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第八十九話 勘違い
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「ふーっ、あぶねーあぶねー……」
なんとか誤魔化せた春田は教室に向かう。いつもより早いので、きっと今日は一番乗りである事は想像に難くない。
久々の一人を満喫出来る事を思い、少し足早に教室を目指す。
夜寝れなかった分、HRが始まるまでのわずかな時間に机に突っ伏して寝ることを考えていた。教室が見えたとき、いそいそと近付く。
ドアに手をかけたとき、中で「ガタンッ」という音が鳴った。「え?」と疑問に思う。携帯の時計を確認するが、さっきの絡みを差し引いても、まだ10分ちょっと早い。
(誰だ?)と思ったが考えるまでもない。最近、春田より早い奴がいた。三日続かなかったから安心していたが、それが逆に意地になったのか?
ガラッと普通に入ると、案の定そいつはいた。
「やっぱりお前か……竹内」
ガラガラの教室。ただ一人座る女子生徒。竹内。
このクラスで最も有名な不良だが、最近では更正したのか遅刻をする事も無いし、授業にもちゃんと出ている。ただ、ちゃんと授業を受けるかと言えばそれは別の話。
「んあ……春田?」
わざわざ早めに来て机に突っ伏して寝る。それよりはギリギリまで寝て遅れない程度に来た方が体も休めると思えるが、それじゃ遅れるのだろうと察する。だから別に学校で寝るなとは言わないが、
「何でお前は俺の席で寝るんだ……」
春田は呆れながら竹内を見る。
「……なんか……高さとか丁度良いし……位置も申し分無いからかな……」
とポツリポツリ話す。まだ半分くらい夢の中のような顔をしている。
「……んじゃ交換するか?」
それを聞いて「まさか…」と言って席を立ち、すぐ目の前の席に座る。
「隣の芝生は青いって言うでしょ……時々貸してもらえるのが良いのよ……」
「あー……いや、うるせぇ」
春田は座ると竹内同様突っ伏した。ため息をつきながら体の力が抜けて行く。
「……どうしたん?……疲れた?」
「……ちゃんと寝られなかったんだよ。だからとりあえず学校で寝ようかと思ってな……」
「ふーん……おやすみ」
竹内が寝ていた机はすでに温まって、すごく寝やすくなっている。だんだん意識が遠のいていく。20秒くらい竹内は春田を黙って見ていたが、ふいに声を出した。
「……アタシのあとは良く寝れる?」
それを聞いた途端カッと目を見開き、バッと顔を上げた。そこにはきょとんとする竹内がいる。
「?……寝ないの?」
「余計な事言うなよ。寝られないじゃんか……」
「……なんで?」
「いや、なんでじゃないよ……なんか、恥ずかしいから……」
ボソッと理由を話すと「ふーん」と何気ない返事を出して春田から視線を外した。顔を赤くした春田はもう寝る気になれず、カバンに入れていた小説を取り出す。まだ時間があるし、暇つぶしの為に小説を開く。
「……それなに?」
「読みかけの小説。ライトノベルってわかる?」
本屋でかけてもらった紙のカバーをしているので可愛い絵柄を隠していたが、ちょうど挿絵の場所に来たので絵を見せつつ竹内に説明する。
「ラノベは良く聞くけど……小説とか見ないし、どんなのか知らない……」
「竹内は漫画派っぽいよな……」
と言って視線を本に落とすが、竹内がつまらなそうにしている。(おいおい……俺が相手しないといけないのか?)面倒な気持ちに襲われたが、栞を挟んで小説をカバンに戻す。口をとがらせて足をいじいじ踏みしめたりしていた竹内はパッと顔を上げて春田を見る。その目はほんの少し輝いて見えた。(単純な奴だ……)と思ったものの、少し可愛くも思えた。
「……お前は漫画とか何読んでいるんだ?」
「何でも読んでるよ……週刊誌とかを立ち読みしたりしてる……」
「どんなジャンルが好きなんだよ」
二人で他愛もない話に花を咲かせていると、「おはよー」という声と共にガラッと三國先生が入ってきた。
「滅茶苦茶早いわねー二人とも。でもなんで春田くんはいるの?」
「は?」
それはどういう意味か?「え?だって今日は……」といった所で気付く。(あぁ……今日は休みだぁ……)昨日の朝に「明日は休みだからいろいろしなきゃ―」とか思っていたのを唐突に思い出す。だからだ、虎田と会わなかったのも黒峰が朝からハッスルしていたのも理由があった。今更ながらようやく納得した。
その様子を傍から見ていた竹内は「ぶっ」と噴き出して顔を背ける。
「あー……今日を平日と勘違いしたのね。仕方ないわ。流石春田くん!真面目ねぇ」
その三國のフォローも春田にとっては恥ずかしすぎる。竹内ももろにツボに入って噴き出しまくる。
「……おい、お前はどうしてここにいるんだよ…」
三國は二人をほっといて黒板に白のチョークで何かを書いている。竹内は一旦落ち着いて春田を見据えると、三國の書いている場所を親指を立てて指し示す。
「……何ってそりゃ補習でしょ」
それを聞いてようやく竹内が何故ここにいるのか理解できた。同時に自分は確かに全く関係がない事も認識できたが、
「……威張る事じゃねぇだろ……」
なんとか誤魔化せた春田は教室に向かう。いつもより早いので、きっと今日は一番乗りである事は想像に難くない。
久々の一人を満喫出来る事を思い、少し足早に教室を目指す。
夜寝れなかった分、HRが始まるまでのわずかな時間に机に突っ伏して寝ることを考えていた。教室が見えたとき、いそいそと近付く。
ドアに手をかけたとき、中で「ガタンッ」という音が鳴った。「え?」と疑問に思う。携帯の時計を確認するが、さっきの絡みを差し引いても、まだ10分ちょっと早い。
(誰だ?)と思ったが考えるまでもない。最近、春田より早い奴がいた。三日続かなかったから安心していたが、それが逆に意地になったのか?
ガラッと普通に入ると、案の定そいつはいた。
「やっぱりお前か……竹内」
ガラガラの教室。ただ一人座る女子生徒。竹内。
このクラスで最も有名な不良だが、最近では更正したのか遅刻をする事も無いし、授業にもちゃんと出ている。ただ、ちゃんと授業を受けるかと言えばそれは別の話。
「んあ……春田?」
わざわざ早めに来て机に突っ伏して寝る。それよりはギリギリまで寝て遅れない程度に来た方が体も休めると思えるが、それじゃ遅れるのだろうと察する。だから別に学校で寝るなとは言わないが、
「何でお前は俺の席で寝るんだ……」
春田は呆れながら竹内を見る。
「……なんか……高さとか丁度良いし……位置も申し分無いからかな……」
とポツリポツリ話す。まだ半分くらい夢の中のような顔をしている。
「……んじゃ交換するか?」
それを聞いて「まさか…」と言って席を立ち、すぐ目の前の席に座る。
「隣の芝生は青いって言うでしょ……時々貸してもらえるのが良いのよ……」
「あー……いや、うるせぇ」
春田は座ると竹内同様突っ伏した。ため息をつきながら体の力が抜けて行く。
「……どうしたん?……疲れた?」
「……ちゃんと寝られなかったんだよ。だからとりあえず学校で寝ようかと思ってな……」
「ふーん……おやすみ」
竹内が寝ていた机はすでに温まって、すごく寝やすくなっている。だんだん意識が遠のいていく。20秒くらい竹内は春田を黙って見ていたが、ふいに声を出した。
「……アタシのあとは良く寝れる?」
それを聞いた途端カッと目を見開き、バッと顔を上げた。そこにはきょとんとする竹内がいる。
「?……寝ないの?」
「余計な事言うなよ。寝られないじゃんか……」
「……なんで?」
「いや、なんでじゃないよ……なんか、恥ずかしいから……」
ボソッと理由を話すと「ふーん」と何気ない返事を出して春田から視線を外した。顔を赤くした春田はもう寝る気になれず、カバンに入れていた小説を取り出す。まだ時間があるし、暇つぶしの為に小説を開く。
「……それなに?」
「読みかけの小説。ライトノベルってわかる?」
本屋でかけてもらった紙のカバーをしているので可愛い絵柄を隠していたが、ちょうど挿絵の場所に来たので絵を見せつつ竹内に説明する。
「ラノベは良く聞くけど……小説とか見ないし、どんなのか知らない……」
「竹内は漫画派っぽいよな……」
と言って視線を本に落とすが、竹内がつまらなそうにしている。(おいおい……俺が相手しないといけないのか?)面倒な気持ちに襲われたが、栞を挟んで小説をカバンに戻す。口をとがらせて足をいじいじ踏みしめたりしていた竹内はパッと顔を上げて春田を見る。その目はほんの少し輝いて見えた。(単純な奴だ……)と思ったものの、少し可愛くも思えた。
「……お前は漫画とか何読んでいるんだ?」
「何でも読んでるよ……週刊誌とかを立ち読みしたりしてる……」
「どんなジャンルが好きなんだよ」
二人で他愛もない話に花を咲かせていると、「おはよー」という声と共にガラッと三國先生が入ってきた。
「滅茶苦茶早いわねー二人とも。でもなんで春田くんはいるの?」
「は?」
それはどういう意味か?「え?だって今日は……」といった所で気付く。(あぁ……今日は休みだぁ……)昨日の朝に「明日は休みだからいろいろしなきゃ―」とか思っていたのを唐突に思い出す。だからだ、虎田と会わなかったのも黒峰が朝からハッスルしていたのも理由があった。今更ながらようやく納得した。
その様子を傍から見ていた竹内は「ぶっ」と噴き出して顔を背ける。
「あー……今日を平日と勘違いしたのね。仕方ないわ。流石春田くん!真面目ねぇ」
その三國のフォローも春田にとっては恥ずかしすぎる。竹内ももろにツボに入って噴き出しまくる。
「……おい、お前はどうしてここにいるんだよ…」
三國は二人をほっといて黒板に白のチョークで何かを書いている。竹内は一旦落ち着いて春田を見据えると、三國の書いている場所を親指を立てて指し示す。
「……何ってそりゃ補習でしょ」
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