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第九章 頂上
第四十一話 神様は身勝手
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全く動こうともしないアシュタロトと、何故か出てこないサトリに痺れを切らせてラルフはアシュタロトの横に座った。そこで聞かされたことに、きょとんとさせられた。
「は?俺の潜在意識の中にサトリが?一体何の話を……」
何のことか理解できないラルフは頭を捻る。
『つまり今の君はラルフという意識とサトリという意識の二つを持ち合わせているのさ。何故そうなったのかは、心当たりがあるんじゃない?』
「……いやぁ、最近確かにサトリには夢の中であったけど……あっ!」
その時サトリが自分に力を授けたことを思い出した。しかし授けることと一緒にいることに何の意味があるというのか?
『あったようだね。僕に話せるかな?』
「何て言ったら良いか……とにかく力をもらったんだよ。お陰で凄ぇ強くなったし、わけわかんねーほど無茶苦茶な特異能力も授けられた。それが何かと関係あるなら……」
『うん、間違いなくそれだね。それだけ分かれば十分、じゃあ今すぐ寝てよ』
「……なぁ、そうしないと会えないっていうなら少し俺に時間をくれないか?とりあえず一発スッキリさせたいんだが……」
ラルフは恥ずかしげもなく空中で手を上下に振る。その動作にアシュタロトは何かに気づいたような表情をした。
『も~、下品だなぁ。そうしないと君は眠れないのかい?よくあれだけの人数に囲まれて旅ができたねぇ』
「我慢してたんだよ……街に行くことができねぇからプロの姉ちゃんも買えないし、ミーシャがしがみつくように寝るもんだから、こそっとやることも出来なくて困ってんだ。や~っと出来るかと思った時にこれだもんな」
『ふ~ん。じゃあ僕が処理してあげようか?』
「……え?」
それを聞いて思考停止する。しかしすぐに意識を取り戻し、腕を組んで考え込んだ。
(……ったく、この神様。自分で言ってること分かってんのか?冗談のつもりだろうが、それにしちゃサトリより笑えねぇぜ……)
呆れ返るばかりだ。仮にも神を名乗る彼女がラルフ如きヒューマンの性処理を申し出るなどあってはならない。たとえ冗談でも言って良い冗談と悪い冗談があるというものだ。これは一つ分からせなければならないだろう。
「ふぅ、アシュタロトさんよぉ……無礼を承知で言わせてもらうぜ。俺に女児趣味はない。できればもう少しこう、大人になることはできないかな?胸は大き目でお願いしたいんだけど」
呆れ返るばかりだ。仮にも神に注文をつけ始めた。
『流石イレギュラー。サトリに好かれるだけはあるね』
「イレ……何?そんなことより早めにお願いしても良いかな?お前もサトリと話し合うのに時間がいるだろ?」
ラルフは図に乗り始めた。アシュタロトはニコッと笑って体が光り始める。変異しているのが手に取るように分かったラルフは、期待に胸を膨らませてその様子を見ていたが、ふいに力が抜けた。
「……あら?」
ラルフの口から間抜けな声が出る。ベッドにパタリと倒れ、全く体が動かせない。これからお楽しみが始まると目をギラつかせていたのに、何故だか凄く眠い。
光り輝いていた少女は、光るのをやめて今すぐにも寝そうなラルフを見た。
『おやぁ?せっかく僕が手ずからやってあげようってのに寝ちゃうんだ。何だか寂しいなぁ……』
「ち、違うんだ!体が勝手……に……」
ラルフの意識はそのままブラックアウトした。パチッとスイッチを切られたような不自然な気絶に彼女の口角は上がった。
『ふふ、僕が彼と寝るのはそんなに嫌なのかい?サトリ』
その質問にラルフの目がパチッと開いた。スッと上半身を持ち上げ、ベッドに腰掛ける体勢になると、アシュタロトを見てニコリと笑った。
『これはこれは。まさかあなたまでやって来るとは……豊穣神アシュタロトですか。良き名前ですね』
高く、透き通った声がむさい男の口から発せられている。久々の友の声にアシュタロトは嬉しそうに笑った。
『サトリ、君は最近珍しいことをしたようだね。そんな何もできないようなヒューマンに力を授けたんだって?何の気まぐれか知らないけど、君が常時入ってまでしないと維持できない程度の弱さなら、別の人族に手を貸した方が有効じゃない?』
『合理主義というものですか?私には理解できませんね。ラルフは面白い人ですよ。あなたもその片鱗は見たはず』
『僕から見れば彼はただの性欲モンスターって感じだったけどね。君の趣味にケチをつけるために来たわけじゃない、いつまで彼女たちを容認するつもりなのかを聞きたいと思ってさ』
潜在意識に隠れたサトリの人格は考える素振りを見せた後、冷ややかな目を見せた。
『もちろん最後まで』
『自分の作り出したおもちゃに感情移入する気持ちは分かる。だからこそ古代種が殺されるのは黙って見ていられない。これ以上放任を貫く気なら、覚悟しておいた方が良いよ』
『真っ向から対立するつもりですか?私は構いませんよ?』
『……いやいや、僕は臆病なんだ。復讐心を煽らないためにも、公平に多数決を取ろうと思ってね。近く人族の会議のようにみんなを集めてみようと思うんだけどどうかな?』
『それが脅しのつもりなら諦めてください。私の意志は変わりませんから』
他の神たちを集めるという密かな脅しを流したサトリに意固地な空気を感じた。たとえこの世界の終焉が迫っても肩入れをやめないだろう。
『話は平行線ってわけか……実は僕もヒューマンの一人についたんだ。彼は優しくて頼りになる。時期が来れば君にも紹介しよう』
アシュタロトはすくっと立ち上がり、踵を返した。
『そういえば古代種が複数動き回ってる。アトムが起動させてないなら、あの二人のどちらかが様子見を図ったと見てまず間違いないよね。怒ってると思う?』
『きっと怒ってますよ。一気に三体も起動しましたし、様子見にしては規模が大きすぎる気がします。まず間違いなく私たちを呼び戻すための策でしょう。何言われるか分かったものではないですよね』
『一番しっくり来る言い分だね。やっぱり一旦説明の必要があるのかも……』
『ええ、お任せしますよ。アシュタロト』
アシュタロトはフッと自嘲気味に笑って、空気に解けるように消えていった。
『さてと……』
話し終えたサトリは部屋を見渡してため息をつく。
『やることもありませんし、ラルフの代わりにしっかりと体を休めて差し上げましょう』
サトリはベッドに寝転がる。ラルフを通じて感じるベッドの柔らかさや居心地の良さに思わず唸る。しばらく天井を見つめていたが、そのままうとうとして寝てしまった。
こうしてサービスタイムは終了した。また我慢の日々が始まる。
朝、目が覚めたラルフは泣きそうになりながら呟いた。
「……マジでいい加減にしろ……」
「は?俺の潜在意識の中にサトリが?一体何の話を……」
何のことか理解できないラルフは頭を捻る。
『つまり今の君はラルフという意識とサトリという意識の二つを持ち合わせているのさ。何故そうなったのかは、心当たりがあるんじゃない?』
「……いやぁ、最近確かにサトリには夢の中であったけど……あっ!」
その時サトリが自分に力を授けたことを思い出した。しかし授けることと一緒にいることに何の意味があるというのか?
『あったようだね。僕に話せるかな?』
「何て言ったら良いか……とにかく力をもらったんだよ。お陰で凄ぇ強くなったし、わけわかんねーほど無茶苦茶な特異能力も授けられた。それが何かと関係あるなら……」
『うん、間違いなくそれだね。それだけ分かれば十分、じゃあ今すぐ寝てよ』
「……なぁ、そうしないと会えないっていうなら少し俺に時間をくれないか?とりあえず一発スッキリさせたいんだが……」
ラルフは恥ずかしげもなく空中で手を上下に振る。その動作にアシュタロトは何かに気づいたような表情をした。
『も~、下品だなぁ。そうしないと君は眠れないのかい?よくあれだけの人数に囲まれて旅ができたねぇ』
「我慢してたんだよ……街に行くことができねぇからプロの姉ちゃんも買えないし、ミーシャがしがみつくように寝るもんだから、こそっとやることも出来なくて困ってんだ。や~っと出来るかと思った時にこれだもんな」
『ふ~ん。じゃあ僕が処理してあげようか?』
「……え?」
それを聞いて思考停止する。しかしすぐに意識を取り戻し、腕を組んで考え込んだ。
(……ったく、この神様。自分で言ってること分かってんのか?冗談のつもりだろうが、それにしちゃサトリより笑えねぇぜ……)
呆れ返るばかりだ。仮にも神を名乗る彼女がラルフ如きヒューマンの性処理を申し出るなどあってはならない。たとえ冗談でも言って良い冗談と悪い冗談があるというものだ。これは一つ分からせなければならないだろう。
「ふぅ、アシュタロトさんよぉ……無礼を承知で言わせてもらうぜ。俺に女児趣味はない。できればもう少しこう、大人になることはできないかな?胸は大き目でお願いしたいんだけど」
呆れ返るばかりだ。仮にも神に注文をつけ始めた。
『流石イレギュラー。サトリに好かれるだけはあるね』
「イレ……何?そんなことより早めにお願いしても良いかな?お前もサトリと話し合うのに時間がいるだろ?」
ラルフは図に乗り始めた。アシュタロトはニコッと笑って体が光り始める。変異しているのが手に取るように分かったラルフは、期待に胸を膨らませてその様子を見ていたが、ふいに力が抜けた。
「……あら?」
ラルフの口から間抜けな声が出る。ベッドにパタリと倒れ、全く体が動かせない。これからお楽しみが始まると目をギラつかせていたのに、何故だか凄く眠い。
光り輝いていた少女は、光るのをやめて今すぐにも寝そうなラルフを見た。
『おやぁ?せっかく僕が手ずからやってあげようってのに寝ちゃうんだ。何だか寂しいなぁ……』
「ち、違うんだ!体が勝手……に……」
ラルフの意識はそのままブラックアウトした。パチッとスイッチを切られたような不自然な気絶に彼女の口角は上がった。
『ふふ、僕が彼と寝るのはそんなに嫌なのかい?サトリ』
その質問にラルフの目がパチッと開いた。スッと上半身を持ち上げ、ベッドに腰掛ける体勢になると、アシュタロトを見てニコリと笑った。
『これはこれは。まさかあなたまでやって来るとは……豊穣神アシュタロトですか。良き名前ですね』
高く、透き通った声がむさい男の口から発せられている。久々の友の声にアシュタロトは嬉しそうに笑った。
『サトリ、君は最近珍しいことをしたようだね。そんな何もできないようなヒューマンに力を授けたんだって?何の気まぐれか知らないけど、君が常時入ってまでしないと維持できない程度の弱さなら、別の人族に手を貸した方が有効じゃない?』
『合理主義というものですか?私には理解できませんね。ラルフは面白い人ですよ。あなたもその片鱗は見たはず』
『僕から見れば彼はただの性欲モンスターって感じだったけどね。君の趣味にケチをつけるために来たわけじゃない、いつまで彼女たちを容認するつもりなのかを聞きたいと思ってさ』
潜在意識に隠れたサトリの人格は考える素振りを見せた後、冷ややかな目を見せた。
『もちろん最後まで』
『自分の作り出したおもちゃに感情移入する気持ちは分かる。だからこそ古代種が殺されるのは黙って見ていられない。これ以上放任を貫く気なら、覚悟しておいた方が良いよ』
『真っ向から対立するつもりですか?私は構いませんよ?』
『……いやいや、僕は臆病なんだ。復讐心を煽らないためにも、公平に多数決を取ろうと思ってね。近く人族の会議のようにみんなを集めてみようと思うんだけどどうかな?』
『それが脅しのつもりなら諦めてください。私の意志は変わりませんから』
他の神たちを集めるという密かな脅しを流したサトリに意固地な空気を感じた。たとえこの世界の終焉が迫っても肩入れをやめないだろう。
『話は平行線ってわけか……実は僕もヒューマンの一人についたんだ。彼は優しくて頼りになる。時期が来れば君にも紹介しよう』
アシュタロトはすくっと立ち上がり、踵を返した。
『そういえば古代種が複数動き回ってる。アトムが起動させてないなら、あの二人のどちらかが様子見を図ったと見てまず間違いないよね。怒ってると思う?』
『きっと怒ってますよ。一気に三体も起動しましたし、様子見にしては規模が大きすぎる気がします。まず間違いなく私たちを呼び戻すための策でしょう。何言われるか分かったものではないですよね』
『一番しっくり来る言い分だね。やっぱり一旦説明の必要があるのかも……』
『ええ、お任せしますよ。アシュタロト』
アシュタロトはフッと自嘲気味に笑って、空気に解けるように消えていった。
『さてと……』
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『やることもありませんし、ラルフの代わりにしっかりと体を休めて差し上げましょう』
サトリはベッドに寝転がる。ラルフを通じて感じるベッドの柔らかさや居心地の良さに思わず唸る。しばらく天井を見つめていたが、そのままうとうとして寝てしまった。
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