一般トレジャーハンターの俺が最強の魔王を仲間に入れたら世界が敵になったんだけど……どうしよ?

大好き丸

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第十章 虚空

第四話 備えて動け

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「敵襲ッ!!」

 軍施設に怒号が鳴り響く。慌ただしく動き回る多くのアニマンに混じって、のんびり歩く大男が一人。

「監督役ヲ引キ受ケテ間モナク襲撃カ。運ガ良インダカ悪インダカ……」

 ベリアは獰猛な笑みを浮かべながら建物の間から見える空飛ぶ建造物を睨む。
 闘気を纏い、筋肉が隆起する。老いても全盛期の体力を失わぬ様に鍛え、戦いに備えた体は久々の戦場に歓喜していた。

「ベリア様!コチラデス!!」

 精鋭部隊の一人、猫の獣人がベリアを誘導する。

「オウ」

 そこには精鋭部隊が整列して待っていた。男性も女性も関係なく三十人の若い強者が清淡な顔つきで身じろぎ一つ無く立っている。

(ッタク……コイツラ気色悪イナ……)

 真面目で規律正しく機械のように統率が取れている。二、三日前に初めて顔を突き合わせた時から思っていたことだが、上官に反発しようとするような跳ねっ返りが一人もいないのはつまらない。実力はまあまあといったところだが、グランツの腕力やルールーの瞬発力のように、突出したものを誰一人持っていない。これでは確かに白の騎士団への昇格は厳しい。

「……マ、当然ダナ……」

 ぽつりと呟いた言葉の真意は、上層部の求める兵士の質にあった。扱いやすい戦力の確保、オールラウンダーで何でも出来る兵士の育成。まさに盤上の駒を意識したような連中であった。

(最初カラ俺ガ居リャア コウハ ナラナカッタンダガナ……)

 ベリアと為政者では兵士に求めるものが違う。上層部はルールーの出現に飛び上がって喜んだものだろう。彼女の強さは本物だ。その上で上下関係を大切にするのだから、さぞストレスの掛からなかったことだろう。グランツはベリアほどではないにしろプライドが高かった。
 もし今寝ているのがグランツではなくルールーならと思うと、二人の扱いに違いがあっただろうことは容易に想像がつく。

 とはいえ過去を変えることは誰にも出来ない。ベリアはそんなことを考えながら、ひよっこ達に目を向けた。

「キッド」

「ハッ!」

 キッドと呼ばれた猫の獣人は列から一歩前に出る。

「オ前ラ全員、実践ハ幾ラカ経験シテルンダッタカ?」

「ハッ!戦争デ 二度、魔獣人ト相対シテイマス!近クノ平原デハ魔獣トノ戦イヲ六度!イズレモ勝利ヲ納メマシタ!」

「ダロウナ。オ前ラガ生キテイルノガ何ヨリノ証拠ダ。ダガナ、オ前ラノソノ経験ハ ハッキリ言ッテ ショボイ」

 精鋭部隊のみんなが眉を顰める。生死を掛けた数々の戦いがショボイの一言で片付けられてはプライドはズタズタだ。

「フッ……今日ハ背後デ観戦シテイロ、本当ノ戦イッテ奴ヲ見セテヤルヨ」

 ベリアは彼らに反論の機会すら与えず、のっしのっしと歩き始めた。

「オ待チ下サイ ベリア様!ソンナ一方的ニ……!」

 ベリアはピタッと足を止めて肩越しにキッドを見た。その顔は怒りに染まり、喉を鳴らして威嚇していた。

 ゾクッ

 その場の全員が感じた殺意による寒気。今まで感じたことのない恐怖は足がすくんで動かなくなるほどだった。
 ショボイ。まさにその通りだったと認識せざるを得ない。
 ベリアは獰猛にニヤリと笑う。

頂点うえヲ見レバ、オ前ラノ目指スベキ道ガ鮮明ニ見エテ来ル。見ルノモ勉強ダ。俺ガ良イト言ウマデ、コノ辺デ観戦シテイロ」

 どんな奴で、どれだけくるかも分からないというのに、一人で敵に向かっていく。その後ろ姿は雄大で、誰より頼りになる空気を醸し出していた。



「見ろよ。クリムゾンテールだ」

 ラルフの指をさした方面を大広間に集まっていたみんなで見る。そこには外の景色を映像として大きく映し出していた。

「なんで獣人族アニマンの国に……先に私たちを国に返してからでも良かったでしょうに……」

 ぶつくさ文句を垂れるのは空王。側にいる侍女もこくこく頷いている。それを他人事のように見ていたアロンツォは鼻で笑った。

「察しは付く。アンジェラ様の威光を利用しようという魂胆だろう?何をするつもりか知らんが、余の主人を危険に晒すのだけは見過ごせんぞ?」

 その言葉に妹のナタリアも槍を持つ手に力が入る。その様子を見ながらもラルフは冷静に答える。

「半分は正解だな。獣王との話し合いで有利とまで行かなくても対等になれそうだし、だからこそ空王を危険に晒そうなんて指先ほども考えちゃいないさ。というかみんな危険な目に合わせないさ」

 ラルフはアンノウンを見た。

「なぁ、例のアバターとかいうのでアニマンに説明して来てくんないかな?」

「あ、私はどうなっても良いんだ」

 アンノウンは意地悪な顔でラルフを見た。ジュリアはボソッとアンノウンに尋ねる。

「……アレッテ アナタモ傷付クンダッケ?」

 その問いにはウィンクで返した。

「あれは身代わりみたいなもんだろ?脳みそを共有させてるから情報収集にはもってこいだって自分で言ってたじゃんかよ……」

 泣き言を吐くラルフに嘲笑が巻き起こる。ベルフィアがニヤニヤしながら口を開いた。

「妾に行けとは言ワんノか?」

「言うわけないだろ……争いごとが生まれるのは目に見えるぜ……」

「じゃあさ、いっそのこと全員で行ってみようか?」

 ミーシャの提案がすぐ側で飛ぶ。この提案には場が白けた。それこそ争いが生まれるのは目に見えている。

 だが、ここでラルフはこの提案を否定せずに頭を捻る。
 アニマンは血の気が多い。突然やって来たラルフたちを見て、味方だろうと思うだろうか?答えは否。もしアンノウンだけを行かせたとして、話を聞いてくれようはずがなく、アバターを破壊されれば向こうに勢いが付く。数を揃えればあるいは……。

「ミーシャ様。それは難しいかと……」

 ベルフィアが申し訳なさそうにしていると、ラルフが席を立つ。

「いや、ここはミーシャの案に乗っかろう」

 ミーシャは嬉しそうに席を立った。

「そんな……本気ですか?」

 ブレイドは最初に争わないとしたラルフの提案とは真逆に位置する決定に驚く。その驚きにラルフは草臥れたハットのツバを摘んだ。

「以外に妙案かもしれねーぜ?」
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