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第8話
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その時だった。横から、「……待てーーーーい!!!」と何やら小柄な、青い髪をお団子に束ねた赤いワンピース姿の幼女(?)が飛び出してきた。
「…な~~んだ、このクソガキ?邪魔だ!!退いてろ!!」と灰色のバンダナ姿の一団のリーダー格、とおぼしき先程こちらに鋭い視線を送った小柄な男が邪険にしっ、しっ、という感じで右手を振った。
「…だ~~れがガキじゃ~~い!!俺様を舐めてんじゃね~~!!!」と幼女(?)が叫んだかと思うと、右手に持った何か細い糸のようなものを引っ張った。
……ブォーーン!!、という音を立てながら横の雑木林からデッカイ丸太が男目掛けて襲い掛かる。
ドッカーーン!!!とものすごい音がしてリーダー格の男は遥か彼方に吹き飛ばされ、そして星になった……。
…………………………………………………。
たっぷり一分間は黙った後、ぞろぞろいた盗賊団の連中が、「……お、お頭っっ~~~~!!!!」と情けない悲鳴をあげたか、と思うと一斉にリーダー格が飛ばされていった方角目掛けてダダダダダッッッッ!!と走って行く。
「………なんだあいつら。」思わず呟く俺。
「……ふん!口ほどにもないわ!!」と自分が撃退したわけでもないのにドヤるリル。
「……ふーっ。」やれやれとばかりに肩を竦めるシン。その横でマリスとマックスがほっと胸を撫で下ろす。
「おい!!お前ら!!人に助けて貰ってありがとう、の一言もないのかよ~~~!!」と幼女(?)がプンスカ、プンスカむくれて抗議をする。
その言葉にマリスがいち早く反応して、
「…どうも失礼いたしました…。助けて貰いどうもありがとうございました…。」と深々と頭を下げる。
「ほら!!お前らも"ありがとうございま
す"は!?」顔を真っ赤にしながら幼女(?)が催促してくる。
「……あぁ、ありがとう……。」
「……ふんっ!!わし一人でもなんとかなったんじゃがなぁ~!!まぁ、よいわ。あ・り・が・と・う!!」
「……どうもかたじけない。感謝申し上げる。」
「あっざっ~すっっ!!」
マリス以外の俺を含めて4人が口々に感謝の言葉を口にする。
すると、幼女(?)は、
「最初っからそういう謙虚さが欲しかったね~~~!!!」と、満更でもない顔でニヤリと微笑んだ。
「俺様はトラップ使いのウェンディ!!よろしく!!」と握手を求めてくる幼女(?)。
「……わしはリル。こっちの物静かなのがマリス。こっちの厳ついのがシン。そこのへたれがマックス。こやつは一応勇者で名をカイトと言う。」
リルが一同をウェンディに向かって紹介し、そしてがっちりと握手を交わした。
「……本当にありがとうございました!!」
……あれからウェンディと連れ立って漁業の街テヘの中へと歩みを進めると、建物の陰からーウェンディが一方的に盗賊団を退治するその一部始終を見ていたのだろうー街の人々が一斉にウェンディの所までやって来て口々に感謝の言葉を連ね始めた。
「えへへへへ。もういいってば~~!!」と言いつつも喜色満面なウェンディ。その脇で自分達が無視されているのが気に入らないのか何だか不満げなリル。シン、マリス、マックスはどこか手持ちぶさたな様子でウェンディと人々とのやり取りを眺めている。
「……うおっほんっ!!うおっほんっっ!!!」
リルがわざとらしく自分に注目を集めようとしている。
………が、歓喜に沸(わ)く人々はいっかなリルに目を向けようとはしない。
「…おおお~~~~いっっ!!!無視するなーーーーーーーっっっ!!!」リルが声を限りに叫ぶとようやく人々のうち何人かがこちらに気づいた。
「……もう、一体何なんですか?」髪を上で一つの団子にまとめた長いスカート姿の主婦らしき中年女性が実に鬱陶しそうに尋ねる。
「……こほん。わしらは聖都ラングーンより来たりし魔導騎士団である!!この先のトーリスへと渡る為の橋が壊れておってどうにもならん!この街に数人乗れる位の小舟を貸してくれる者はおらんかのう!」と胸を張りつつも若干のドヤ顔でリルが言い放つ。
女性は途端に態度を変えて、「申し訳ございませんでした!!まさか魔導騎士団の方々とは露知らずとんでもないご無礼を!」と平身低頭して謝罪する。その正面ではリルが満足そうにうむ、うむ、と一人頷いている。
「えぇと、街の漁業ギルドの顔役デル様ならば魔導騎士団の要請とあらばすぐにでも舟とそれを運ぶ人足を何人か貸してくださると思います。この先の広場を右に折れた突き当たりに家がありますわ。」と恐縮しきった様子の中年女性が道の先へと指を向けた。
「わかった。礼を言うぞ。」とやや高飛車にリルが言うと、「トンでもございません!!それでは………。」と言い女性はまたウェンディに群がった人々の輪に入ってゆく。
「……という訳じゃ。皆の者、行くぞ!!」
とリルの先導で俺達は顔役の家へと向かった。
「それはそれは大変でしたな。私共といたしましてもすぐに船を貸して差し上げたいのは山々なのですが………。」ギルドの顔役デルの家へと着きこちらの事情を話したのも束の間、顔をしかめてデルは口ごもる。
「……実は最近海の方から得たいの知れぬ巨大な魚がここテヘの港にまで入り込んでは停めてある漁業用の船を壊して回っておるのです。我々もほとほと手を焼いておりまして………。」
「わかった。ならば我ら魔導騎士団がその不届きな化け物をたいじゅしてやろうぞ!!」
「……リル様、退治です……。」大事なところで噛んだリルにマリスがすかさず突っ込む。
「本当ですか!それは有り難いです!感謝します!!」と喜ぶデル。その横でシンがやれやれと行った風に首を振る。
こうして俺達は謎の怪魚を倒すというクエストを受けることになった。
「…な~~んだ、このクソガキ?邪魔だ!!退いてろ!!」と灰色のバンダナ姿の一団のリーダー格、とおぼしき先程こちらに鋭い視線を送った小柄な男が邪険にしっ、しっ、という感じで右手を振った。
「…だ~~れがガキじゃ~~い!!俺様を舐めてんじゃね~~!!!」と幼女(?)が叫んだかと思うと、右手に持った何か細い糸のようなものを引っ張った。
……ブォーーン!!、という音を立てながら横の雑木林からデッカイ丸太が男目掛けて襲い掛かる。
ドッカーーン!!!とものすごい音がしてリーダー格の男は遥か彼方に吹き飛ばされ、そして星になった……。
…………………………………………………。
たっぷり一分間は黙った後、ぞろぞろいた盗賊団の連中が、「……お、お頭っっ~~~~!!!!」と情けない悲鳴をあげたか、と思うと一斉にリーダー格が飛ばされていった方角目掛けてダダダダダッッッッ!!と走って行く。
「………なんだあいつら。」思わず呟く俺。
「……ふん!口ほどにもないわ!!」と自分が撃退したわけでもないのにドヤるリル。
「……ふーっ。」やれやれとばかりに肩を竦めるシン。その横でマリスとマックスがほっと胸を撫で下ろす。
「おい!!お前ら!!人に助けて貰ってありがとう、の一言もないのかよ~~~!!」と幼女(?)がプンスカ、プンスカむくれて抗議をする。
その言葉にマリスがいち早く反応して、
「…どうも失礼いたしました…。助けて貰いどうもありがとうございました…。」と深々と頭を下げる。
「ほら!!お前らも"ありがとうございま
す"は!?」顔を真っ赤にしながら幼女(?)が催促してくる。
「……あぁ、ありがとう……。」
「……ふんっ!!わし一人でもなんとかなったんじゃがなぁ~!!まぁ、よいわ。あ・り・が・と・う!!」
「……どうもかたじけない。感謝申し上げる。」
「あっざっ~すっっ!!」
マリス以外の俺を含めて4人が口々に感謝の言葉を口にする。
すると、幼女(?)は、
「最初っからそういう謙虚さが欲しかったね~~~!!!」と、満更でもない顔でニヤリと微笑んだ。
「俺様はトラップ使いのウェンディ!!よろしく!!」と握手を求めてくる幼女(?)。
「……わしはリル。こっちの物静かなのがマリス。こっちの厳ついのがシン。そこのへたれがマックス。こやつは一応勇者で名をカイトと言う。」
リルが一同をウェンディに向かって紹介し、そしてがっちりと握手を交わした。
「……本当にありがとうございました!!」
……あれからウェンディと連れ立って漁業の街テヘの中へと歩みを進めると、建物の陰からーウェンディが一方的に盗賊団を退治するその一部始終を見ていたのだろうー街の人々が一斉にウェンディの所までやって来て口々に感謝の言葉を連ね始めた。
「えへへへへ。もういいってば~~!!」と言いつつも喜色満面なウェンディ。その脇で自分達が無視されているのが気に入らないのか何だか不満げなリル。シン、マリス、マックスはどこか手持ちぶさたな様子でウェンディと人々とのやり取りを眺めている。
「……うおっほんっ!!うおっほんっっ!!!」
リルがわざとらしく自分に注目を集めようとしている。
………が、歓喜に沸(わ)く人々はいっかなリルに目を向けようとはしない。
「…おおお~~~~いっっ!!!無視するなーーーーーーーっっっ!!!」リルが声を限りに叫ぶとようやく人々のうち何人かがこちらに気づいた。
「……もう、一体何なんですか?」髪を上で一つの団子にまとめた長いスカート姿の主婦らしき中年女性が実に鬱陶しそうに尋ねる。
「……こほん。わしらは聖都ラングーンより来たりし魔導騎士団である!!この先のトーリスへと渡る為の橋が壊れておってどうにもならん!この街に数人乗れる位の小舟を貸してくれる者はおらんかのう!」と胸を張りつつも若干のドヤ顔でリルが言い放つ。
女性は途端に態度を変えて、「申し訳ございませんでした!!まさか魔導騎士団の方々とは露知らずとんでもないご無礼を!」と平身低頭して謝罪する。その正面ではリルが満足そうにうむ、うむ、と一人頷いている。
「えぇと、街の漁業ギルドの顔役デル様ならば魔導騎士団の要請とあらばすぐにでも舟とそれを運ぶ人足を何人か貸してくださると思います。この先の広場を右に折れた突き当たりに家がありますわ。」と恐縮しきった様子の中年女性が道の先へと指を向けた。
「わかった。礼を言うぞ。」とやや高飛車にリルが言うと、「トンでもございません!!それでは………。」と言い女性はまたウェンディに群がった人々の輪に入ってゆく。
「……という訳じゃ。皆の者、行くぞ!!」
とリルの先導で俺達は顔役の家へと向かった。
「それはそれは大変でしたな。私共といたしましてもすぐに船を貸して差し上げたいのは山々なのですが………。」ギルドの顔役デルの家へと着きこちらの事情を話したのも束の間、顔をしかめてデルは口ごもる。
「……実は最近海の方から得たいの知れぬ巨大な魚がここテヘの港にまで入り込んでは停めてある漁業用の船を壊して回っておるのです。我々もほとほと手を焼いておりまして………。」
「わかった。ならば我ら魔導騎士団がその不届きな化け物をたいじゅしてやろうぞ!!」
「……リル様、退治です……。」大事なところで噛んだリルにマリスがすかさず突っ込む。
「本当ですか!それは有り難いです!感謝します!!」と喜ぶデル。その横でシンがやれやれと行った風に首を振る。
こうして俺達は謎の怪魚を倒すというクエストを受けることになった。
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