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三章
第26話 婚活0人(ローガン視点)
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その頃、ローガンは自宅の屋敷で一人怒り狂っていた。
「……クソッ! ミディアの奴、婚約した途端に醜くなるなんて! こんなの詐欺だ!!」
ローガンはネリネと婚約解消した後、ネリネの妹のミディアと婚約した。
ミディアはネリネとは違って華やかな美人だった。
だから婚約したのに、今のミディアは見る影もない。
上流階級の女性の義務として、ミディアは医療院で奉仕活動を行うようになった。
今までネリネに押し付けていた活動だ。
だが不慣れなせいで患者の血液の管理を誤り、院内で大流行を引き起こしてしまった。
ミディア自身も絶賛大流行中の感染症に感染し、他の患者たちと一緒に入院している。
仕方がないから一度だけ見舞いに行ったが、すっかりやつれて髪はボサボサ。肌もカサカサで、かつての美貌は見る影もない。
「あんなに醜くなった上に不祥事まで起こしやがって……僕の品格まで下がるだろうが! ああ、婚約解消してやりたい……!」
ローガンは頭を掻きむしる。彼は妻になる女性を、周囲に自慢する為のトロフィーとしか考えていない。
美貌を失った挙句、不祥事まで起こしたミディアは彼のトロフィーワイフ失格だ。
婚約破棄して、新しい女を探しに行こうと考えている。
ローガンの父親はリウム王国でも有力な貴族だ。家柄も容姿も性格も優れた娘なら選び放題だ。
だからローガンは何もかも上手くいくと思っていた。
「ふん、オニール伯爵家の嫡男である僕が誘いをかければ、どんな美女だって簡単に落ちるさ」
ローガンは自分の魅力を信じている。だから彼が本気で望めば、どんな相手だって落とせると思っている。
しかしローガンは知らない。
二人も立て続けに婚約破棄するような男は、上流階級では超特大の地雷と見做される。
そんな男との結婚を望む女性は、リウム王国中を探しても絶対にいない。
ローガンがどんなに願っても、もはや彼の求婚を受け入れる者は誰一人としていないだろう。
「さあ、そうと決まれば早速婚約解消の手続きだ! 口実は――今回の不祥事の件を理由にしよう。向こうに落ち度のあることだから、受け入れるしかないだろう。本当なら直接会いに行って罵倒してやりたいが、あんな汚い医院へ行くのは二度と御免だからな。手紙で済ませてやろう」
そして婚約解消を告げる手紙を書き終えると、その手で夜会(という名のローガン限定婚活パーティー)の招待状を書き始める。
宛先はレイテ公爵令嬢、ホフマン伯爵令嬢、オーガス伯爵令嬢、フォスター子爵令嬢――等々、美女で優秀と名高い女性ばかり。
「よし、これでいい。ふっ、我ながら完璧な計画だ」
ローガンは満足げに笑う。
「そうだ、ついでにミディアにも慰謝料を請求してやる。あいつのせいで僕は大変な目に遭ったんだ。それに、あいつが起こした大失態の責任を取る形で婚約を解消するのなら、むしろ慰謝料は僕が貰って然るべきだな」
ローガンの頭の中には、すでに輝かしい未来が広がっていた。
「――さて、そろそろ夜会の支度に行かないとな!」
だが彼はまだ知らない。
ミディアとの婚約解消が受理された後に開かれる婚活パーティー。
当日、会場には誰も来ないということを……。
それどころか、今後二度と彼は上流階級の女性から相手にされなくなるということを……。
上流階級どころか、平民の女性にすら嫌われるということを……。
そして妻を得られず子を成せなかったせいで、オニール伯爵家の血筋が彼の代で途絶えるということを……。
ローガンはまだ知らず、無邪気に笑い続けていた。
「……クソッ! ミディアの奴、婚約した途端に醜くなるなんて! こんなの詐欺だ!!」
ローガンはネリネと婚約解消した後、ネリネの妹のミディアと婚約した。
ミディアはネリネとは違って華やかな美人だった。
だから婚約したのに、今のミディアは見る影もない。
上流階級の女性の義務として、ミディアは医療院で奉仕活動を行うようになった。
今までネリネに押し付けていた活動だ。
だが不慣れなせいで患者の血液の管理を誤り、院内で大流行を引き起こしてしまった。
ミディア自身も絶賛大流行中の感染症に感染し、他の患者たちと一緒に入院している。
仕方がないから一度だけ見舞いに行ったが、すっかりやつれて髪はボサボサ。肌もカサカサで、かつての美貌は見る影もない。
「あんなに醜くなった上に不祥事まで起こしやがって……僕の品格まで下がるだろうが! ああ、婚約解消してやりたい……!」
ローガンは頭を掻きむしる。彼は妻になる女性を、周囲に自慢する為のトロフィーとしか考えていない。
美貌を失った挙句、不祥事まで起こしたミディアは彼のトロフィーワイフ失格だ。
婚約破棄して、新しい女を探しに行こうと考えている。
ローガンの父親はリウム王国でも有力な貴族だ。家柄も容姿も性格も優れた娘なら選び放題だ。
だからローガンは何もかも上手くいくと思っていた。
「ふん、オニール伯爵家の嫡男である僕が誘いをかければ、どんな美女だって簡単に落ちるさ」
ローガンは自分の魅力を信じている。だから彼が本気で望めば、どんな相手だって落とせると思っている。
しかしローガンは知らない。
二人も立て続けに婚約破棄するような男は、上流階級では超特大の地雷と見做される。
そんな男との結婚を望む女性は、リウム王国中を探しても絶対にいない。
ローガンがどんなに願っても、もはや彼の求婚を受け入れる者は誰一人としていないだろう。
「さあ、そうと決まれば早速婚約解消の手続きだ! 口実は――今回の不祥事の件を理由にしよう。向こうに落ち度のあることだから、受け入れるしかないだろう。本当なら直接会いに行って罵倒してやりたいが、あんな汚い医院へ行くのは二度と御免だからな。手紙で済ませてやろう」
そして婚約解消を告げる手紙を書き終えると、その手で夜会(という名のローガン限定婚活パーティー)の招待状を書き始める。
宛先はレイテ公爵令嬢、ホフマン伯爵令嬢、オーガス伯爵令嬢、フォスター子爵令嬢――等々、美女で優秀と名高い女性ばかり。
「よし、これでいい。ふっ、我ながら完璧な計画だ」
ローガンは満足げに笑う。
「そうだ、ついでにミディアにも慰謝料を請求してやる。あいつのせいで僕は大変な目に遭ったんだ。それに、あいつが起こした大失態の責任を取る形で婚約を解消するのなら、むしろ慰謝料は僕が貰って然るべきだな」
ローガンの頭の中には、すでに輝かしい未来が広がっていた。
「――さて、そろそろ夜会の支度に行かないとな!」
だが彼はまだ知らない。
ミディアとの婚約解消が受理された後に開かれる婚活パーティー。
当日、会場には誰も来ないということを……。
それどころか、今後二度と彼は上流階級の女性から相手にされなくなるということを……。
上流階級どころか、平民の女性にすら嫌われるということを……。
そして妻を得られず子を成せなかったせいで、オニール伯爵家の血筋が彼の代で途絶えるということを……。
ローガンはまだ知らず、無邪気に笑い続けていた。
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