暴虐の果て

第31話

11月10日

ーーは、自宅のソファーの上で目覚めた。
このところ、以前よりも頭の動きがどうにも鈍っているような気がしていた。

…………やはり、これ・・のせいか。

傍らのテーブルには、ーーが、現在交際している風俗店店員の女性と共に嵌まってしまった、ある薬物の錠剤の瓶が転がっている。

ーーは、蓋のあいた瓶からこぼれ落ちた錠剤を丁寧に拾い上げて、瓶に戻して蓋をしっかりと閉めた。

ソファーから立ち上がって、頭を軽く振る。

テーブルの端に、交際している女性の書き置きがある。

"こーちゃんへ　　今日は8時頃帰ります♡　　愛を込めて　サトミより♡"

ーーは、それを見たあと軽く舌打ちし、キッチン側の換気扇をつけて、胸ポケットからタバコを一本引き抜いて火をつける。

フーーッッ。

ーーの脳裏に、1か月前の出来事が思い起こされる。

　　　　　◆　　◆　　◆　　◆

「何だって！？お前、そんなもんに手を出してたのかよっっ！？」

ーーの目の前では、サトミがヒックヒックと泣き声をあげながら、両手で零れてくる涙を拭っている。

「……ヒック、ヒック…………。だってぇ、ダイエットに最適とかって、説明されてたんだもん…………」

鼻から鼻水を垂らし、泣きわめきながら、サトミがーーに弁解した。

……どうも、最近、体が思うに任せないことが続いていた。

不審に思ったーーが、問い詰めると、サトミはインターネット経由で、ある薬物を入手して少し前から使っている、と白状した。

サトミの話によると、その薬物を一度止めようとしたところ、激しい頭痛と吐き気に襲われて
その禁断症状を抑えるため、やむなく今日まで使い続けている、と言うことだった。

「…………くそっっ！！てえことは、これには、常習性があるってことじゃないかよっっ！！どうしてくれんだよっっ！？」

怒りの余り、ーーの顔が、ドス黒く変色する。

「…………ヒック……。……ヒック……。ごべんなざい～～～～～！！」

顔をグシャグシャにしながら、サトミはーーに謝り続けたのだった。

　　　　　◆　　◆　　◆　　◆

「……やれやれ。一体、どうしたもんかな…………」

ーーは、タバコを燻らせながら、一人呟くとまだ、軽く甘い痺れの残る頭をもう一度振った。