタジー
ある日の放課後。突然足元に魔法陣が現れると、気付けば目の前には神を名乗る存在が居た。
そこで神は異世界に送るからスキルを1つ選べと言ってくる。
あれ?これもしかして頑張ったらもっと貰えるパターンでは?
そこで彼は思った――もっと欲しい!
欲をかいた少年は神様に賭けをしないかと提案した。
神様とゲームをすることになった悠斗はその結果――
※過去に投稿していたものを大きく加筆修正したものになります。
クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~
いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。
他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。
「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。
しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。
1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化!
自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働!
「転移者が世界を良くする?」
「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」
追放された少年の第2の人生が、始まる――!
※本作品は他サイト様でも掲載中です。
天才女薬学者 聖徳晴子の異世界転生
西洋司
ファンタジー
妙齢の薬学者 聖徳晴子(せいとく・はるこ)は、絶世の美貌の持ち主だ。
彼女は思考の並列化作業を得意とする、いわゆる天才。
精力的にフィールドワークをこなし、ついにエリクサーの開発間際というところで、放火で殺されてしまった。
晴子は、権力者達から、その地位を脅かす存在、「敵」と見做されてしまったのだ。
死後、晴子は天界で女神様からこう提案された。
「あなたは生前7人分の活躍をしましたので、異世界行きのチケットが7枚もあるんですよ。もしよろしければ、一度に使い切ってみては如何ですか?」
晴子はその提案を受け容れ、異世界へと旅立った。
おっさんの神器はハズレではない
兎屋亀吉
ファンタジー
今日も元気に満員電車で通勤途中のおっさんは、突然異世界から召喚されてしまう。一緒に召喚された大勢の人々と共に、女神様から一人3つの神器をいただけることになったおっさん。はたしておっさんは何を選ぶのか。おっさんの選んだ神器の能力とは。
僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?
闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。
しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。
幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。
お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。
しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。
『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』
さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。
〈念の為〉
稚拙→ちせつ
愚父→ぐふ
⚠︎注意⚠︎
不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。
いきなり異世界って理不尽だ!
みーか
ファンタジー
三田 陽菜25歳。会社に行こうと家を出たら、足元が消えて、気付けば異世界へ。
自称神様の作った機械のシステムエラーで地球には帰れない。地球の物は何でも魔力と交換できるようにしてもらい、異世界で居心地良く暮らしていきます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる