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三章
二十八話 アストラ帝国建国祭
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そして建国祭の当日がやってきた。開会セレモニーを見たアリーシャは、リリアナと一緒に帝都を見て回る。まずはメインストリートの出店エリアを見て回った。
「わぁ……! 凄い活気!」
「アストラ帝国の建国祭は、近隣諸国でも有名なお祭りですからね。それに今回は例年よりも、観光客の方々が多いようです」
「そうなの?」
「はい。アリーシャ様がアストラ帝国にいらっしゃったことで、女神教の教えが帝国内に広まる兆しがあるからですよ」
元々アストラ帝国でも女神教は信仰されていた。しかし聖ルイン王国が女神教神殿と癒着するようになってから、他国では信仰が低下し始めていた。
他国に対して高い免罪符を売ったり、女神の名の下に他国の王位継承にまで口を出していたのだから、煙たがられて当然である。しかし聖女アリーシャがアストラ帝国に来てからは、信仰心が再び高まり始めている。
「アリーシャ様の評判も、女神教の評判も、少しずつ良くなってきています。気候が安定し、土の質も良くなっているので次の収穫は豊作が見込めそうです。すべてアリーシャ様のおかげですね」
「私がしたことなんて、ほんの些細なことですよ」
「いえ、そんなことはありません。アリーシャ様が来てくださらなかったら、女神教の教えは今も廃れたままでした。本当に感謝しています」
リリアナはアリーシャに頭を下げる。アリーシャはリリアナの肩に手を置いた。
「リリアナ、顔を上げて。私は帝国に来てから、あなたにも支えられたの。あなたたちの助けがなければ宮殿での暮らしに馴染めなかったかもしれないわ。私の方こそお礼を言いたいぐらいよ」
「アリーシャ様……!」
リリアナが感極まって涙ぐむ。アリーシャはリリアナの手を引いて歩き出した。
「さあ、次はどこへ行きましょうか? まだまだ時間はあるのだから、たくさん回りましょう!」
「はい!」
二人は出店を見て回る。串焼きに果実飴、クレープにサンドイッチ、ジュースにアイスクリーム。どれも美味しそうで目移りしてしまう。アリーシャは目を輝かせる。
「ねえリリアナ、これは何?白くてフワフワで冷たくて、とっても美味しそう!」
「それはアイスクリームですね。牛乳と卵と砂糖を混ぜて凍らせたお菓子です。アリーシャ様は見るのは初めてですか?」
「うん! 神殿でも生まれ育った村でも、こんな食べ物は見たことがないわ。凍らせた果物ならあったけど」
「そういえば、他国ではまだ氷菓子を作る技術はないんですよね。それなら是非食べていきませんか?甘くて冷たくて、今日みたいに陽気の良い日にはぴったりですよ」
「食べる!」
「それじゃあ、ちょっと並んできますね」
「あっ、私も一緒に並びます!」
アリーシャとリリアナは屋台でアイスクリームを買った。どんな味がいいかリリアナに尋ねると、定番のバニラとチョコのダブルを勧められたのでそれにする。
リリアナはストロベリーとチョコミントを選んだ。二人は広場のベンチに腰を下ろして、さっそくアイスを食べる。一口食べた瞬間、口の中に冷たさと甘さが広がってアリーシャは感動する。
「美味しい……! 冷たくて甘い……!」
「ふふ、良かったです」
「リリアナ、ありがとう。私、これ大好きになったかも!」
「それは光栄です。アリーシャ様に喜んでもらえたようで、私も嬉しいです」
アリーシャは夢中でアイスクリームを食べ続けた。リリアナもアリーシャの隣で自分のアイスを食べる。
「そうだ、アリーシャ様。もし良かったら私のアイスも一口いかがですか?」
「えっ? いいの?」
「もちろんです。どうぞ召し上がってください」
アリーシャはリリアナの差し出すスプーンを口に含む。ストロベリーの甘い味わいが口の中に広がった。
「ん~っ、ストロベリーも美味しいね!」
「ふふ、では次はこちらのチョコミントをどうぞ」
「チョコミントって不思議な色ね。どんな味がするのかしら……?」
「それは食してみてからのお楽しみですね」
リリアナは微笑んで、今度はチョコレート色のアイスを差し出してきた。アリーシャはまた口に含んだ。
「んん……!? なにこれ、すごくスッキリした感じ! 甘いのにクールで爽やかで……こんなの初めて食べた!」
「それがチョコミントの醍醐味です。一度ハマると止められなくなります」
「うん! 私も好きになっちゃったかも!」
その後も二人は楽しくおしゃべりをしながら、アイスクリームを食べあった。
「ご馳走様! それにしても凄いなあ、アイスクリームのような氷菓子を作れるぐらい帝国の技術力は進んでいるのね」
「そうですね、氷菓子は『冷凍箱』という魔道具を使って、食品を凍らせるんです。魔法のように一瞬で凍らせてくれる優れものです」
「もしかして、それもエクレール様が発明したの?」
「はい、ご明察です。エクレール様が『冷蔵箱』を開発したのが八年前、その翌年には『冷凍箱』と『卓上調理器』が開発され、飛ぶように売れてあっという間に帝国内で定着しました」
「へえ……やっぱりエクレール様は天才なんだね。そうだ、エクレール様も出店を出していると聞いたわ。見に行きましょう!」
「はい!」
二人はエクレールに教えられた出店スペースに向かった。
「わぁ……! 凄い活気!」
「アストラ帝国の建国祭は、近隣諸国でも有名なお祭りですからね。それに今回は例年よりも、観光客の方々が多いようです」
「そうなの?」
「はい。アリーシャ様がアストラ帝国にいらっしゃったことで、女神教の教えが帝国内に広まる兆しがあるからですよ」
元々アストラ帝国でも女神教は信仰されていた。しかし聖ルイン王国が女神教神殿と癒着するようになってから、他国では信仰が低下し始めていた。
他国に対して高い免罪符を売ったり、女神の名の下に他国の王位継承にまで口を出していたのだから、煙たがられて当然である。しかし聖女アリーシャがアストラ帝国に来てからは、信仰心が再び高まり始めている。
「アリーシャ様の評判も、女神教の評判も、少しずつ良くなってきています。気候が安定し、土の質も良くなっているので次の収穫は豊作が見込めそうです。すべてアリーシャ様のおかげですね」
「私がしたことなんて、ほんの些細なことですよ」
「いえ、そんなことはありません。アリーシャ様が来てくださらなかったら、女神教の教えは今も廃れたままでした。本当に感謝しています」
リリアナはアリーシャに頭を下げる。アリーシャはリリアナの肩に手を置いた。
「リリアナ、顔を上げて。私は帝国に来てから、あなたにも支えられたの。あなたたちの助けがなければ宮殿での暮らしに馴染めなかったかもしれないわ。私の方こそお礼を言いたいぐらいよ」
「アリーシャ様……!」
リリアナが感極まって涙ぐむ。アリーシャはリリアナの手を引いて歩き出した。
「さあ、次はどこへ行きましょうか? まだまだ時間はあるのだから、たくさん回りましょう!」
「はい!」
二人は出店を見て回る。串焼きに果実飴、クレープにサンドイッチ、ジュースにアイスクリーム。どれも美味しそうで目移りしてしまう。アリーシャは目を輝かせる。
「ねえリリアナ、これは何?白くてフワフワで冷たくて、とっても美味しそう!」
「それはアイスクリームですね。牛乳と卵と砂糖を混ぜて凍らせたお菓子です。アリーシャ様は見るのは初めてですか?」
「うん! 神殿でも生まれ育った村でも、こんな食べ物は見たことがないわ。凍らせた果物ならあったけど」
「そういえば、他国ではまだ氷菓子を作る技術はないんですよね。それなら是非食べていきませんか?甘くて冷たくて、今日みたいに陽気の良い日にはぴったりですよ」
「食べる!」
「それじゃあ、ちょっと並んできますね」
「あっ、私も一緒に並びます!」
アリーシャとリリアナは屋台でアイスクリームを買った。どんな味がいいかリリアナに尋ねると、定番のバニラとチョコのダブルを勧められたのでそれにする。
リリアナはストロベリーとチョコミントを選んだ。二人は広場のベンチに腰を下ろして、さっそくアイスを食べる。一口食べた瞬間、口の中に冷たさと甘さが広がってアリーシャは感動する。
「美味しい……! 冷たくて甘い……!」
「ふふ、良かったです」
「リリアナ、ありがとう。私、これ大好きになったかも!」
「それは光栄です。アリーシャ様に喜んでもらえたようで、私も嬉しいです」
アリーシャは夢中でアイスクリームを食べ続けた。リリアナもアリーシャの隣で自分のアイスを食べる。
「そうだ、アリーシャ様。もし良かったら私のアイスも一口いかがですか?」
「えっ? いいの?」
「もちろんです。どうぞ召し上がってください」
アリーシャはリリアナの差し出すスプーンを口に含む。ストロベリーの甘い味わいが口の中に広がった。
「ん~っ、ストロベリーも美味しいね!」
「ふふ、では次はこちらのチョコミントをどうぞ」
「チョコミントって不思議な色ね。どんな味がするのかしら……?」
「それは食してみてからのお楽しみですね」
リリアナは微笑んで、今度はチョコレート色のアイスを差し出してきた。アリーシャはまた口に含んだ。
「んん……!? なにこれ、すごくスッキリした感じ! 甘いのにクールで爽やかで……こんなの初めて食べた!」
「それがチョコミントの醍醐味です。一度ハマると止められなくなります」
「うん! 私も好きになっちゃったかも!」
その後も二人は楽しくおしゃべりをしながら、アイスクリームを食べあった。
「ご馳走様! それにしても凄いなあ、アイスクリームのような氷菓子を作れるぐらい帝国の技術力は進んでいるのね」
「そうですね、氷菓子は『冷凍箱』という魔道具を使って、食品を凍らせるんです。魔法のように一瞬で凍らせてくれる優れものです」
「もしかして、それもエクレール様が発明したの?」
「はい、ご明察です。エクレール様が『冷蔵箱』を開発したのが八年前、その翌年には『冷凍箱』と『卓上調理器』が開発され、飛ぶように売れてあっという間に帝国内で定着しました」
「へえ……やっぱりエクレール様は天才なんだね。そうだ、エクレール様も出店を出していると聞いたわ。見に行きましょう!」
「はい!」
二人はエクレールに教えられた出店スペースに向かった。
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