暴虐の果て

たじ

文字の大きさ
上 下
30 / 45

第30話

しおりを挟む
11月3日

京子は、その日もブロック状の栄養補助食品を食べたあと、ビロード張りのソファーでゴロゴロしていた。

「つまんない!!つまんない、つまんない~~~~!!」

駄々っ子のように、ソファーの上で手足をジタバタとさせる。

京子の囚われている部屋には、一応パソコンがあるものの、どうやら、起動するのにパスワードが必要らしく、今日まで何度となく思い付いたワードを入力したものの、一向に正解できないでいた。

「……は~~~~あ………。……せめて、あのパソコンが動けば、まだ退屈しないで済みそうなのになあ~~~」

すると、京子のその言葉に反応したように、突然、机の上のノートパソコンが起動し始める。

「えっっ!?」

慌ててソファーから身を起こして、パソコンの置かれた机に近づく京子。

パソコンの画面に、アイコンが次々と表示されてゆく。

椅子に座り、よくわからないドクロマークのアイコンをクリックしてみる。

…………どうやら、このファイルには、幾つかの動画が収められているようだ。

動画の一つをクリックして開いてみる。

薄暗い部屋に、ベッドに手足を拘束された若い女性が一人。その傍らには、パーカーのフードを目深に被り、口にマスクをした男が、片手にメスのようなものをぶら下げて、冷たい目で女性を見下ろしている。

女性は、猿ぐつわのようなものを噛まされて、うう~~っ、うう~~っ、と呻き声をあげながら、嫌々をするように首を左右に振り続けている。

パーカーの男は、こちらからは、丁度正面となる位置の、女性の拘束されているベッドの横まで回り込むと、真っ裸の女性の白い肌に手に持ったメスで軽く切りつけた。

ううっっ~~~、ううっっ~~~、と切りつけられた女性が、目尻に涙を浮かべながらくぐもった悲鳴をあげる。

「ヤダ……!!……なに、これ!?」

京子は、残酷な、とても作り物とは思われない映像に思わず、クリックして一時停止をかける。

「…………これって、まさか………………」

今、一時停止をしてみて初めて気づいたことだが、なんとなくベッドに拘束されている女性の顔に見覚えがあるような…………。

京子の脳裏に、ここに拐われてくる前に見た、ワイドショーのニュースが思い出される。

「…………犯人は、いまだ捕まっておらず、今のところ、一月に一回の頻度で被害者の遺体が発見されており………………」

「…………嘘でしょ!?ひょっとしなくても、あのストーカーが、連続殺人事件の犯人だったの!?」

京子の頭は真っ白になり、顔と震えている唇が青白く染まってゆく。

外では雨が降っているらしく、天井の通気孔からは雨音が響いていた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

甘いマスクは、イチゴジャムがお好き

猫宮乾
ホラー
 人間の顔面にはり付いて、その者に成り代わる〝マスク〟という存在を、見つけて排除するのが仕事の特殊捜査局の、梓藤冬親の日常です。※サクサク人が死にます。【完結済】

ヶケッ

ほづみエイサク
ホラー
ある森の深い場所に、老人介護施設がある そこに勤める主人公は、夜間の見回り中に、猟奇的な化け物に出会ってしまった 次の日、目が覚めると、いなくなったはずの猫と寝ていて―― 徐々に認識が壊れていく、サイコホラー ※カクヨムでも同時連載中

声にならない声の主

山村京二
ホラー
『Elote』に隠された哀しみと狂気の物語 アメリカ・ルイジアナ州の農場に一人の少女の姿。トウモロコシを盗んだのは、飢えを凌ぐためのほんの出来心だった。里子を含めた子供たちと暮らす農場経営者のベビーシッターとなったマリアは、夜な夜な不気味な声が聞こえた気がした。 その声に導かれて経営者夫妻の秘密が明らかになった時、気づいてしまった真実とは。 狂気と哀しみが入り混じった展開に、驚愕のラストが待ち受ける。

私のシンゾウ

駄犬
ホラー
冒頭より——  いつからだろうか。寝息がピタリと止まって、伸び縮みを繰り返す心臓の動きが徐に鈍化していく姿を想像するようになったのは。神や仏の存在に怯えるような誠実さはとうの昔に手放したものの、この邪な願いを阻んでいるのは、形而上なる存在に違いないと言う、曖昧模糊とした感覚があった。  血を分け合った人間同士というのは特に厄介である。スマートフォンに登録されている情報を消去すれば無かったことにできる他人とは違って、常に周囲に付き纏い、私がこの世に生まれてきた理由でもある為、簡単に袂を分かつことは出来ない。家の至る所で愚痴と嘆息を吐き散らし、湿り気を醸成する私の悩みは、介護の対象となった父の行動だ。 18時更新

ルール

新菜いに/丹㑚仁戻
ホラー
放課後の恒例となった、友達同士でする怪談話。 その日聞いた怪談は、実は高校の近所が舞台となっていた。 主人公の亜美は怖がりだったが、周りの好奇心に押されその場所へと向かうことに。 その怪談は何を伝えようとしていたのか――その意味を知ったときには、もう遅い。 □第6回ホラー・ミステリー小説大賞にて奨励賞をいただきました□ ※章ごとに登場人物や時代が変わる連作短編のような構成です(第一章と最後の二章は同じ登場人物)。 ※結構グロいです。 ※この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません。 ※カクヨム、小説家になろうにも掲載しています。 ©2022 新菜いに

煩い人

星来香文子
ホラー
陽光学園高学校は、新校舎建設中の間、夜間学校・月光学園の校舎を昼の間借りることになった。 「夜七時以降、陽光学園の生徒は校舎にいてはいけない」という校則があるのにも関わらず、ある一人の女子生徒が忘れ物を取りに行ってしまう。 彼女はそこで、肌も髪も真っ白で、美しい人を見た。 それから彼女は何度も狂ったように夜の学校に出入りするようになり、いつの間にか姿を消したという。 彼女の親友だった美波は、真相を探るため一人、夜間学校に潜入するのだが…… (全7話) ※タイトルは「わずらいびと」と読みます ※カクヨムでも掲載しています

最終死発電車

真霜ナオ
ホラー
バイト帰りの大学生・清瀬蒼真は、いつものように終電へと乗り込む。 直後、車体に大きな衝撃が走り、車内の様子は一変していた。 外に出ようとした乗客の一人は身体が溶け出し、おぞましい化け物まで現れる。 生き残るためには、先頭車両を目指すしかないと知る。 「第6回ホラー・ミステリー小説大賞」奨励賞をいただきました!

かなざくらの古屋敷

中岡いち
ホラー
『 99.9%幽霊なんか信じていない。だからこそ見える真実がある。 』 幼い頃から霊感体質だった萌江は、その力に人生を翻弄されて生きてきた。その結果として辿り着いた考えは、同じ霊感体質でパートナーの咲恵を驚かせる。 総てを心霊現象で片付けるのを嫌う萌江は、山の中の古い家に一人で暮らしながら、咲恵と共に裏の仕事として「心霊相談」を解決していく。 やがて心霊現象や呪いと思われていた現象の裏に潜む歴史の流れが、萌江の持つ水晶〝火の玉〟に導かれるように二人の過去に絡みつき、真実を紐解いていく。それは二人にしか出来ない解決の仕方だった。 しかしその歴史に触れることが正しい事なのか間違っている事なのかも分からないまま、しだいに二人も苦しんでいく。 やがて辿り着くのは、萌江の血筋に関係する歴史だった。

処理中です...