暴虐の果て

たじ

文字の大きさ
上 下
12 / 45

第12話

しおりを挟む
4月12日

「……ハァーッ……!」

俺は息を詰めて隠れていたロッカーから出て一息ついた。

迷い込んだ部屋は10畳程の広さで、部屋の中央にはパイプ椅子とスチール机が一つずつ置いてあり、部屋の左隅には先程俺が身を隠していたロッカーが、そして右側の壁際には金属製のキャビネットが置いてある。

キャビネットの上部にはガラス戸がついており、ガラスを透かして見ると、中には何かの液体が入った茶色の薬品の瓶のようなものがギッシリと詰め込まれている。

一体、何だろこれ……?

何だか妙にキャビネットが気になった。

一応キャビネットには鍵が掛かっているものの、机の上には無造作に鍵が置いてあったのでとりあえず鍵穴に鍵を差し込むとすんなり鍵は開いた。

キャビネットの下部の戸を開くと、中にはプラスチックのファイルが何冊か置いてある。

一冊抜き出してパラパラとめくってみる。

そこには、薬品瓶に詰められた液体について汚い字で記述があった。

"この薬はアイツの隠れ家から頂戴してきたものを元に更なる調整が加えてある。
キマルと幻覚と過去の出来事がグチャグチャになってすんごい気持ちよくなれる。
元の薬は未知の深海魚の身を使ったものみたいだけど、それ以外にも色々混ざってる。
それについてはファイルAを参照の事。"

「……何だこれ?ドラッグなのこれ?」

思わず茶色の薬品瓶をジッと見てしまう。

……とりあえず続きを読もう。

"監禁したやつらにはこの薬を直接注射したり、混ぜたパンと水を与えてある。一度これをやると中毒性がエグいからヤメられなくなる。ヤメようとすると耐えられなくなる程、頭痛と吐き気に襲われちゃう!でも、俺は一杯持ってるからだいじょーび!!"

……ちょっと待てよ……。……じゃあ、俺も………?
ゾワリ、と背筋が寒くなった。

……この記述が本当なら、薬も一緒に持っていった方がいいんじゃないか?
じゃないと、逃げてる途中で禁断症状が出たりしたら大変な事になるんじゃあ……?

……例え警察に届けるにしろ、薬の禁断症状に耐えられなくなって使ってしまうにしろ、どちらにしても何本か持っていった方が…………。

でも、何か瓶を持ち運べるような入れ物がないと、剥き出しのまま持っていく訳にもいかないな……。

そこで俺がさっき入っていたロッカーを開けて見てみると、ちょうどおあつらえ向きにナイロン製のリュックサックが一つ入っていた。

「……………………。
……とりあえずファイルと薬瓶をリュックに詰めよう。」

……そして俺はファイルと薬の瓶を詰めたリュックサックを担いで部屋からソーッと音を立てないように出た。





しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

S県児童連続欠損事件と歪人形についての記録

幾霜六月母
ホラー
198×年、女子児童の全身がばらばらの肉塊になって亡くなるという傷ましい事故が発生。 その後、連続して児童の身体の一部が欠損するという事件が相次ぐ。 刑事五十嵐は、事件を追ううちに森の奥の祠で、組み立てられた歪な肉人形を目撃する。 「ーーあの子は、人形をばらばらにして遊ぶのが好きでした……」

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

アイドルグループの裏の顔 新人アイドルの洗礼

甲乙夫
恋愛
清純な新人アイドルが、先輩アイドルから、強引に性的な責めを受ける話です。

大嫌いな歯科医は変態ドS眼鏡!

霧内杳/眼鏡のさきっぽ
恋愛
……歯が痛い。 でも、歯医者は嫌いで痛み止めを飲んで我慢してた。 けれど虫歯は歯医者に行かなきゃ治らない。 同僚の勧めで痛みの少ない治療をすると評判の歯科医に行ったけれど……。 そこにいたのは変態ドS眼鏡の歯科医だった!?

病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない

月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。 人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。 2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事) 。 誰も俺に気付いてはくれない。そう。 2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。 もう、全部どうでもよく感じた。

師走男と正月女 ~ 地方に伝わる奇妙な風習 ~

出口もぐら
ホラー
師走男と正月女 ―― それは地方に今も伝わる風習。  心待にしていた冬休み、高校生の「彼女」  母方の実家は地方で小規模な宿泊施設を営んでおり、毎年その手伝いのため年末年始は帰省することになっている。「彼女」は手伝いをこなしつつではあるものの、少しだけ羽を伸ばしていた。  そんな折、若い男女が宿泊していることを知る。こんな田舎の宿に、それもわざわざ年末年始に宿泊するなんて、とどこか不思議に思いながらも正月を迎える。 ―― すると、曾祖母が亡くなったとの一報を受け、賑やかな正月の雰囲気は一変。そこで目にする、不思議な風習。その時に起こる奇妙な出来事。  「彼女」は一体、何を視たのか ――。 連載中「禁色たちの怪異奇譚」スピンオフ

処理中です...