一般トレジャーハンターの俺が最強の魔王を仲間に入れたら世界が敵になったんだけど……どうしよ?

大好き丸

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第二章 旅立ち

第二十六話 問答

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”竜巻”とミーシャの激突数分前。
ラルフとミーシャはジュリアと相対していた。

「まさかお前に助けてもらうとはな…ありがとよ。助かったぜ」

ミーシャは事の顛末をラルフに話し、それを知ったラルフは感謝を述べる。

「行くが良い人狼ワーウルフ。ラルフを救ったお前は生きるに値する。私はお前を殺しはしない」

ミーシャも寛大な措置を取る。
そんな中、ジュリアは考える。

(油断サセテオイテ、後デ始末ヲツケルノハドウダロウカ?仮ニココデ襲ウトナレバ、第二魔王ヲ掻イ潜ッテ殺ス必要ガアル)

それが出来ないから、生き残る為にラルフを助ける方法を教えた。

あの時、ほんの少し到着が早ければ、任務が完了していたが、運命のいたずらはラルフを生かし、ジュリアをも生かした。

結局、この作戦の成功に欠かせないのが、第二魔王の完全討伐である。

誰が倒しても良いが、それが出来ないのであれば、ハッキリ言ってラルフを殺すのは無理がある。正直、殺せるであろう唯一無二の瞬間をジュリア自身が何度も悉く外してしまった。

最初の任務より格段に難易度が下がったのにラルフの殺害は、自分で難しくしてしまったのだ。

たかが人間ヒューマン、されど人間ラルフ

と、ここで疑問が浮上する。
この状況はこの人間ヒューマンによって生み出されている。

第二魔王然り、イミーナ公然り、自分も含めて白の騎士団でも、その他、有名な人物でもない。この男に何故か結果として振り回されている。

ラルフこいつはいったい何なのか?

「一ツ、ハッキリサセテ欲シイ事ガアリマス。第二魔王様。アナタニトッテ、ソノ男ハ何ナノデスカ?」

「え?」

目をしばしばさせて、内容を頭の中で整理する。「私にとってラルフとは…」変な事を聞いてくる。目が泳いで、ラルフとジュリアを行き来する。

「おいジュリア…なんて質問だ?ミーシャが困っているだろ?」

「…気安ク呼ブナ。オ前トハ友達ジャナイ」

指をさして、ラルフに黙るように釘を刺す。
ラルフはジュリアにベルフィアと同じ空気を感じて、会話は困難だと悟った。諸手を上げて一歩後ろに下がる。

ミーシャはジュリアの明確な拒絶を見て、もしかして何か繋がりでもあったのかと誤解していたが、勘違いだったと感じ、気持ちを落ち着ける事が出来た。

「私とラルフは…仲間よ。そうでしょ?」

後ろを振り向いて、ラルフに視線を送る。

「…ああ、そうだな。俺たちは仲間だ」

魔族と人類。その歴史の溝は深い。
そのはずなのに、お互いに対する信頼を感じた。

その雰囲気から察するにラルフよりミーシャの方が、思いが強いように感じる。

「魔族ト人類ハ相容レナイ。…我々ハ戦争シテイルノデスヨ」

「そ…それは…」

それを聞き、ミーシャは黙る。

自分が犯してきた蛮行を思い出し、ラルフの目をまともに見られないくらい、この言葉は効いた。
咄嗟に目をそらしたミーシャを確認し、ここが攻め時と、捲し立てる。

「人類トハ最早、取リ返シノツカナイ所マデ来テイマス。一線ナド、トウノ昔ニ越エマシタ。アナタガ一番分カッテイルハズデス。我々以上ニ世界大戦ニ貢献シタ アナタニナラ…コレヲ踏マエタ上デ、仲間ト言エマスカ?」

魔族にとっては英雄でも、人類にとっては最悪の敵。その事実は絶対に変わらない。”みなごろし”とは単なるプロパガンダではない。実力とそれに見合った所業がその名を冠した。

歴史以前にミーシャは大量殺人鬼。
一緒になること自体が間違っている。

ここでミーシャが言い淀んだのは、ラルフとの出会いの他に、アルパザでの好待遇が人類に対する申し訳なさを生んでいた。その上、先の戦闘において、ラルフは死にかけた。自分と一緒にいれば今後どうなるか分からない。

ふんぞり返っていたミーシャなら、ここで何も臆せず「それがどうかしたのか?」と言えたはずである。

最強の魔王相手に、言っちゃ悪いが、まるで箱入り娘のように染まりやすい。

さっきまで考えてすらいなかったが、この問答は思った以上に刺さったので、ほんのちょっぴりでもラルフとミーシャを離す様にしようと試みる。

「だからなんだ?」

ラルフは二歩前に出る。
ミーシャを庇う様に立ち、ジュリアを見る。

「俺とミーシャには関係ない」

「何ヲ言ッテイル?知ラナイトハ言ワセナイゾ。人類ト魔族ガ戦ッテキタ歴史ノ中ニ存在スルコノ方ノ数々ノ偉業ト、数々ノ逸話ヲ…。コノ問題ハ、オ前ガ考エテイル程、単純デハナイ」

ラルフはさらに一歩前に出てミーシャを隠す。

「いや、この話は実に単純な話だ。お前ら魔族が率先してミーシャを蔑ろにしているじゃないか。それほど貢献したというなら、何故、裏切られ、魔王であるはずのコイツが命を狙われる?人類云々以前におかしいだろ?」

ジュリアはそれに対しては何も言えない。状況がそれを物語り、大義はミーシャとラルフの共存により消えてなくなる。

「…オ前トハ話ヲシテイナイ。出シャバルナ」

「そうは行くか。人類と魔族は相容れないとほざいたくせに、これじゃちぐはぐじゃないか。根拠としている前提が崩れているなら、ミーシャを責める事なんてできるわけがない。ミーシャが誰と一緒になってもそれは自由だ!」

ハッとなってミーシャはラルフの背中を見た。その眼差しはラルフに対する憧憬が込められている。

その視線には気づかず、ラルフはまた一歩前に出る。同時にジュリアはわずかに下がる。

「俺たちはチームだ。俺たちを引き離したいならその理論じゃ崩せないぜ?いや、どんな理論を用いても否定するけどな」

その言葉の真意にジュリアは気付く。

「…ナルホド…ソウマデシテ生キ残リタイカ…女ノ陰ニ隠レルトハ恥サラシモイイトコロネ…」

ぼそりと聞こえるか聞こえないかの声で囁く。

「はーて?何のことやら?」

ラルフはとぼけた声を出して、されど自信たっぷりにジュリアを見据える。この男は第二魔王の威光を笠に、自身を守っている。まったく小賢しい卑怯な男だ。

しかし、この関係がジュリアの中で不幸にも突き崩せない関係となっている。一方は戦闘に関してを担い、もう一方は弁が立つ。

目標が二体とも同時にこの場にいるのに、任務をこなす事はおろか、かすり傷一つ付けられない圧倒的不利な今の状況こそ、ラルフが調子付き、ジュリアが苛立つ事に繋がっていた。

「お前の飼い主に言っとけ。俺たちをどうにかしたいなら、直接会いに来いってな」

「お!それは名案だ」

後ろに隠れていたミーシャはラルフと肩を並べ、言い放つ。

「イミーナに伝えよ。私を殺したくば、雑兵では何の役にも立たん。国が欲しいなら自分の力でもぎ取れとな…。さぁ、早く行け。私の気が変わらないうちにな」

ミーシャは苛立ちの様相を呈している。自分がジュリア如きに言いくるめられていたのが少し腹立たしかったのだろう。
ラルフが前に立って、ミーシャを庇った事には喜んでいるので実質プラスマイナスゼロといった所だが、一言言わなければ気が済まなかった。

ジュリアは諦めて、町に戻ることを決める。
が、その時、空に飛行物体を視認する。

「アレハ…モシカシテ”竜巻”?」

暗くてよく見えていないが、今回の作戦は”稲妻”と”竜巻”を投入する事を作戦要項で知らされていたので、まず間違いなく、あれは”竜巻”だろう。

今更、何の役に立つというのか?

その視線に気づいたラルフは上を見上げる。

「また来たぜ…しつこいったら無いな…」

「ほんとだ。ちょっと殲滅してくるね」

軽い。まるでスナック菓子感覚だ。
返答を待つでもなく、またふわりと浮いて黒の大群の中に向かっていく。

「え?あ…ちょ…」

ジュリアと二人っきりにされるのは正直、凄く不味いので、内心かなり焦ったが、ジュリアに視線を向けた時、安堵した。二人っきりではなかったからだ。

「なんとも豪気な御方じゃノぅ」

そこにはいつから立っていたのか、ベルフィアの姿があった。すぐ後ろに立たれたとあって、ジュリアは驚いて後ろを振り返る。

ニヤニヤしながらジュリアを観察するベルフィア。ジャックスと戦っていたはずだが、ここにいると言う事はまさか…。

「…兄サンガ倒サレタ?」

ジュリアは構える。
ジャックスを倒したのであれば、正直、ジュリアに勝ち目はない。だからと言って、何もしないわけではなく最大限抵抗する構えだ。

ベルフィアも戦闘する気満々で、目をギラつかせる。

「待てベルフィア。こいつはいい。開放する事にしたんだ」

ラルフは手をかざしてベルフィアを牽制する。

「まタ…おどれは何度こ奴を助けルつもりじゃ?そんな事をしてもこノ犬は振り向かぬぞ?おどれノ片思いじゃぞ?」

ベルフィアは闘争の空気に茶々を入れられ、内心穏やかではない。言葉が物語っている。

「ミーシャの考えだ。俺も命がつながったし生かして放流させる事には賛成している」

「ミーシャ様ノ?それを早ぅ言え。わらわはミーシャ様に賛同すル」

ベルフィアは、すすっと道を開けて、顎をしゃくる。立ち去るように急かす。ジュリアが横を通り過ぎる瞬間、ベルフィアを睨み付ける。

「兄サンハ?」

「知らん。生きとルなら建物ノ中で失神しとル。止めは射しとらんからなぁ…生きとっタらええノぅ…ふふふ…」

それを聞いたジュリアは一目散に町に向かって走り出した。兄が生きている事を信じて。

「珍しいな、血でも吸ってるのかと思ったが…」

「ふんっ!気まぐれじゃヨ。なんか吸う気にならんかっタんヨ…」

「ふーん」とラルフが声を出した直後、ドンッという音と共に真上で光が辺り一面を照らす。その光に誘われて上を向いたころには彼の部隊との決着がついていた。

「美しいノぅ…」

その様子にうっとりとした声を出すベルフィア。同時に辺りに落ちてくる無数の死体。ドチャッと落ちてくる羽根鰐エアリゲーターと魔鳥人たち。彼等は不運にも活躍の機会すらなく死んでいった。

辺り一面に血の雨が降り注ぎ、ラルフにもかかった。その凄惨な光景の中にいて、ベルフィアの顔は恍惚に満ちていた。

「どこがだよ…お前とは相容れないわ…」

ラルフは辟易しながらベルフィアから視線を外し、ゆっくりと降り立つミーシャに手を振った。
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