一般トレジャーハンターの俺が最強の魔王を仲間に入れたら世界が敵になったんだけど……どうしよ?

大好き丸

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第十三章 再生

第二十五話 過去からの刺客

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「これより罪人ブレイブの処刑を執り行う」

 羊皮紙を広げて高々と宣言する役人。虚空を見つめるブレイブの顔は痩せこけていてまるで死人のようだ。
 ブレイブの罪はたった一つ。魔族との交わり。しかしそれ以上に様々な罪を擦りつけられ、極悪人として裁かれる。罪人は高台の上で跪き、処刑人がゴテゴテに装飾されたまさかりを構える。一振りの下、ブレイブの少し前に置かれたバスケットに首が落ちる。処刑は淡々と、そしてあっさりと終了する。
 イルレアン国を臣下たちの汚職から解放に導き、弱き者たちを救った英雄の一人は、事もあろうに反逆者としてこの世を去った。後に語られる勇者ブレイブの冒険譚は共に戦った仲間の一人がこっそり流したと言われているが定かではない。

「……手ぬるい」

 公開処刑の場に居合わせたソフィーは、断首によって贖われたブレイブの罪に対しての感想を口にした。その真意は「もっと痛めつければ良いのに」や「干からびるまで放置すべき」など、とにかく苦しませて欲しいという願望が含まれていた。
 ソフィーもヲルト大陸で仲間と共に死ぬはずだった。死など怖くなかった。特にイーリスと一緒なら死んでも文句はなかった。唯一の理解者である彼女と一緒なら……。
 でもそうはならなかった。ブレイブの妙な考えのせいでその機を失った。許せない。許す気もない。出来ることならこの手で引導を渡したかった。

 イーリス。……ああ、イーリス。
 今は安らかに眠り、時が来たらまたその笑顔をお見せください。
 私はその時ようやく、あなたと一つになる。



 ソフィーは静かに槍を構えた。体幹がしっかりしていてブレがない。槍使いといえばアロンツォが浮かぶが、彼以上の力量を感じていた。威圧感が半端ではない。ブレイドはガンブレイドを構える。

「こっちは飛び道具だ。その位置からどうやって俺を突く?」

 ジリッ……

「おい動くな。弾みで撃つかも……」

 ブレイドの脅しにソフィーはフンッと鼻で笑う。

「……発火光フレア

 ボッ

 ソフィーの槍の先から火の玉が飛ぶ。ブレイドは反射的にその火の玉に狙いをつけた。その僅かな隙が命取り。ソフィーは信じられないほどの速さでブレイドに接近する。それこそデコイに用いたフレアよりも速く。

「これが神の力です!」

 ソフィーの邪悪な笑顔は獲物を遊び殺す残酷な殺人鬼のそれである。見るだけで怖気が走りそうな笑顔に、ブレイドの目は冷ややかに答えた。

 シャギィッ……

 ブレイドの顔めがけて突き出された槍は魔障壁に阻まれた。あまりの突きの威力に魔障壁は貫通を許し、完全に防ぐことは出来なかったが狙いは逸れた。八大地獄のテノスにやった手口と一緒だ。あまりの透明度に魔障壁があることを視認することが出来なかったソフィーの目は大きく見開かれた。

「仲間の仇だ」

 ドンッ

 ブレイドはお返しとばかりに切っ先をソフィーの顔に向けた直後に魔力砲を放った。

 バギンッ

 狙った通りにはいかなかったが、防御した彼女の腕に直撃した。金属同士がぶつかり合うような音と共にソフィーは後退する。不思議な手応えにブレイドは追撃も忘れ、思わず切っ先を地面に向ける。

「なんだ?」

 ブレイドの後ろで魔障壁を密かに張っていたアルルもひょこっと顔を見せる。そこで見たのはソフィーの機械仕掛けの右腕。バチバチッと紫色の稲妻が抉れた傷を這っている。

「これはこれは……まさか私にダメージを与える存在が居ようとは……」

「……人形か?」

「いいえ、違います。所々を改造した半分機械人間です。私の本来の体ではイーリスの動きを再現出来なかったので……」

 雨穿つイーリス。雨の水滴の一粒すら見逃さない凄まじい精度を誇る槍術で名を馳せた槍兵。その再現を運動音痴だったソフィーが真似ようなど夢のまた夢だった。鍛えることもままならない脆弱な体を手っ取り早く強くするにはこの方法しかなかったと思われる。

「自分を改造??何言って……怖ぁ……」

 アルルは槍をギュッと握って恐怖に慄く。

「ふふ……もう少し大人になれたら理解出来たのかもしれませんね」

 右手をかざし、抉れた傷を見せつける。機械と化した手の傷が魔力によって修復されていくのが確認出来た。肉体の傷となんら変わりなく完治した。

「……なるほど、化け物か」

「人聞きの悪い。科学の結晶とお呼びなさい」

 ソフィーのにやけ面にブレイドも戦慄を覚えた。若く美しい姿がベルフィア以上の怪物に見えたためである。ちなみにベルフィア以上に思えるのは単なる慣れであって怪物具合はどちらも変わりない。
 恐怖が場を支配する中にあって、どこからともなく声が聞こえた。

一角人ホーンは魔法使いの種族だろ?ヒューマン以上に魔道具いじりが上手いってさぁ……もはやヒューマンの強み消えたな」

 声のした方向を全員が見る。
 魔族も人族も、誰も彼も、戦争の行く末に関わる全てのものが空を見上げた。戦いもそっちのけで見てしまう。そこには戦いが始まる直前に姿を消した存在が浮かんでいた。

「ラルフさん!!」

 アルルの呼び声にラルフはハットの鍔を摘む。その光景を防壁側で見ていたアンノウンと歩の顔も綻ぶ。ハンターたちと戦っていたジュリアは鼻を鳴らし、軍勢の横っ腹を食い破るために身を潜めていたティアマトやくろがねも安堵のため息が漏れる。ミーシャがラルフを掴んで一緒に浮いているのを見れば誰だって手伝ってあげているのだと確信する。

「あら?あなたは確かアルフレッドではなかったかしら?」

 ソフィーのしたり顔にラルフはひょうきんな顔で答える。

「本当かい?そりゃ変だな……ひょっとしたら俺の名前がそれっぽく聞こえたかもなぁ?」

 ミーシャはクスッと笑った。記憶の共有をしたばかりなので、その記憶は予習済みである。

「……かんさわる方ですね……」

「え?そう?」

 ソフィーの眉がピクピクと動いた。イラついているのが良く分かる。

「冗談だって、よく言われるよ。直す気はさらさら無いけどな」

 ラルフは黙るソフィーに対し、不敵に笑って見せた。
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