一般トレジャーハンターの俺が最強の魔王を仲間に入れたら世界が敵になったんだけど……どうしよ?

大好き丸

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第一章 出会い

第八話 ドラキュラ城

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ドラキュラ城の近くで用意をし始めるラルフ。
それをすぐそばで眺めている魔族の彼女。

「ラルフ、何をしているの?」

「見てわからないのか?城に入る用意だよ」

侵入初日にやっていた行動をこの場でも同じようにテキパキこなす。

それはこのポケットに、あれはジャケットの内側に…といった感じで自分の出しやすい位置に物を入れて何度も確認している。

「いや、だってそれさっきあそこでやってたじゃない」

あそことは野営地である。

「分かってないな、もし入る前に落としたりしていたらどうするんだ?万が一、魔獣に出会った時スプレーや消臭剤を使えなかったら死ぬかもしれないんだぞ?」

考えられる危険な事態を想定して、その時のことを思い出して用意する。何度も遺跡を探索し、死にかけた経験があるからこそ、ここで活きる。

死なないための行動、傷つかないようにする方法、危険を回避する周到。

ラルフのすべてはこの用意で決まる。

「というかミーシャ…君は来なくてもいいんじゃないかな?傷はまだ癒えてないんだぞ?」

二つの意味で…

彼女の名はミーシャ。
魔族である彼女は、命令で”古代竜エンシェントドラゴン”の懐柔にこの地を訪れた。かなりの軍勢で来たそうだが、「アルパザ」には情報が来てないことを考えると、一応、隠密行動による進軍だったのだろう。魔族は大抵飛べるので、夜の闇にでも紛れて飛んできたに違いない。

任務は無事遂行。その時、裏切り行為にあったのだという。任務遂行が事実なら人類の滅亡が近いが、本当に懐柔したかは定かではない。

それはさておき、”古代竜エンシェントドラゴン”との戦いで消耗した、まさにその時を狙われ、致命傷を受ける中、命からがら逃げだしたそうだ。回復もおぼつかないほど傷つき魔力の尽きたミーシャは、途中で気を失い、城に落ちたのが事の顛末だという。

頑丈だったミーシャは落ちた衝撃程度では死なず。衰弱死の一途を辿るのみだったが、ラルフに拾われ今に至る。

「だって一人であそこにいるの退屈だもん」

最初こそ威厳を保とうと努力していた口調も、今やすっかり打ち解けて、子供のように喋ってくる。

(まぁ、吸血鬼の伝説もデマみたいなもんだし…暇つぶしの探検程度に考えても大丈夫だろ。一応この超回復材を装備してるし、死にはしないか…)

「これはあくまでも仕事だからな、この中には貴重品が多いから極力触らないように頼むぞ」

「ねぇラルフ、とれじゃーはんたーって泥棒なの?」

ラルフは聞き捨てならないことを聞いた。

「これだから素人は…いいか?トレジャーハンターはいわば遺跡の探検家だ。失われた技術や遺跡、遺産の保護を目的とし、しかるべき場所にそれを収める。それに見合った報酬をいただいているだけなんだよ」

「耳障りのいいことばかり…単なる盗人ぬすっとのいいわけだね…」

さかしい、さっきの子供のような口調はどこに行った。

黙々と準備を再開し、太陽が頭のてっぺんに来た頃、やっと終了する。この日も万全を整え、昼間の侵入となる。

「よし!じゃ侵入するぞ!」

「おーっ!やっと入れる!」

ギギィィィ…ィィィ…

初日とは打って変わって、入り口を普通に開ける。先日油をさしていたのがうまく作用し、すんなり開く。音こそ初日より立つが、そう五月蠅くもない。

ラルフは耳をそばだて、動くものがないか目を皿にして見ている。

「…ちょっと、今度は何なの?」

侵入するといったそばから敵を警戒し中々入らないラルフに対し流石のミーシャも我慢が利かなくなっていた。

「いつでも警戒は大切だ。吸血鬼がいなくても他の魔獣はいるかもしれないし…」

ミーシャはフンッと鼻で笑ってズカズカ入っていく。

「あ、おい!」

城の内部は相変わらずで、天井が落ちている以外はおかしなところはない。ミーシャが自分の血で黒ずんだ石に近寄る。そこでミーシャはラルフに向かって手を広げ、

「さぁ、どうかしら?ここまで来たのに何もないじゃない!」

その芝居がかった挙動に演劇に似た何かを感じた。そう思うのも無理はない。なによりミーシャは狙ってやったのだろう。
日が城の天井から入り込み、その場所をサーチライトで照らしているかのようだし、胸を張り堂々としている様はそうとしか思えなかった。

だがラルフには響かない。
シーンと静まり返った玄関に、痛々しい目で見るラルフとその空気に耐えられなくなって手を下ろしポツンと立つミーシャ。

「…もういいから探索しましょうよ」

ある程度注意しつつ、ミーシャと探索を続ける。途中二手に分かれたりしながらお宝を確認しに行った。ドラキュラ城は設計図通り、場所や調度品の置かれている位置まで正確に一緒だった。

「なんだこれは…ただの宝の地図じゃないか…」

やはり領主が持ち出せなかった調度品の数々がそのまま残っていたようだ。吸血鬼も誇り高き一族。価値あるものを壊すような蛮族ではない。

設計図に支払った高額の痛みが瞬時に消える。

ここまで準備した物が役に立った事は経験上無く、ラルフはあまりの出来事に困惑していた。

噂や伝承、伝記が丸々本当なのだとしたら、吸血鬼はどこへ?犠牲者の名残もない。埃は積もって、小虫も侵入している。

「ラルフ!ラルフ!」

ミーシャの慌てた声が聞こえる。

「まさか…」

ラルフは急いでミーシャの元へと駆ける。

二階のパーティー会場となる大広間から声が聞こえる。小さな部屋から順に確認していたため、最後にまわそうと探索中に示し会わせたのに、ミーシャは我慢が効かなかったようだ。

大広間の扉が半開きになっている。ラルフは腰に下げたダガーを抜いて、扉を蹴り開ける。そこには黒くにじんだカーペットと白骨化した人骨が転がっていた。

当時は凄惨な光景だったのだろうが、今は特に臭いもなく白骨化した人骨もまるで置物のようだ。大広間の真ん中に棺が立てて置かれている。そのそばにミーシャが驚いた顔でラルフを見ていた。

「どうしたのラルフ?」

ダガーを前に腰を低く構えを取るラルフは、ミーシャが無事なことを確認するとダガーを仕舞う。

「どうしたのじゃないよ…慌てて呼ぶからなんかあったのかと…って、それは!」

「気づいた?そう、これは棺。きっとこの城の主がここに収まっていて中に相当量の遺産が詰まっているのよ」

棺をポンポンたたいて、フフンッと得意気に鼻を鳴らす。ラルフは青ざめてミーシャのそばまで信じられない速度で詰め寄り、彼女の腕を掴むと、5mくらい離れる。

「君、何してんの?」

ラルフはミーシャに静かに問いかける。

「何って、お宝探しの手伝いだけど」

「一回しか言わないからよく聞いて、一回しか言わないからね?この城ね、吸血鬼って化け物の住まいなの。ここに寝ているのは十中八九、吸血鬼なのね。知らないかもだし、伝えなかった俺のミスなんだけど、相手にしたくないのね。寝ているならこのまま放っておきたいのね。入る前に言ったけど、無傷の仕事を目指しているから、危険なことから避けるために協力して欲しいんだけど約束できる?」

ミーシャに懇切丁寧に説明したため長くなってしまったし、ちょっと早口で言ったために、いくらくらい聞き取れたのかわからないが、焦っていることだけは伝わった。

そしてミーシャにとって容認しがたいことを聞いた。

「吸血鬼が?」

「そう、吸血鬼。超強い化け物で絶滅したとされる、あの吸血鬼」

ミーシャはちらりと棺に目をやり、疑問を呈す。

「あの中に吸血鬼なんているわけないよ、だって全滅させたのに…」

その通り。あの当時の魔王が絶滅に追いやった。
魔族側にもそれが常識となっているようだ。

「そうだ。でも吸血鬼の絶滅騒動の時、一匹だけ逃げ延びたのがいたらしいんだ。しかもここに住んでた元あるじの領主はそれと遭遇したけど幸運にも逃げられたって話だ。な?やばいだろ?」

そう結局、噂や伝承、伝記が丸々本当なのだ。

だがここまでして起きないとは、不思議でもあった。
これも領主の時同様、幸運で片付けられる稀有な事態と認識する。二階の探索はあきらめ、一階で見た調度品から徐々に取っていく方面でラルフの中で考えが固まっていった。

そんな時、ミーシャはもっと不思議なことをし始める。
どうするか考えをまとめているわずかな時間の中、注意が散漫になっているラルフの隙をついて、再び棺に向かっていくミーシャ。自然に棺の蓋を開けて、蓋をその辺に置いている。

「ちょっ…おま…!!?人の話を聞けぇぇぇぇ!!!」

あまりの出来事にラルフのツッコミが大声で炸裂する。

棺の中で寝ていた化け物がその声により目覚める。ラルフはしまったと口を両手で鷲掴みにするように閉じる。しかし今更遅い、何もかもが終わった段階ではどうすることもできない。

薄暗い部屋に出てきた蝋燭のように白い肌は、生き物を否定するかのようだ。見開いた目は瞳は朱く、白めの部分は黒い。その両目の下には頬に届く黒い文様がついていた。

長い休眠から目覚めた化け物は腹を空かしているのか、口を開け、よだれを出しながらこちらを見ている。

口の中から除く長い犬歯は、生き物の皮膚を貫き出血させるためのものだ。そんな化け物は美しくきれいな女性の姿をしていた。まさに領主が見た、見た目そのものである。

ミーシャはきれいだが、ちんちくりん感があるのに対し、こちらは大人の淫靡さを醸し出す。

「おんやぁ…久しぶりノご馳走が領域内に入ルなんて珍しぃノぅ…」

吸血鬼はラルフに対し舌なめずりをして、目を輝かせるのだった。
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