561 / 718
第十四章 驚天動地
第十三話 燻る炎
しおりを挟む
小高い丘の上、前方には霞む山、その下に広がる大森林が自然の美しさを際立たせる。
丘の先端に上着をはためかせる男が立っている。刀を腰に差した偉丈夫。八大地獄の頭目であり、第六地獄”炎熱”を預かるロングマンその人だ。
背後にチラチラと他のメンバーが揃い始める。ロングマンの足が特別早いわけではなく、皆の足取りが重いのだ。その理由はロングマンの見つめる先にある。
「ねぇ、本当に行くの?」
ティファルは不安そうな顔でロングマンに語りかける。その声に肩を竦めて振り返る。
「……不安か?」
「当然でしょ?私の体を見てよ。こうなったのはあの化け物のせいなんだからね。トラウマになるのも頷けるでしょう?」
煌々と光る支隊を撫でながら鼻を鳴らした。ティファルは一度死んだ。その肉体は魔族となっていて元の体では無い。ボルケーノウィッチという種族であり、神の力で転生させられた新たな姿である。
「守護獣ケルベロス。彼奴等が製作した最強の怪物たちは今や後一匹となった。それもこれもミーシャと呼ばれる魔族のせいだが、その魔族のお陰で新たな道が開けることが分かった。こうなっては我らもじっとしていられないだろう?」
「それを伝えに来たのがアタシたちの最終目標だってことも忘れてないよね?」
「ふむ、その通りだ。藤堂が持ってきた情報だな。あれが嘘をついているという心配か?」
ティファルは唇を尖らせて控えめに頷いた。その様子に同じく復活を遂げたテノスが割り込む。
「姉さんが言いたいことは体良く使われて無いかってことだろ?相手はあのケルベロスだぞ?同士討ちか、俺たちの全滅か。どっちに転んでもあの野郎の思うツボじゃ無いか」
「その通りじゃロングマン」
カツンッと小気味良く杖をついてトドットも口を挟む。
「やはり奴の話は無視して、次なる方策を考えるべきじゃ。第一、”次元渡り”が機能するとて、何に使うというのじゃ?今更元の世界に未練などあるまい?」
「確かに今更帰っても時代が進み過ぎて訳が分からんだろうな。ここに来た一秒後に戻れるならまだしも……っと、話が逸れた。次元渡りの効力については気になる点があってな。藤堂に踊らされるのは癪だが、その必要があると感じた。ただそれだけだ」
ロングマンはまた正面を向く。何度言っても変わることのない方針には流石に業を煮やすトドットたち面々。
「んだよオメーら、何をそう怖がることがあんだよ?ティファルとテノスは見た目通り火への耐性を持ってんだろ?蹴られただけで致命傷を負うっつーことはないと思うぜ?」
ジニオンはあまり物を考えずに呆れた様子で話しかけた。テノスは苛立ち気味に呟く。
「……脳筋戦闘狂は黙ってろよ……乳がでけんだよ……」
「ああっ!?んだとこのクソガキ!!おぅ!この際”脳筋”にも”戦闘狂”にも目を瞑るが、身体的特徴を挙げるのはおかしいだろ?!俺が一番気にしてんだよ!!」
ジニオンも一度死んだ口だ。神の嫌がらせで女性の体に転生させられ、苦労もあったが、今日まではなんとか我慢出来た。しかし男性だった生前に比べ、今の女性の体はかなり不安定である。まず沸点が低く、感情のコントロールが上手くいかないことがある。この程度のことでむかっ腹が立つほどにカッとなりやすい。
「辞めよ。仲間同士で争う時ではない。……このままではケルベロスに会う前に同士討ちをしてしまいそうだ。勿体振っても仕方がない。ここらで我の考えを述べよう」
ロングマンの言葉に皆の視線が集まる。
「結論から言えば、神殺しが目的となる。そしてその神殺しに最も近い能力が”次元渡り”なのだ。彼奴等の言動から、神と戦って勝ったところで意味はない。何故なら彼奴等は常に安全圏から口を出しているのだからな。……つまりその安全圏を脅かし、そして本体を攻撃する」
「その次元に繋がるって保証はねぇと思うぞ?」
「ふっ……試してみるさ」
ロングマンはニヤリと笑った。
この森の最奥にはハーフリングの村があり、旅人を歓迎している。その先にある洞窟”還らずの洞窟”と呼ばれる場所こそ、ケルベロスが鎮座する玉座である。中はダンジョンとなっているので、攻略は難しい。だが、未知なる場所への開拓をしているようで内心面白がっていた点もある。
ともかく八大地獄はまた歩いだした。一向はハーフリングの村を目指してひたすら真っ直ぐ進む。
丘の先端に上着をはためかせる男が立っている。刀を腰に差した偉丈夫。八大地獄の頭目であり、第六地獄”炎熱”を預かるロングマンその人だ。
背後にチラチラと他のメンバーが揃い始める。ロングマンの足が特別早いわけではなく、皆の足取りが重いのだ。その理由はロングマンの見つめる先にある。
「ねぇ、本当に行くの?」
ティファルは不安そうな顔でロングマンに語りかける。その声に肩を竦めて振り返る。
「……不安か?」
「当然でしょ?私の体を見てよ。こうなったのはあの化け物のせいなんだからね。トラウマになるのも頷けるでしょう?」
煌々と光る支隊を撫でながら鼻を鳴らした。ティファルは一度死んだ。その肉体は魔族となっていて元の体では無い。ボルケーノウィッチという種族であり、神の力で転生させられた新たな姿である。
「守護獣ケルベロス。彼奴等が製作した最強の怪物たちは今や後一匹となった。それもこれもミーシャと呼ばれる魔族のせいだが、その魔族のお陰で新たな道が開けることが分かった。こうなっては我らもじっとしていられないだろう?」
「それを伝えに来たのがアタシたちの最終目標だってことも忘れてないよね?」
「ふむ、その通りだ。藤堂が持ってきた情報だな。あれが嘘をついているという心配か?」
ティファルは唇を尖らせて控えめに頷いた。その様子に同じく復活を遂げたテノスが割り込む。
「姉さんが言いたいことは体良く使われて無いかってことだろ?相手はあのケルベロスだぞ?同士討ちか、俺たちの全滅か。どっちに転んでもあの野郎の思うツボじゃ無いか」
「その通りじゃロングマン」
カツンッと小気味良く杖をついてトドットも口を挟む。
「やはり奴の話は無視して、次なる方策を考えるべきじゃ。第一、”次元渡り”が機能するとて、何に使うというのじゃ?今更元の世界に未練などあるまい?」
「確かに今更帰っても時代が進み過ぎて訳が分からんだろうな。ここに来た一秒後に戻れるならまだしも……っと、話が逸れた。次元渡りの効力については気になる点があってな。藤堂に踊らされるのは癪だが、その必要があると感じた。ただそれだけだ」
ロングマンはまた正面を向く。何度言っても変わることのない方針には流石に業を煮やすトドットたち面々。
「んだよオメーら、何をそう怖がることがあんだよ?ティファルとテノスは見た目通り火への耐性を持ってんだろ?蹴られただけで致命傷を負うっつーことはないと思うぜ?」
ジニオンはあまり物を考えずに呆れた様子で話しかけた。テノスは苛立ち気味に呟く。
「……脳筋戦闘狂は黙ってろよ……乳がでけんだよ……」
「ああっ!?んだとこのクソガキ!!おぅ!この際”脳筋”にも”戦闘狂”にも目を瞑るが、身体的特徴を挙げるのはおかしいだろ?!俺が一番気にしてんだよ!!」
ジニオンも一度死んだ口だ。神の嫌がらせで女性の体に転生させられ、苦労もあったが、今日まではなんとか我慢出来た。しかし男性だった生前に比べ、今の女性の体はかなり不安定である。まず沸点が低く、感情のコントロールが上手くいかないことがある。この程度のことでむかっ腹が立つほどにカッとなりやすい。
「辞めよ。仲間同士で争う時ではない。……このままではケルベロスに会う前に同士討ちをしてしまいそうだ。勿体振っても仕方がない。ここらで我の考えを述べよう」
ロングマンの言葉に皆の視線が集まる。
「結論から言えば、神殺しが目的となる。そしてその神殺しに最も近い能力が”次元渡り”なのだ。彼奴等の言動から、神と戦って勝ったところで意味はない。何故なら彼奴等は常に安全圏から口を出しているのだからな。……つまりその安全圏を脅かし、そして本体を攻撃する」
「その次元に繋がるって保証はねぇと思うぞ?」
「ふっ……試してみるさ」
ロングマンはニヤリと笑った。
この森の最奥にはハーフリングの村があり、旅人を歓迎している。その先にある洞窟”還らずの洞窟”と呼ばれる場所こそ、ケルベロスが鎮座する玉座である。中はダンジョンとなっているので、攻略は難しい。だが、未知なる場所への開拓をしているようで内心面白がっていた点もある。
ともかく八大地獄はまた歩いだした。一向はハーフリングの村を目指してひたすら真っ直ぐ進む。
0
あなたにおすすめの小説
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
スキルはコピーして上書き最強でいいですか~改造初級魔法で便利に異世界ライフ~
深田くれと
ファンタジー
【文庫版2が4月8日に発売されます! ありがとうございます!】
異世界に飛ばされたものの、何の能力も得られなかった青年サナト。街で清掃係として働くかたわら、雑魚モンスターを狩る日々が続いていた。しかしある日、突然仕事を首になり、生きる糧を失ってしまう――。 そこで、サナトの人生を変える大事件が発生する!途方に暮れて挑んだダンジョンにて、ダンジョンを支配するドラゴンと遭遇し、自らを破壊するよう頼まれたのだ。その願いを聞きつつも、ダンジョンの後継者にはならず、能力だけを受け継いだサナト。新たな力――ダンジョンコアとともに、スキルを駆使して異世界で成り上がる!
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?
音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。
役に立たないから出ていけ?
わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます!
さようなら!
5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!
【完結】物置小屋の魔法使いの娘~父の再婚相手と義妹に家を追い出され、婚約者には捨てられた。でも、私は……
buchi
恋愛
大公爵家の父が再婚して新しくやって来たのは、義母と義妹。当たり前のようにダーナの部屋を取り上げ、義妹のマチルダのものに。そして社交界への出入りを禁止し、館の隣の物置小屋に移動するよう命じた。ダーナは亡くなった母の血を受け継いで魔法が使えた。これまでは使う必要がなかった。だけど、汚い小屋に閉じ込められた時は、使用人がいるので自粛していた魔法力を存分に使った。魔法力のことは、母と母と同じ国から嫁いできた王妃様だけが知る秘密だった。
みすぼらしい物置小屋はパラダイスに。だけど、ある晩、王太子殿下のフィルがダーナを心配になってやって来て……
セーブポイント転生 ~寿命が無い石なので千年修行したらレベル上限突破してしまった~
空色蜻蛉
ファンタジー
枢は目覚めるとクリスタルの中で魂だけの状態になっていた。どうやらダンジョンのセーブポイントに転生してしまったらしい。身動きできない状態に悲嘆に暮れた枢だが、やがて開き直ってレベルアップ作業に明け暮れることにした。百年経ち、二百年経ち……やがて国の礎である「聖なるクリスタル」として崇められるまでになる。
もう元の世界に戻れないと腹をくくって自分の国を見守る枢だが、千年経った時、衝撃のどんでん返しが待ち受けていて……。
【お知らせ】6/22 完結しました!
最難関ダンジョンをクリアした成功報酬は勇者パーティーの裏切りでした
新緑あらた
ファンタジー
最難関であるS級ダンジョン最深部の隠し部屋。金銀財宝を前に告げられた言葉は労いでも喜びでもなく、解雇通告だった。
「もうオマエはいらん」
勇者アレクサンダー、癒し手エリーゼ、赤魔道士フェルノに、自身の黒髪黒目を忌避しないことから期待していた俺は大きなショックを受ける。
ヤツらは俺の外見を受け入れていたわけじゃない。ただ仲間と思っていなかっただけ、眼中になかっただけなのだ。
転生者は曾祖父だけどチートは隔世遺伝した「俺」にも受け継がれています。
勇者達は大富豪スタートで貧民窟の住人がゴールです(笑)
異世界召喚に条件を付けたのに、女神様に呼ばれた
りゅう
ファンタジー
異世界召喚。サラリーマンだって、そんな空想をする。
いや、さすがに大人なので空想する内容も大人だ。少年の心が残っていても、現実社会でもまれた人間はまた別の空想をするのだ。
その日の神岡龍二も、日々の生活から離れ異世界を想像して遊んでいるだけのハズだった。そこには何の問題もないハズだった。だが、そんなお気楽な日々は、この日が最後となってしまった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる