一般トレジャーハンターの俺が最強の魔王を仲間に入れたら世界が敵になったんだけど……どうしよ?

大好き丸

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第七章 誕生

第十一話 一騎討ち

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 ガキィンッ

 硬質な物質が打ち合い、凄まじい音が響き渡る。ブレイブのガンブレイドと黒雲の錫杖。同等の硬さを誇る二つだが、この一撃は一先ず黒雲の方が押し返した。

「くっ……!!」

 突っ掛けたブレイブは力負けこそしたが、難なく着地して瞬時に相手を伺う。有るか無いかの刹那で攻めるべき部分を見出したブレイブは、身を屈めながら黒雲に迫る。間合いに入ると同時に、左からの横一閃。足首を狙った一撃は黒雲が床に突いた錫杖に簡単に止められる。しかし、そんなものではブレイブの攻撃は止まることは無い。

「おおぉぉっ!!」

 ブレイブは体を捻って、刃を止められた方と逆に回転させながら今度は胴に向かって、右の切り払いを仕掛ける。だが、この攻撃にあまり意味はない。というのも黒雲は錫杖をただ横にズラせば良いのだ。右足を狙った攻撃から左に移っただけ。案の定ブレイブの攻撃は軽く弾かれる。かと思いきや、ブレイブの剣と錫杖が触れ合った瞬間に剣を引いた。キィィッと金属の擦れ合う音が鳴り響く。

「……ぬっ!?」

 ブレイブは剣を引いたと同時に黒雲の腹に突きを放った。

「せいっ!!」

 黒雲は完全に油断していた。ブレイブの技術はかなりのものだ。一度錫杖で弾かせておいて、同様の攻撃を仕掛ける様に見せかけ、本命は防御を誘った突き。錫杖を力任せに戻せばギリギリ弾けるかもしれない。黒雲の膂力ならそれも可能だろうが、必要ない。彼には片側に二本ずつ腕が存在する。

 コォンッ

 もう一本の右手で剣の峰を弾き、錫杖と弾いた右手で刃先を挟み止めた。腕が四本も有る怪物に死角無しだ。さぞ困惑しているだろうと顔を覗き込むが、ブレイブは至って冷静にその様子を見ていた。

(……面白い……これならどうかな?)

 しっかり挟み止めて、動けなくなったブレイブに暇を持て余していた左手を突きつける。その手に魔力が収束していく。じっとしていては頭を吹き飛ばされる。当然ブレイブは動いた。左の足払いで床に突いた錫杖の石突き部分を蹴る。カクンッと錫杖が傾き、挟み止めていた剣がするりと抜けた。

「なっ!?」

 錫杖ともう一本の右手で止めるアンバランスな状態は、ブレイブの本気の足払いで脆くも崩れた形だ。ブレイブ自身も挟み止められた剣をその手から抜く為に、バランスを崩しながら床に落ちる。

 ドォンッ

 黒雲が左手に収束させていた魔力がブレイブの頭のすぐ側を掠め、背後の床に焦げ跡が出来た。ブレイブは頭を庇う形で受け身を取り、落ちる衝撃を分散させた後、左手だけで後方に飛び退いた。距離が空いたかと思いきや、着地と共にまた黒雲との間合いを詰める。

(!……なるほど……エレノアの情報ではこやつは騎士。遠距離は不利と睨んで間合いを空けぬつもりか?)

 先の攻防の何倍も早い剣戟。ブレイブの剣は確実に急所を突く正確な攻撃を仕掛け、黒雲は凄まじい動体視力と身体能力で全て受けきる。黒雲の予想を遥かに上回る能力にヒューマンの怖さを見る。
 人族の怖さを全く知らなかったわけではない。魔族を倒し、魔王を退け、生活圏を確保した人族もいる。時には魔王程の超越者がられた事もある。黒雲が雲隠れしたのもそれが理由で、自分の信じていた魔王達が殺られてしまったせいだ。人族の潜在能力は魔族に推し量る事は出来ない。常に弱いと思って見下している相手だからこそ、自分が負けるわけがないとタカを括っている為だ。

(……歴史がそうであっても、我はれんぞ?)

 ギィンッ

 錫杖をブレイブの攻撃に合わせて振り抜く。上手く攻撃と噛み合い、ブレイブは間合いを離される。

「チッ……!」

 弾かれない様にフェイントも入れていたのだが、本命は急所というのが早々にバレた為に合わせられてしまったのだ。これはブレイブの落ち度だ。退がる足を何とか止める為に、あらん限りの力を振り絞って左足でブレーキをかける。もう一度間合いを詰めようとした時、黒雲の体の周りに何かが纏わりつくのが見えた。ハッとして立ち止まる。

「これは……結界か!?」

「ほう、瞬時に見破りおったか……思った以上の強者だ……」

 黒雲の半径2m位を結界が囲む。これでは得意の接近戦は使う前に弾かれてしまう。

「馬鹿な……詠唱もせずにこれ程の結界を……!?」

 アスロンは側から見ていて驚く。人が使えば、例え魔法が大得意なホーンでも詠唱は必須。端折っても出来ない事はないが、完全に見てくれだけのハリボテ結界となってしまう。黒雲の結界は密度も濃く、ちょっとやそっとじゃ傷一つ付かず徒労に終わる事は目に見えている。後は黒雲が先程チラッと見せた魔法攻撃を、遠くからチマチマ撃つだけで完封出来る。

「おぬしらがどれ程の研鑽を積もうと如何どうしようも無いこの現実。諦めて首を差し出せば、痛みもなくこの世界から消滅させてやろう……」

 黒雲はニヤニヤ笑いながらブレイブを見下す。

「……驕りだ……」

 ブレイブはポツリと呟く。黒雲はその小さな呟きを聞き逃さない。

「んん?驕りだと?」

「ああ、強者の傲慢。自分が負けるわけがないとタカを括っている」

 その言葉に内心ドキッとする。先程まで頭の中にあった人族に対する警戒心から湧いた、言葉の欠片。(単なる負け惜しみだ……)結界の内側、つまり黒雲まで届く攻撃があるとしたら、大魔術で強化された攻撃魔法くらいだろう。ブレイブの持つ剣が、どれほどの名剣だろうと関係がない。結界に阻まれれば、切っ先が直接伸びない限りは触れる事すら出来ないのだから。

 ドォンッ

 黒雲の予想とは裏腹に、顔の真横を魔力砲が通り過ぎた。ブレイブは剣の形態をやめて、銃の形態へと移行した。剣を振ったりするには握り辛い形をしている柄も、銃床を肩に当てて銃の形態にすれば扱いやすい。ガンブレイドの始祖、伝説の武器”デッドオアアライブ”。この武器の魔力砲はいとも簡単に結界を貫いた。

「……馬鹿な!?」

「曲がったか……結界で屈折現象が起こって狙いが外れたらしい。誤差を修正出来れば当たりそうだな」

「我が結界が破られる筈は……」

 黒雲は結界内で魔力を高めて結界を強化する。こうなったら黒雲も意地である。人族の魔力に負けるなど、あってはならない事だ。半透明のシールドが少し赤みを帯びて、心なしか薄っすら半透明にまで明度と質量が変わった。

 ドォンッ

 その鉄壁と呼べる空間に魔力砲が侵入した。ボタッと嫌な音が鳴り、黒雲の右腕、肘から先が消滅していた。

「グガアアアァァァッ!!」

 穴が開き、ヒビが入っていつでも崩壊しそうな結界。魔力砲が通った結界の中で、必死に腕の消失を嘆く言動が聞こえる。

「馬鹿な馬鹿なっ!?それは一体なんだ!!」

「……こいつか?ガンブレイドっていう秘伝の武器だ。お前ら魔王のどてっ腹に風穴開ける為に、この日の為に使える様に努力したんだ……」

 ブレイブはガンブレイドを手で撫で上げる。

「長かったぜぇ……」

 ガンブレイドを構える。最も驚き、最もダメージを与えた銃形態に全幅の信頼を乗せる。

「黒雲、か……長く続いた暗雲をようやく撃ち払う時がきたようだぜ……防いでみなよ、黒雲っ!!」
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