一般トレジャーハンターの俺が最強の魔王を仲間に入れたら世界が敵になったんだけど……どうしよ?

大好き丸

文字の大きさ
28 / 718
第一章 出会い

第二十七話 決戦

しおりを挟む
伝説の吸血鬼 VS 最強の騎士団長

このカードに興奮しない者は、この場にはいない。

騎士たちの実力を覆す圧倒的強さの前に立ちはだかる一つの希望。不謹慎ではあるが、どのような戦いを見せるのかまた、どちらが勝つのか好奇心が尽きない。

アルパザ陣営はもちろん団長を応援する。
ラルフは当然ベルフィアだ。

「頼むぜ、ゼアル団長…あんただけが頼りだ…」

守衛のリーダーは切に願う。
吸血鬼の強さは理解したが、団長の強さがいまいち
つかめていない。

団長の持つ魔剣が青白く光を放つ。

(これが”魔剣”というやつか…面白い…)

ベルフィアは多くの地を旅し、同族と共に侵略してきたが、魔剣と対峙したのはこれが初めてだった。

魔剣とは、生き物でないにも拘らず魔力をその剣に内包し且つ、様々なスキルを有している。物言わぬただの道具のくせに意志を持ち、所有者を選ぶというわがままな武器である。

そしてラルフと団長の会話からすでにわずかでも情報を得ているベルフィアは余裕の態度を示す。

切れ味向上と魔族特攻。

切れ味向上は分かるが、魔族特攻に関しては名前では能力が分からない。他にも能力があるというようなことを吹聴していたが、真偽のほどは不明だ。

警戒は怠らないが、時間的余裕がない中、少しワクワクしていた。

ジリッという地面を踏みしめる音が聞こえる。
剣を倒した状態で右側に掲げて左手を下から添えるように握り、突きの構えをとる。左足を前に出し右足で踏ん張る。

その構えに覚えがあったラルフは

(あれ団長さんの真剣マジの構えだったのか…)

そう考えればあの時、切り捨てる気満々だったことを理解してしまい、背筋が冷える。

対してベルフィアは左半身を前に出し、右半身を隠すように立つ。これもどこかで見たことのある立ち方だ。

双方構えを取り、一触即発の空気。
どちらも隙を伺い、一拍の間が開く。

ジャッ

先に動いたのはベルフィアだ。
潜り込むように地面すれすれで駆け抜ける。
ここで先に動いた理由として、二つの事柄があげられる。

一つは、短期決戦で片付けなければいけないこと。
二つは、自分の能力に対する自信だ。

「魔王様を待たせている現在、自分の好奇心で遊んでいるわけにはいかない。再生能力と、戦闘能力でごり押しですり潰してしまえ」

という短絡的な見解だった。

団長はその速度に一瞬気圧される。
それをベルフィアは見逃さない。

(ちょろいノぅ!)

ベルフィアは抜き手で鎧ごと貫こうとする。
鎧に爪が届く直前、

視界がずれる。

自分の意識とは別に斜めに傾き、一瞬焦点がずれて平衡感覚を失う。

(!?)

何が起こったのかわからず、一旦引こうとするも後ろに下がれない。足に踏ん張りがきかず、倒れこもうとしている。せめて背筋はいきんで起き上がろうとするが、変わらず地面に落ちていく。

わずか爪の先にいた団長の姿は消えて、ベルフィアは支えがないまま成す術なく倒れこむ。

ドザッという音と共に幾つかのパーツになったベルフィアが同時に地に伏す。

(斬られタじゃと!?)

ベルフィアの爪が鎧に当たるその時、魔剣の力は発動した。

一撃目、頭を左の額から右の頬に向かって斜めに切り裂く。この時、勢いが良すぎて突き出していた右手も切る。

二撃目、前に踏み込みつつ返す剣で首を切断し、
三撃目、剣を振り下ろし胴を両断。

四撃目、さらに返す剣で両足のふとももを同時に切り落とし
団長の攻撃は終わった。

電光石火。カウンターによる瞬間四連撃。

この攻防をそのまたたきの中で見れたのは
元冒険者のリーダーただ一人。
完璧に見れたわけではないが、剣の軌道と体裁きを知覚できた。

「……スゲェ…」

冒険者だった頃にも名立たる剣士と騎士を目の当たりにしてきたが、これほどの腕前は他に類を見ない。自分が出会った中で一番強い人間であることは間違いない。

そしてそれはベルフィアにとっても同じだった。

人間に刺されたり斬られたりはよくあることだが、体をバラバラにされるほど斬られたことはないし、何より再生が追い付かず、無様に地面に転がっている。

(マジかよ!ベルフィアが…っ!!)

心の底から悔しさが込みあがる。
ベルフィアは伝説の吸血鬼。人狼ワーウルフも勝てない強者なのに。
ラルフは団長の強さがここまでだとは知らず歯噛みした。
流石は最強の騎士団団長。

「ふぅぅぅ…」

団長は振り抜いた格好のまま一時停止し、感触を確かめる。斬った余韻が後からやってくる。

これは魔剣の力”速度超過クイックアップ”のスキルだ。ひとたび発動すればただの一瞬ではあるものの、音を置いてけぼりにする速度を得られる。斬られた敵は自分の死を知覚できず、こと切れる。

切れ味向上の他、最大にして最強のカウンターを放てる唯一無二の魔剣である。

ただ使った後のクールタイムが存在し、感覚が戻るまで少々時間がかかる。戦場ではあまり使えないが、一対一の際は無敵だ。いうなれば”初見殺し”。

このスキルは秘匿され、継承されていく。
魔剣の刀工と所有者にしか分からない最大の能力である。

現在この能力を知っているのは団長と公爵の二人だけだった。

そして世界に知れ渡る力”魔族特攻”。
この力は魔力を遮断し、さらに切った魔族から少量の魔力を吸収できる。この力は魔族にのみ発揮され、他の生き物には効果がない。魔族にとって、もはや呪いの類と言って差し支えない。

この剣を装備し戦場を駆ける姿はまさに圧巻。
団長ゼアルは人類が誇る常勝無敗の剣士だ。

「これが吸血鬼か…他愛もない…」

頭を切り首を両断し、手も胴も足も切り離し地面に転がりピクリとも動かない。しかし伝説では吸血鬼は不死身とされる。

団長はダメ押しに切った頭を剣で突く。
さらに背中から心臓に当たる部分を滅多刺しにする。その行動は素早く、かつ冷酷に行われた。

「おいやめろ!!なんてことするんだ!!」

ラルフはたまらず叫ぶ。
団長の行動は人間の所業ではない。
しかし団長はやめない。

「どういうことだ…血が一滴も出ないぞ?生き物ではないのか?不思議だな…」

団長はラルフを完全に無視し、疑問をベルフィアの体に投げかけていた。

「やめろって言ってるだろ!!!」

ラルフは投げナイフを取り出し、団長に向かって投げる。その行動を読んでいたのか、軽々と弾き地面に落ちる。

「ハイネス…いやラルフよ。これ・・は人類の敵だぞ?私の部下もこの化け物のせいで三人死んだ。それもこれほど無残な死に方でな!!」

ガスッという音が立つほど勢いよく体に剣を突き立てる。投げナイフはもうない。今持つのは騎士の剣ただ一つ。

「…そしてお前は一人殺した」

その言葉を聞いた途端、寒気が走る。

今まで感じたことのない冷たい視線と殺気。
その危機感を感じた時、瞬時に剣を構えた。
身の毛もよだつ恐怖。
同じ人間から発されているとは思えなかった。

団長はベルフィアから剣を抜き、正眼に構える。

「来いラルフ…遊んでやる」
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

スキルはコピーして上書き最強でいいですか~改造初級魔法で便利に異世界ライフ~

深田くれと
ファンタジー
【文庫版2が4月8日に発売されます! ありがとうございます!】 異世界に飛ばされたものの、何の能力も得られなかった青年サナト。街で清掃係として働くかたわら、雑魚モンスターを狩る日々が続いていた。しかしある日、突然仕事を首になり、生きる糧を失ってしまう――。 そこで、サナトの人生を変える大事件が発生する!途方に暮れて挑んだダンジョンにて、ダンジョンを支配するドラゴンと遭遇し、自らを破壊するよう頼まれたのだ。その願いを聞きつつも、ダンジョンの後継者にはならず、能力だけを受け継いだサナト。新たな力――ダンジョンコアとともに、スキルを駆使して異世界で成り上がる!

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?

音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。 役に立たないから出ていけ? わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます! さようなら! 5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

セーブポイント転生 ~寿命が無い石なので千年修行したらレベル上限突破してしまった~

空色蜻蛉
ファンタジー
枢は目覚めるとクリスタルの中で魂だけの状態になっていた。どうやらダンジョンのセーブポイントに転生してしまったらしい。身動きできない状態に悲嘆に暮れた枢だが、やがて開き直ってレベルアップ作業に明け暮れることにした。百年経ち、二百年経ち……やがて国の礎である「聖なるクリスタル」として崇められるまでになる。 もう元の世界に戻れないと腹をくくって自分の国を見守る枢だが、千年経った時、衝撃のどんでん返しが待ち受けていて……。 【お知らせ】6/22 完結しました!

【完結】物置小屋の魔法使いの娘~父の再婚相手と義妹に家を追い出され、婚約者には捨てられた。でも、私は……

buchi
恋愛
大公爵家の父が再婚して新しくやって来たのは、義母と義妹。当たり前のようにダーナの部屋を取り上げ、義妹のマチルダのものに。そして社交界への出入りを禁止し、館の隣の物置小屋に移動するよう命じた。ダーナは亡くなった母の血を受け継いで魔法が使えた。これまでは使う必要がなかった。だけど、汚い小屋に閉じ込められた時は、使用人がいるので自粛していた魔法力を存分に使った。魔法力のことは、母と母と同じ国から嫁いできた王妃様だけが知る秘密だった。 みすぼらしい物置小屋はパラダイスに。だけど、ある晩、王太子殿下のフィルがダーナを心配になってやって来て……

異世界召喚に条件を付けたのに、女神様に呼ばれた

りゅう
ファンタジー
 異世界召喚。サラリーマンだって、そんな空想をする。  いや、さすがに大人なので空想する内容も大人だ。少年の心が残っていても、現実社会でもまれた人間はまた別の空想をするのだ。  その日の神岡龍二も、日々の生活から離れ異世界を想像して遊んでいるだけのハズだった。そこには何の問題もないハズだった。だが、そんなお気楽な日々は、この日が最後となってしまった。

タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。

渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。 しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。 「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」 ※※※ 虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。 ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

処理中です...