絶望の魔王

たじ

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聖都ラーヌの正門には、魔導騎士団参謀、サーシャ・エル・グリドラ率いる魔導騎士団が、一ヶ所に集結していた。

既に、ラーヌの周囲には、いざというときのため、予め用意されていた、強力な結界が張られている。

「…………来ましたっっ!!魔王軍ですっっ!!」

ラーヌを取り囲んでいる、高い塀の上で、見張りをしていた騎士が、一団の後ろで控えていた、サーシャに報告した。

「よぉし!!皆の者!!魔力充填せよ!!」

騎士団の、傍らには、飛空挺ホワイトラグーンが停められていて、その内部の、大砲の周りに待機していた魔導騎士達が、一斉に呪文を唱え大砲へと魔力を送り込む。

「……なるべく、引き付けた方がいいか?
………………今だっ、撃ていっっ!!」

ラーヌの正面、その空中を飛行していた旋風のパルス率いるモンスターの一団に、ホワイトラグーンの大砲から、魔導迫撃砲マジックデストロイヤーが発射された。

パォーーーーン!!、という発射音と共に、モンスターの一団目掛けて、触れるものすべてを塵と化す、白いビームが襲いかかり、旋風のパルス配下の、羽を持つモンスター達を次々と消滅させていく。

…………やがて、先程までは、モンスターであった、塵々が巻き上がって、旋風のパルス率いる一団の姿は、魔導騎士団の側からは見えなくなった。

「………………やったか。」

魔導騎士団の後ろで指揮を執っている、サーシャが呟いた。

……すると、空中に上がった煙の中から、

暴風乱刃ストームブレード!!」

と声がして、目に見えない高圧の竜巻が、ラーヌの正門近くにいた、魔導騎士団を切り刻んだ。

「……グワアアアアッッッ!!」

「うわあああああああっっ!!」

「俺の腕がっっ~~~~~!!」

200人からなる、騎士団のあちらこちらから、悲鳴が上がる。

先頭にいた、数十人の騎士達は、悲鳴をあげる間もなく、無惨な骸と化していた。

「おのれぇ、まだ生きていたかっっ、化物共っっ!!
魔導迫撃砲マジックデストロイヤー、用意っっ!!」

サーシャの命令に、ホワイトラグーン内の騎士達が、再びその大砲に魔力を充填し始める。

「……させるもんですかっっ!!」

不気味なおネエ言葉と共に、先程の魔導迫撃砲マジックデストロイヤーから生き延びた、パルス配下の、赤いカラスの体から蛾の羽を生やしたモンスター達が、一斉にホワイトラグーンへと襲いかかる。

「……くそっ!!このっっ!!邪魔するなっっ!!」

「ぎゃああああああああっっ!!」

大砲へ魔力を送り込んでいた、騎士達をモンスターの群れが蹂躙していく。

逃げ場のない飛空挺の中では、騎士達は下手に魔法を使うことが出来なかった。
ホワイトラグーンが、破損することは何よりも避けなければならなかったからだ。

「…………くそっっ!!」

モンスター達の猛攻を掻い潜った騎士の一人が、
操縦席にある、赤いボタンを押した。

すると、

「グエエエエエエエッッ!!」

「ピギャアアアアアッッ!!」

と、悲鳴をあげてホワイトラグーン内にいた、モンスター達が、魔力で外へと弾き出される。

赤いボタンは、こんなときのために、魔導騎士団の人間以外を、ホワイトラグーン内部に据え付けられたマジックアイテムの魔力で、強制的に弾き出す、いわば緊急装置だった。

「…………ほほう。中々、やるじゃあないのっ!!人間共っっ!!
さあさあ、まだまだ、いくわよっっ!!」

空中にいるモンスター達の後ろで、パルスがニヤリと笑みを浮かべた。
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