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四章
四十五話 聖ルイン王国の終焉【コリン王子Side】
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一方、ルイン王国では――。
「何だと!? 国境でアストラ帝国に負けたというのか!? そっ、そんなバカな!? こちらは三万も兵を出したのだぞ! 国境警備隊は半分以下の勢力だったというじゃないか!! それなのに、なぜ国境すら突破できなかったんだ!?!?」
国王であるコリンは顔を真っ赤にして怒り狂っていた。
「それが……どうやら敵には新兵器があったようで……」
「新兵器?」
「はい、陛下。何でも鉄の筒から無数の矢を放つ武器だそうで……」
「は? 何だそれは!? まさかアリーシャが何かしたんじゃないだろうな!?」
「いいえ、報告によると、どうやら第三皇子エクレールが開発した新型兵器のようですね……」
「なんだとぉっ!?」
「しかも王国軍の総司令官を討ち取ったのは、第一皇子のハイラルです……奇しくも我々は、アストラ帝国が盤石である事を証明してしまったようですな……」
宰相のロランが淡々と告げると、コリンの顔色はさらに悪くなった。
「なんて事だ……! せっかく集めた兵力も、ほとんど失われてしまったではないか!」
「それだけではありません。我々が侵攻の口実に使っていた聖女奪還という大義名分も、聖女アリーシャ直々の演説で否定されました。それどころかアリーシャとルイン王国の捕虜たちは、王国の腐敗実態を告発しました。国際社会はますますわが王国に対して冷たい視線を注いでいます」
軍務卿の報告を聞き、コリンの怒りは頂点に達した。
「な、ななな……! なぁにぃ~!!!!」
コリンは玉座から立ち上がると、大声で怒鳴り散らした。コリンは宰相に掴みかかる。
「ふざけるな! ふざけるな! ふざけるなぁー!!!! おい貴様ッ! 一体どういうつもりだ!?」
「お、落ち着いてくださいコリン様! そもそも陛下が聖女を追放せねば、追放した後もすぐに謝罪文を発表していれば、アストラ帝国侵攻などというバカげた行いをしなければ、すべては防げた事ではありませんか!!!」
「なっ、なんだと!? 私のせいだとでも言うつもりか!?」
「ええそうです、もう我慢の限界です!! この未曾有の国難は、すべては貴方の軽率な行いが招いた物ではありませんか!!いい加減のその事実を認め、己の非を認めて謝ったらいかがですか!! 最初からアストラ帝国はコリン王が謝罪さえすれば事を荒立てる気はないと一貫していたではありませんか!! それなのに、このような事態を招いたのはすべて貴方のせいですぞ!!」
「ぐぬぅ……!」
「まあ、こうなっては仕方ありません。もはやこの国を救う方法は一つしかありません。このままでは我が国は滅ぶだけです。ですが、私は最後まで諦めません。国を救う方法があります」
「ほ、本当か!? それは何だ、行ってみろ!!」
「政権転覆です」
「…………は?」
「ですから、政権転覆です。無謀極まりない作戦に投入された王国軍内部では不満が高まっています。そこで我々軍部はクーデターを起こし、コリン王を玉座から追い落とし、新たな政権を立ててアストラ帝国に降るのです。もはやそれしか道はありません」
「な、な、な……!?!?」
軍務卿は腰の鞘から剣を抜いて構える。
「さようなら、コリン王。短い間でしたが、貴方と共に過ごした日々は決して忘れません。この国は、私が必ず救って見せましょう……」
「まっ、待て! 待つのだ、お前たち!! わ、私は……ぎゃあああっ!!!!」
こうしてルイン王国は、ついに内乱に突入するのだった……。
***
それから数日後――。
アストラ帝国の宮殿に、ルイン王国に忍ばせていた諜報員からの連絡が入る。
「報告します!! ルイン王国の軍務卿が軍を率いてルイン王家を打倒し、政権を簒奪しました!!」
「なんと……!!」
「まあ……!!」
「やはり、そうなるか」
「……妥当なところだよね……」
「それで、新政権はなんと言っているんだい?」
「はっ、ロラン様! 新政権はコリン王の身柄と引き換えに、休戦を呼び掛けています! 今まで避けていた外交交渉の席につき、アストラ帝国と交渉する意思を表明しています!!」
「ふむ……どうやら思ったより早く、アストラ帝国との終戦が実現するかもしらんな」
「父上、交渉の場には僕も同席させてください。次代の帝国の政務を預かる立場として、後学の為にも見ておきたいのです」
「ああ、勿論だ」
「ありがとうございます!」
こうしてコリン国王は捉えられ、ルイン王国領はアストラ帝国の管轄下に入った。
戦後処理は皇帝とハイラルとロランが中心になって行う事になった。
「何だと!? 国境でアストラ帝国に負けたというのか!? そっ、そんなバカな!? こちらは三万も兵を出したのだぞ! 国境警備隊は半分以下の勢力だったというじゃないか!! それなのに、なぜ国境すら突破できなかったんだ!?!?」
国王であるコリンは顔を真っ赤にして怒り狂っていた。
「それが……どうやら敵には新兵器があったようで……」
「新兵器?」
「はい、陛下。何でも鉄の筒から無数の矢を放つ武器だそうで……」
「は? 何だそれは!? まさかアリーシャが何かしたんじゃないだろうな!?」
「いいえ、報告によると、どうやら第三皇子エクレールが開発した新型兵器のようですね……」
「なんだとぉっ!?」
「しかも王国軍の総司令官を討ち取ったのは、第一皇子のハイラルです……奇しくも我々は、アストラ帝国が盤石である事を証明してしまったようですな……」
宰相のロランが淡々と告げると、コリンの顔色はさらに悪くなった。
「なんて事だ……! せっかく集めた兵力も、ほとんど失われてしまったではないか!」
「それだけではありません。我々が侵攻の口実に使っていた聖女奪還という大義名分も、聖女アリーシャ直々の演説で否定されました。それどころかアリーシャとルイン王国の捕虜たちは、王国の腐敗実態を告発しました。国際社会はますますわが王国に対して冷たい視線を注いでいます」
軍務卿の報告を聞き、コリンの怒りは頂点に達した。
「な、ななな……! なぁにぃ~!!!!」
コリンは玉座から立ち上がると、大声で怒鳴り散らした。コリンは宰相に掴みかかる。
「ふざけるな! ふざけるな! ふざけるなぁー!!!! おい貴様ッ! 一体どういうつもりだ!?」
「お、落ち着いてくださいコリン様! そもそも陛下が聖女を追放せねば、追放した後もすぐに謝罪文を発表していれば、アストラ帝国侵攻などというバカげた行いをしなければ、すべては防げた事ではありませんか!!!」
「なっ、なんだと!? 私のせいだとでも言うつもりか!?」
「ええそうです、もう我慢の限界です!! この未曾有の国難は、すべては貴方の軽率な行いが招いた物ではありませんか!!いい加減のその事実を認め、己の非を認めて謝ったらいかがですか!! 最初からアストラ帝国はコリン王が謝罪さえすれば事を荒立てる気はないと一貫していたではありませんか!! それなのに、このような事態を招いたのはすべて貴方のせいですぞ!!」
「ぐぬぅ……!」
「まあ、こうなっては仕方ありません。もはやこの国を救う方法は一つしかありません。このままでは我が国は滅ぶだけです。ですが、私は最後まで諦めません。国を救う方法があります」
「ほ、本当か!? それは何だ、行ってみろ!!」
「政権転覆です」
「…………は?」
「ですから、政権転覆です。無謀極まりない作戦に投入された王国軍内部では不満が高まっています。そこで我々軍部はクーデターを起こし、コリン王を玉座から追い落とし、新たな政権を立ててアストラ帝国に降るのです。もはやそれしか道はありません」
「な、な、な……!?!?」
軍務卿は腰の鞘から剣を抜いて構える。
「さようなら、コリン王。短い間でしたが、貴方と共に過ごした日々は決して忘れません。この国は、私が必ず救って見せましょう……」
「まっ、待て! 待つのだ、お前たち!! わ、私は……ぎゃあああっ!!!!」
こうしてルイン王国は、ついに内乱に突入するのだった……。
***
それから数日後――。
アストラ帝国の宮殿に、ルイン王国に忍ばせていた諜報員からの連絡が入る。
「報告します!! ルイン王国の軍務卿が軍を率いてルイン王家を打倒し、政権を簒奪しました!!」
「なんと……!!」
「まあ……!!」
「やはり、そうなるか」
「……妥当なところだよね……」
「それで、新政権はなんと言っているんだい?」
「はっ、ロラン様! 新政権はコリン王の身柄と引き換えに、休戦を呼び掛けています! 今まで避けていた外交交渉の席につき、アストラ帝国と交渉する意思を表明しています!!」
「ふむ……どうやら思ったより早く、アストラ帝国との終戦が実現するかもしらんな」
「父上、交渉の場には僕も同席させてください。次代の帝国の政務を預かる立場として、後学の為にも見ておきたいのです」
「ああ、勿論だ」
「ありがとうございます!」
こうしてコリン国王は捉えられ、ルイン王国領はアストラ帝国の管轄下に入った。
戦後処理は皇帝とハイラルとロランが中心になって行う事になった。
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