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第36話
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11月12日
ーーが、廃墟となった、屋敷の前に車を止めると、玄関の扉が薄く開いているのが目に入った。
………………?なぜ、ここが開いているのか。
さては、暴走族のガキどもが入り込みやがったか。
警戒しつつ、車をおりて扉を開く。
そういう手合いが中へ入っていようとも、地下へと向かうには鍵が必要だ。
それに、さっきから耳を澄ませてはいるが、何の物音も聞こえない。
どういうことだ?風で勝手に開くはずもないのだが。
訝しげに思いながら、ーーが、地下への階段へと続く床の扉を開けようと、鍵を差し込み回そうとして、その時はじめて鍵がかかっていないことに気づいた。
……なぜ、ここが開いている?
鍵は、俺たちと売人の男しか持っていないはずだ。
鍵には、こじ開けられたような傷もついていない。
「…………まさか…………」
慌ててーーは、地下へと続く扉を開き、階段をくだって、通路を奥へと進んだ。
「…………………………………………っ!?」
先程、一人の女を連れ込み拘束していた、部屋の扉が開いている。
中に誰の姿もないことを確認すると、ーーは、踵を返して、監禁されている人間達を監視するための、モニターが取り付けられている部屋へと急いだ。
モニターの並んだ壁の前の椅子に腰を下ろし、映像を巻き戻して確認する。
「………………っっ!!チッッ!!アイツッッ!」
一つ舌打ちすると、ーーは、外へと走っていった。
◆ ◆ ◆ ◆
目の落ち窪んだ女に連れられて、マキは、深い森を抜けて、ようやくアスファルトで舗装された道へと出た。
すると、突然、先を歩いていた女が立ち止まって、肩に提げていたバッグをマキへと突きつけてきた。
「…………あの?これは?」
「……あなたは、これを持って、すぐに警察に行きなさい。連続殺人事件の証拠、とね……」
心なしかさっきよりも顔色が悪くなったように見える女が、バッグをマキの手に押し付けて言った。
そして、踵を返して、もと来た道を引き返してゆく。
「……えっ?ちょ、ちょっと!あなたは?」
女はマキの言葉に、一瞬振り返ったかと思うと、再び前を向いて歩き去る。
「………………………………………………………………」
一人、道路に残されたマキは、しばしの間その場に立ち尽くした。
◆ ◆ ◆ ◆
ーーは、屋敷の外へ出て、再び車に乗りエンジンをかけると、迷うことなく山の麓へと向かう車道へと車を走らせた。
…………あいつが、まさか俺たちの獲物を逃がすとはな……。
苦い表情を浮かべながら、ーーは、麓へと車道を下ってゆく。
ーーーーと。
50mほど先に、人影が見えた。
ーーは、車をその人影に近づけて、車を降りる。
目の落ち窪んだ女が、そのーーの様子を見ながら呆然とその場に立ち尽くしている。
その肩に手をかけてーーは、怒鳴り声をあげた。
「おいっっ!!お前ッッ!!一体どういうつもりだっっ!!」
肩を揺さぶるーーにも、女は何の反応も返してこない。まるで、魂が抜けてしまったかのようだ。
「……くそっっ!!オラッ、行くぞっっ!!」
女を無理矢理、助手席に乗せると、ーーは、エンジンをかけて、逃げ出した獲物ーー三宅マキーーを追跡していく。
ーーが、廃墟となった、屋敷の前に車を止めると、玄関の扉が薄く開いているのが目に入った。
………………?なぜ、ここが開いているのか。
さては、暴走族のガキどもが入り込みやがったか。
警戒しつつ、車をおりて扉を開く。
そういう手合いが中へ入っていようとも、地下へと向かうには鍵が必要だ。
それに、さっきから耳を澄ませてはいるが、何の物音も聞こえない。
どういうことだ?風で勝手に開くはずもないのだが。
訝しげに思いながら、ーーが、地下への階段へと続く床の扉を開けようと、鍵を差し込み回そうとして、その時はじめて鍵がかかっていないことに気づいた。
……なぜ、ここが開いている?
鍵は、俺たちと売人の男しか持っていないはずだ。
鍵には、こじ開けられたような傷もついていない。
「…………まさか…………」
慌ててーーは、地下へと続く扉を開き、階段をくだって、通路を奥へと進んだ。
「…………………………………………っ!?」
先程、一人の女を連れ込み拘束していた、部屋の扉が開いている。
中に誰の姿もないことを確認すると、ーーは、踵を返して、監禁されている人間達を監視するための、モニターが取り付けられている部屋へと急いだ。
モニターの並んだ壁の前の椅子に腰を下ろし、映像を巻き戻して確認する。
「………………っっ!!チッッ!!アイツッッ!」
一つ舌打ちすると、ーーは、外へと走っていった。
◆ ◆ ◆ ◆
目の落ち窪んだ女に連れられて、マキは、深い森を抜けて、ようやくアスファルトで舗装された道へと出た。
すると、突然、先を歩いていた女が立ち止まって、肩に提げていたバッグをマキへと突きつけてきた。
「…………あの?これは?」
「……あなたは、これを持って、すぐに警察に行きなさい。連続殺人事件の証拠、とね……」
心なしかさっきよりも顔色が悪くなったように見える女が、バッグをマキの手に押し付けて言った。
そして、踵を返して、もと来た道を引き返してゆく。
「……えっ?ちょ、ちょっと!あなたは?」
女はマキの言葉に、一瞬振り返ったかと思うと、再び前を向いて歩き去る。
「………………………………………………………………」
一人、道路に残されたマキは、しばしの間その場に立ち尽くした。
◆ ◆ ◆ ◆
ーーは、屋敷の外へ出て、再び車に乗りエンジンをかけると、迷うことなく山の麓へと向かう車道へと車を走らせた。
…………あいつが、まさか俺たちの獲物を逃がすとはな……。
苦い表情を浮かべながら、ーーは、麓へと車道を下ってゆく。
ーーーーと。
50mほど先に、人影が見えた。
ーーは、車をその人影に近づけて、車を降りる。
目の落ち窪んだ女が、そのーーの様子を見ながら呆然とその場に立ち尽くしている。
その肩に手をかけてーーは、怒鳴り声をあげた。
「おいっっ!!お前ッッ!!一体どういうつもりだっっ!!」
肩を揺さぶるーーにも、女は何の反応も返してこない。まるで、魂が抜けてしまったかのようだ。
「……くそっっ!!オラッ、行くぞっっ!!」
女を無理矢理、助手席に乗せると、ーーは、エンジンをかけて、逃げ出した獲物ーー三宅マキーーを追跡していく。
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