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「アル・レビング・アイズ!」
クリミナが呪文を唱えると空中に青い光の縁取りが現れその中に魔導騎士団本拠地の私室で椅子に座ったサーシャの姿が映し出される。
「どうした?クリミナよ……。」
自慢の髭を右手で扱きながらサーシャがクリミナに問う。
「ハッ!ラボスめが何か魔法を使ったようで突然魔術研究所の手による探知機が反応しなくなってしまい奴らの姿を見失ったあげくに逃げられてしまいました!!誠に申し訳ございません!!」
クリミナがそう言ってサーシャに向かい頭を深く下げた。周りの騎士達も同じように一斉に頭を下げる。
しかしサーシャはそんな彼らにこう言った。
「…………よい。そうなることを想定して既にラボスに対抗できる別部隊は手配しておいた。
……それではお前達はもう異世界人捜索を切り上げてラーヌまで戻ってきていいぞ。さっさと引き上げてこい。」
そう言い残して映像はサーシャの側から切られた。
「……クッ!ラボスの奴め……この俺に恥をかかせやがって!」
クリミナの顔は怒りの余りドス黒く染まった。
◆ ◆ ◆ ◆
あれからサーシャの手下に追われてクリーから出発した俺とラボスは3日程野宿しながら歩き続けてラルの村へと辿り着いた。
そこはのどかな田舎の村といった風情で藁葺きの煉瓦で作られた家々の間に家畜なのだろうか、
赤い毛の、頭に一本の角が生えた狼達が高い柵で囲われた場所に数十匹ほど放し飼いにされていた。
俺が物珍しげに柵の中の狼のような動物達を眺めていると横からラボスが説明してくれる。
「……ああ。こいつらはこの世界で主に食用となっているルカスという名前のモンスターさ。ここで飼われているのは何世代も飼われているから大人しいけど本来はかなり凶暴な性質で前にハルトが後ろから襲われたのもこいつらの仲間だよ。」
「……へぇ~。そうだったんですね。じゃあ野宿の際に食べたあの硬い肉は……。」
「そうだね。こいつらの肉を燻製にしたものだよ。」
「なるほど。」
俺はもう一度しげしげとルカスの群れを見つめる。
……確かによく見てみると犬なんかとは違った鋭い犬歯が口の端から覗いている。
……というか俺はこんなのに襲われて無事だったのか?相変わらずその辺がよく分からないな。
俺が一人で考え込んでいるとラボスが
「サーシャ達の追跡を振り切るためにとりあえずこの村に何日かいた方が良いだろうから、まずは宿を探そうか。」
と言って村の奥へと歩き出した。
その後に俺もついていく。
◆ ◆ ◆ ◆
その頃。
サーシャが新たに差し向けたハルト捜索の為の一団は昼夜問わずに移動を続けてベネディの森を抜けクリーとラルのある地域へと渡る橋の前にいた。
茶色い装束に身を包んだ4人は魔術研究所からの応援で主に諜報活動や暗殺等の仕事を請け負う一般の研究員達の知らない闇の部隊の人間だった。
その身に纏った茶色の装束には魔力が込められており斬撃や魔法の類いをある程度弾く。そしてその腰に差した曲刀もこれまた魔力が込められた特殊な代物だ。
今彼らはハルトの、この世界の人間とは異なる体臭を特別な訓練を施した一匹のルカスに嗅がせその後についていっていた。
しかしろくに休ませずに働かせ続けたためか先頭を走っていたルカスはその場に寝そべり眠り始めた。
「……しょうがない。ここらで一度休憩しよう。」
奇妙な黒い泣き顔のような表情の面を被った4人の中でリーダー格の男ーー名はトレースというーー
がため息混じりに他の3人にそう言った。
クリミナが呪文を唱えると空中に青い光の縁取りが現れその中に魔導騎士団本拠地の私室で椅子に座ったサーシャの姿が映し出される。
「どうした?クリミナよ……。」
自慢の髭を右手で扱きながらサーシャがクリミナに問う。
「ハッ!ラボスめが何か魔法を使ったようで突然魔術研究所の手による探知機が反応しなくなってしまい奴らの姿を見失ったあげくに逃げられてしまいました!!誠に申し訳ございません!!」
クリミナがそう言ってサーシャに向かい頭を深く下げた。周りの騎士達も同じように一斉に頭を下げる。
しかしサーシャはそんな彼らにこう言った。
「…………よい。そうなることを想定して既にラボスに対抗できる別部隊は手配しておいた。
……それではお前達はもう異世界人捜索を切り上げてラーヌまで戻ってきていいぞ。さっさと引き上げてこい。」
そう言い残して映像はサーシャの側から切られた。
「……クッ!ラボスの奴め……この俺に恥をかかせやがって!」
クリミナの顔は怒りの余りドス黒く染まった。
◆ ◆ ◆ ◆
あれからサーシャの手下に追われてクリーから出発した俺とラボスは3日程野宿しながら歩き続けてラルの村へと辿り着いた。
そこはのどかな田舎の村といった風情で藁葺きの煉瓦で作られた家々の間に家畜なのだろうか、
赤い毛の、頭に一本の角が生えた狼達が高い柵で囲われた場所に数十匹ほど放し飼いにされていた。
俺が物珍しげに柵の中の狼のような動物達を眺めていると横からラボスが説明してくれる。
「……ああ。こいつらはこの世界で主に食用となっているルカスという名前のモンスターさ。ここで飼われているのは何世代も飼われているから大人しいけど本来はかなり凶暴な性質で前にハルトが後ろから襲われたのもこいつらの仲間だよ。」
「……へぇ~。そうだったんですね。じゃあ野宿の際に食べたあの硬い肉は……。」
「そうだね。こいつらの肉を燻製にしたものだよ。」
「なるほど。」
俺はもう一度しげしげとルカスの群れを見つめる。
……確かによく見てみると犬なんかとは違った鋭い犬歯が口の端から覗いている。
……というか俺はこんなのに襲われて無事だったのか?相変わらずその辺がよく分からないな。
俺が一人で考え込んでいるとラボスが
「サーシャ達の追跡を振り切るためにとりあえずこの村に何日かいた方が良いだろうから、まずは宿を探そうか。」
と言って村の奥へと歩き出した。
その後に俺もついていく。
◆ ◆ ◆ ◆
その頃。
サーシャが新たに差し向けたハルト捜索の為の一団は昼夜問わずに移動を続けてベネディの森を抜けクリーとラルのある地域へと渡る橋の前にいた。
茶色い装束に身を包んだ4人は魔術研究所からの応援で主に諜報活動や暗殺等の仕事を請け負う一般の研究員達の知らない闇の部隊の人間だった。
その身に纏った茶色の装束には魔力が込められており斬撃や魔法の類いをある程度弾く。そしてその腰に差した曲刀もこれまた魔力が込められた特殊な代物だ。
今彼らはハルトの、この世界の人間とは異なる体臭を特別な訓練を施した一匹のルカスに嗅がせその後についていっていた。
しかしろくに休ませずに働かせ続けたためか先頭を走っていたルカスはその場に寝そべり眠り始めた。
「……しょうがない。ここらで一度休憩しよう。」
奇妙な黒い泣き顔のような表情の面を被った4人の中でリーダー格の男ーー名はトレースというーー
がため息混じりに他の3人にそう言った。
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