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第43話
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11月13日午前1時
堤下は、車を降りて山の中へと入っていった荒垣の跡を追って山道をさまよっていた。
最初こそ、順調に尾行していたものの、慣れない傾斜を上ったり下ったりしているうちに派手に転んでしまい、そうこうしているうちに荒垣の姿をすっかり見失ってしまっていた。
「…………まずいな。どこにもいない」
焦りが胸のうちでどんどん膨れ上がってくる。
ーーと。
「……いやああああああああああああああ!!」
「…………………………………………!!」
右手から女性の悲鳴が聞こえた。
慎重に近づいていくと、荒垣と思われる人影と地面に倒れていく女性の姿が目に入った。
…………………………………………?
はたしてあんなに荒垣は大柄な男だっただろうか。
訝しく思いつつも、背後から近づいて言った。
「動くなっっ!!警察だっ!!
……そのまま、凶器を捨ててこちらを向けっ!!」
荒垣(?)が、ゆっくりとこちらに向き直った。
「……そ、そんなバカなっっ!!」
堤下の眼前の男は、格好こそ荒垣のものと酷似していたものの、荒垣とは似ても似つかぬ若い筋肉隆々の男だった。
「……お前、荒垣じゃあないのか……?複数犯、という訳か?」
混乱して一人呟いている堤下に、ニヤリと笑って一瞬の隙をついた男が、手の中の何か黒いものを堤下の体に当てた。
バチバチバチッッ!!
……な、これ、は、スタンガン…………?
しまった……。油断、した………………。
ゆっくりと地面に倒れていく堤下に頭上から
「……フン!やれやれ、警察も中々油断ならねぇなぁ!」
と、男が吐き捨てた。
◆ ◆ ◆ ◆
………………………………………………………………。
………………………………………………。
……………………。
堤下が目を覚ますと、コンクリートがむき出しになった小部屋の中だった。
「…………………………っっ!!」
頭が二日酔いの時のように割れるように痛んだ。
…………ここは、そうか。俺は、アイツに…………。
「…………クソッッ!!」
思わず罵倒の言葉が堤下の口からついて出る。
やがて、頭の痛みが軽くなっていくに連れて堤下の頭も冷静さを取り戻した。
と共に、習慣で携帯がしまってあるはずの、スーツの内ポケットをなんとなく、まさぐった。
「…………………………っっ!?」
当然、犯人に捕まってしまった段階でそんなものは没収されていてしかるべきなのに、ある、だと!?
慌てて、宇都宮に電話を掛けようとする。
……しかし。
そもそも、通話アプリがどういうわけか起動しない。
ネット回線にも繋がっていない。
「……そういうことか。弄びやがってっ!!」
一瞬、怒りに任せて携帯を床に叩きつけようとするが、すんでのところで思い止まって再び内ポケットに携帯をしまいこんだ。
部屋の中を見回すと、デスクと椅子が部屋の中央に置いてあったので、近づいていく。
「…………あなたの存在意義を教えてください、だぁ?」
デスクの上のノートパソコンには、そんな文言が浮かんでおり、堤下は当惑する。
ーーと。
「イヤアアアアアアアアアアア!!」
と、どこか離れた場所から女性の悲鳴が聞こえてきた。
……この声は、さっきアイツに襲われていた女性の……?
「やめてぇええええええええええええ!!」
……それから、しばらくの間、間断なく女の悲鳴が響き続けた。
堤下は、車を降りて山の中へと入っていった荒垣の跡を追って山道をさまよっていた。
最初こそ、順調に尾行していたものの、慣れない傾斜を上ったり下ったりしているうちに派手に転んでしまい、そうこうしているうちに荒垣の姿をすっかり見失ってしまっていた。
「…………まずいな。どこにもいない」
焦りが胸のうちでどんどん膨れ上がってくる。
ーーと。
「……いやああああああああああああああ!!」
「…………………………………………!!」
右手から女性の悲鳴が聞こえた。
慎重に近づいていくと、荒垣と思われる人影と地面に倒れていく女性の姿が目に入った。
…………………………………………?
はたしてあんなに荒垣は大柄な男だっただろうか。
訝しく思いつつも、背後から近づいて言った。
「動くなっっ!!警察だっ!!
……そのまま、凶器を捨ててこちらを向けっ!!」
荒垣(?)が、ゆっくりとこちらに向き直った。
「……そ、そんなバカなっっ!!」
堤下の眼前の男は、格好こそ荒垣のものと酷似していたものの、荒垣とは似ても似つかぬ若い筋肉隆々の男だった。
「……お前、荒垣じゃあないのか……?複数犯、という訳か?」
混乱して一人呟いている堤下に、ニヤリと笑って一瞬の隙をついた男が、手の中の何か黒いものを堤下の体に当てた。
バチバチバチッッ!!
……な、これ、は、スタンガン…………?
しまった……。油断、した………………。
ゆっくりと地面に倒れていく堤下に頭上から
「……フン!やれやれ、警察も中々油断ならねぇなぁ!」
と、男が吐き捨てた。
◆ ◆ ◆ ◆
………………………………………………………………。
………………………………………………。
……………………。
堤下が目を覚ますと、コンクリートがむき出しになった小部屋の中だった。
「…………………………っっ!!」
頭が二日酔いの時のように割れるように痛んだ。
…………ここは、そうか。俺は、アイツに…………。
「…………クソッッ!!」
思わず罵倒の言葉が堤下の口からついて出る。
やがて、頭の痛みが軽くなっていくに連れて堤下の頭も冷静さを取り戻した。
と共に、習慣で携帯がしまってあるはずの、スーツの内ポケットをなんとなく、まさぐった。
「…………………………っっ!?」
当然、犯人に捕まってしまった段階でそんなものは没収されていてしかるべきなのに、ある、だと!?
慌てて、宇都宮に電話を掛けようとする。
……しかし。
そもそも、通話アプリがどういうわけか起動しない。
ネット回線にも繋がっていない。
「……そういうことか。弄びやがってっ!!」
一瞬、怒りに任せて携帯を床に叩きつけようとするが、すんでのところで思い止まって再び内ポケットに携帯をしまいこんだ。
部屋の中を見回すと、デスクと椅子が部屋の中央に置いてあったので、近づいていく。
「…………あなたの存在意義を教えてください、だぁ?」
デスクの上のノートパソコンには、そんな文言が浮かんでおり、堤下は当惑する。
ーーと。
「イヤアアアアアアアアアアア!!」
と、どこか離れた場所から女性の悲鳴が聞こえてきた。
……この声は、さっきアイツに襲われていた女性の……?
「やめてぇええええええええええええ!!」
……それから、しばらくの間、間断なく女の悲鳴が響き続けた。
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