一般トレジャーハンターの俺が最強の魔王を仲間に入れたら世界が敵になったんだけど……どうしよ?

大好き丸

文字の大きさ
367 / 718
第十章 虚空

第十三話 着々と到着

しおりを挟む
 白の騎士団の召集。
 最強の戦士たちがイルレアンに続々と集結する。

「おい、大通り見たか?」

 街の裏通りにある小さな酒場。青年は目を輝かせながら隣の客に話しかけた。昼間だというのに酒を手に持った酔いどれのオヤジが、眠そうなトロンとした目で青年を見る。

「あぁ?何かあったんか?」

「さっきよ、一角人ホーンが何人か歩いてたぜ。しかもありゃ礼装だったな……」

 酔いどれオヤジは「それが?」といった顔で酒を呷る。ホーンもヒューマンの味方だ。国交だって普通に開かれているのに今更珍しくもない。いや、水晶の角が額から生えてるのだから、そういうのを見たことない者にとっては物珍しいだろう。
 横で話を聞いていた太った男が「よぉ」と話しかけた。

「俺なんかさっき獣人族アニマン見たぜ。五、六人くらいで城に向かってた」

「マジ?昨日はエルフが入国してたし、何かあんのか?」

 普段見る機会の無い種族まで入国していたことで、酒場はワイワイ賑やかになった。

「ママ!!今月って何か記念日あったっけ?!」

 ママと呼ばれたのはこの店のオーナー。カウンターの内側でヨボヨボのお婆ちゃんが、立っているのもやっとといった感じにプルプル震えている。

「あたしゃ何も知らんよ!」

 青年に怒鳴るように声を張り上げる。耳が遠いのだ。ここにいる客は皆それを知っているので驚くこともない。

「そりゃそうか」

 青年たちは納得するとまた話を再開した。



「……随分とまぁ懐かしい顔ぶれに出会ったぜ」

 ガノンは公爵の別邸の玄関ホールに椅子を置いて、ニヤつきながら入館した人を待ち伏せていた。

「こ……これはガノンさん。お久しぶりでございます」

 オドオドとした態度で急いで頭を下げる女性。
 フード付きの真っ白な上着とおそろいの白いロングスカート。竜の文様が描かれた前掛けに六芒星のネックレス。お世辞にも健康的とは言えない白い肌。顔と髪を隠すためか、フードを被っているが、ふわふわの髪の毛が入り切らずに顔の横から覗き、ルビーの様な綺麗な瞳は額の水晶の角と対照的な色合いで見るものを魅了する。

 彼女の名はソフィー=ウィルム。二つ名は”魔女”。数十年前から一切変わらないその美貌に恐怖を感じたホーンの王様が付けた異名。それがそのまま白の騎士団で使われる様になった。

「ソフィー様、この様な無作法なケダモノに敬語は使わない方が宜しいかと……」

 ソフィーとは違い、毅然とした態度でいるのはイザベル=クーン。美しい金髪女性。二つ名は”煌杖”。二人ともホーンであり、優秀な魔法使いだ。

「……けっ、言うじゃねぇか……相変わらずだなイザベル」

「気安く名前を呼ばない様に……」

 イザベルはソフィーに「こちらです」と手を引き、一緒にやってきた部下と館の奥に進んだ。
 次に顔を出したのは激烈のルールー。こちらも部下と一緒に入ってきた。入り口を開けてバッチリ目が合ったのに、ルールーは素知らぬ顔で横を通り過ぎようとする。

「……おいコラ手前ぇ。挨拶も無しか?」

 ピタッと立ち止まると「ハァ……」とため息をつき、流し目でガノンを見た。

「……カサブリア以来だな。無様晒して伏せってた仔猫は何処へやら……その様子だと、やっと立ち直ったか?」

ジャカマシイ!ダケン オメート話スノハ嫌ナンジャ!」

 ルールーの怒声に呼応して部下たちも威嚇する。アニマンたちの気性の荒さはよく知られていて、ちょっとしたことで喧嘩に発展することはよくある。
 ヒューマンはそれこそ身体能力に大きな差があるので、アニマンと会話をする時は言葉には気をつけるのだが、その手の常識はガノンには通じない。

「……まぁそう熱くなるなよ。あの時負けたのは何も手前ぇだけじゃねぇんだからよ」

 そう言うとポケットから金貨を一枚取り出した。親指で弾くとチィンッと甲高い音を立て、ルールーの眼前に飛んできた。顔に当たる軌道だったので思わず金貨を掴む。

「……ゴレハ?」

「……あん時の賭けの負け分だ。手前ぇはさっさと帰っちまったから渡す機会がなかったろ」

「変ナドコ律儀ダデナ……マ、貰ットグデ」

 ルールーは背後に控える部下に金貨を手渡すと、階段を登って二階に上がっていった。それにすれ違う様に食堂からひょこっとアリーチェが顔を覗かせた。

「何かあった?大きな声が聞こえたけど」

「……待ち人来たれりってな。残すところはバードの兄妹だ」

「あれ?”氷突”には送らなかったの?」

「……魚人族マーマンが何の役に立つ?海上での戦いなら別だが、陸に引っ張り出すのもな……後、海の中への郵送は金と余計な手間が掛かるしよ」

「ああ、後者か」

 良い言葉で節約家、悪い言葉でドケチと評されるガノン。緊急の用件にも金勘定は欠かさない。

「……ったく、アロンツォの野郎……こんな時に一番に来るだろうバードが遅刻とは、一体どこで寄り道してるのやら……あ、そうだ。そういやちょい気になったんだがよ。さっきから来る奴みんな何も言ってないし、案内してないのに勝手にズカズカ入って行くんだが何でだ?」

 初めての館に手を引っ張って誘導する奴される奴。当然の様に二階に上がる奴ら。自分の家じゃなく、公爵の別邸なので気になる程度にとどめておくつもりが、ルールーが我が物顔で二階に上がっていったことで我慢が効かなくなった。

「知らない。警備の人が部屋の鍵でも渡してんじゃない?」

「……それだ。間違いねぇ」

 答えを得たガノンは椅子に座りなおして本格的にくつろぎ始めた。

「……アリーチェ、酒頼むわ。瓶のエールが保存庫にあったから持ってきてくれ。一番冷えた奴で宜しく」

「ご自由にどうぞー」

 そう言うと食堂に引っ込んでいった。残されたガノンは天を仰いで呟いた。

「……冷てぇー」
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

スキルはコピーして上書き最強でいいですか~改造初級魔法で便利に異世界ライフ~

深田くれと
ファンタジー
【文庫版2が4月8日に発売されます! ありがとうございます!】 異世界に飛ばされたものの、何の能力も得られなかった青年サナト。街で清掃係として働くかたわら、雑魚モンスターを狩る日々が続いていた。しかしある日、突然仕事を首になり、生きる糧を失ってしまう――。 そこで、サナトの人生を変える大事件が発生する!途方に暮れて挑んだダンジョンにて、ダンジョンを支配するドラゴンと遭遇し、自らを破壊するよう頼まれたのだ。その願いを聞きつつも、ダンジョンの後継者にはならず、能力だけを受け継いだサナト。新たな力――ダンジョンコアとともに、スキルを駆使して異世界で成り上がる!

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?

音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。 役に立たないから出ていけ? わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます! さようなら! 5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

【完結】物置小屋の魔法使いの娘~父の再婚相手と義妹に家を追い出され、婚約者には捨てられた。でも、私は……

buchi
恋愛
大公爵家の父が再婚して新しくやって来たのは、義母と義妹。当たり前のようにダーナの部屋を取り上げ、義妹のマチルダのものに。そして社交界への出入りを禁止し、館の隣の物置小屋に移動するよう命じた。ダーナは亡くなった母の血を受け継いで魔法が使えた。これまでは使う必要がなかった。だけど、汚い小屋に閉じ込められた時は、使用人がいるので自粛していた魔法力を存分に使った。魔法力のことは、母と母と同じ国から嫁いできた王妃様だけが知る秘密だった。 みすぼらしい物置小屋はパラダイスに。だけど、ある晩、王太子殿下のフィルがダーナを心配になってやって来て……

セーブポイント転生 ~寿命が無い石なので千年修行したらレベル上限突破してしまった~

空色蜻蛉
ファンタジー
枢は目覚めるとクリスタルの中で魂だけの状態になっていた。どうやらダンジョンのセーブポイントに転生してしまったらしい。身動きできない状態に悲嘆に暮れた枢だが、やがて開き直ってレベルアップ作業に明け暮れることにした。百年経ち、二百年経ち……やがて国の礎である「聖なるクリスタル」として崇められるまでになる。 もう元の世界に戻れないと腹をくくって自分の国を見守る枢だが、千年経った時、衝撃のどんでん返しが待ち受けていて……。 【お知らせ】6/22 完結しました!

最難関ダンジョンをクリアした成功報酬は勇者パーティーの裏切りでした

新緑あらた
ファンタジー
最難関であるS級ダンジョン最深部の隠し部屋。金銀財宝を前に告げられた言葉は労いでも喜びでもなく、解雇通告だった。 「もうオマエはいらん」 勇者アレクサンダー、癒し手エリーゼ、赤魔道士フェルノに、自身の黒髪黒目を忌避しないことから期待していた俺は大きなショックを受ける。 ヤツらは俺の外見を受け入れていたわけじゃない。ただ仲間と思っていなかっただけ、眼中になかっただけなのだ。 転生者は曾祖父だけどチートは隔世遺伝した「俺」にも受け継がれています。 勇者達は大富豪スタートで貧民窟の住人がゴールです(笑)

異世界召喚に条件を付けたのに、女神様に呼ばれた

りゅう
ファンタジー
 異世界召喚。サラリーマンだって、そんな空想をする。  いや、さすがに大人なので空想する内容も大人だ。少年の心が残っていても、現実社会でもまれた人間はまた別の空想をするのだ。  その日の神岡龍二も、日々の生活から離れ異世界を想像して遊んでいるだけのハズだった。そこには何の問題もないハズだった。だが、そんなお気楽な日々は、この日が最後となってしまった。

処理中です...