39 / 57
2-18
しおりを挟む
ハルトと百合江を抱えてラーヌから飛び立ったラボスは、再び古代遺跡デル・バンバへと戻ってきた。
地上に降り立ち、ハルトと百合江を下ろすと、ラボスは地面にうずくまり、苦悶の表情を浮かべる。
「ラボスさんっっ!!大丈夫ですかっ?」
ハルトが、うずくまっているラボスの両肩に両手を添えて、心配そうな顔で言った。
「……グッ!!……うぅっっ!!」
ラボスは、ハルトの言葉に答えることなく、低く呻いた。額からは玉のような汗が次々と流れ地面へと落ちてゆく。
一体どうしたのだろうか?それに、ラボスのこのまるでモンスターのような姿は………………。
「百合江!すまないけど、手を貸してくれないか?ここにいては、誰かに見つかるかもしれない。とりあえず、遺跡の中に移動しよう」
ハルトと百合江は、ラボスを両側から支えると、デル・バンバの中へと入っていった。
「…………暗いな」
遺跡の入り口でハルトがそう呟くと、百合江が魔法を唱え、小さな火の玉が目の前に出現した。
「見よう見まねでやってみたけど、うまく行ったみたい」
百合江が、はにかみながら言った。
「凄いな。…………他の魔法も使えるのか?」
「…………やってみないと、分からないけど、多分…………。……私、あの場所で、モンスターの体を無理やりくっつけられたりしたから、それで魔法が使えるのかも…………」
自信なさげに百合江が答える。
「よし。もう少し先に行くと、広い祭壇の間があるから、そこまでラボスを運ぼう。…………百合江、大丈夫か?きついなら、俺一人でも何とかして運ぶけど……」
「…………大丈夫。少し位なら…………」
そうして、ラボスを支えながら2人は、金色のオーブが妖しい輝きを放つ、奥の祭壇の間までたどり着いた。
2人は、ラボスを床に下ろすと、ホッと一息つく。
「…………まあ、ここなら簡単には見つからないかな…………。……でも、また、魔力探知を使われたら…………」
「…………私が、魔力の遮断、やってみようか?」
百合江はそう言うと、ハルトに向き直って呪文を唱える。
「魔力遮断!」
ハルトの体が、赤い光に包まれてやがて、光が消えてゆく。
「…………これで、大丈夫だと思うけど…………」
「……百合江、一体いつ魔法を?」
「…………研究所にいる間、色々あったから…………」
言葉少なに答える百合江。
場にどことなく、気まずい沈黙が流れる。
「…………まあ、なにはともあれ、良かったよ!
再び、お前と生きて会えるなんて…………。俺は……俺は…………!」
ハルトの両目から、知らず知らず涙が頬を伝い落ちる。
百合江も、疲れきった顔で涙ぐみ、二人は実に7年ぶりに熱い抱擁を交わした。
地上に降り立ち、ハルトと百合江を下ろすと、ラボスは地面にうずくまり、苦悶の表情を浮かべる。
「ラボスさんっっ!!大丈夫ですかっ?」
ハルトが、うずくまっているラボスの両肩に両手を添えて、心配そうな顔で言った。
「……グッ!!……うぅっっ!!」
ラボスは、ハルトの言葉に答えることなく、低く呻いた。額からは玉のような汗が次々と流れ地面へと落ちてゆく。
一体どうしたのだろうか?それに、ラボスのこのまるでモンスターのような姿は………………。
「百合江!すまないけど、手を貸してくれないか?ここにいては、誰かに見つかるかもしれない。とりあえず、遺跡の中に移動しよう」
ハルトと百合江は、ラボスを両側から支えると、デル・バンバの中へと入っていった。
「…………暗いな」
遺跡の入り口でハルトがそう呟くと、百合江が魔法を唱え、小さな火の玉が目の前に出現した。
「見よう見まねでやってみたけど、うまく行ったみたい」
百合江が、はにかみながら言った。
「凄いな。…………他の魔法も使えるのか?」
「…………やってみないと、分からないけど、多分…………。……私、あの場所で、モンスターの体を無理やりくっつけられたりしたから、それで魔法が使えるのかも…………」
自信なさげに百合江が答える。
「よし。もう少し先に行くと、広い祭壇の間があるから、そこまでラボスを運ぼう。…………百合江、大丈夫か?きついなら、俺一人でも何とかして運ぶけど……」
「…………大丈夫。少し位なら…………」
そうして、ラボスを支えながら2人は、金色のオーブが妖しい輝きを放つ、奥の祭壇の間までたどり着いた。
2人は、ラボスを床に下ろすと、ホッと一息つく。
「…………まあ、ここなら簡単には見つからないかな…………。……でも、また、魔力探知を使われたら…………」
「…………私が、魔力の遮断、やってみようか?」
百合江はそう言うと、ハルトに向き直って呪文を唱える。
「魔力遮断!」
ハルトの体が、赤い光に包まれてやがて、光が消えてゆく。
「…………これで、大丈夫だと思うけど…………」
「……百合江、一体いつ魔法を?」
「…………研究所にいる間、色々あったから…………」
言葉少なに答える百合江。
場にどことなく、気まずい沈黙が流れる。
「…………まあ、なにはともあれ、良かったよ!
再び、お前と生きて会えるなんて…………。俺は……俺は…………!」
ハルトの両目から、知らず知らず涙が頬を伝い落ちる。
百合江も、疲れきった顔で涙ぐみ、二人は実に7年ぶりに熱い抱擁を交わした。
0
お気に入りに追加
6
あなたにおすすめの小説
もう死んでしまった私へ
ツカノ
恋愛
私には前世の記憶がある。
幼い頃に母と死別すれば最愛の妻が短命になった原因だとして父から厭われ、婚約者には初対面から冷遇された挙げ句に彼の最愛の聖女を虐げたと断罪されて塵のように捨てられてしまった彼女の悲しい記憶。それなのに、今世の世界で聖女も元婚約者も存在が煙のように消えているのは、何故なのでしょうか?
今世で幸せに暮らしているのに、聖女のそっくりさんや謎の婚約者候補が現れて大変です!!
ゆるゆる設定です。
王子を身籠りました
青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。
王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。
再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。
婚約破棄してたった今処刑した悪役令嬢が前世の幼馴染兼恋人だと気づいてしまった。
風和ふわ
恋愛
タイトル通り。連載の気分転換に執筆しました。
※なろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ、pixivに投稿しています。
前世と今世の幸せ
夕香里
恋愛
幼い頃から皇帝アルバートの「皇后」になるために妃教育を受けてきたリーティア。
しかし聖女が発見されたことでリーティアは皇后ではなく、皇妃として皇帝に嫁ぐ。
皇帝は皇妃を冷遇し、皇后を愛した。
そのうちにリーティアは病でこの世を去ってしまう。
この世を去った後に訳あってもう一度同じ人生を繰り返すことになった彼女は思う。
「今世は幸せになりたい」と
※小説家になろう様にも投稿しています
【取り下げ予定】愛されない妃ですので。
ごろごろみかん。
恋愛
王妃になんて、望んでなったわけではない。
国王夫妻のリュシアンとミレーゼの関係は冷えきっていた。
「僕はきみを愛していない」
はっきりそう告げた彼は、ミレーゼ以外の女性を抱き、愛を囁いた。
『お飾り王妃』の名を戴くミレーゼだが、ある日彼女は側妃たちの諍いに巻き込まれ、命を落としてしまう。
(ああ、私の人生ってなんだったんだろう──?)
そう思って人生に終止符を打ったミレーゼだったが、気がつくと結婚前に戻っていた。
しかも、別の人間になっている?
なぜか見知らぬ伯爵令嬢になってしまったミレーゼだが、彼女は決意する。新たな人生、今度はリュシアンに関わることなく、平凡で優しい幸せを掴もう、と。
*年齢制限を18→15に変更しました。
アルバートの屈辱
プラネットプラント
恋愛
妻の姉に恋をして妻を蔑ろにするアルバートとそんな夫を愛するのを諦めてしまった妻の話。
『詰んでる不憫系悪役令嬢はチャラ男騎士として生活しています』の10年ほど前の話ですが、ほぼ無関係なので単体で読めます。
最愛の側妃だけを愛する旦那様、あなたの愛は要りません
abang
恋愛
私の旦那様は七人の側妃を持つ、巷でも噂の好色王。
後宮はいつでも女の戦いが絶えない。
安心して眠ることもできない後宮に、他の妃の所にばかり通う皇帝である夫。
「どうして、この人を愛していたのかしら?」
ずっと静観していた皇后の心は冷めてしまいう。
それなのに皇帝は急に皇后に興味を向けて……!?
「あの人に興味はありません。勝手になさい!」
夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる