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第16話
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4月15日
あれから宇都宮率いる捜査一課の面々は犯人検挙のため地道に捜査を続けていた。
しかし捜査を続けども続けども一向に犯人へと繋がる手がかりは発見できず最初の遺体発見から2か月が過ぎようとしていた。
そんなある日の朝の事。
「何だと?3体目の死体が発見されただって?」
前日から警察署に泊まり込んでいた宇都宮の元に部下からの報告がもたらされた。
その日S市内の高架下で不審な黒いゴミ袋が発見され中から例の動画の一つに映っていた女性一人のバラバラ死体が発見された。
毎日通勤のためその高架下を通っていたサラリーマンが異様な臭気に不審を感じて朝方110番通報してきて事件は発覚した。
今回発見された遺体はその外見的な特徴から動画内で硫酸らしき液体を犯人にかけられて殺された女性だと思われ今科捜研で鑑定が進められている。
「……いよいよ早く犯人を検挙しなければ……。」
そう呟いた宇都宮の顔は焦りと苦悶に歪んでいた。
今回の犯人は10年程前に起こった連続殺人事件の
コピーキャットではないかという声が捜査本部の一部から上がっていた。
その事件の犯人の男も今は無き某動画投稿サイトに残虐な殺人映像を投稿しており動画投稿の後被害者の遺体が複数発見されて事件が発覚した。
……確かに手口は完全に似通っていると言わざるを得ない。
そして今回の3体目の被害者の発見である。
宇都宮も犯人が動画サイトに逐一殺人映像を投稿している点、またその手口の残虐性からその線があり得る気がしてきていた。
「……一刻も早く犯人を検挙しなければ……。」
もう一度宇都宮は呟いた。
◆ ◆ ◆ ◆
10月20日
先日荒垣達は入江京子のストーカーがインターネットを通じて雇ったアルバイトの男が入江家に怪文書を投函している所を捕まえた。その男からの情報を元に荒垣探偵事務所の面々が調査した所どうやらストーカーの男は闇サイトで違法な薬物らしきものを複数の顧客に売っているらしい、ということが判明した。
そしてその顧客リストには当のストーカーの調査依頼をしてきた入江真美本人の名前が記載してあった。
「……やっぱり薬物をやってたかあの奥さん……。」
荒垣が所長デスクでタバコを吹かしながら苦々しげに呟く。
「……やっぱりって、彼女そんな不審な行動とかしてましたっけ?」
傍らにいた仮戸川が訝しげな顔で荒垣に尋ねる。
「……ああ。残念なことにその場にいたら誰もがわかるレベルでおかしかったな。この間の調査報告の時だ。瞳孔が完全に開ききってた。」
「……へぇー。人は見かけによらないもんですねー。」
仮戸川が心底驚いたように呆然とした顔で言った。そしてややあって一人呟く。
「……ん?ってことは鼻からあの奥さんストーカーに心当たりがあったってことか?だから依頼に来た時どこか変だったんだ……。」
「……そうだったのか?お前そういう細かいとこもちゃんと報告しろよ!」
荒垣に叱責されて仮戸川は気まずそうにひきつった笑みを浮かべた。
あれから宇都宮率いる捜査一課の面々は犯人検挙のため地道に捜査を続けていた。
しかし捜査を続けども続けども一向に犯人へと繋がる手がかりは発見できず最初の遺体発見から2か月が過ぎようとしていた。
そんなある日の朝の事。
「何だと?3体目の死体が発見されただって?」
前日から警察署に泊まり込んでいた宇都宮の元に部下からの報告がもたらされた。
その日S市内の高架下で不審な黒いゴミ袋が発見され中から例の動画の一つに映っていた女性一人のバラバラ死体が発見された。
毎日通勤のためその高架下を通っていたサラリーマンが異様な臭気に不審を感じて朝方110番通報してきて事件は発覚した。
今回発見された遺体はその外見的な特徴から動画内で硫酸らしき液体を犯人にかけられて殺された女性だと思われ今科捜研で鑑定が進められている。
「……いよいよ早く犯人を検挙しなければ……。」
そう呟いた宇都宮の顔は焦りと苦悶に歪んでいた。
今回の犯人は10年程前に起こった連続殺人事件の
コピーキャットではないかという声が捜査本部の一部から上がっていた。
その事件の犯人の男も今は無き某動画投稿サイトに残虐な殺人映像を投稿しており動画投稿の後被害者の遺体が複数発見されて事件が発覚した。
……確かに手口は完全に似通っていると言わざるを得ない。
そして今回の3体目の被害者の発見である。
宇都宮も犯人が動画サイトに逐一殺人映像を投稿している点、またその手口の残虐性からその線があり得る気がしてきていた。
「……一刻も早く犯人を検挙しなければ……。」
もう一度宇都宮は呟いた。
◆ ◆ ◆ ◆
10月20日
先日荒垣達は入江京子のストーカーがインターネットを通じて雇ったアルバイトの男が入江家に怪文書を投函している所を捕まえた。その男からの情報を元に荒垣探偵事務所の面々が調査した所どうやらストーカーの男は闇サイトで違法な薬物らしきものを複数の顧客に売っているらしい、ということが判明した。
そしてその顧客リストには当のストーカーの調査依頼をしてきた入江真美本人の名前が記載してあった。
「……やっぱり薬物をやってたかあの奥さん……。」
荒垣が所長デスクでタバコを吹かしながら苦々しげに呟く。
「……やっぱりって、彼女そんな不審な行動とかしてましたっけ?」
傍らにいた仮戸川が訝しげな顔で荒垣に尋ねる。
「……ああ。残念なことにその場にいたら誰もがわかるレベルでおかしかったな。この間の調査報告の時だ。瞳孔が完全に開ききってた。」
「……へぇー。人は見かけによらないもんですねー。」
仮戸川が心底驚いたように呆然とした顔で言った。そしてややあって一人呟く。
「……ん?ってことは鼻からあの奥さんストーカーに心当たりがあったってことか?だから依頼に来た時どこか変だったんだ……。」
「……そうだったのか?お前そういう細かいとこもちゃんと報告しろよ!」
荒垣に叱責されて仮戸川は気まずそうにひきつった笑みを浮かべた。
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