一般トレジャーハンターの俺が最強の魔王を仲間に入れたら世界が敵になったんだけど……どうしよ?

大好き丸

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第二章 旅立ち

第十六話 時間稼ぎ

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威勢の良かった魔鳥人の群れはいつしか静かになり、周りで取り囲んで攻撃すらしなくなった。

「どうやら、ようやく実力差がわかったようだな…」

ミーシャは魔鳥人の最強の攻撃魔法を上回り、魔法を放った奴らを消滅させた。羽すら残らず消し飛んだので、誰が、どれだけ消し飛んだのかよく分からない。

見まわしてみてもシザーの姿を見つけられないので一緒に消え去ったものと考える。

とはいっても、もしこの場にいてもよく分からないだろう。

その種族からしてみれば失礼極まりないだろうがミーシャにはみんな同じ顔に見える。間違い探しをしているような気になった。

「この場にシザー以外の指揮官はいるか?」

ミーシャはこれでようやく話し合いの舞台が整ったと認識し、尋ねる。しかし、その問いには答えず、背後から氷の飛礫が飛んできた。ミーシャに触れる手前で砕け散る。

背後をチラリと確認したら、今度は前方10時の方向から飛礫が飛んで来る。意味がない訳だが、どうやらまだ交渉には程遠いらしい。

「ふむ…命を粗末にするのが、お前たちの選んだ道ということか?なるほど。それなら止めはしない…」

魔鳥人たちはミーシャの言動に身構える。
だが、ミーシャは腕組をして周りを見渡すのみだ。

「しかし、その程度の攻撃が果たして抵抗になるのか?貴様らの命はその程度か?」

手を広げ、招き入れるような体勢で言い放つ。

「遠慮するな、全てをぶつけろ。温存してたら後悔するぞ?」

そこに一羽の魔鳥人が出てくる。槍をこれでもかと握りしめ、ミーシャを睨み付ける。

「第二魔王!貴様を殺す!!」

槍を掲げると、それに追従するように四方八方で殺意を感じる。また同時に襲い掛かってくるようだ。
魔鳥人は基本一斉に掛かっていき、数の暴力で押し潰してしまうスタンスらしい。それで長らく強者であり続けたようだ。

確かに、魔力を集中させたあの魔法は評価に値するが、一羽一羽の実力など正直、取るに足らない。

まるで示し会わせたかのようにタイミング良く一斉に飛んでくるのはどれほどこの戦略に自信があり、また、どれほど使用してきたのか分かってしまうほどだ。

(ワンパターンだな…)

正直な所、これなら”牙狼”の方がバラエティーに富んでいるだろう。

壁もない、雲くらいしか影のない空で、相手に飛んでいって物量で押し切る。制空権はステータスだろうが、敵も空を飛ぶ場合、それはあまり関係ない。

魔鳥人の特性から空を飛ぶくらいしか優位性がない。本当にそれだけしかない。

”稲妻”はミーシャにとっては、もう、つまらない存在となっていた。

これは単にミーシャが強すぎるせいだ。
本来の魔鳥人なら単一個体でも強い。ミーシャに少しでもダメージを与えるために多数で一斉に攻撃する以外、方法がないのだ。

ミーシャに突っ込んでいく魔鳥人たち。すぐ目の前まで来た時、ミーシャを覆っていた結界が突如膨れ上がり、壁となって広がった。

突然の変化に対応しきれない魔鳥人はそのまま突っ込んでしまい、したたかに顔を打ち付けた。

それだけにとどまらず、結界は広がりを見せ魔鳥人たちを引き離す。

まるで突然、衝撃波に襲われたようなそんな一撃に唖然とするばかりだ。かすり傷すらつけられない。

何羽かは、打ち所が悪かったのかそのまま、まっ逆さまに落ちていった。魔鳥人は固有スキルで気絶してもしばらく飛んでいられるスキルがある。これを使えば、寝たまま飛ぶ事も可能だ。そんな彼らが糸が切れるように落ちる様はその者たちが絶命した事に他ならない。

それを見た魔鳥人はその力に驚きを隠せない。
魔力が尽きる事を知らない。これが魔王。

数々の戦場で戦い、勝利してきた”稲妻”でも経験したことがない力の放流に逃げ出したい気持ちで一杯になっていた。
だが、自分たちが英雄である事がそれを許さない。

どんな事になろうと誇りだけは手離さない。

”稲妻”が誇る魔法「落雷」。
出来れば使用したいが、あれはかなり精密な魔力コントロールを必要とし、中途半端に使用しようものなら、暴発の恐れや威力の低い魔法になってしまう。

その上、今は魔王をここに留めておく事が仕事なので、出来る限り死なないようにするのが長引かせるのに重要だと思われる。

死にたくないという生き物の、当たり前の考えも「落雷」を使用したくない理由の一つでもある。

二度当たるとは思えないし、一度使用すれば魔力はほぼ空になってしまう。信じたくないが、上手くいっても通用しない当たっても意味ないという化け物っぷり。せめて簡単に死なぬよう、動き回っていたいと言う事だった。

(何故退かない?)

ミーシャは不思議に思っていた。
”牙狼”は勝てないと見るや、すぐに撤退を考えた。”稲妻”はカサブリアの英雄と言われているが、その誇りだけで留まるのは不可解である。

シザーは死んだ。
指揮官が死ねば、部下は撤退を余儀なくされるはず。何故まだここにいるのか?撤退をしないのではなく、できないのか?先の攻撃で、さらに警戒心を高めちょっかい程度の攻撃しかできなくなっている。

周りを取り囲み、ちょいちょい前方から攻撃を仕掛けられる。

「何なんだ?私には勝てないことが分かったはずだ。なんで撤退しないんだ?指揮官不在ならお前らはもう戦えないだろう?」

逃げないが、戦わない。
その戦い方はただの時間稼ぎだ。
「はっ」と思う。

(”竜巻”の到着があるのか?)

そうくるなら話は違う。

”稲妻”と同等と言って差し支えないカサブリアの戦士。”稲妻”が英雄なら”竜巻”は執行人。

影の英雄とも謳われる彼らが参戦した戦場は残酷そのものだ。敵の肉片が飛び散り、建物は倒壊し、まるで災害の後のような惨状になると言われている。

ミーシャを殺すためにカサブリアの最大戦力であろう部隊を惜しげもなく使ってくる。これは単なる予想の範囲内だが、そうでなければここまで耐えるだろうか?

あの国はかつて無い程の手薄状態と言って差し支えない。

前”銀爪”が統治していたら、こうはならなかったと考えると今の統治者は上に立つ器ではない。

ドドドドンッ

ミーシャは体の芯から響き渡るような音と共に、さっきから飛び回っては攻撃を仕掛けてくる、十羽程を選んで、魔力砲を飛ばす。
三羽は避けたが、七羽は撃ち落された。

いきなりの攻撃に魔鳥人の攻撃の手が止まる。
この魔王は突然動き出すため、攻撃のタイミングや、その間隔が分からない。恐怖から攻撃を出来なくなってしまう。避けることにソースを割くことで
死なないよう努める。

ミーシャの思惑がかなった形となる。

”竜巻”が来るのなら、待ちたいが、コバエに飛ばれてはイライラして落ち着かない。魔力消費を抑えるのも込みで停止してもらう事にしたのだ。

「そうそう、そのまま動かず。”竜巻”の到着まで待ちましょう…ね?」

一方ラルフはミーシャの無事に安堵していた。

「ハァハァ…やっぱ無事だったか…良かった…」

息を整える為、ラルフはちょっと休む。
一分一秒をも無駄にできない状況だが、人である以上そういうわけにはいかない。空を飛べればその限りではないのだろうがあいにく、その手の道具は持ってない。そこで「はっ」となる。

空中にいるミーシャにどうやって事態を知らせるか根本的な事に気付いた。

自分も空を飛ぶことができれば、面倒な事を考えずにミーシャの横に並んだのに魔法使いでも、そういった類の魔道具を持ち合わせているわけでもないので、伝達方法がない。

これに関してはベルフィアが一人で来ても同じ事を考えただろう。二人なら他の事もできたかもしれないが敵の手前、そんなことは言ってられないわけで…。

「くそっ!何かいい方法はないものか…」

自分が持ちえるアイテムで何かと考えて探ると、火付け道具が手元に来る。油もあるから、のろしを上げる方向で伝える事を思いつく。

準備中に敵に視認され、こちらに敵意が向く恐れもある。魔鳥人が鳥目である事を望みたい所だが、アルパザの一件を思えば、それはないだろう。実に原始的だが、なりふり構っていられない。

平野で燃やす物が乏しいはずの町への道には魔鳥人の死体が散乱している。まず、その辺の草を千切り、集め始める。

枯れ葉や木屑、魔鳥人の死体から槍を奪い、その辺りにある、燃やせそうな物を大体、集めてしまう。

油を集めた材料に振りかけ、火を灯す。メラメラと燃え広がる。
ドッサリ可燃材料を上に被せて、キャンプファイアのような大きな炎に育てていく。

思った通り、大きな炎はでかい煙となりもうもうと立ち上る。ミーシャに気付かれる前に、魔鳥人が気付く。何羽か下で火を焚く人間ヒューマンを何事かと注視する。

「あれは…魔鳥人がこっちを見てる…か?」

やっぱりミーシャより先に見つかった。
岩や丘、建物など、陰の無い場所だし、真上にいる敵を欺ける様な傘もない。ラルフはミーシャが気付くまで待つか思案する。

「…いや、無理だ!!」

五羽くらいがこっちに近付いてくる敵を視認し、ラルフは逃げ出した。

しかし、どうしようもない。その足で、あの飛行に逃げられるほど足は速くない。槍を向けられ、その場にやって来た。

手を上げて、ラルフは止まる。ミーシャを刺激しないようこっそりやって来た連中だ。アルパザの出来事ピンチに気付かれないようにしているのを感じる。

そりゃそうだ、あれだけの数を相手に一歩も引かず、わきをすり抜けてじゃないと来れないくらいの力量差があるのだ。ミーシャがアルパザに来れば全てがご破算だろう。

一羽がラルフに向かって語り掛ける。

「…貴様は?」

「…あぁ、ちょっと暗かったんで…明かりをね…」
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