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「じゃあ今日の分の魔法をかけておこう。
魔力遮断!」
あれから俺とラボスは2日程ラルの村に滞在しているがラボスの魔法のお陰でこちらの位置を探知出来ない為だろう、クリミナやその他の追っ手の魔の手はこの村まで届いていなかった。
俺達は無料でこの村に泊めてもらう代わりに家畜として飼われているルカスたちの餌となる川魚を村の近くを流れている川で調達してくることを村長から頼まれた。
釣具一式を抱えてラボスと一緒に村から30分程歩いて俺はその川までやって来た。
釣針に小さな丸い魚用の餌を取り付けて川に放り投げる。後は魚が罠にかかるのを待つだけだ。
麗らかな陽射しの下ゆっくりとした時間が流れる。
……チチチチチチチ……。
何処かで小鳥の囀りが聞こえてくる。
「ふーっ。時にはこんな時間も良いもんだね。」
横で釣糸を垂れているラボスがそう呟く。
……チチチチチチチ……。
そうしてゆったり釣りを楽しんでいると、
タタタタタ……とどこか少し離れたところから何かの動物の足音がこちらに向かってくるのが聞こえた。
「……ん?さては野生のルカスでもやって来たかな?」
そう言うとラボスは竿をその場に置いて立ち上がる。俺もつられて立ち上がった。
「……あれは……。マズイっ!!ハルトこの場から逃げよう!!
あれは恐らくサーシャの放った刺客だっ!!」
「えっ?」
「早く逃げるんだ!!さあこっちへ!!」
そう言うとラボスは川の中へと足を進める。
「この川は結構幅がありますけど……。」
と俺が尻込みすると
「そんなことより命の方が大事だ!さあ早く!」
とラボスが急かした。
「ええい!ままよ!」
そう言うと俺は川に飛び込みラボスの先導で川の向こう岸目指して水流に逆らい歩みを進める。
するとさっき動物の足音がした方向から一匹のルカスとそれに続いて4人の茶色い装束を纏った追っ手が走ってくるのが見えた。
ルカスは川の手前で止まったものの、4人の追っ手は躊躇せず川に飛び込みこちらを追いかけてくる。
「ハルトっ!僕の後ろにっ!」
ラボスがそう声をあげて俺を背中に庇うと
「水刃連!!」
と呪文を唱えて懐から何か青いキラキラした砂のようなものを追っ手に投げつける。
すると川の表面が俄に荒れ狂い高圧で発射された川の水の波が追っ手に襲いかかった。
追っ手を水が切り裂いた次の瞬間追っ手にラボスが投げつけた青い砂が妖しく輝いて追っ手の周りの水面からも水の刃が次々と彼らに襲いかかる。
「ぐっ!!」
次々と斬りつけてくる水の刃に4人のうちの一人がたまらず呻き声をあげた。
足止めされている追っ手を尻目にラボスが俺に言う。
「今のうちだ!」
そして俺達は何とか川の向こう岸までたどり着き俺達の身長よりも丈の長い草が生い茂った原っぱの片隅まで移動すると一息ついた。
「ハアハアハアハア…………。」
「ハアハア……。何とか撒いたみたいだね……。」
俺達は側に立っていた一本の木に寄りかかって少し休むことにした。
魔力遮断!」
あれから俺とラボスは2日程ラルの村に滞在しているがラボスの魔法のお陰でこちらの位置を探知出来ない為だろう、クリミナやその他の追っ手の魔の手はこの村まで届いていなかった。
俺達は無料でこの村に泊めてもらう代わりに家畜として飼われているルカスたちの餌となる川魚を村の近くを流れている川で調達してくることを村長から頼まれた。
釣具一式を抱えてラボスと一緒に村から30分程歩いて俺はその川までやって来た。
釣針に小さな丸い魚用の餌を取り付けて川に放り投げる。後は魚が罠にかかるのを待つだけだ。
麗らかな陽射しの下ゆっくりとした時間が流れる。
……チチチチチチチ……。
何処かで小鳥の囀りが聞こえてくる。
「ふーっ。時にはこんな時間も良いもんだね。」
横で釣糸を垂れているラボスがそう呟く。
……チチチチチチチ……。
そうしてゆったり釣りを楽しんでいると、
タタタタタ……とどこか少し離れたところから何かの動物の足音がこちらに向かってくるのが聞こえた。
「……ん?さては野生のルカスでもやって来たかな?」
そう言うとラボスは竿をその場に置いて立ち上がる。俺もつられて立ち上がった。
「……あれは……。マズイっ!!ハルトこの場から逃げよう!!
あれは恐らくサーシャの放った刺客だっ!!」
「えっ?」
「早く逃げるんだ!!さあこっちへ!!」
そう言うとラボスは川の中へと足を進める。
「この川は結構幅がありますけど……。」
と俺が尻込みすると
「そんなことより命の方が大事だ!さあ早く!」
とラボスが急かした。
「ええい!ままよ!」
そう言うと俺は川に飛び込みラボスの先導で川の向こう岸目指して水流に逆らい歩みを進める。
するとさっき動物の足音がした方向から一匹のルカスとそれに続いて4人の茶色い装束を纏った追っ手が走ってくるのが見えた。
ルカスは川の手前で止まったものの、4人の追っ手は躊躇せず川に飛び込みこちらを追いかけてくる。
「ハルトっ!僕の後ろにっ!」
ラボスがそう声をあげて俺を背中に庇うと
「水刃連!!」
と呪文を唱えて懐から何か青いキラキラした砂のようなものを追っ手に投げつける。
すると川の表面が俄に荒れ狂い高圧で発射された川の水の波が追っ手に襲いかかった。
追っ手を水が切り裂いた次の瞬間追っ手にラボスが投げつけた青い砂が妖しく輝いて追っ手の周りの水面からも水の刃が次々と彼らに襲いかかる。
「ぐっ!!」
次々と斬りつけてくる水の刃に4人のうちの一人がたまらず呻き声をあげた。
足止めされている追っ手を尻目にラボスが俺に言う。
「今のうちだ!」
そして俺達は何とか川の向こう岸までたどり着き俺達の身長よりも丈の長い草が生い茂った原っぱの片隅まで移動すると一息ついた。
「ハアハアハアハア…………。」
「ハアハア……。何とか撒いたみたいだね……。」
俺達は側に立っていた一本の木に寄りかかって少し休むことにした。
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