絶望の魔王

3-2

春人が目を覚ますと、そこは緑色の液体が満たされた大きなカプセルの中だった。

……俺は一体……？
緑の液体の作用により、春人の頭はうまく働かなくなっており、ここへ連れてこられるまでの経緯をサッパリ思い出せなかった。

やがて、春人は再び深い眠りへと誘われていった。


　　　　　◆　　◆　　◆　　◆

「……………………………………っ！………………！」

……なにやら、騒がしい声が聞こえた気がして春人は目を覚ました。

すると、春人の頭上から4本の腕がニュッと伸びてきて、春人はカプセルから乱暴に引っ張り出された。

2人の鎧を身に付けた屈強そうな男たちが、カプセルに立て掛けた幅の広い梯子から、床へと春人の体を下ろした。

「……ゴホッゴホッゴホッ！！」

咳き込んだ春人の口から、床へ緑の液体がぶちまかれる。

そして、それまで朦朧としていた、春人の頭はようやくクリアになってゆき、ここまで連れてこられた経緯が脳裏に思い出された。
春人は、目の前の2人の男たちに怒りを覚えつつ、強い口調で言った。

「お前たちっ！！よくも、俺に薬を盛ってくれたなっ！！目的は一体何だっっ！！」

激昂する春人を冷ややかな目で眺めたあと、男の一人がやれやれ、というように、肩を竦めてフーッ、とため息をつく。

「何だよっ！！その態度はっっ！！」

その時、ツカツカと部屋の外から複数の人間がこちらにやって来る足音がして扉が開かれた。

紫色の衣をまとった老人が、脇に鎧をまとった男を2人連れて、扉から姿を現した。

「フン！！もう目覚めたか……。少し、薬を加減しすぎたか？おい！！」

老人が、傍らの男に声をかけると、男は春人の方に向き直り、なにやら聞きなれない呪文のような言葉を口にした。

「…………………………………………っっ！！クッッ！！」


その瞬間、春人の全身に痺れが走り、たまらず春人はその場にくずおれる。

「フフフフフフ…………。たっぷり可愛がった後、生け贄となってもらうぞ」

老人の冷淡な瞳がうずくまった春人の背中に注がれる。続けて老人が男たちに言った。

「おい、お前たち！こいつを分析室へ連れて行けっ！」

男たちは話し合い、一人を老人の護衛役として残し、残りの3人で春人を引きずって部屋を出ていく……。


白い内装の分析室には、床に足を固定されたベッドが、10床ほど並べられており、男たちはそのうちの一つに春人を寝かせると、備え付けられている革のバンドで、その手足を拘束してゆく。

「……ぐっ！！うっっ！！」

相変わらず、体に痺れの残る春人が低く呻き声をあげた。