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第十四章 驚天動地
第二十話 狂人の凶刃
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八大地獄の目的は”自由”。何にも束縛されない心の底から開放された状態を指す。
「我々が目指す先に必要の無いもの……それが神だ。存在が巨大すぎていまいちピンッと来ていないだろう?矮小化させれば分かりやすい。城主、領主、町長、村長……。”目の上のたんこぶ”とでも呼びたい、王様気取りの連中からの脱却が我らの狙いである」
ロングマンはラルフから視線を外さず滔々と語ってくる。
「俺はてっきり神に与してんのかと思ってたけどな。それじゃ、あんたらはその目の上のたんこぶが無くなれば満足してくれるのか?」
ラルフの質問に首を傾けながら呆れ気味に答える。
「それは始まりにすぎん。具体的には他者からの規制、圧力、拘束。社会的重圧、重責。共感や配慮に至る全てを我らは必要としていない。自由。それこそが我らが目指すべきものだ」
「……は?」
ラルフはロングマンの答えに首を傾げた。頭で何度噛み砕いてもロングマンの言っている意味が、稚拙で馬鹿げていると受け取られるものだった。
「えっと……すまない。俺の聞き間違いじゃなければ、あんたたちは今の……いや、社会そのものを否定しようとしていることになってんだけど?その認識で間違い無いのか?」
「何を馬鹿な、そんなことを我が言ったか?全くこれだから原住民は……良いか?我らは”我らの”邪魔者を排した、好き勝手生きられる世界を所望していると言うことだ。……ん?これは隠さなすぎだな……とはいえ上手い言葉も見つからん……まぁ、何だ。そう言うことだ。察しろ」
この回答に唖然とする。一見「自分たちに降りかかる厄介なものだけ」と注釈を入れたくなる文言だが、そうでは無い。八大地獄が出会う全ての気に入らないものの破壊を目論んでいるのだ。
神を冒涜するだけならいざ知らず、秩序を亡きものにしようとしている。しかも物理的な破壊。到底看過されることでは無い。それが例え、人間にも魔族にも属せず、社会から見放された第三勢力という立場だとしても、世界を壊そうと画策する最悪の魔物にラルフは出会ってしまった。この場合どうすれば良いのか?
「察しろったって……無理だろ。それはあんたの言う”原住民”の歴史の否定だ。積み上げてきた生きた証に、唾を吐きかけようなんて……そんな奴と手を組めと?」
「ん?おかしいな……お前は神に狙われる身。神を倒したいのはお前とて同じであろう?」
「ズレてんなロングマン。俺は神に愛された男だぜ?確かにアトムやアルテミスとかの一部の神には俺は厄介な存在かもしれねぇけど、いずれ和解出来る時が来るさ」
「戯言を……あんな連中に何を期待する?それは創造主と創造物であると言う忠誠の証か?神を名乗る矮小な存在に作られた、さらに矮小な存在だから逆らうことが出来ないとでもいうのか?」
「えぇ……何その自然に出てくる悪口……あんた最低だぞ」
ラルフはロングマンという男の尊大な態度に辟易する。この男とはどうあがいても仲良くはなれない。ラルフにとっての偉大な著書である”ロングマン日誌”から取った名を名乗って欲しく無いほどに幻滅した。
「ふむ……交渉は決裂のようだな」
「待てよ。あんたには歩み寄る精神ってのが無いのか?こっちの意見も聞かずに交渉決裂なんてよくも言えたもんだな」
「何?ふざけたことを。我らに歩み寄る精神なんぞ無いくせに、自分のことばかりか?……やはりお前は気に食わん」
「へぇ?自分のことを棚に上げてよくそんなこと言えたな……。こんな頭のおかしい奴だとは夢にも思わなかった。この話し合い自体が人生の汚点だ」
ラルフの目に火が灯る。生存圏を侵す魔族同様に許せない明確な敵だ。
昔であれば強いと見るやトンズラこいてた。昔であれば、もし万が一にもこんな状況に追いやられたなら、一も二もなく頭を下げて下僕にまで成り下がったことだろう。自分の命を拾うためなら恥ずかしくも無い。
だが今は違う。戦える。ここにはみんながいる。
「ほぅ、殺気を感じる良い目だ。お前程度の男が我を前に殺気を出せると言うことは、潜伏しているな?その辺りの草木の陰に。我らを包囲して良い気になっているようだな」
「あ、分かる?でもどうしようもねぇだろ?あんたは俺の間合いだし、剣も持ってない。あんたのお仲間も戦闘態勢に入ってないしな。ん?そう言えば見たこともないのがいるけど、補充したのか?いや、そこは置いといて、一斉に攻撃されたら終わりだぜ?」
「ふむ、ならばどうしろと?降伏でもさせたいか?」
ラルフは肩を竦める。それが無言の肯定だと気づく。
「雑魚が。身の程を弁えることだな」
ロングマンは左手を天に掲げる。ラルフに接近し、手刀でもかまそうと言うのか?もしかしたら魔力で硬質化し、本当に切れるのかもしれない。つくづく黒影を潜伏させて正解だったと考えた。
だが、その考えは少しだけ違っていた。
ブゥン……パシッ
その手に吸い込まれるように第六地獄”炎熱”と呼ばれる刀が飛んできた。正確にはティファルの鞭で刀を巻き、丁度手に収まるように振るったと言うのが正しい。
刀を手にしたロングマンの行動は早かった。すぐさま腰を落として刀を抜き払い、ラルフの眼前で思いっきり振った。
バジィッ
黒影の用意していた魔障壁は難なくロングマンの凶刃を防ぐ。
「ほぅ?魔障壁も使えたか。少し踏み込みが浅かったようだ」
まるで魔障壁も切れると言いたげな言葉だが、これで火蓋は切られた。
「おいおい。やりやがったな?こっからはもう戦争だぜ?」
「我々が目指す先に必要の無いもの……それが神だ。存在が巨大すぎていまいちピンッと来ていないだろう?矮小化させれば分かりやすい。城主、領主、町長、村長……。”目の上のたんこぶ”とでも呼びたい、王様気取りの連中からの脱却が我らの狙いである」
ロングマンはラルフから視線を外さず滔々と語ってくる。
「俺はてっきり神に与してんのかと思ってたけどな。それじゃ、あんたらはその目の上のたんこぶが無くなれば満足してくれるのか?」
ラルフの質問に首を傾けながら呆れ気味に答える。
「それは始まりにすぎん。具体的には他者からの規制、圧力、拘束。社会的重圧、重責。共感や配慮に至る全てを我らは必要としていない。自由。それこそが我らが目指すべきものだ」
「……は?」
ラルフはロングマンの答えに首を傾げた。頭で何度噛み砕いてもロングマンの言っている意味が、稚拙で馬鹿げていると受け取られるものだった。
「えっと……すまない。俺の聞き間違いじゃなければ、あんたたちは今の……いや、社会そのものを否定しようとしていることになってんだけど?その認識で間違い無いのか?」
「何を馬鹿な、そんなことを我が言ったか?全くこれだから原住民は……良いか?我らは”我らの”邪魔者を排した、好き勝手生きられる世界を所望していると言うことだ。……ん?これは隠さなすぎだな……とはいえ上手い言葉も見つからん……まぁ、何だ。そう言うことだ。察しろ」
この回答に唖然とする。一見「自分たちに降りかかる厄介なものだけ」と注釈を入れたくなる文言だが、そうでは無い。八大地獄が出会う全ての気に入らないものの破壊を目論んでいるのだ。
神を冒涜するだけならいざ知らず、秩序を亡きものにしようとしている。しかも物理的な破壊。到底看過されることでは無い。それが例え、人間にも魔族にも属せず、社会から見放された第三勢力という立場だとしても、世界を壊そうと画策する最悪の魔物にラルフは出会ってしまった。この場合どうすれば良いのか?
「察しろったって……無理だろ。それはあんたの言う”原住民”の歴史の否定だ。積み上げてきた生きた証に、唾を吐きかけようなんて……そんな奴と手を組めと?」
「ん?おかしいな……お前は神に狙われる身。神を倒したいのはお前とて同じであろう?」
「ズレてんなロングマン。俺は神に愛された男だぜ?確かにアトムやアルテミスとかの一部の神には俺は厄介な存在かもしれねぇけど、いずれ和解出来る時が来るさ」
「戯言を……あんな連中に何を期待する?それは創造主と創造物であると言う忠誠の証か?神を名乗る矮小な存在に作られた、さらに矮小な存在だから逆らうことが出来ないとでもいうのか?」
「えぇ……何その自然に出てくる悪口……あんた最低だぞ」
ラルフはロングマンという男の尊大な態度に辟易する。この男とはどうあがいても仲良くはなれない。ラルフにとっての偉大な著書である”ロングマン日誌”から取った名を名乗って欲しく無いほどに幻滅した。
「ふむ……交渉は決裂のようだな」
「待てよ。あんたには歩み寄る精神ってのが無いのか?こっちの意見も聞かずに交渉決裂なんてよくも言えたもんだな」
「何?ふざけたことを。我らに歩み寄る精神なんぞ無いくせに、自分のことばかりか?……やはりお前は気に食わん」
「へぇ?自分のことを棚に上げてよくそんなこと言えたな……。こんな頭のおかしい奴だとは夢にも思わなかった。この話し合い自体が人生の汚点だ」
ラルフの目に火が灯る。生存圏を侵す魔族同様に許せない明確な敵だ。
昔であれば強いと見るやトンズラこいてた。昔であれば、もし万が一にもこんな状況に追いやられたなら、一も二もなく頭を下げて下僕にまで成り下がったことだろう。自分の命を拾うためなら恥ずかしくも無い。
だが今は違う。戦える。ここにはみんながいる。
「ほぅ、殺気を感じる良い目だ。お前程度の男が我を前に殺気を出せると言うことは、潜伏しているな?その辺りの草木の陰に。我らを包囲して良い気になっているようだな」
「あ、分かる?でもどうしようもねぇだろ?あんたは俺の間合いだし、剣も持ってない。あんたのお仲間も戦闘態勢に入ってないしな。ん?そう言えば見たこともないのがいるけど、補充したのか?いや、そこは置いといて、一斉に攻撃されたら終わりだぜ?」
「ふむ、ならばどうしろと?降伏でもさせたいか?」
ラルフは肩を竦める。それが無言の肯定だと気づく。
「雑魚が。身の程を弁えることだな」
ロングマンは左手を天に掲げる。ラルフに接近し、手刀でもかまそうと言うのか?もしかしたら魔力で硬質化し、本当に切れるのかもしれない。つくづく黒影を潜伏させて正解だったと考えた。
だが、その考えは少しだけ違っていた。
ブゥン……パシッ
その手に吸い込まれるように第六地獄”炎熱”と呼ばれる刀が飛んできた。正確にはティファルの鞭で刀を巻き、丁度手に収まるように振るったと言うのが正しい。
刀を手にしたロングマンの行動は早かった。すぐさま腰を落として刀を抜き払い、ラルフの眼前で思いっきり振った。
バジィッ
黒影の用意していた魔障壁は難なくロングマンの凶刃を防ぐ。
「ほぅ?魔障壁も使えたか。少し踏み込みが浅かったようだ」
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