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ハルトたちは、ラボスが魔法で起こした炎の回りで一日野宿して、再び朝から山頂目指して登山を続けていた。
「ハアハアハア…………」
「フーフーフー」
「二人とも頑張って!このペースだと遅くても夕方までには山頂にたどり着けるだろうから」
ハルトたちから少し離れた場所からまた激しい落雷の音が聞こえてくる。
ゴゴゴゴゴゴゴ…………。
空は相変わらずどんよりとしており、ポツポツと雨が降ってきていた。
「……むっっ!?」
と、突然ラボスが立ち止まって背後の空を見上げ険しい表情を浮かべた。
ハルトが思わず声をかける。
「どうかしたんですか?」
「……どうやら、魔王軍のお出ましのようだ……」
「……えっ!?」
「……くそっ!やはり魔力遮断の魔法では今の僕のパワーアップした魔力は完全には遮断できないようだな……」
そんなやり取りをしている間にも、背後の空から翼を持ったモンスターたちがこちらにやって来るのが見える。
「……とりあえず、二人とも僕の後ろに」
ラボスが言うと、ハルトと百合江はラボスの背後に回り込む。
バサッバサッバサッ、という羽ばたきの音が段々近づいてきて、遂に旋風のパルスとその配下のモンスターたちがハルトたちの眼前までやって来た。
「……あっらぁ~~~~!……あなた、勇者じゃないの?……一体なんでこんな禍々しい魔力の持ち主と一緒にいるのかしらぁ~~~~?」
パルスがニヤニヤした笑いを浮かべながらそう言うと、ラボスが決然とした表情で言った。
「……彼らには手出しさせないぞ!!」
「……あらあら、勇ましいとこだわね。……でもでも、あたしたちにも魔王様から賜った崇高な使命があるのよねぇ~~。
……あなたたちっ!この男を倒してしまいなさいっ!!」
パルスが言うと、カラスの体に大きな蛾の羽を持ったモンスターたちが一斉にラボスヘ襲いかかった。
しかし、ラボスが事前にかけておいた魔法の壁に阻まれてモンスターたちは、弾かれて山道に転がってゆく。
「……あらあら、おイタさんねぇ。絶対防御ってわけ?……困ったわぁ」
ホウ、と悩ましげにため息をつくと、パルスが手に持った破滅の杖をじっと見つめて、
「……しょうがないわね。本当はあまりこれは使いたくはないのだけど……。魔力暴走!!」
パルスが魔法を唱えると、パルスの持った杖からまばゆい光が溢れだしパルスの全身を覆っていく。
「……くっっ!!」
ハルトたちはその眩しさに思わず目を瞑った。
やがて、光が消えると、巨大な灰色ののっぺりした表面の人型へとパルスは変形していた。
その体に体毛は一切無く、顔には彫刻刀で刻み付けたような目と口がついている。
妖しく黄色に輝く目を見開いてパルスが、
「……フンッッッ!!」
と、右の拳を振るうと、ハルトたちを守っていた魔法の壁に亀裂が入り、パーン、という音を立てて崩壊した。
「ば、バカなっっ!!……これほどとは……」
ラボスが一層表情を険しくして言った。
「……さて、あなたたち。覚悟してもらいましょうか?」
パルスが、そんなラボスを見てニヤリと笑い言った。
「ハアハアハア…………」
「フーフーフー」
「二人とも頑張って!このペースだと遅くても夕方までには山頂にたどり着けるだろうから」
ハルトたちから少し離れた場所からまた激しい落雷の音が聞こえてくる。
ゴゴゴゴゴゴゴ…………。
空は相変わらずどんよりとしており、ポツポツと雨が降ってきていた。
「……むっっ!?」
と、突然ラボスが立ち止まって背後の空を見上げ険しい表情を浮かべた。
ハルトが思わず声をかける。
「どうかしたんですか?」
「……どうやら、魔王軍のお出ましのようだ……」
「……えっ!?」
「……くそっ!やはり魔力遮断の魔法では今の僕のパワーアップした魔力は完全には遮断できないようだな……」
そんなやり取りをしている間にも、背後の空から翼を持ったモンスターたちがこちらにやって来るのが見える。
「……とりあえず、二人とも僕の後ろに」
ラボスが言うと、ハルトと百合江はラボスの背後に回り込む。
バサッバサッバサッ、という羽ばたきの音が段々近づいてきて、遂に旋風のパルスとその配下のモンスターたちがハルトたちの眼前までやって来た。
「……あっらぁ~~~~!……あなた、勇者じゃないの?……一体なんでこんな禍々しい魔力の持ち主と一緒にいるのかしらぁ~~~~?」
パルスがニヤニヤした笑いを浮かべながらそう言うと、ラボスが決然とした表情で言った。
「……彼らには手出しさせないぞ!!」
「……あらあら、勇ましいとこだわね。……でもでも、あたしたちにも魔王様から賜った崇高な使命があるのよねぇ~~。
……あなたたちっ!この男を倒してしまいなさいっ!!」
パルスが言うと、カラスの体に大きな蛾の羽を持ったモンスターたちが一斉にラボスヘ襲いかかった。
しかし、ラボスが事前にかけておいた魔法の壁に阻まれてモンスターたちは、弾かれて山道に転がってゆく。
「……あらあら、おイタさんねぇ。絶対防御ってわけ?……困ったわぁ」
ホウ、と悩ましげにため息をつくと、パルスが手に持った破滅の杖をじっと見つめて、
「……しょうがないわね。本当はあまりこれは使いたくはないのだけど……。魔力暴走!!」
パルスが魔法を唱えると、パルスの持った杖からまばゆい光が溢れだしパルスの全身を覆っていく。
「……くっっ!!」
ハルトたちはその眩しさに思わず目を瞑った。
やがて、光が消えると、巨大な灰色ののっぺりした表面の人型へとパルスは変形していた。
その体に体毛は一切無く、顔には彫刻刀で刻み付けたような目と口がついている。
妖しく黄色に輝く目を見開いてパルスが、
「……フンッッッ!!」
と、右の拳を振るうと、ハルトたちを守っていた魔法の壁に亀裂が入り、パーン、という音を立てて崩壊した。
「ば、バカなっっ!!……これほどとは……」
ラボスが一層表情を険しくして言った。
「……さて、あなたたち。覚悟してもらいましょうか?」
パルスが、そんなラボスを見てニヤリと笑い言った。
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