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四章
四十七話 一つの節目に
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「お待たせしました」
「おお、アリーシャ。よく来てくれたな」
「陛下、ご機嫌麗しゅう」
「ふむ、アリーシャも元気そうで何よりだ」
「はい、おかげさまで」
アリーシャは玉座の前に進み出ると、膝をついて臣下の礼をとる。
「……それで、私を呼ばれた用件はなんでしょうか?」
「うむ、改めてアリーシャに礼を言いたいと思ってな」
「お礼、ですか?」
「そうだ。余はアリーシャの作る薬のおかげですっかり健康になった。戦後処理の激務もこなせるようになったほどだ。つい半年前まで寝床から起き上がれなかった事を考えると、驚くべき回復だ。心より礼を言う、ありがとうアリーシャ。其方は余の命の恩人だ」
「滅相もありません。私は当然の事をしたまでです」
「そんな事はない。其方が献身的に尽くしてくれたおかげで、こうしてアストラ帝国は救われたのだ」
「いえ、私はただ……」
「謙遜する必要はないぞ、アリーシャ。君は間違いなくわが国を救ってくれたのだ」
「陛下……!」
皇帝の言葉に、アリーシャは胸を打たれた。
「陛下、その言葉だけで私は報われます」
「ははは、アリーシャは本当に謙虚なのだな」
「いえ、私の取り柄はそれだけですから」
「其方がいなければ、アストラ帝国はこの難事を乗り越えられなかったであろう。此度の戦争では三人の皇子がそれぞれ活躍してくれた。その活躍の裏には、アリーシャ、其方の支えがあったと聞いているぞ」
「そんな……」
「ハイラルは軍を率いて戦線を勝利に導いた。ロランは外交と交渉で戦争被害を最小限に食い止めた。エクレールが発明した新兵器により戦争は早期に決着した。だが、戦場で戦うだけが兵士の役割ではない。後方支援こそが最も重要な仕事だ。帝国の死傷者が大幅に減ったのはアリーシャ、其方のおかげだ。そして其方がいたからこそアストラ帝国はルイン王国に勝利し、領土も拡大した。其方には感謝しかない」
「陛下……」
「今回の戦いを通して、アリーシャと三人の皇子らは今まで以上に支持を強めた。もはや誰が次の皇帝に即位してもおかしくない状況になった。やはり争点となるのは、アリーシャが誰を選ぶかにかかっているだろう。アリーシャよ、ハイラルとロランとエクレール、誰を夫にするかは決まったか?」
「……すみません。最近は忙しくて、それどころではなかったので……」
「うむ、まあそうだろうな。良い良い、期間はまだ半年残っている。その間に改めて皇子たちと交流を深め、誰と結婚するかじっくり考えてほしい」
「はい……かしこまりました」
「話は以上だ。下がってよい」
「失礼します」
アリーシャは一礼すると、その場を退室するのだった。玉座の間を出たアリーシャは、宮殿内を歩いて自室に戻ろうとした。
「アリーシャ」
「え?」
呼び止められたアリーシャは振り返る。そこには三人の皇子の姿があった。
ハイラル、ロラン、エクレールはそれぞれアリーシャに手を差し伸べる。
「アリーシャ、明日の夜には戦勝を祝した舞踏会が開かれるのを知っているな? 明日は俺にエスコートを任せてくれ」
「ハイラル兄さんに女性のエスコートなんて似合わないよ。エスコートなら僕が適任さ。アリーシャも僕を選んでくれるよね?」
「ボクだって……負けない。アリーシャ、ボクも頑張るから……どうか、ボクを選んでほしい……」
三人とも気合の入った様子でアピールしてくる。
「俺はアリーシャの存在に支えられた。今度は俺がアリーシャを助ける番だ」
「僕はアリーシャの優しい性格に惚れこんだんだ。君を幸せにしたい、その気持ちに嘘はないよ」
「ボクはアリーシャの全部が大好きだ……アリーシャの為にボクが出来る事があれば、何でもしたいと思えるよ……」
「……ええっと……」
アリーシャはどうしたものかと考える。正直なところ、アリーシャは誰を選べばいいのか迷っていた。
今回の騒動を通して、三人の皇子の魅力を改めて実感した。
どの皇子も素晴らしい男性だ。しかしアリーシャは彼らの中の誰か一人を選べない。
気持ちが絞れないから、というのもある。
だがそれ以上に、アリーシャが選んだ相手が次の皇帝になり、選ばれなかった人は皇帝になれないという事実を考えると、アリーシャの選択には非常な重みが伴ってしまう。
だからこそ、アリーシャは答えを出す事ができなかった。
「申し訳ありません。もう少しだけ、時間をください」
アリーシャは頭を下げると、足早に自室に戻った。
***
その日の夜、自室で一人になると、アリーシャはベッドに横になった。
「このままじゃいけないのは分かってるんだけど……どうしても決められない……」
アリーシャは寝返りを打つと、深くため息をつく。すると扉がコンコンとノックされた。
どうぞと答えると、専属侍女のリリアナがティーセットを持って部屋に入ってくる。
「お茶をお持ちしました」
「ありがとう」
リリアナはテキパキと紅茶をいれてテーブルに置く。
「今夜のお茶はミルクティーです。きっと寝付きやすくなる筈ですよ」
「美味しそうね、ありがとう」
「はい。アリーシャ様、何かお悩みごとでも?」
「あはは……やっぱり分かる?」
リリアナはアリーシャの顔を見ると、小さく微笑む。
「それはもう、分かりやすいぐらいです」
「そっか。じゃあ、話を聞いてもらえるかな」
「もちろんです。アリーシャ様の専属侍女として、いつでもお話し相手になって差し上げます」
「ふふ、ありがとう。リリアナのそういう所が好きだよ」
「あら、嬉しい事を言ってくださるんですね」
「本当の事だもの」
アリーシャはカップを手に取ると、甘いミルクティーを口に含む。
そして、ぽつりぽつりと語り始めた。
三人の皇子はそれぞれ魅力的で人柄も尊敬できるという事。
だけど自分が誰かを選べば、他の二人は皇帝への道を閉ざされてしまうという事。
三人の皇子は軍事、政治、発明とそれぞれ異なる得意分野を持っている。
ハイラルが皇帝に即位すれば軍事大国に、ロランが即位すれば政治が強い国家に、エクレールが皇帝になれば技術大国にアストラ帝国は形を変えていくだろう。
いわば帝国の未来は、アリーシャが誰を選ぶかによって発展の形が変わってしまう訳である。
だからこそ、非常に重い選択だ。
個人的な感情よりも、帝国の将来を考えて相手を選ぶべきなのだろうか……とも考えてしまう。
「そうなるとますます誰を選ぶべきなのか分からなくなってしまうの……だって軍事も政治も技術も、すべて国にとって大切な事だもの。ああ、どうしたらいいのかしら……!」
アリーシャは頭を悩ませると、また大きくため息をついた。
「アリーシャ様は難しく考えすぎているんですよ」
「え?」
「確かにアリーシャ様のおっしゃる事ももっともです。ですけど、もっと単純に考えたらどうでしょう?」
「単純?」
「はい。ぶっちゃけ、明日の舞踏会でアリーシャ様が一番踊りたいと思う相手はどなたですか?」
「一番踊りたい人……」
アリーシャは考える。すると、真っ先に思い浮かぶ人物がいた。そんなアリーシャの様子を見て、リリアナはくすりと微笑む。
「その人のお誘いを受ければいいのです。何も難しく考える必要はありませんよ。アリーシャ様が己の御心に従って小さな決断を繰り返していけば、きっと自然と大きな答えが導き出せる筈ですから」
「リリアナ……ありがとう。うん、そうね、分かったわ。自分の心に従ってみる」
「それでこそアリーシャ様です」
アリーシャは立ち上がると、リリアナに向かって微笑む。
「よし! 決めた!」
「何をですか?」
「明日の舞踏会で誰を誘うか、よ」
「それは良かったですね」
「うん!」
アリーシャは元気よく答えると、部屋を出て行く。そして、一人の皇子の部屋に向かった――。
「おお、アリーシャ。よく来てくれたな」
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「ふむ、アリーシャも元気そうで何よりだ」
「はい、おかげさまで」
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「そんな事はない。其方が献身的に尽くしてくれたおかげで、こうしてアストラ帝国は救われたのだ」
「いえ、私はただ……」
「謙遜する必要はないぞ、アリーシャ。君は間違いなくわが国を救ってくれたのだ」
「陛下……!」
皇帝の言葉に、アリーシャは胸を打たれた。
「陛下、その言葉だけで私は報われます」
「ははは、アリーシャは本当に謙虚なのだな」
「いえ、私の取り柄はそれだけですから」
「其方がいなければ、アストラ帝国はこの難事を乗り越えられなかったであろう。此度の戦争では三人の皇子がそれぞれ活躍してくれた。その活躍の裏には、アリーシャ、其方の支えがあったと聞いているぞ」
「そんな……」
「ハイラルは軍を率いて戦線を勝利に導いた。ロランは外交と交渉で戦争被害を最小限に食い止めた。エクレールが発明した新兵器により戦争は早期に決着した。だが、戦場で戦うだけが兵士の役割ではない。後方支援こそが最も重要な仕事だ。帝国の死傷者が大幅に減ったのはアリーシャ、其方のおかげだ。そして其方がいたからこそアストラ帝国はルイン王国に勝利し、領土も拡大した。其方には感謝しかない」
「陛下……」
「今回の戦いを通して、アリーシャと三人の皇子らは今まで以上に支持を強めた。もはや誰が次の皇帝に即位してもおかしくない状況になった。やはり争点となるのは、アリーシャが誰を選ぶかにかかっているだろう。アリーシャよ、ハイラルとロランとエクレール、誰を夫にするかは決まったか?」
「……すみません。最近は忙しくて、それどころではなかったので……」
「うむ、まあそうだろうな。良い良い、期間はまだ半年残っている。その間に改めて皇子たちと交流を深め、誰と結婚するかじっくり考えてほしい」
「はい……かしこまりました」
「話は以上だ。下がってよい」
「失礼します」
アリーシャは一礼すると、その場を退室するのだった。玉座の間を出たアリーシャは、宮殿内を歩いて自室に戻ろうとした。
「アリーシャ」
「え?」
呼び止められたアリーシャは振り返る。そこには三人の皇子の姿があった。
ハイラル、ロラン、エクレールはそれぞれアリーシャに手を差し伸べる。
「アリーシャ、明日の夜には戦勝を祝した舞踏会が開かれるのを知っているな? 明日は俺にエスコートを任せてくれ」
「ハイラル兄さんに女性のエスコートなんて似合わないよ。エスコートなら僕が適任さ。アリーシャも僕を選んでくれるよね?」
「ボクだって……負けない。アリーシャ、ボクも頑張るから……どうか、ボクを選んでほしい……」
三人とも気合の入った様子でアピールしてくる。
「俺はアリーシャの存在に支えられた。今度は俺がアリーシャを助ける番だ」
「僕はアリーシャの優しい性格に惚れこんだんだ。君を幸せにしたい、その気持ちに嘘はないよ」
「ボクはアリーシャの全部が大好きだ……アリーシャの為にボクが出来る事があれば、何でもしたいと思えるよ……」
「……ええっと……」
アリーシャはどうしたものかと考える。正直なところ、アリーシャは誰を選べばいいのか迷っていた。
今回の騒動を通して、三人の皇子の魅力を改めて実感した。
どの皇子も素晴らしい男性だ。しかしアリーシャは彼らの中の誰か一人を選べない。
気持ちが絞れないから、というのもある。
だがそれ以上に、アリーシャが選んだ相手が次の皇帝になり、選ばれなかった人は皇帝になれないという事実を考えると、アリーシャの選択には非常な重みが伴ってしまう。
だからこそ、アリーシャは答えを出す事ができなかった。
「申し訳ありません。もう少しだけ、時間をください」
アリーシャは頭を下げると、足早に自室に戻った。
***
その日の夜、自室で一人になると、アリーシャはベッドに横になった。
「このままじゃいけないのは分かってるんだけど……どうしても決められない……」
アリーシャは寝返りを打つと、深くため息をつく。すると扉がコンコンとノックされた。
どうぞと答えると、専属侍女のリリアナがティーセットを持って部屋に入ってくる。
「お茶をお持ちしました」
「ありがとう」
リリアナはテキパキと紅茶をいれてテーブルに置く。
「今夜のお茶はミルクティーです。きっと寝付きやすくなる筈ですよ」
「美味しそうね、ありがとう」
「はい。アリーシャ様、何かお悩みごとでも?」
「あはは……やっぱり分かる?」
リリアナはアリーシャの顔を見ると、小さく微笑む。
「それはもう、分かりやすいぐらいです」
「そっか。じゃあ、話を聞いてもらえるかな」
「もちろんです。アリーシャ様の専属侍女として、いつでもお話し相手になって差し上げます」
「ふふ、ありがとう。リリアナのそういう所が好きだよ」
「あら、嬉しい事を言ってくださるんですね」
「本当の事だもの」
アリーシャはカップを手に取ると、甘いミルクティーを口に含む。
そして、ぽつりぽつりと語り始めた。
三人の皇子はそれぞれ魅力的で人柄も尊敬できるという事。
だけど自分が誰かを選べば、他の二人は皇帝への道を閉ざされてしまうという事。
三人の皇子は軍事、政治、発明とそれぞれ異なる得意分野を持っている。
ハイラルが皇帝に即位すれば軍事大国に、ロランが即位すれば政治が強い国家に、エクレールが皇帝になれば技術大国にアストラ帝国は形を変えていくだろう。
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「え?」
「確かにアリーシャ様のおっしゃる事ももっともです。ですけど、もっと単純に考えたらどうでしょう?」
「単純?」
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「それでこそアリーシャ様です」
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「よし! 決めた!」
「何をですか?」
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