一般トレジャーハンターの俺が最強の魔王を仲間に入れたら世界が敵になったんだけど……どうしよ?

大好き丸

文字の大きさ
717 / 718
最終章

第五十話 多次元戦争─後─

しおりを挟む
 かつてベルゼバルの世界で一つの大陸を食い尽くされる最悪の事態を招いた最大級の怪物イビルワーム。時間をかけて手懐け、最大戦力の一つとして保持していた自慢のペットである。

 訳が分からなかった。ずっとラルフの動向を見ていたが、ラルフがやったのはただ手を握って拳を作っただけである。その後急にイビルワームの首が落ちた。それもこの世界の地上に落ちることなくどこかに消え去るという珍事。

「……何をした?」

 さっきまで開いていたはずの歪な穴が閉じていることに気づいた。この世界を蹂躙するために必要な穴。元の世界に帰るのために必要な出入り口。

「何を?そんなこと言わずともだいたい察してるんだろ?こいつが俺の能力だってな」

 ラルフが握り拳を開くと、歪な穴から一転綺麗な正円を描いた穴が開いた。その向こう側は狼狽する虫魔人たちの姿があった。ベルゼバルの背筋に冷たいものが流れる。次元の穴を自由に開け閉め出来る力。そんな能力が仮に存在したとしたら、イビルワームの無理矢理入ろうとした首を切断することが出来るかもしれない。
 本来のドアや窓は蝶番になっていたり、サッシで互い違いになっているもので、巨大金庫のような重量のあるものなら指や腕の切断はあるのかもしれないが、大抵は挟まれて骨折か内出血程度で済むものだ。
 しかし空間はこうはいかない。消失はすなわち切断。物理の介在し得ない最強の力。これに敢えて名を付けるのだとしたら”空間断”となる。

「なるほど……そうかラルフ。貴様がまとめ役である理由が分かったぞ。全くなんて奴だ……こんなとんでもない能力を隠し持ち、油断したところをバッサリか?随分と抜け目のない男よ」

 ベルゼバルはラルフへの警戒を一気に引き上げる。もし万が一にも空間の亀裂に肉体を突っ込んだが最後、綺麗に切り取られてしまう。イビルワームほど巨大な怪物を瞬時に切断したことからも防ぐことは不可能である。

「とはいえ、それを我に見せつけたのは失敗だったな。貴様の攻撃方法は分かった。どれほど強かろうが当たらなければ意味がない。そして……」

 右手に体から溢れ出るオーラを纏わせる。薫る煙のようなオーラは次第に凝固し、いくつもの小さな玉を形成した。玉は倍々に増えていき、やがておびただしい数へと変貌する。手の先が見えなくなるほど玉が寄り集まり、忙しなく流動している。

「え?何だ?」

「玉の集合体?」

 ラルフとミーシャは不思議な光景に目を奪われる。ランダムに動き回っているように見えて実は規則性があり、それが凄まじい速さで移動し続けている。

「ふははっ!面白いだろう?これは我が発明した究極の技。玉の一つ一つが超振動で動き回り、触れたものを分解し消滅させる。これを受けたものは皆消滅した。貴様もそうなる……」

 ギラリと光る目。ベルゼバルはラルフを殺そうと必死だった。ミーシャに振り向いてもらうためにはまずはラルフが死ななければならないから。

「マジかよ怖っ……でも何で俺にその力の威力を教えたんだ?そんなことしたら自分を危険にさせるだけじゃないか」

「これは礼儀だ。貴様の最大の力をこの目にし、我が優位に立った。そこを突いて殺すのは簡単だが、情けをかけられているようで気に食わん。貴様も我が術を知っていれば同じ位置に立っているも同じこと」

「騎士道精神ってことか?以外に古風な奴だな」

「卑怯で勝っては男が廃る。正々堂々貴様を殺し、ミーシャを我がいただく」

 ブォッ──

 玉を纏わせた右腕を突き出して突っ込んでくる。速い。咄嗟にミーシャは魔障壁を展開するが、玉に触れた瞬間に分解され、障壁の意味を為さない。そのままラルフに突っ込んでいき、ラルフの腹の辺りに突き刺さった。

「終わった……」

 ベルゼバルは心の底から勝利を悟り、今後のことを幻視する。ミーシャが自身に土下座し、ベルゼバルの思った通りにことが進む。逆らうものを全てこの能力で消滅させ、残ったものを慈しむ。元の世界での攻略法である。

「果たしてそれはどうかな?」

 ラルフはニヤリと笑った。

 ゾワァッ……

 本来であれば原子分解が起こるはずの攻撃で姿形を保つなど、それは最早生き物という概念を超越している。
 ならラルフはどうか。玉に触れたら終わりの攻撃が腹に刺さっている。消滅は免れないはず。

 力こそ全て、逆らうものは皆敵であるという理論は、自身に都合の良いことだけを採用してしまう。それは詰まる所様々な可能性の否定。最強の力という成功体験に身を委ね、命を失うのはこの世界の魔王たちが経験してきた敗北条件である。

 ──ズッ

 そこでようやく気づいた。ベルゼバルの攻撃はラルフに当たったように見えてタイミングよく開けられた異次元の穴に右手を突っ込んだだけなのだと。そしてその自慢の攻撃が背中から入って自身を消滅に導いているのも……。

「き、貴様……っ!?」

 削れた内臓。口から大量の血を吐き出しながらラルフの名を呼ぶ。だがゴボゴボと自身の血に溺れながら紡いだために何を言っているのか自分でもよく分からなかった。

「これで終わりだ。ベルゼバル」

 薄れゆく意識の中で首が飛んだのが分かった。空間断を使用されたのだろう。
 初めての負けは死に直結していた。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

スキルはコピーして上書き最強でいいですか~改造初級魔法で便利に異世界ライフ~

深田くれと
ファンタジー
【文庫版2が4月8日に発売されます! ありがとうございます!】 異世界に飛ばされたものの、何の能力も得られなかった青年サナト。街で清掃係として働くかたわら、雑魚モンスターを狩る日々が続いていた。しかしある日、突然仕事を首になり、生きる糧を失ってしまう――。 そこで、サナトの人生を変える大事件が発生する!途方に暮れて挑んだダンジョンにて、ダンジョンを支配するドラゴンと遭遇し、自らを破壊するよう頼まれたのだ。その願いを聞きつつも、ダンジョンの後継者にはならず、能力だけを受け継いだサナト。新たな力――ダンジョンコアとともに、スキルを駆使して異世界で成り上がる!

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?

音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。 役に立たないから出ていけ? わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます! さようなら! 5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

【完結】物置小屋の魔法使いの娘~父の再婚相手と義妹に家を追い出され、婚約者には捨てられた。でも、私は……

buchi
恋愛
大公爵家の父が再婚して新しくやって来たのは、義母と義妹。当たり前のようにダーナの部屋を取り上げ、義妹のマチルダのものに。そして社交界への出入りを禁止し、館の隣の物置小屋に移動するよう命じた。ダーナは亡くなった母の血を受け継いで魔法が使えた。これまでは使う必要がなかった。だけど、汚い小屋に閉じ込められた時は、使用人がいるので自粛していた魔法力を存分に使った。魔法力のことは、母と母と同じ国から嫁いできた王妃様だけが知る秘密だった。 みすぼらしい物置小屋はパラダイスに。だけど、ある晩、王太子殿下のフィルがダーナを心配になってやって来て……

セーブポイント転生 ~寿命が無い石なので千年修行したらレベル上限突破してしまった~

空色蜻蛉
ファンタジー
枢は目覚めるとクリスタルの中で魂だけの状態になっていた。どうやらダンジョンのセーブポイントに転生してしまったらしい。身動きできない状態に悲嘆に暮れた枢だが、やがて開き直ってレベルアップ作業に明け暮れることにした。百年経ち、二百年経ち……やがて国の礎である「聖なるクリスタル」として崇められるまでになる。 もう元の世界に戻れないと腹をくくって自分の国を見守る枢だが、千年経った時、衝撃のどんでん返しが待ち受けていて……。 【お知らせ】6/22 完結しました!

最難関ダンジョンをクリアした成功報酬は勇者パーティーの裏切りでした

新緑あらた
ファンタジー
最難関であるS級ダンジョン最深部の隠し部屋。金銀財宝を前に告げられた言葉は労いでも喜びでもなく、解雇通告だった。 「もうオマエはいらん」 勇者アレクサンダー、癒し手エリーゼ、赤魔道士フェルノに、自身の黒髪黒目を忌避しないことから期待していた俺は大きなショックを受ける。 ヤツらは俺の外見を受け入れていたわけじゃない。ただ仲間と思っていなかっただけ、眼中になかっただけなのだ。 転生者は曾祖父だけどチートは隔世遺伝した「俺」にも受け継がれています。 勇者達は大富豪スタートで貧民窟の住人がゴールです(笑)

異世界召喚に条件を付けたのに、女神様に呼ばれた

りゅう
ファンタジー
 異世界召喚。サラリーマンだって、そんな空想をする。  いや、さすがに大人なので空想する内容も大人だ。少年の心が残っていても、現実社会でもまれた人間はまた別の空想をするのだ。  その日の神岡龍二も、日々の生活から離れ異世界を想像して遊んでいるだけのハズだった。そこには何の問題もないハズだった。だが、そんなお気楽な日々は、この日が最後となってしまった。

処理中です...