絶望の魔王

たじ

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「ぐわぁぁぁぁーーー!!」

「あああああああぁぁぁぁーーー!!」

「ぐふっっっっ!!」

ラボスの繰り出した、風の刃に切り裂かれ、ゼットンの配下は、悲鳴を次々に上げ、その場に倒れこんだ。

「全員、中に退避っっーーーー!!」

その様子を見て慌ててゼットンが声をあげると、残りの一団は一斉に魔術研究所の中に駆け込んだ。

「さすがのラボスでも、絶対防御アルテマ・シールドは破れまい!」

ゼットンが、魔術研究所の入り口の陰から、外のラボスの様子を伺いつつ、そう言ってほくそえむ。

絶対防御アルテマ・シールドか……。
……しかし、今の僕だったら…………」

魔術研究所内へと逃げていった、ゼットン達の様子を見つつ、ラボスは呟くと、その両手に魔力を集中し始めた。

ラボスの両手が、闇の魔力で妖しく輝き始める。

魔風刃ヘルズ・ウインド!!」

ラボスは、声をあげると共に、その闇の魔力の込められた両手を高くあげて、一気に振り下ろした。

ブウンッッッッ!!

ラボスの両手から放たれた、幾つもの妖しい闇色の風の刃が、魔術研究所を覆っている魔力の壁に、激しくぶつかる。

ドーーーーーーーーーーンッッッ!!!

瞬間、魔術研究所入り口周辺に、激しい土煙が上がった。

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ……………………。

やがて、土煙が晴れていく。

それでも、ゼットン達の手によって作り上げられた、絶対防御アルテマ・シールドによる魔力の壁はビクともしていない。

ゼットンが思わず高笑いをあげて言った。

「……フハハハハハハ!!やはり、お前の魔力をもってしても、この絶対防御アルテマ・シールドの壁は……」

しかし。
ゼットンが言い終わらない内に、
ピシィィッッッ!!、と魔術研究所全体を覆っていた、白い魔力の壁のあちらこちらに亀裂が入り、絶対防御アルテマ・シールドによる魔力の壁は、無惨にも全壊した。

それを見てとったゼットンが、狼狽しながら声をあげる。

「そ、そんなバカなっっ!!最高位の防御結界が破られる、だと!?」

そんなゼットンの様子を冷たい眼で見ながら、ラボスが言った。

「…………さて、覚悟してもらおうじゃないか」

ゆっくりと、近づいてくるラボスに気圧されて、ゼットンの配下の騎士達がその場から悲鳴をあげて逃げ出す。

「ば、化物っっーーーーーー!!」

「ひえええええええええっっーーーーー!!」

金縛りにあったように動けなくなっている、ゼットンの側まで来ると、ラボスは鋭い爪の生えた右手でその胸を一気に貫いた。

「ぐふうっっっっっ!!!」

「…………ゼットン、なるべくならば、こんな最後をあなたに迎えて欲しくはなかったよ……」

そう言って、ラボスがその右手を引き抜くと、既に絶命したゼットンの体がその場に崩れ落ちる。

「…………さて。ハルト、待っててくれ!!今助けに行くからなっ!!」

そのままラボスは、魔術研究所の奥を目指し、歩みを進めていった。

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