女の子なのに能力【怪力】を与えられて異世界に転生しました~開き直って騎士を目指していたらイケメンハーレムができていた件~

沙寺絃

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三十六話 オールスター大乱闘

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 クリフが見つけたという隠れ家は山の奥にあった。石造りの小屋で、相当の年期物らしく壁には植物のツルやコケが茂っている。
 建物の付近には数人の男たちが立っていた。ターバンで顔を隠し、腰にはサーベルやダガーといった武器をぶら下げている。

「傭兵……だな。報酬さえ受け取れば殺人も厭わない連中だ」
「分かるの?」
「同業の匂いでな」

 クリフもかつては同じような仕事に手を染めていたという。良し悪しはともかくとして、そのクリフが言うことには信憑性があった。

「この警戒態勢ではバレないように侵入するのは無理だろう。俺たちの中の誰かが陽動を買って出て、連中がそちらに気を取られている隙に残りが内部に突入するという作戦で行きたい。構わないか?」
「構わないよ。事態は一刻の猶予もないからね!」
「陽動はわたくしが引き受けますわ。残念ながらわたくしの魔法では、突入組に加わったところで大した戦力になりそうにありませんもの。それよりも陽動を引き受ける方が適任ですわ。ただ、わたくし一人では心もとないので、もう一人誰かに協力してほしいのですけど」
「ならば俺が残ろう」
「ディラン?」
「確かにマギー一人では心もとない。こいつの精神魔法は大したものだが、直接の攻撃力は持たないからな。ならば攻撃力の高い俺が残るべきだろう」
「……分かった。お願いするよ、ディラン、マギー」
「ええ」
「任せておけ」

 私たちは頷き合って、手短に作戦を練って共有する。マギーとディランは密かに建物の裏へと回り込むと、背後から傭兵たちの一人に攻撃を仕掛けた。

「えいッ! ――“強制モンスター姦! 山奥でオークにメス堕ちさせられる男たち!”」
「おおおおお!?」

 えぐい魔法を唱えると、傭兵たちの動きが止まる。

「でりゃあッ!」
「何事だ!? がは……ッ!?」

 マギーの魔法が敵の足を止め、ディランが槍の一振りで無力化する。
 他の場所で周囲の警戒に当たっていた傭兵たちも、突如現れた二人に気を取られる。おかげで一時的に入り口の見張りがいなくなった。

「今だ!」

 その隙を逃さず、私とヴィンセント、そしてクリフは建物内に突入した。
 建物の内部は入り組んでいて、いくつもの部屋に別れている。

「どうする? 一人ずつ別れてしらみつぶしに部屋を探そうか!?」
「そうだな……」
「建物の中にはまだ傭兵が残っている可能性も高いから、まとまって探した方がいいんじゃないか?」
「でも、その間にルゥが毒牙にかけられてしまったら――」

 ああ、もう!
 こんな時、いつも作戦を立ててくれるのはルゥだった。
 でも今はルゥがいない。そのルゥを助ける為に、私は自分で考えて決断しなくちゃいけない。判断の責任は、すべて私が背負うことになる。
 私は――。

「……やっぱり三人で探そう! 時間はかかるかもしれない。けど確実性を考えるなら、バラバラになるよりまとまって行動した方がいい!」
「了解だ」
「さあ、行こう!」

 一つ一つの部屋を見て回る。ヴィンセントの読んだ通り、まだ敵が残っている部屋もあった。彼らは外での騒ぎに気付き、様子を見に行こうとしているところだった。

「何者だ! 外の騒ぎはお前たちの仕業か!?」
「問答無用! ――“剣の舞(ソードダンス)”!」

 呑気に喋っている暇はない! 傭兵たちが面食らっている隙に剣を抜いて攻撃を食らわせる。
 剣の舞を選んだのは、決定打にならないと読んだからだ。
 刃の嵐に裂かれた敵は攻撃力を大幅に失うけど、意識はハッキリしている。私はその中の一人の襟首をむんずと掴んだ。

「ルゥは、ルーファス王子はどこにいるの!? あんたたちが攫ったんでしょう!?」
「な……なんのこと、だか……」
「とぼけても無駄! 知ってるんだから!」

 相手の頭をガクガク振るけど、何も答えようとしない。すると見かねてクリフが脇から顔を出した。

「貸せ。俺が尋問する」
「え、うん、構わないけど、何を――!?」

 クリフは無言で懐からペンチを取り出すと、相手の左手を掴み、一呼吸で親指の爪を引っぺがした。
 さすがに末梢神経が集中している指先への攻撃は堪えたようで、敵は悲鳴をあげる。

「両手両足で残り十九枚。爪が終わったら指を切り落とす。時間がないから猶予はない。すぐに答えないのなら秒刻みで爪と指を失うことになるぞ」

 そう言いながらクリフは左手人差し指の爪を剥がしていた。さらに中指の爪を挟む。

「ま、待て! 待ってくれ! ひぎィッ! 話す、話すから!! ぎゃッ! お、王子はこの部屋を出て北へ言った部屋の奥にいる! その部屋には隠し扉があり、本棚で隠されている! その奥に摂政と一緒にいる筈だ!!」
「よし」

 話し終えた傭兵の左手は真っ赤に染まっていた。
 私とヴィンセントはクリフが拷問している間に、他の傭兵を縛って転がしておいた。尋問を終えた傭兵も気絶させて拘束し、北の部屋を目指す。

「待て!」
「この先は行かせるものか!」

 最奥の部屋が見えてきた時だった。前方の両脇にある部屋から、数人の傭兵が飛び出してきた。
 しかもその中には、一目で強敵だと分かる大男が二人いる。バトルアックスを構えた褐色の男と、日本刀のような長剣を構えた黒髪の男だ。

「あの刺青……戦斧使いは大陸の奴隷戦士(グラディエーター)だな。チッ、厄介な相手だ」
「長剣の方も、大陸の奥地にある国に伝わる伝統の武器を持っているな……手練れでないと使いこなせないという噂の武器だ。あっちも厄介な相手だな」

 クリフもヴィンセントも詳しい。

「まともに相手にしていては、倒すのに時間がかかる。あれは俺たちが引き受ける。アイリよ、お前はその隙に奥の部屋へ急げ」
「え――」
「見たところ、アイリはどちらの武器についても詳しくないようだからね。幸い僕たちは、多少の知識がある。僕たちなら大丈夫だ。負けたりしない。ルゥを助ける為なんだ。ここで男を見せないで、どこで見せるっていうんだ!」

 彼の思いは本物だ。クリフも頷く。クリフの場合はこの状況下でもっとも確度の高い方法を選んだのだろう。冷静な仕事人である彼らしい判断だ。

「……分かった。それじゃあ頼むよ。でも絶対に死なないでよ!」
「ああ、アイリこそ!」
「行け!」
「うん! ――そこを退け! “剣の舞”! “一閃両断剣”!!」

 ヴィンセントとクリフが強敵を引き付けている間に、私は雑魚たちが立ちはだかる中央を強引に突破した。
 後ろは振り向かず、最奥の部屋に突入する。

『ウゴオオオオ!!』
「邪魔ぁッ!!」
『ンゴオオオオオオオッ!?』

 番人らしき石造りのゴーレムがいたけど一撃で吹っ飛ばした。ゴーレムは天井を突き破って空の彼方に消える。
室内には、他に誰もいなかった。拷問した傭兵の話を思い出して、本棚をどかすと隠し扉が姿を現した。

「ふんッ!」

 強引に扉を破って侵入した。
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