魔王復活!

大好き丸

文字の大きさ
上 下
149 / 151

第148話 説明求む

しおりを挟む
虎田を保健室に預けた春田たちは教室に向かった。

扉を開けるとそこは生徒のいないガランとした教室。
マンションを出る前に遅刻する云々で脅されたが、全くの杞憂。余裕過ぎて机に突っ伏して寝るのも良い。しかしそんな事を竹内は許さない。

「……春田の部下って何人来てるの?」

「ポイ子含めて四人」

「……それじゃ前に見たあの人たちは親戚じゃなくて部下だったんだ」

「そうなんです。みんな聖也様に会いたい一心でこの世界にやって来たんですよ」

「……めっちゃ健気……」

何気なく三人は席に着く。

「こちらに来ている聖也様の部下四名は俗に四天王と言われています」

「……は?四天王?すごっ……なんか二つ名とか……あるの?」

「二つ名って……好きだな、お前も」

春田は呆れ気味にため息を吐く。

「二つ名なんて大層なものがあれば格好もついたのですけど……ああ、ヤシャ様とマレフィア様ならそういうのありましたよ。確かヤシャ様が”鬼の姫”でマレフィア様が”大魔導士”ですね」

それを聞いて竹内はウンウン頷きながら口元に手をやる。

「……ふーん、ヤシャさんは名前通りって感じか……マレフィアさんが大魔導士……って魔法が使えるの?」

「使えます。何だったらナルル様も使えます」

「……ポイ子さんは?」

「魔法は苦手な分野でして……」

ポイ子は頬を掻きながら困ったように眉を八の字に苦笑いした。そんな事を話していると、教室にワイワイと数人が「おはよー」と朝一番の挨拶をしながら入ってきた。

「っと、結構良い時間になったか?そういえばポイ子、お前普通に教室にいるけどよ、今日が編入の日なら職員室とか校長室とかに行かなきゃいけないんじゃないか?」

「え?そうなんですかね?」

「……案内するよ」

「ん?竹内が案内してくれんのか?」

竹内は親指を上に立ててグッドサインをして見せた。二人はさっさと教室を後にする。
春田は机に突っ伏すと「ふーっ」と肩の力を抜いた。しかしすぐに強張って顔を上げる。

「いや、ダメじゃね?成り行きは俺が見ないと……」

焦ってガタリと立ち上がると、すぐに呼び止められた。

「春田さん、おはようございます」

その清楚な声に教室のクラスメイトは息を飲んだ。東グループのご令嬢、滝澤詩織。その後ろに控えるのは詩織の付き人、菊池。

「お……はようございます、滝澤さん。と菊池」

「少しお時間よろしいですか?」

静まり返った空間。春田はバツが悪そうに苦笑いで答える。

「場所を変えましょうか」

………

売店に行き、備え付けのベンチに滝澤を座らせた。

「あ、飲み物とかいる?」

「いいえ、わたくしは結構です」

「私も結構だ」

財布を出しかけたが「そっか」と言って仕舞った。滝澤の隣に無遠慮に座ると話しかけた。

「……そう……それで、何か用でしょうか?」

「それがですね、どう切り出したら良いものか……」

「率直がよろしいのではないでしょうか?」

聞きにくい事。それは聞かなくたって分かる。十中八九「魔王」の事だろう。

「みんな気になる事は一緒って事か……つまり二人とも忘れてないんだな?記憶浸透メモリーペネトレートの効果は切れてるはずなんだがな……」

「メモ……?いえ、そんなことよりその口調。わたくしが聞きたい事に心当たりがあるのですね?」

「……俺の前世に興味があるのでは?」

二人はその言葉に瞠目する。

「……もしや同じ質問を受けているのでしょうか?」

「ええ、まぁ……」

「春田聖也。貴様は本当に、その……」

「魔王なのかってか?そうだよ。今更しらばっくれても答えは一緒だしな」

菊池の顔は強張り、滝澤は肩を竦める。

「何というか……今までの事全てが繋がった気分です。瀬川会長の息子ら犯罪者を無傷で倒してのけ、お祖父様にもその存在を認められるほどの御仁。ご親戚のヤシャ様はお祖父様より力が上。他二名も油断ならない方々でした。この世界の住人でないとしたら……あり得ない話ではないと思いまして……」

「なるほど、色々気になる事があったようですね。もう隠せないしゲロっちゃいますけど、前世魔王だった俺は現在人間で他四人が人間じゃないです」

「人間じゃないって?じゃあヤシャさんは一体何の種族だと言う気?」

「鬼だ」

「お、おに?でもツノとか生えてなかったような……」

菊池は質問が返ってくるなり混乱している。だがやはりというべきか、滝澤は「なるほど」と頷いた。

「お祖父様が負けたのは当然の事ですね」

裏格闘技の事を思い浮かべながら納得する。
あの戦いは挑戦者がチャンピオンに挑むのではなく、人が鬼に挑んだ戦いだったのだ。初めから勝ち目など無かった。

「俺としてはおじいさんがヤシャにあれだけ食い下がるとは思いもよらなかったよ。この世界の人間じゃ良い戦いなんて期待できなかったから」

「食い下が……?!貴様、会長への侮辱は許さないぞ」

菊地は眉間にシワを寄せてズイっと前に出た。

「止めなさい」

ピシャッと滝澤が菊地を嗜める。

「し、しかし……」

「春田さんは事実を申されただけです。春田さん、大変失礼しました」

滝澤はペコリと頭を下げる。それに焦った春田は頭を掻きながら頭を下げる。

「ああ、えっと……俺こそ悪かった。誤解させるつもりじゃなかったんだが……」

滝澤はニコリと笑顔で返すと、腕時計を確認した。

「……そろそろ行きますか。ホームルームが始まる前には教室に戻らないといけませんし」

スッと姿勢良く立ち上がると、菊池もピッと姿勢を正した。

「そ、そうっすね。戻りましょうか」

三人は変な空気を漂わせながら廊下を歩く。途中で別れてそれぞれの教室に戻った。

(やれやれ……面倒な事になったもんだ。こうなると誰々が覚えているのか気になるな……)

春田は席に着く。

「は~るちん!おっはよ~」

そのフワフワッとした声にガクッと肩を落とした。その声の主はクラスのムードメーカー館川。
「はぁ……」とため息を吐きながら声の方を見ると、館川の後ろに虎田の親友、木島。陸上部の朝練が終わってスッキリした顔の篠崎。
つい最近知り合ったばかりの陽キャ連中。春田には縁の無い存在だったが、虎田と知り合った事で結果的にこの三人とも知り合う事になった。

「春田。ちょっと聞きたい事あるんだけど?」

「そっか、お前らもか……ったくよー……」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

性奴隷を飼ったのに

お小遣い月3万
ファンタジー
10年前に俺は日本から異世界に転移して来た。 異世界に転移して来たばかりの頃、辿り着いた冒険者ギルドで勇者認定されて、魔王を討伐したら家族の元に帰れるのかな、っと思って必死になって魔王を討伐したけど、日本には帰れなかった。 異世界に来てから10年の月日が流れてしまった。俺は魔王討伐の報酬として特別公爵になっていた。ちなみに領地も貰っている。 自分の領地では奴隷は禁止していた。 奴隷を売買している商人がいるというタレコミがあって、俺は出向いた。 そして1人の奴隷少女と出会った。 彼女は、お風呂にも入れられていなくて、道路に落ちている軍手のように汚かった。 彼女は幼いエルフだった。 それに魔力が使えないように処理されていた。 そんな彼女を故郷に帰すためにエルフの村へ連れて行った。 でもエルフの村は魔力が使えない少女を引き取ってくれなかった。それどころか魔力が無いエルフは処分する掟になっているらしい。 俺の所有物であるなら彼女は処分しない、と村長が言うから俺はエルフの女の子を飼うことになった。 孤児になった魔力も無いエルフの女の子。年齢は14歳。 エルフの女の子を見捨てるなんて出来なかった。だから、この世界で彼女が生きていけるように育成することに決めた。 ※エルフの少女以外にもヒロインは登場する予定でございます。 ※帰る場所を無くした女の子が、美しくて強い女性に成長する物語です。

蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる

フルーツパフェ
大衆娯楽
 転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。  一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。  そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!  寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。 ――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです  そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。  大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。  相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。      

【異世界ショップ】無双 ~廃絶直前の貴族からの成り上がり~

クロン
ファンタジー
転生したら貴族の長男だった。 ラッキーと思いきや、未開地の領地で貧乏生活。 下手すれば飢死するレベル……毎日食べることすら危ういほどだ。 幸いにも転生特典で地球の物を手に入れる力を得ているので、何とかするしかない! 「大変です! 魔物が大暴れしています! 兵士では歯が立ちません!」 「兵士の武器の質を向上させる!」 「まだ勝てません!」 「ならば兵士に薬物投与するしか」 「いけません! 他の案を!」 くっ、貴族には制約が多すぎる! 貴族の制約に縛られ悪戦苦闘しつつ、領地を開発していくのだ! 「薬物投与は貴族関係なく、人道的にどうかと思います」 「勝てば正義。死ななきゃ安い」 これは地球の物を駆使して、領内を発展させる物語である。

異世界で穴掘ってます!

KeyBow
ファンタジー
修学旅行中のバスにいた筈が、異世界召喚にバスの全員が突如されてしまう。主人公の聡太が得たスキルは穴掘り。外れスキルとされ、屑の外れ者として抹殺されそうになるもしぶとく生き残り、救ってくれた少女と成り上がって行く。不遇といわれるギフトを駆使して日の目を見ようとする物語

異世界転生、防御特化能力で彼女たちを英雄にしようと思ったが、そんな彼女たちには俺が英雄のようだ。

Mです。
ファンタジー
異世界学園バトル。 現世で惨めなサラリーマンをしていた…… そんな会社からの帰り道、「転生屋」という見慣れない怪しげな店を見つける。 その転生屋で新たな世界で生きる為の能力を受け取る。 それを自由イメージして良いと言われた為、せめて、新しい世界では苦しまないようにと防御に突出した能力をイメージする。 目を覚ますと見知らぬ世界に居て……学生くらいの年齢に若返っていて…… 現実か夢かわからなくて……そんな世界で出会うヒロイン達に…… 特殊な能力が当然のように存在するその世界で…… 自分の存在も、手に入れた能力も……異世界に来たって俺の人生はそんなもん。 俺は俺の出来ること…… 彼女たちを守り……そして俺はその能力を駆使して彼女たちを英雄にする。 だけど、そんな彼女たちにとっては俺が英雄のようだ……。 ※※多少意識はしていますが、主人公最強で無双はなく、普通に苦戦します……流行ではないのは承知ですが、登場人物の個性を持たせるためそのキャラの物語(エピソード)や回想のような場面が多いです……後一応理由はありますが、主人公の年上に対する態度がなってません……、後、私(さくしゃ)の変な癖で「……」が凄く多いです。その変ご了承の上で楽しんで頂けると……Mです。の本望です(どうでもいいですよね…)※※ ※※楽しかった……続きが気になると思って頂けた場合、お気に入り登録……このエピソード好みだなとか思ったらコメントを貰えたりすると軽い絶頂を覚えるくらいには喜びます……メンタル弱めなので、誹謗中傷てきなものには怯えていますが、気軽に頂けると嬉しいです。※※

エラーから始まる異世界生活

KeyBow
ファンタジー
45歳リーマンの志郎は本来異世界転移されないはずだったが、何が原因か高校生の異世界勇者召喚に巻き込まれる。 本来の人数より1名増の影響か転移処理でエラーが発生する。 高校生は正常?に転移されたようだが、志郎はエラー召喚されてしまった。 冤罪で多くの魔物うようよするような所に放逐がされ、死にそうになりながら一人の少女と出会う。 その後冒険者として生きて行かざるを得ず奴隷を買い成り上がっていく物語。 某刑事のように”あの女(王女)絶対いずれしょんべんぶっ掛けてやる”事を当面の目標の一つとして。 実は所有するギフトはかなりレアなぶっ飛びな内容で、召喚された中では最強だったはずである。 勇者として活躍するのかしないのか? 能力を鍛え、復讐と色々エラーがあり屈折してしまった心を、召還時のエラーで壊れた記憶を抱えてもがきながら奴隷の少女達に救われるて変わっていく第二の人生を歩む志郎の物語が始まる。 多分チーレムになったり残酷表現があります。苦手な方はお気をつけ下さい。 初めての作品にお付き合い下さい。

フリーター転生。公爵家に転生したけど継承権が低い件。精霊の加護(チート)を得たので、努力と知識と根性で公爵家当主へと成り上がる 

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
400倍の魔力ってマジ!?魔力が多すぎて範囲攻撃魔法だけとか縛りでしょ 25歳子供部屋在住。彼女なし=年齢のフリーター・バンドマンはある日理不尽にも、バンドリーダでボーカルからクビを宣告され、反論を述べる間もなくガッチャ切りされそんな失意のか、理不尽に言い渡された残業中に急死してしまう。  目が覚めると俺は広大な領地を有するノーフォーク公爵家の長男の息子ユーサー・フォン・ハワードに転生していた。 ユーサーは一度目の人生の漠然とした目標であった『有名になりたい』他人から好かれ、知られる何者かになりたかった。と言う目標を再認識し、二度目の生を悔いの無いように、全力で生きる事を誓うのであった。 しかし、俺が公爵になるためには父の兄弟である次男、三男の息子。つまり従妹達と争う事になってしまい。 ユーサーは富国強兵を掲げ、先ずは小さな事から始めるのであった。 そんな主人公のゆったり成長期!!

異世界で買った奴隷が強すぎるので説明求む!

夜間救急事務受付
ファンタジー
仕事中、気がつくと知らない世界にいた 佐藤 惣一郎(サトウ ソウイチロウ) 安く買った、視力の悪い奴隷の少女に、瓶の底の様な分厚いメガネを与えると めちゃめちゃ強かった! 気軽に読めるので、暇つぶしに是非! 涙あり、笑いあり シリアスなおとぼけ冒険譚! 異世界ラブ冒険ファンタジー!

処理中です...