215 / 718
第六章 戦争Ⅱ
第二十四話 レギオン
しおりを挟む
「……恐ロシイ」
ジャックスの死を受け入れる為、側に寄り添っていたジュリアは外の騒がしさに窓から顔をそっと覗かせていた。城に辿り着いた人間たちが魔獣人を襲い始めたのだ。人間に狩られている姿は痛ましいの一言だったが、逃げることも戦うことも放棄した同胞は命を手放したのも同義。兄も死んだ今、一人で向かうのは自殺と考えて動けないでいた。
そんな時に突如出現したアンデッドの集合体「レギオン」。その中心にいたオルドを驚愕の眼差しで見ていた。
「ブモオオオォォッ!!」
「……ソウマデシテ……アンデッド ニ成リ下ガッテマデ銀爪ニ尽クソウト言ウノ?」
外の死骸がアンデッドと化して巨大化する中、城内部にも異変が起こる。パキッミキッという音を立ててオルドに捻り潰された虎の魔獣人が起き上がったのだ。ハッとして振り向くジュリア。アンデッドは生者を襲う。今ここにいる生者はジュリアのみ。バッと身構えて応戦しようとするが、アンデッドたちはジュリアに目もくれずに階段に向かった。
「何?ドウイウ事?」
ふらふらと力なく歩いているが、どこかを目指して進んでいる。まるで出口を目指している様な足取りだった。
ガラッ
壁にめり込んでいたジャックスも例外なくアンデッド化した。目が赤く輝き、ぺしゃんこになった胴体を何とか持ち上げてバランスを取りながら、他より足取り重く歩き出した。
「兄サン!!」
このアンデッドたちの最終目的地は十中八九オルドだ。兄ジャックスはレギオンに取り込まれ、死の集合体として使われることになるのだろう。
「駄目!!兄サン!!」
ジュリアはジャックスの前に立ち塞がる。彼女の存在に気付く事なく前に進む。アンデッドとなったジャックスはかつての力を忘れ、ジュリアに簡単に押し戻される。どれだけ阻まれても疲労することがないアンデッドはちょっと後退しても、また歩き出して変わらず出口を目指す。
「駄目!駄目!絶対行カセナイ!!アンナ化ケ物ニナッチャ駄目!!」
何度も何度も押し返していると、外から怪物の様な鳴き声が聞こえた。
「ギュアアァァッ!!」
ビリビリと建物が震えるほどの咆哮に耳を塞ぐ。外で何かが起こっている。そう感じるも、外を覗く暇のないジュリアはジャックスを抑え込むのに必死で外の状況をあえて無視する。
「兄サン!ヤメテ!!二度死ヌ事ハ無イ!!」
その発言にピタリと足を止めた。今まで前だけを見ていたジャックスはその赤い目をジュリアに向ける。自分の声が死んだはずの兄にもう一度声が届いた。顔がほころび、ジュリアはジャックスの牙を握りしめた。
「兄サン……!」
「……ジュ……リア……オ……前ハ……何ヲ、シテイル……」
「……エ?」
喋ったと思えば突然の質問。
「何ヲッテ……兄サン?」
「……何故……戦ワ無イ……何ノ為ニ……オ前ヲ鍛エタト思ウ……?ドウシテ同胞ヲ見捨テタ……」
段々と言葉がハッキリしてくる。紡ぐ言葉はジュリアを責める言葉だった。
「……オ前ナラ下ノ民間人ヲ救エタ筈ダ……身命ヲ賭シテ戦ウ事コソ我ラガ使命。ソコヲ退ケ……兄ハ不甲斐無イ オ前ノ尻拭イヲシテヤル……」
「……誰?兄サン ジャ無イ……兄サンハ アタシ ニソンナ事言ワ無イ!」
バッと構える。
「兄サンヲ返セ……兄サンノ尊厳ハ誰ニモ踏ミ躙ラセナイ!!」
ジュリアの言葉にジャックスの顔がニヤリと醜く歪む。
『せっかく体を使ってまで会話してやったというのに薄情な妹だ……』
ジャックスから放たれた言葉に怖気が走る。全く知らない男の声だったからだ。
『貴様の方がこの雄の尊厳を踏み躙っているという事に気付くべきではないか?最後まで戦い抜き、死んでいった兄を見送ってやろうとは思わないのか?』
「……兄サンノ体カラ出テ行ケ、化ケ物!」
『失礼な雌だな……我が名はアトム。創造神アトムである。……はぁ、もう良い。興が削がれた。あれだけの肉体があればこの体など用を成さぬわ』
そういうと目が光り輝いた。まるでライトを付けたように光る目は段々と口や鼻、身体中のありとあらゆる傷口から光を放ち出した。
「……マサカ……止メロ!!」
手を伸ばして一歩前に踏み出したが何もかも遅い。
ボンッ
ジャックスの体は跡形もなく吹き飛んだ。その威力に吹き飛ばされて壁にぶつかり、蹲るジュリア。
「兄サン……兄サン……兄サン……!」
ずっと握りしめていた兄の牙を胸に抱く。兄の死は、誇りは、尊厳は踏み躙られた。突如現れた神を名乗る化け物によって。
ジュリアの奥底に眠っていた怒りが噴出する。この世で最も邪悪なのは人族でも魔族でもない。この世界を高みから見物する超常の存在。その存在を知ったジュリアは夢とは別の次なる目的を見つけた。奥歯を噛み締めその名を口にする。
「……アトム!!」
*
メギメギメギ……
レギオンはこの場にあった死体を取り込み、ドラゴンを遥かに超える大きさへと変貌する。この国すべての死体を取り込めば山の様に大きなレギオンができる可能性がある。
「うわーっ……こりゃヤバイな……おいっ!そこ下がれ!!さっさと逃げろ!!」
恐怖に支配されたアニマンと騎士たちは足が竦んで逃げられないでいた。ラルフが大声で警告するも結果は同じ。ラルフはドラゴンから降りると、動けないでいる連中の頭を叩いた。
「いっ……!?」
「とっとと下がれよ!死にたいのか!!」
バクスはラルフに叩かれて我に返る。ドラゴンとレギオンの睨み合いに気を取られてボーッとしていたことを恥じる。
「て、撤退だ!!撤退しろぉっ!!」
わっと蜘蛛の子を散らす様にアニマンの軍も騎士団も方々に逃げる。その動きを見たレギオンは死体が折り重なって出来た巨大な腕を振るって何人かを取り込んだ。レギオンは生者を殺してすぐさま身体の一部に変えるという荒技をし始めた。遅かれ早かれこうなる事は目に見えていたが、その巨体がとうとう動き出した。
「マジかよ……」
撤退のタイミングで動き出したのに責任を感じるラルフ。案外じっとしていた方が助かったのかもしれないと後悔していた。
「これは相当な悪食ね。生き物なら何でも良いって感じ?」
ミーシャは怪訝な顔でレギオンを見る。魔力を溜めて圧縮した魔力弾を試しに放つ。ドッと軽快な音で体の一部を削るが、取り込んだ死体たちが抉れた部分を補強して元の状態に戻るのを確認した。
「うーん、全部消し飛ばさなきゃダメか……」
「ちょっと良い?私に考えがあるよ」
アンノウンが横から口を出す。
「こういうの想定外だったけど、召喚したのは幸いにもファイアドラゴン。ほら、よく言うよね?アンデッドモンスターは火属性攻撃に弱いってさ」
アンノウンがサッと手をかざすとドラゴンは息を目いっぱい吸い込んで炎のブレスを吐いた。
ゴォッ
凄まじい火力で体を焼いていく。火からは遠いが熱風がここまで難なく届く。「うおっ!」とラルフが顔を隠して避けようとするが、そのままではどうしようも無い。しかし一向に熱風が届く事はない。それもそのはず、ミーシャが魔障壁を作って熱風を避けてくれていた。
「……あ、ありがとうミーシャ。助かったぜ」
「どういたしまして」
近くにはアリーチェも自分で魔障壁を作ってバクスを守っていた。
「ブモォォォオォッ!!?」
高威力の炎にさらされてグズグズに崩れるレギオン。体が徐々に炭化していく中、ドラゴンに対して攻撃を仕掛けた。
ドンッ
両腕で挟み込む様にドラゴンに攻撃し、ドラゴン自慢のブレスが止まる。その隙をついてレギオンの胴体部分が形を変えて大きく伸びる。まるで破城槌の様な高威力の攻撃でドラゴンの体を押し出した。
「おっ!?」
アンノウンも想定外の攻撃にドラゴンと共に吹き飛ばされた。ガガガッとすべての足を駆使してブレーキを掛ける。互いの距離が取れたところでレギオンの中心であるオルドの口が開いた。
『この馬鹿が!誰がこの世界に召喚してやったと思ってる!!我に楯突くな!!転生者どもはこれだから始末が悪い!!』
「しゃ、しゃべった?」
アリーチェは驚きのあまり声が裏返る。アンデッド、特にゾンビが喋るなど聞いたことがない。多くの例外がアリーチェの知識に混乱を招く。この事態に冷静に対処出来たのはラルフたちだけだった。
「ん?この声……聞いたことあるかも……」
ミーシャは首を傾げながらも記憶を探る。割と最近聞いた声だ。
「そうだな。この声は……お前アトムだな?」
その質問に高笑いで返す。
『フハハハッ!!そうだラルフ!!こいつは貴様らを殺すために用意した特注品だ!存分に味わうが良い!!』
死体で折り重なった太い腕を振り上げてラルフとミーシャめがけて振り下ろした。
ベキンッ
だが、どれほどの物量で攻撃したとしてもその体はミーシャの魔障壁を突破する事はない。押しつぶされそうになったと言うのに呑気に呟く。
「アトム?何だっけ?あのー……あっ、巫女に取り憑いてた奴だ。あれかな?幽霊みたいな奴なのかな?」
「……多分な。実体がないし、幽霊ってのはあながち間違ってないかも……はぁ、面倒だけどやるしかねぇよな……」
ラルフも一応ダガーナイフを引き抜く。こんな小さな武器ではどうすることも出来ないだろうが格好は大切だ。
『今日こそ貴様らの最期だ!!』
「良く言うよ。あの時は”古代種”持ち出したくせに、これで殺そうなんて劣化してんじゃん……馬鹿にしてるよね?」
「ああ、全くだ。つっても俺を殺すならオーバーキルだけど……アンノウン!力を貸してくれ!!」
ラルフは大声でアンノウンに助力を申請する。
「……ん、当然。任せてくれ」
ジャックスの死を受け入れる為、側に寄り添っていたジュリアは外の騒がしさに窓から顔をそっと覗かせていた。城に辿り着いた人間たちが魔獣人を襲い始めたのだ。人間に狩られている姿は痛ましいの一言だったが、逃げることも戦うことも放棄した同胞は命を手放したのも同義。兄も死んだ今、一人で向かうのは自殺と考えて動けないでいた。
そんな時に突如出現したアンデッドの集合体「レギオン」。その中心にいたオルドを驚愕の眼差しで見ていた。
「ブモオオオォォッ!!」
「……ソウマデシテ……アンデッド ニ成リ下ガッテマデ銀爪ニ尽クソウト言ウノ?」
外の死骸がアンデッドと化して巨大化する中、城内部にも異変が起こる。パキッミキッという音を立ててオルドに捻り潰された虎の魔獣人が起き上がったのだ。ハッとして振り向くジュリア。アンデッドは生者を襲う。今ここにいる生者はジュリアのみ。バッと身構えて応戦しようとするが、アンデッドたちはジュリアに目もくれずに階段に向かった。
「何?ドウイウ事?」
ふらふらと力なく歩いているが、どこかを目指して進んでいる。まるで出口を目指している様な足取りだった。
ガラッ
壁にめり込んでいたジャックスも例外なくアンデッド化した。目が赤く輝き、ぺしゃんこになった胴体を何とか持ち上げてバランスを取りながら、他より足取り重く歩き出した。
「兄サン!!」
このアンデッドたちの最終目的地は十中八九オルドだ。兄ジャックスはレギオンに取り込まれ、死の集合体として使われることになるのだろう。
「駄目!!兄サン!!」
ジュリアはジャックスの前に立ち塞がる。彼女の存在に気付く事なく前に進む。アンデッドとなったジャックスはかつての力を忘れ、ジュリアに簡単に押し戻される。どれだけ阻まれても疲労することがないアンデッドはちょっと後退しても、また歩き出して変わらず出口を目指す。
「駄目!駄目!絶対行カセナイ!!アンナ化ケ物ニナッチャ駄目!!」
何度も何度も押し返していると、外から怪物の様な鳴き声が聞こえた。
「ギュアアァァッ!!」
ビリビリと建物が震えるほどの咆哮に耳を塞ぐ。外で何かが起こっている。そう感じるも、外を覗く暇のないジュリアはジャックスを抑え込むのに必死で外の状況をあえて無視する。
「兄サン!ヤメテ!!二度死ヌ事ハ無イ!!」
その発言にピタリと足を止めた。今まで前だけを見ていたジャックスはその赤い目をジュリアに向ける。自分の声が死んだはずの兄にもう一度声が届いた。顔がほころび、ジュリアはジャックスの牙を握りしめた。
「兄サン……!」
「……ジュ……リア……オ……前ハ……何ヲ、シテイル……」
「……エ?」
喋ったと思えば突然の質問。
「何ヲッテ……兄サン?」
「……何故……戦ワ無イ……何ノ為ニ……オ前ヲ鍛エタト思ウ……?ドウシテ同胞ヲ見捨テタ……」
段々と言葉がハッキリしてくる。紡ぐ言葉はジュリアを責める言葉だった。
「……オ前ナラ下ノ民間人ヲ救エタ筈ダ……身命ヲ賭シテ戦ウ事コソ我ラガ使命。ソコヲ退ケ……兄ハ不甲斐無イ オ前ノ尻拭イヲシテヤル……」
「……誰?兄サン ジャ無イ……兄サンハ アタシ ニソンナ事言ワ無イ!」
バッと構える。
「兄サンヲ返セ……兄サンノ尊厳ハ誰ニモ踏ミ躙ラセナイ!!」
ジュリアの言葉にジャックスの顔がニヤリと醜く歪む。
『せっかく体を使ってまで会話してやったというのに薄情な妹だ……』
ジャックスから放たれた言葉に怖気が走る。全く知らない男の声だったからだ。
『貴様の方がこの雄の尊厳を踏み躙っているという事に気付くべきではないか?最後まで戦い抜き、死んでいった兄を見送ってやろうとは思わないのか?』
「……兄サンノ体カラ出テ行ケ、化ケ物!」
『失礼な雌だな……我が名はアトム。創造神アトムである。……はぁ、もう良い。興が削がれた。あれだけの肉体があればこの体など用を成さぬわ』
そういうと目が光り輝いた。まるでライトを付けたように光る目は段々と口や鼻、身体中のありとあらゆる傷口から光を放ち出した。
「……マサカ……止メロ!!」
手を伸ばして一歩前に踏み出したが何もかも遅い。
ボンッ
ジャックスの体は跡形もなく吹き飛んだ。その威力に吹き飛ばされて壁にぶつかり、蹲るジュリア。
「兄サン……兄サン……兄サン……!」
ずっと握りしめていた兄の牙を胸に抱く。兄の死は、誇りは、尊厳は踏み躙られた。突如現れた神を名乗る化け物によって。
ジュリアの奥底に眠っていた怒りが噴出する。この世で最も邪悪なのは人族でも魔族でもない。この世界を高みから見物する超常の存在。その存在を知ったジュリアは夢とは別の次なる目的を見つけた。奥歯を噛み締めその名を口にする。
「……アトム!!」
*
メギメギメギ……
レギオンはこの場にあった死体を取り込み、ドラゴンを遥かに超える大きさへと変貌する。この国すべての死体を取り込めば山の様に大きなレギオンができる可能性がある。
「うわーっ……こりゃヤバイな……おいっ!そこ下がれ!!さっさと逃げろ!!」
恐怖に支配されたアニマンと騎士たちは足が竦んで逃げられないでいた。ラルフが大声で警告するも結果は同じ。ラルフはドラゴンから降りると、動けないでいる連中の頭を叩いた。
「いっ……!?」
「とっとと下がれよ!死にたいのか!!」
バクスはラルフに叩かれて我に返る。ドラゴンとレギオンの睨み合いに気を取られてボーッとしていたことを恥じる。
「て、撤退だ!!撤退しろぉっ!!」
わっと蜘蛛の子を散らす様にアニマンの軍も騎士団も方々に逃げる。その動きを見たレギオンは死体が折り重なって出来た巨大な腕を振るって何人かを取り込んだ。レギオンは生者を殺してすぐさま身体の一部に変えるという荒技をし始めた。遅かれ早かれこうなる事は目に見えていたが、その巨体がとうとう動き出した。
「マジかよ……」
撤退のタイミングで動き出したのに責任を感じるラルフ。案外じっとしていた方が助かったのかもしれないと後悔していた。
「これは相当な悪食ね。生き物なら何でも良いって感じ?」
ミーシャは怪訝な顔でレギオンを見る。魔力を溜めて圧縮した魔力弾を試しに放つ。ドッと軽快な音で体の一部を削るが、取り込んだ死体たちが抉れた部分を補強して元の状態に戻るのを確認した。
「うーん、全部消し飛ばさなきゃダメか……」
「ちょっと良い?私に考えがあるよ」
アンノウンが横から口を出す。
「こういうの想定外だったけど、召喚したのは幸いにもファイアドラゴン。ほら、よく言うよね?アンデッドモンスターは火属性攻撃に弱いってさ」
アンノウンがサッと手をかざすとドラゴンは息を目いっぱい吸い込んで炎のブレスを吐いた。
ゴォッ
凄まじい火力で体を焼いていく。火からは遠いが熱風がここまで難なく届く。「うおっ!」とラルフが顔を隠して避けようとするが、そのままではどうしようも無い。しかし一向に熱風が届く事はない。それもそのはず、ミーシャが魔障壁を作って熱風を避けてくれていた。
「……あ、ありがとうミーシャ。助かったぜ」
「どういたしまして」
近くにはアリーチェも自分で魔障壁を作ってバクスを守っていた。
「ブモォォォオォッ!!?」
高威力の炎にさらされてグズグズに崩れるレギオン。体が徐々に炭化していく中、ドラゴンに対して攻撃を仕掛けた。
ドンッ
両腕で挟み込む様にドラゴンに攻撃し、ドラゴン自慢のブレスが止まる。その隙をついてレギオンの胴体部分が形を変えて大きく伸びる。まるで破城槌の様な高威力の攻撃でドラゴンの体を押し出した。
「おっ!?」
アンノウンも想定外の攻撃にドラゴンと共に吹き飛ばされた。ガガガッとすべての足を駆使してブレーキを掛ける。互いの距離が取れたところでレギオンの中心であるオルドの口が開いた。
『この馬鹿が!誰がこの世界に召喚してやったと思ってる!!我に楯突くな!!転生者どもはこれだから始末が悪い!!』
「しゃ、しゃべった?」
アリーチェは驚きのあまり声が裏返る。アンデッド、特にゾンビが喋るなど聞いたことがない。多くの例外がアリーチェの知識に混乱を招く。この事態に冷静に対処出来たのはラルフたちだけだった。
「ん?この声……聞いたことあるかも……」
ミーシャは首を傾げながらも記憶を探る。割と最近聞いた声だ。
「そうだな。この声は……お前アトムだな?」
その質問に高笑いで返す。
『フハハハッ!!そうだラルフ!!こいつは貴様らを殺すために用意した特注品だ!存分に味わうが良い!!』
死体で折り重なった太い腕を振り上げてラルフとミーシャめがけて振り下ろした。
ベキンッ
だが、どれほどの物量で攻撃したとしてもその体はミーシャの魔障壁を突破する事はない。押しつぶされそうになったと言うのに呑気に呟く。
「アトム?何だっけ?あのー……あっ、巫女に取り憑いてた奴だ。あれかな?幽霊みたいな奴なのかな?」
「……多分な。実体がないし、幽霊ってのはあながち間違ってないかも……はぁ、面倒だけどやるしかねぇよな……」
ラルフも一応ダガーナイフを引き抜く。こんな小さな武器ではどうすることも出来ないだろうが格好は大切だ。
『今日こそ貴様らの最期だ!!』
「良く言うよ。あの時は”古代種”持ち出したくせに、これで殺そうなんて劣化してんじゃん……馬鹿にしてるよね?」
「ああ、全くだ。つっても俺を殺すならオーバーキルだけど……アンノウン!力を貸してくれ!!」
ラルフは大声でアンノウンに助力を申請する。
「……ん、当然。任せてくれ」
0
あなたにおすすめの小説
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
スキルはコピーして上書き最強でいいですか~改造初級魔法で便利に異世界ライフ~
深田くれと
ファンタジー
【文庫版2が4月8日に発売されます! ありがとうございます!】
異世界に飛ばされたものの、何の能力も得られなかった青年サナト。街で清掃係として働くかたわら、雑魚モンスターを狩る日々が続いていた。しかしある日、突然仕事を首になり、生きる糧を失ってしまう――。 そこで、サナトの人生を変える大事件が発生する!途方に暮れて挑んだダンジョンにて、ダンジョンを支配するドラゴンと遭遇し、自らを破壊するよう頼まれたのだ。その願いを聞きつつも、ダンジョンの後継者にはならず、能力だけを受け継いだサナト。新たな力――ダンジョンコアとともに、スキルを駆使して異世界で成り上がる!
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?
音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。
役に立たないから出ていけ?
わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます!
さようなら!
5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!
【完結】物置小屋の魔法使いの娘~父の再婚相手と義妹に家を追い出され、婚約者には捨てられた。でも、私は……
buchi
恋愛
大公爵家の父が再婚して新しくやって来たのは、義母と義妹。当たり前のようにダーナの部屋を取り上げ、義妹のマチルダのものに。そして社交界への出入りを禁止し、館の隣の物置小屋に移動するよう命じた。ダーナは亡くなった母の血を受け継いで魔法が使えた。これまでは使う必要がなかった。だけど、汚い小屋に閉じ込められた時は、使用人がいるので自粛していた魔法力を存分に使った。魔法力のことは、母と母と同じ国から嫁いできた王妃様だけが知る秘密だった。
みすぼらしい物置小屋はパラダイスに。だけど、ある晩、王太子殿下のフィルがダーナを心配になってやって来て……
セーブポイント転生 ~寿命が無い石なので千年修行したらレベル上限突破してしまった~
空色蜻蛉
ファンタジー
枢は目覚めるとクリスタルの中で魂だけの状態になっていた。どうやらダンジョンのセーブポイントに転生してしまったらしい。身動きできない状態に悲嘆に暮れた枢だが、やがて開き直ってレベルアップ作業に明け暮れることにした。百年経ち、二百年経ち……やがて国の礎である「聖なるクリスタル」として崇められるまでになる。
もう元の世界に戻れないと腹をくくって自分の国を見守る枢だが、千年経った時、衝撃のどんでん返しが待ち受けていて……。
【お知らせ】6/22 完結しました!
最難関ダンジョンをクリアした成功報酬は勇者パーティーの裏切りでした
新緑あらた
ファンタジー
最難関であるS級ダンジョン最深部の隠し部屋。金銀財宝を前に告げられた言葉は労いでも喜びでもなく、解雇通告だった。
「もうオマエはいらん」
勇者アレクサンダー、癒し手エリーゼ、赤魔道士フェルノに、自身の黒髪黒目を忌避しないことから期待していた俺は大きなショックを受ける。
ヤツらは俺の外見を受け入れていたわけじゃない。ただ仲間と思っていなかっただけ、眼中になかっただけなのだ。
転生者は曾祖父だけどチートは隔世遺伝した「俺」にも受け継がれています。
勇者達は大富豪スタートで貧民窟の住人がゴールです(笑)
異世界召喚に条件を付けたのに、女神様に呼ばれた
りゅう
ファンタジー
異世界召喚。サラリーマンだって、そんな空想をする。
いや、さすがに大人なので空想する内容も大人だ。少年の心が残っていても、現実社会でもまれた人間はまた別の空想をするのだ。
その日の神岡龍二も、日々の生活から離れ異世界を想像して遊んでいるだけのハズだった。そこには何の問題もないハズだった。だが、そんなお気楽な日々は、この日が最後となってしまった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる